教育研究業績の一覧

温 秋穎
A 教育業績
教育実践上の主な業績 年月日概要
1 教育内容・方法の工夫(授業評価等を含む)
1 チューターとしての留学生のサポート 2022-04-00 ~ 京都大学大学院・教育学研究科では、初めて来日した3名の留学生のチューターとして、彼らの勉強と生活面でのサポートし、学生の指導役として学ぶ意欲を引き出す方法やアプローチを磨いた。
2 作成した教科書、教材、参考書
3 教育方法・教育実践に関する発表、講演等
1 温秋穎「戦前日本の中国語学習誌:中国語教育、中国語界を読み解く基礎資料として」(京都大学人文科学研究所付属現代中国センター「20世紀中国史の資料的復元」共同研究班) 2022-05-20 本報告は、中国語教育のあり方を考える素材として、これまでほとんど注目されていなかった1930年代に日本国内で発行された中国語学習誌の基本的な情報の整理を行った。代表性があり、且つ一次資料も揃っている①支那語学会『華語新声』、②宮越健太郎主幹『支那語』、③奥平定世主幹『支那語と時文』、④大阪外国語学校支那研究会『支那及支那語』、⑤宮原民平主幹『支那語雑誌』の五誌を主な分析対象として、各学習誌の創刊目的や誌面の変化、学習雑誌を通していかに中国語を教えるかという教育方法を整理した。このなかで、後期の『支那及支那語』で表れた研究志向が純粋な学術研究から一歩後退し、中国語教育への親和性を示し、中国語教育法の革新のための理論的な探究へと転換していったことを明らかにした。
2 WEN, Qiuying. “Chinese-language voices in media: An otherness in comparison with Kundoku”(東京大学・東京カレッジの「言語とアイデンティティ」ワークショップ) 2023-03-01 本報告は、中国語の発音の教育法に関する分析を提示したものである。1931年のラジオ「支那語講座」が放送されはじめたのと同じ頃、紙媒体としての中国語教材と学習雑誌が、民間で多く出版され、ラジオ講座が聴取できる範囲を超えて外地の遠隔地までに流通していた。この報告では、印刷出版物に応用された各種の発音記号や表記法を音声の正確さを追求するための耳の拡張として捉えて、目で読む中国語の教本において、声の中国語がどのように受容されたのかを分析した。まず、明治以降、日清戦争直後までの訓読と音読による中国語の文章空間を確認し、さらに、1920年代から敗戦までの間で用いられた多種の発音表記・表記法を概観し、中国語文章空間に起きた変化を考察した。最後は表記法を選定する基準に焦点を当てて、その選定に影響した要素として、印刷技術、学習者との関係、イデオロギーの3つの角度から分析した。
4 その他教育活動上特記すべき事項
1 読書会の主催(非公式) 2021-05-00 ~ 申請者は2021年から他大学の院生などと協力して、メディア論の読書会と中国研究の読書会を主催して、月1回の頻度でそれぞれの研究分野の古典とされる書籍を輪読してきた。具体的には、3~4人で各人が1章~2章を選んでレジュメを作ってほかのメンバーに報告し、その後に全員で討論する形を取っている。読書会は、当該分野の古典や新しい研究成果から学び、また院生同士で研究についての考え方を交換する良いコミュニケーションの場となっている。申請者はこれらの読書会の発案者として、普段は各メンバーとの意見交換を行い、それぞれの専門と最近の研究関心を把握した上で、書籍の選択に対してのアドバイスや、議論の方向性の調整といったことを行うリード役を担っている。この経験は、異なる学科・学年の学生たちが総合研究室で自由に交流し、専門性を活かしながら成長できるようにするための仕事に役立てられると考えている。
B 職務実績
1 科学研究費助成事業による研究活動:
日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業(KAKEN)特別研究員奨励費「日本放送協会「中国語講座」からみる日中交流のメディア史」(研究課題番号:22KJ1757)
2021-04-00 ~ 情報化とグローバル化の進展によりますます緊密になる日中関係において、相互理解のための知の地平となる言語学習の問題は回避できない。この異文化コミュニケーションに対する理解を深めるにあたり、戦前のラジオ「支那語講座」を起点として、大衆的な「声の文化」の連続性を有するNHK「中国語講座」は、最重要な研究対象である。日本社会が中国語をどう受け止めたのかを、その時代の日中関係や日本放送協会の言語学習方針の変遷を踏まえて、本研究では中国語的知の流通という問題における中国語学習の展開を貫戦史として描き出したい。その成果は今後の日中文化交流の発展にも大きく寄与するものである。
2 外部資金による研究活動:
放送文化基金「日本放送協会「中国語講座」からみる日中交流のメディア史」
2021-04-00
~2022-03-00
本研究は、日本の放送文化における中国語をめぐる知的交流を戦前の「支那語講座」、戦後の「中国語講座」から検証するものであった。具体的に、「支那語講座」において、実質上の敵対国であったはずの中国の像が、中国語ということばの学習を通していかに想像されたかを考察した。また、戦後草創期のNHK「中国語講座」と民間の中国語講習会の関係に着目し、戦時中の「支那語」が戦争に協力したという戦争責任が問われるなかで、新しい中国語の教育法や中国語に対する認識が、中国語の専門家と、大学生、民間人の協力で模索されていたことを明らかにした。
3 外部資金による研究活動:
京友会研究助成事業「近代日本対中国情報活動における中国語の運用―外務省官僚・岩村成允の中国語実践を例として」
2021-07-00
~2022-03-00
本研究は、外務省官僚・岩村成允の情報活動と中国語実践を通して、近代日本の情報空間における中国語という言語の受容、およびその情報空間の変遷を解明しようとするものである。長らく顧みられることのなかった中国語の専門家であり中国通であった岩村成允(1867-1943)に焦点を当てることで、戦前期における日本の外務省の中国問題に関する情報戦略の内実を垣間見ることができる。また、情報活動における中国語の役割について検討するとともに、岩村の中堅官僚としての外交活動の自発的な側面や、帝国日本の官僚としての立場に制約された彼の中国語に対する認識についても論じた。
4 付属研究所等における研究活動:
国際日本文化研究センター特別共同利用研究員
2023-10-00 ~ 戦後日本の中国認識の重要な一側面である中国語をめぐる思想問題を、言語と社会の相互関係という切り口から深掘りすることを課題としている。いままで体系的に検討されることがなかった言語学者・教育者である倉石武四郎と藤堂明保の言語認識と教育思想に着目し、彼らの言語認識、教育思想と戦後の日本社会との相互関係を考察するものである。
C 学会等及び社会における主な活動
所属期間及び主な活動の期間 学会等及び社会における主な活動
1 2020-03-00~0000-00-00 European Association for Japanese Studies
2 2020-12-00~0000-00-00 日本マス・コミュニケーション学会(現・日本メディア学会)
3 2021-06-00~0000-00-00 メディア史研究会
4 2022-10-00~0000-00-00 多言語社会研究会
5 2023-09-00~0000-00-00 Japanese Studies Association of Australia
D 研究活動
著書、学術論文等の名称単著、
共著の別
発行又は
発表の年月
発行所、発表雑誌等
又は
発表学会の名称
概要
Ⅰ著書
以上0点
Ⅱ学術論文
1 A study of the antagonistic relationship between western ‘sports’ and Japanese ‘martial arts’ in the 1920-1940s Japanese magazine “Shonen Kurabu”―the nationalization in physical education by mass media―単著 2020-03-00『京都大学大学院教育学研究科 北京師範大学教育学部 学術交流活動2019報告書』(京都大学大学院教育学研究科・北京師範大学教育学部) 本稿は、「少年倶楽部」の誌上において、外国由来の身体鍛錬法と伝統的なものが、「身体の国民化」の過程でどのように統合されていったかを検証する。特に1920年代から30年代にかけての戦時下における「スポーツ」と「武道」の拮抗関係を明らかにしようとする。第1章では、20年代の雑誌を中心に、「愛国心」と、スポーツの日本化としての「野球道」を取り上げる。第2章では、精神的な枠組みから解き放たれ、競技としてのアイデンティティを獲得した武道と、オリンピックが牽引した競技スポーツ熱との拮抗を検証する。第3章では、戦争の過程で「スポーツ」と「武道」がどのように融合され、あるいは軍隊から排除されていったのかを明らかにする。
13頁(136-148頁)。
2 戦前日本放送協会の言語観について―日本放送協会の放送研究雑誌を中心に単著 2020-03-00『京都メディア史研究年報』第6巻(京都大学大学院教育学研究科メディア文化論研究室) 本稿は、いかに国民統合と教育の均等を実現させるかという日本放送協会の政策全体のなかで、言語(日本語・外国語)に対する認識の変遷を位置づけようとするものである。放送開始直後の1926年から太平洋戦争末期まで、日本放送協会独自の調査研究を掲載していた放送研究雑誌を分析する。具体的には、特に日本語については「標準語」の創出過程に着目し、外国語については実用性への認識やイデオロギーの変化を考察した。
26頁(107-132頁)。
査読あり。
3 明治时期史学者久米邦武(1839-1931)的文明观与中国观:从《米欧回览实记》到《支那大观与细观》単著 2021-11-00『全球化与史学传统之革新博士生学术会议论文集』(北京大学歴史学院) 本稿は、明治期の日本政府の外交活動や修史活動に携わった歴史家・久米邦武(1839-1931)の文明観・中国観を例にとり、明治期日本の歴史学の黎明期における世界文明と中国文明に対する認識について検討するものである。主に久米の『米欧回覧実記』(1878年)と『支那大観と細観』(1917年)のテキストに焦点を当て、この時期の歴史学の方法論に関する久米の著作を踏まえて、久米の思考の変遷を分析する。
12頁(233~244頁)。
査読あり。
4 中国通外交官・岩村成允(1876~1943)の情報活動―中国語の使用という視点から単著 2022-03-00『京都大学大学院 教育学研究科紀要』第68号(京都大学大学院教育学研究科) 本稿は、外交のネットワークにおける情報の伝達や分析にいて、中国語がどのように使用されたかを考察するものである。中国語の専門家の岩村成允という外交官の外交活動を解明することによって、戦前の対中国外交史を言語の使用という視点で探求することを目的とする。当時の外交情勢を踏まえた上で、外務省の公文書と岩村が執筆した辞書、文章、教科書を総合的に利用し、中国語の情報が収集・利用された経路を分析する。
14頁(123~136頁)。
査読あり。
5 日本放送協会「支那語講座」のメディア史(1931-1941):他者の言語はいかに想像されたか単著 2022-08-00『メディア研究』第101号(日本メディア学会) 本稿は、戦前の日本放送協会で放送された中国語学習のラジオ番組「支那語講座」において、他者の言語がいかに想像されたかを解明しようとするものである。音声媒体のラジオと紙媒体のテキストにあらわれた言語の重層性に留意し、「支那語講座」において実質上の敵対国であったはずの中国の像が、中国語ということばの学習を通していかに想像されたかを考察した。それを踏まえたうえで、「敵性語」になりきらなかった語学の人気番組が果たした役割をも検討した。
18頁(119-136頁)。
査読あり。
6 NHKラジオ・テレビ「中国語講座」の戦後史―日中国交正常化前の語学学習と中国認識単著 2023-02-00『メディア史研究』第53号(メディア史研究会) 本稿は、1952年から1972年頃にかけての中国語講座を研究対象として、言語教育の素材と教学の方針を定めた講師、番組の在り方に関心に寄せた学習者がそれぞれ、いかなる思惑を持って中国語に接近していたかを考察した。その上で、中国語講座という語学学習のメディアと、戦後の中国語学習という行為およびその行為に含まれる中国認識との相互関係について、初歩的な分析を試みた。
26頁(125~150頁)。
査読有り、招待有り。
以上6点
Ⅲ 口頭発表・その他
1 A study of the antagonistic relationship between western ‘sports’ and Japanese ‘martial arts’ in the 1920-1940s Japanese magazine “Shonen Kurabu”―the nationalization in physical education by mass media―口頭発表(一般発表) 2019-10-00京都大学大学院教育学研究科北京師範大学教育学部学術交流活動(於北京師範大学、北京) 本報告は、「少年倶楽部」の誌上において、外国由来の身体鍛錬法と伝統的なものが、「身体の国民化」の過程でどのように統合されていったかを検証する。特に1920年代から30年代にかけての戦時下における「スポーツ」と「武道」の拮抗関係を明らかにしようとする。第1章では、20年代の雑誌を中心に、「愛国心」と、スポーツの日本化としての「野球道」を取り上げる。第2章では、精神的な枠組みから解き放たれ、競技としてのアイデンティティを獲得した武道と、オリンピックが牽引した競技スポーツ熱との拮抗を検証する。第3章では、戦争の過程で「スポーツ」と「武道」がどのように融合され、あるいは軍隊から排除されていったのかを明らかにする。
発表時間 25分
2 翻訳論はメディア論であるか―佐藤=ロスベアグ・ナナ『学問としての翻訳―『季刊翻訳』『翻訳の世界』とその時代書評 2021-04-00『京都メディア史研究年報 佐藤卓己教授還暦祝賀記念号』(京都大学大学院教育学研究科メディア文化論研究室) 日本における翻訳研究・翻訳にまつわる言説を学問の角度から考える佐藤=ロスベアグ著『学問としての翻訳』が、メディア研究にも示唆を与えうるという視点の下で、書評を執筆した。翻訳理論とメディア理論の融合をもとめるメディア翻訳やジャーナリズム翻訳という研究領域が発展してきたことを踏まえたうえで、翻訳論とメディア論との融合がいかにして可能であるかという問題にはまだ定説がなく、メディア研究にとっても今後注目を集めるテーマになるであろうことを論じた。
15頁(289~303頁)。
3 中国語という思想問題の戦前から戦後へ―日本放送協会「中国語講座」を手がかりに口頭発表(一般発表) 2021-05-28京都大学人文科学研究所付属現代中国センター「近現代中国の制度とモデル」共同研究班(於京都大学、京都) 本報告は、「中国語講座」シリーズの歴史と関連づけながら、中国語の普及と向上を目指した吉川幸次郎や倉石武四郎らによって1940年代に出版言論界で発表された訓読批判の言説や、1960年代後半における中国語の表記の選択に現れた対中感情を分析することで、中国語に対する社会通念と、教育者・知識人の認識を、思想の問題として観察するという可能性を提起した。
 発表時間 90分
4 戦前放送中国語「支那語講座」のメディア史―実用語学講座から対内広報のメディアへ口頭発表(一般発表) 2021-06-06日本マス・コミュニケーション学会2021年春季大会(オンライン開催) 本報告は、1931年から1941年にかけて日本放送協会で放送された「支那語講座」の内容とメディア機能を史的に考察した上で、取り扱う中国語の種類の取捨選択に伴い、「支那語講座」のメディア機能が実用語学講座から対内広報のメディアへと変化していったことの内在的な動因を探るものである。このメディア機能の変遷を分析することにより、伝統的な学問の「漢文」と実用語学であった「現代中国語」との知の格差に直面して、放送局がいかなる中国語的な知をラジオの音声を通して伝播したかという大衆教育や知の流通の問題も提起した。
 発表時間 25分
5 Utilizing the Chinese Language in Japan’s Intelligence Activities 1897–1930s: A Case Study of MOFA Officer Iwamura Shigemitsu口頭発表(一般発表) 2021-08-2616th International Conference of European Association for Japanese Studies, China in Transwar Japan (Panel Hisrtory29)(オンライン開催) 本報告は、外交ネットワークのなかでの情報の伝達、収集、分析、翻訳において、外国語がどのように用いられるかを検証することで、日本外交史の新たな側面を探ることを目的とする。長らく顧みられることのなかった中国語の専門家であり中国通であった岩村成允(1867-1943)に焦点を当てることで、戦前期における日本の外務省の中国問題に関する情報戦略の内実を垣間見ることができる。また、情報活動における中国語の役割について検討するとともに、岩村の中堅官僚としての外交活動の自発的な側面や、帝国日本の官僚としての立場に制約された彼の中国語に対する認識についても論じた。
発表時間 30分
6 明治时期史学者久米邦武(1839-1931)的文明观与中国观:从《米欧回览实记》到《支那大观与细观》口頭発表(一般発表) 2021-11-06北京大学历史学系“全球化与史学传统之革新”博士生学术会议(オンライン開催) 本報告は、明治期の日本政府の外交活動や修史活動に携わった歴史家・久米邦武(1839-1931)の文明観・中国観を例にとり、明治期日本の歴史学の黎明期における世界文明と中国文明に対する認識について検討するものである。主に久米の『米欧回覧実記』(1878年)と『支那大観と細観』(1917年)のテキストに焦点を当て、この時期の歴史学の方法論に関する久米の著作を踏まえて、久米の思考の変遷を分析した。
 発表時間 30分
7 漢字の読み書きから中国語のデジタル・リテラシーへ―T・S・マラニー『チャイニーズ・タイプライター―漢字と技術の近代史』から考える書評 2022-04-00『京都メディア史研究年報』第8号(京都大学大学院教育学研究科メディア文化論研究室) 本稿では、言語学やメディア論、技術史の研究領域で注目を集めたマラニー著『チャイニーズ・タイプライター』を手掛かりに、これまでの学界の評価と書評論文の成果を前提としたうえで、さらなる発展の可能性と問題点を提起した。まず、メディアとしてのタイプライターへの理解はさらに掘り下げる余地があると論じた。また、言葉の応用と意味論の角度から考える場合、本書が多用する「技術言語学(technolinguistic)」という重要な概念には、未整理な部分が残されていることを提起した。
 12頁(383-394頁)。
8 戦前日本の中国語学習誌:中国語教育、中国語界を読み解く基礎資料として口頭発表(一般発表) 2022-05-20京都大学人文科学研究所付属現代中国センター「20世紀中国史の資料的復元」共同研究班(於京都大学、京都) 本報告は、中国語教育のあり方を考える素材として、これまでほとんど注目されていなかった1930年代に日本国内で発行された中国語学習誌の基本的な情報の整理を行った。代表性があり、且つ一次資料も揃っている五誌を主な分析対象として、中国語を教えるかという教育方法を整理した。このなかで、後期の『支那及支那語』で表れた研究志向が純粋な学術研究から一歩後退し、中国語教育への親和性を示し、中国語教育法の革新のための理論的な探究へと転換していったことを明らかにした。
発表時間 90分
9 日中国交正常化前の中国語学習とメディア―NHKラジオ・テレビ「中国語講座」の戦後史口頭発表(一般発表、招待あり) 2022-09-03メディア史研究会2022年度研究集会(オンライン開催) 本報告は、1952年から1972年頃にかけての中国語講座を研究対象として、言語教育の素材と教学の方針を定めた講師、番組の在り方に関心に寄せた学習者がそれぞれ、いかなる思惑を持って中国語に接近していたかを考察した。その上で、中国語講座という語学学習のメディアと、戦後の中国語学習という行為およびその行為に含まれる中国認識との相互関係について、初歩的な分析を試みた。
 発表時間 45分
10 Chinese-language voices in media: An otherness in comparison with Kundoku口頭発表(一般発表) 2023-03-01Language and Identity Workshop II: Language in Media: Representation and Consumption, Tokyo College, Tokyo University(オンライン開催) 本報告は、「声」の中国語の「他者」としての受容と文化的アイデンティティについて、特に日本語の文法で中国語を読み下す「訓読」との比較において論じた。第一部では、印刷メディアにおける「声」の中国語のテキスト空間の変化について、発音記号の活用に焦点を当てて論じた。第二部では、日本人に中国語を教えるラジオ番組「支那語講座」における中国の複雑な他者性について論じた。第一部では印刷されたテキストに、第二部では音声メディアに焦点を当てており、これらはいずれも1930年代に中国語を教える主要なメディアであった。
 発表時間 15分
11 〈声〉の中国語は「教養」になりうるか口頭発表(3分間スピーチ) 2023-09-01豪州日本研究学会研究大会 / 国際繋生語大会・大学院生ワークショップ(於ニュー・サウス・ウェールズ大学、シドニー) 本発表では、「〈声〉の中国語は「教養」になりうるのか」という問いを手掛かりに、戦後の東京大学における中国語を必修科目とするクラス、通称「Eクラス」に着目する意義を紹介した。Eクラスが誕生した歴史的な意義を明らかにするため、専任講師とEクラスで学んだ学生たちが発表した言説や、行った活動の記録をこれまで分析してきた。教育史の先行研究では、学校や教室内の状況を重視する傾向があったが、それらと比べて、課外活動や学生運動に着目することで、教育と学習の行為と、その行為にあった思想的な意味を、歴史社会学の視点から問い直すことができる。
 発表時間 3分
12 「教養」としての中国語はいかに創られたのか―戦後の東京大学Eクラスとその周辺口頭発表(一般発表) 2023-09-03豪州日本研究学会研究大会 / 国際繋生語大会(於ニュー・サウス・ウェールズ大学、シドニー) 本報告は、中国語が新制東京大学・教養学部の外国語として設置され存続していった意味合いを検討することを目的として、具体的には、Eクラス内の教育と学習の実態、及びその周辺で行われた課外活動を考察し、教師と学生の思想と行動の原理を分析するものである。この考察を通して、Eクラスの中国語教育・学習で希求された理想と、現実の中国への強い関心と絡み合った実態、また、新しい中国学が萌芽する原点がEクラスの教育と学習にあったということを解明した。
 発表時間 25分
以上12点

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