教育研究業績の一覧

後藤 晴子
A 教育業績
教育実践上の主な業績 年月日概要
1 教育内容・方法の工夫(授業評価等を含む)
1 現場の問題を考察するための社会科学の視点の養成 2012-04-01 ~ 専門知識を与えるだけでなく、それらの知識を通して「ひとつの物事」を様々な観点から理解しようとする柔軟な発想法を獲得できるように努めた。具体的には受講者に身近な事例から比較研究法の重要性を理解できるように授業を構成している。
2 大規模講義における双方向的な授業の保持 2012-04-01 ~ 大規模の講義では毎回コメントカードを実施し、受講者の理解度を把握するように務めている。また授業冒頭で前回のコメントカードの内容にリプライし問題の共有化を図り、学生のコメントを授業内容に反映することで双方向性を保った。
3 抽象的議論をより具体的に理解させるため視聴覚資料の活用 2012-04-01 ~ 具体的なイメージを持って問題を考察することが出来るよう、毎回授業スライドを作成。自身の調査で撮影した写真資料を積極的に掲載し、またテーマに合わせて映像資料(映画・ドキュメンタリー)なども活用した。
4 中規模講義におけるプレゼンテーション、グループワーク 2012-04-01 ~ 演習及び中規模の講義でも適時プレゼンテーションやグループワークを取り入れた。例えば「実用英語」(西南学院大)では、プレゼンテーションの時間を設け、学生同士でも評価することでプレゼンテーション力を養うことができるよう努めた。
5 「授業評価アンケート」 2012-04-01 ~ 上述してきたマルチメディアを組み込んだ授業、ミニッツカードの取り組みなど上記に挙げた取り組みは、対面時およびオンライン開催時においても各大学の学期末の授業評価アンケートで概ね肯定的な評価を受けている。
6 社会調査実習における社会調査の企画立案と実施 2016-04-01
~2018-03-00
社会調査士関連科目の「社会調査」(西南学院大)では申請者が設定した調査のテーマ(「地方都市で生きる人びとの生活と文化」)をもとに学生が個別の調査テーマを立案、報告書の作成に至る一連の作業を学生と共に実施した。

7 コロナ禍におけるオンライン授業の実施(オンデマンド型/オンタイムミーティング型) 2020-04-00 ~ オンライン授業でも授業の質の維持を心掛けた。オンデマンド型(名古屋学院大・福岡女学院大)では、オンラインシステム上で穴埋め式の授業資料の配布。資料に対応した授業動画を作成し、授業時限に合わせてストリーム配信した。コメントカードはオンライン上で毎回提出させ、授業動画冒頭ではコメントへのリプライと課題の解説を実施して対面と同じく双方向性を維持。オンタイム配信が可能だった演習(関西学院大)ではzoomを用いて演習を実施し、学生の発表機会を設けた。
2 作成した教科書、教材、参考書
1 授業の主要テーマについての授業資料の作成 2012-04-01 ~ ノートをとるのは大学生の必須の能力の一つではあるが、一方ノートをとるだけに集中し、ただ書き写すだけになってしまうことも少なくない。そのため受講生に合わせた授業資料を作成し、予習復習に取り組みやすい様にした。配付資料は基本的に穴埋め式を採用しており、講義型授業で作成しているスライドを見ながら、受講生にキーワードを記入させることで、授業のポイントが押さえられるように工夫している。
2 主要テーマについてのパワーポイントの作成

2012-04-01 ~ 先に示した通り講義資料と連動する形で授業スライドを作成。スライドには講義資料には記述していない補足の事例や申請者が調査で撮影した写真資料等をテーマに合わせて利用することによって、学生の関心を引きやすい構成を心がけた。またパワーポイントには毎回実施するミニッツカードに書かれた学生の質問やコメントを掲載することによって、視覚的にも受講生同士の意見の共有を図った。
3 オンライン授業における資料、授業動画、課題の作成 2020-04-01 ~ 1で述べた通りオンライン授業(オンデマンド型)に合わせて授業資料(穴埋め型)、授業スライドを用いた授業動画(60分ほど)を作成した。授業動画冒頭は前回のコメントのリプライと課題の解説を付し、授業部分では授業資料を穴埋めしながら視聴できるように授業スライドに音声を吹き込み動画にした。動画では対面と同じく申請者が調査地で撮影した写真資料等を挿入した。
4 共著の教科書利用 2020-04-01 ~ 『民俗学読本―フィールドへのいざない―』(共著、著書業績2)は、演習(関西学院大)で教科書として利用している。
5 『2022年度 学科科目実践研究 「フィールドワーク入門」成果集』、大谷大学社会学部現代社会学科 2023-03-00 古谷伸子・後藤晴子・橋口昌治・許燕華(編)。2022年度の実践科目「フィールドワーク入門1」(前期)、「フィールドワーク入門2」(後期)の成果集。15班の調査グループの報告書で、担当教員として他の教員とともに指導および編集を行った。
6 『2023年度 学科科目実践研究 「フィールドワーク入門」成果集』、大谷大学社会学部現代社会学科 2024-03-00 渡邊拓也・古谷伸子・後藤晴子・橋口昌治・許燕華(編)。2023年度の学科実践科目「フィールドワーク入門1」(前期)、「フィールドワーク入門2」(後期)の成果集。15班の調査グループの報告書であり、担当教員として他の教員とともに指導および編集を行った。
3 教育方法・教育実践に関する発表、講演等
4 その他教育活動上特記すべき事項
1 外国人留学研究生の受け入れ(研究指導) 2022-10-00
~2023-09-00
中国(浙江財形大学)からの交換留学生1名(大学院修士課程)を受け入れ、個別に、研究についての助言と指導を行った(週1コマ)。研究テーマは、「癒し文化」。
2 オープンキャンパス模擬授業 2023-09-03 社会学部現代社会学科の「学びの紹介」として、現代社会学科の「学び」を紹介し、「ミニ講義」を実施した(担当時間:60分)
B 職務実績
1 外部資金の獲得 2007-00-00 九州大学人間環境学府「学位取得(課程博士)に向けての研究助成」、研究課題名:「老い」の形成に関する文化人類学的研究―沖縄離島の事例から―」(代表者)。
2 外部資金の獲得 2009-00-00 「公営信託大畠記念宗教史学研究助成基金」、研究課題:口述の近現代仏教史:「さかのぼる宗教史」のための一試論」(代表者)。
3 外部資金の獲得(科学研究費助成事業:研究代表者)

2016-00-00 平成28年度科学科研助成事業(科学研究費補助金)、研究成果公開促進費(学術図書)課題番号16HP5119、刊行図書名:老いる経験の民族誌(代表者)
4 大谷大学地域連携室室員 2022-04-00
~2024-03-31
5 高校出張講義 2024-01-23 社会学部現代社会学科の模擬授業として、京都両洋高校の1年生対象の「キャリア探求授業」で「社会学」に関する模擬講義を実施した。社会学の学びについて紹介するとともに京都のオーバーツーリズムに関するミニディスカッションを実施した。
講義時間:50分
6 真宗総合研究所東京分室長 2024-04-01 ~
C 学会等及び社会における主な活動
所属期間及び主な活動の期間 学会等及び社会における主な活動
1 2001-07-00~0000-00-00 日本老年社会科学会 正会員
2 2001-12-00~0000-00-00 日本文化人類学会 正会員
3 2002-03-00~2002-04-00 福岡県文化財調査研究委員会 調査補助員[福岡県教育庁文化財保護課文化財保護係・歴史の道整備活動推進事業(秋月街道)]
4 2002-07-00~0000-00-00 九州文化人類学研究会 正会員
(2006年7月~2007年7月 会計・庶務・会報編集事務担当、2008年8月~2009年7月 会計・庶務担当)

5 2005-03-00~0000-00-00 比較家族史学会 正会員
6 2005-03-00~0000-00-00 日本民俗学会会員
7 2006-03-00~2006-03-00 福岡県文化財調査研究委員会 調査補助員[福岡県教育庁文化財保護課文化財保護係・民俗芸能調査事業]
8 2007-04-00~0000-00-00 日本宗教学会 正会員
9 2007-07-00~0000-00-00 沖縄文化協会 正会員
10 2010-02-00~0000-00-00 西日本宗教学会 正会員
11 2010-03-00~2011-03-00 福岡県文化財調査研究委員会 調査補助員[福岡県教育庁文化財保護課文化財保護係・豊前神楽調査研究事業]
12 2011-04-00~2012-11-00 福岡市史編さん委員会 調査委員[民俗部会]
13 2012-12-00~0000-00-00 福岡市史編さん委員会 専門委員[民俗部会]
14 2015-04-00~2018-03-00 福岡市文化財課調査 調査員[福岡市経済観光文化局文化財保護課・博多松ばやし調査事業]
15 2015-06-00~2017-05-00 北九州市文化財保護審議委員(民俗)
16 2017-09-00~2019-08-00 北九州市文化財保護審議委員(民俗)
17 2019-10-00~0000-00-00 沖縄スピリチュアル研究会 正会員
18 2022-04-00~0000-00-00 南山宗教文化研究所非常勤研究員(南山大学客員研究員)
19 2022-05-00~0000-00-00 京都民俗学会 正会員(理事(企画委員)2023.12~)
20 2022-10-00~0000-00-00 現代民俗学会 正会員
D 研究活動
著書、学術論文等の名称単著、
共著の別
発行又は
発表の年月
発行所、発表雑誌等
又は
発表学会の名称
概要
Ⅰ著書
1 『老いる経験の民族誌―南島で生きる〈トシヨリ〉の日常実践と物語』単著 2017-02-00九州大学出版会 九州大学に提出した博士論文を再構成した著書で科研費の研究成果公開促進費によって出版した単著。高齢化が進んだ沖縄離島の事例をもとに、沖縄離島独特の歴史的・地域的文脈の中で「老いる」という誰しもの経験を文化人類学的な参与観察や民俗学的な聞き書きを通して実証的に考察することによって、高齢社会現代日本における新たな議論の糸口を提示した。そこでは特に死者との関わりや神祭祀などの宗教的な実践に着目した。
総頁数298頁
2 『民俗学読本―フィールドへのいざない―』 共著 2019-11-00晃洋書房 フィールドワークの面白さ、奥深さを伝えるために、通常の概説書では省かれがちな雑談、余談、こぼれ話を中心に記述し、民俗学の初学者である大学生や大学院生、博物館関係者などさまざまな立場でフィールドに携わる人に向けて編纂された共著。フィールドでの問題の発見の方法、フィールドで集めた資料のまとめ方の参考になるよう主として各著者が自らのフィールド経験をもとに記述しており、自身も調査経験を中心に記述した。
総頁数226頁
担当箇所:第3章「南島に向かう」第二節「南島への旅立ち」の「長生きと向き合う」(単著、79~89頁)および、「コラム①調査の道具―私の経験から―」(単著、20~21頁)、「コラム③本の読み方」(単著、90~91頁)、「コラム⑤調査のまとめと論文」(単著、183~184頁)
編者:髙岡弘幸・島村恭則・川村清志・松岡薫子
執筆者:編者4名・香川雅信・孫嘉寧・後藤晴子・大内典・Saranya Choochotkaew・山下裕作・中村亮・島立理子・藤坂彰子。
3 『現代民俗学入門―身近な風習の秘密を解き明かす』共著 2024-03-00創元社 初学者や一般の読者に向けて、民俗学の面白さを伝えるために編纂された共著で、「人びと(=民)について〈俗〉の視点で研究」する民俗学の〈俗〉について、豊富な図版とわかりやすい文章で22名の民俗学者が紹介している。編者の編集方針に従い、平易な言葉遣いを心がけた。
総頁数151頁
担当箇所:Column02「フィールドワークはどのようにするのか」(単著、92頁)、「3章 人生のなぜ」の「老いる01 なぜ還暦には赤いものを着けるのか」(単著、116頁~117頁)、「老いる02 隠居とは何か」(単著、118頁~119頁)、「老いる03 「古老」はほんとうに「物知り」なのか」(単著、120頁~121頁)。
編者:島村恭則
執筆者:島村恭則・及川高・柿本雅美・川松あかり・工藤沙希・後藤晴子・小早川道子・澤井真代・周丹・鈴木一馨・樽井由紀ほか11名。
以上3点
Ⅱ学術論文
1 「老いへの『まなざし』と老いの『かたち』―沖縄の離島の調査事例から―」 単著 2006-03-00『福岡大学研究論集第5巻A:人文科学編』第6号、福岡大学発行 沖縄離島の事例をもとに、人びとの言説のなかで形成される老人像と実際の人びとの姿について考察を行った。「おばぁ」の島として知られる通り、沖縄の高齢者像のイメージは平均寿命が他県を大きく下回った今でも保持されている。その一方で、沖縄離島の地域社会における実態の高齢者はそうしたイメージとは一線を画する現状がある。しかしここにみられる齟齬は沖縄離島における高齢者像をより豊かなものしている点に言及した。
24頁(39~62頁)
2 「『不幸の語り』の彼方に―災因論再考を端緒に―」 単著 2006-07-00『九州人類学会報』第33号、九州人類学研究会(日本文化人類学会九州沖縄地区懇談会)発行 日本文化人類学会九州・沖縄地区懇談会の秋セミナーにおいて実施したセッションでの発表に基づく論考(口頭発表2)。福岡市近郊の農村および沖縄離島で生きる主に高齢者のライフヒストリーにみられる人生の語りを事例として、自らの不幸を説明する災因論のあり様を考察した。高齢者の語りには現在の状況に対するある種の諦めを見て取ることができる一方で、まだ見ぬ未来の不幸へ抗するささやかな「そなえ」の姿勢を読み取れる。
7頁(6~12頁)、査読有
3 「『切り取られた」記憶の所有―民俗学における『老人の経験知』の問題について―」 単著 2007-03-00関一敏(編)『共生社会学論叢』第Ⅱ巻「所有」、九州大学人間環境学府共生社会学講座発行 「古老」は民俗学において長い間よき語り部として捉えられてきた。しかし古老とは一体誰だったのか。民俗学における古老とは、その多くが男性でありいわば「語れる人」である。そもそも古老とはみなされなかった人もいる。また家庭のなかにいた女性たちは長い間ほとんどそこには含まれてこなかった。語られてこなかった彼/彼女らの物語をどう考えていけばよいのか。この問題について北部九州及び沖縄の事例から考察、検討した。
13頁(10~22頁)
4 「祈りの形と祭りの行方」 単著 2008-03-00『沖縄学 沖縄研究所紀要』第11号、沖縄研究所発行 沖縄県島尻郡の小規模離島における旧暦6月の神祭祀についての調査に基づき、観察した祭祀の詳細な記述を行った。また当該祭祀に関する先行研究と比較し沖縄本島とは異なる宗教者のあり様について議論の可能性を模索した。離島では公的な祝女であるノロと民間のシャーマンであるユタの職掌は曖昧なものになっており、両者をはっきりと区別することは難しい。しかしその曖昧さこそ島の祭祀を独自のものにしている点に言及した。
31頁(55~85頁)
5 「『法』と『慣習』のハザマで―民俗の総体としての隠居制度―」 単著 2008-03-00関一敏(編)『共生社会学論叢』第Ⅲ巻「慣習」、九州大学人間環境学府共生社会学講座発行 かつての民俗学や農村社会学において慣習はしばしば静的なものとして語られてきた。一方現在では慣習は衰退の文脈で語られている。しかし慣習とは本来動的な現象である。慣習を巡る問題について、前半は明治の民法制定下における民法上の議論の流れを整理した上で法学者たちが隠居慣行という慣習をどう受け止めていたのかについて議論し、後半はフィールドで得られた事例をもとに長崎県対馬に今でも残る隠居慣行の変化から慣習の議論の方向性について検討した。
28頁(34~61頁)
6 「長生への作法―沖縄と日本におけるヤクの諸相―」 単著 2008-03-00関一敏(編)『共生社会学論叢』特別篇「幸福」、九州大学人間環境学府共生社会学講座発行 現代日本において長寿は誰もが願うことのできる未来になった。しかし長寿という慶事は長い間生まれ持った心身の頑健さと、生活環境、時代に翻弄されながらも生き残れる運の良さがなければ享受できないものだった。本稿では、日本本土と沖縄の長寿を寿ぐ民俗(カジマヤーといった年祝)と厄(厄年)というふたつのヤクの問題から、民俗社会に見られる待ち受け型の幸せのあり様を民俗学者・宮田登らの議論をもとに考察を行った。
14頁(1~14頁)
7 「老いと『宗教的なもの』に関する一考察―沖縄離島の事例から―」 単著 2009-06-00『沖縄文化』105号、沖縄文化協会発行 本稿は沖縄離島で今まさに老いの入口に立つ人びと(60代)のライフヒストリーをもとに、彼らの迎えようとしている高齢期において、宗教的なものと接近する過程を考察した。島で暮らす戦後生まれの人びとは彼/彼女らの親世代の様な沖縄戦の体験は持たない一方で、島で暮らすことは好むと好まざるに関わらず、多かれ少なかれ伝統的な祖先祭祀や神祭祀の実践を引き継ぐ。島で生きる戦後世代の老いる経験の諸相を議論した。
17頁(43~59頁)、査読有
8 「生活実践としての仏教―高齢女性と寺院の親密性に関する一考察―」 単著 2009-06-00『宗教研究』第360号、日本宗教学会発行 福岡市近郊の真言宗寺院に通う中・高齢女性のライフヒストリーの聞き書きをもとに、考察を行った。一人暮らしや夫婦二人世帯が増えるなかで、子どもたちとの関わりも変化し、死後の居場所を求めて永代供養や死後の追善供養パックに殺到する。家族との関わりが限られた中、女性たちは祖先祭祀とは関わりのない祈禱寺院で祈ることによって家族の守り手としての役割を保持している。彼女たちの祈り手としての役割について検討した。
24頁(115~138頁)、査読有
9 「民俗の思考法―「とわかっている、でもやはり」を端緒に―」 単著 2009-11-00『日本民俗学』第260号、日本民俗学会発行 魔除けの塩には効果はないとしながらも、「でも」という思いをぬぐいきれないような呪術的な思考法は、わたしたちの日常生活のそこかしこに存在する。本稿ではこうした沖縄離島の人びとの日常実践の事例を呪術研究者のファブレ=サアダや柳田國男の「兆応禁呪」の議論をもとに検討。一見雑多な一行知識に見える「俗信」のような民俗の知識のなかにも民俗社会が持つ思考の豊かさがあり、包括的な議論が必要な点を指摘した。
31頁(35~65頁)、査読有
10 「老いの安寧と死の関わり」 単著 2011-07-00『九州人類学会報』第38号、九州人類学研究会(日本文化人類学会九州沖縄地区懇談会)発行 日本文化人類学会九州・沖縄地区懇談会の秋セミナーのセッション発表を端緒とする論考(口頭発表8)。高齢期の幸福の問題を、沖縄離島における死者との関わりの実践をもとに考察した。死後も継続する死者との密接な関わりは、社会学者・井上俊が「死にがい」というキーワードで議論したとおり、祖先祭祀や日常的な交流は「死にがい付与システム」として機能し死後も変わらない生者との交流の可能性を見て取ることができる。
5頁(58~62頁)、査読有
11 「老年学と人類学―『高齢者事業』への参与から隣接他領域との関係を考える―」 単著 2011-07-00『九州人類学会報』第38号、九州人類学研究会(日本文化人類学会九州沖縄地区懇談会)発行

日本文化人類学会九州・沖縄地区懇談会の秋セミナーでのコメントと学会発表(口頭発表6)に基づく論考。老年学と人類学の関わりの可能性について高齢者事業の参与の経験から議論を行った。前半では、老年学の歩みを整理し、初発から問題解決型の発想法があったことを指摘した。また後半では中小企業の高齢者関連事業との協同の実践を取り上げ学問とビジネスの間に横たわる問題を指摘し、学問的な発展可能性について議論した。
6頁(118~123頁)、査読有
12 「『おばあさん仮説』を考える―進化心理学との対話のための試論」 単著 2012-03-00浜本満(編)『共生社会学論叢』第Ⅷ巻「進化/文化」、九州大学人間環境学府共生社会学講座発行 九州大学人間環境学府多文化連携プログラム2010「人間諸科学における『進化心理学』の位置」第3回研究会のセッション(代表:浜本満)での個人発表に基づく論考(口頭発表7)。進化心理学とは、人間を文化という後天的な影響からを議論する人類学とは異なり、先天的な視点から文化に関する議論を行う学問領域である。本稿ではこの両者の視点の問題を進化心理学の「おばあさん仮説」を事例に文化人類学的な知見から検討した。
19頁(35~53頁)
13 「老いる経験の民族誌―南島で生きる人びとの日常実践と物語に関する文化人類学的考察―」(博士論文) 単著 2013-07-00博士(人間環境学)学位論文、2013年7月31日学位取得(九州大学人環甲299号)

社会学、人類学、民俗学で議論されてきた社会的な老い(エイジング)に関する議論を検討するとともに、少子・高齢化が進んだ沖縄離島の事例をもとに、歴史的・地域的文脈のなかで「老いる」という誰しもの経験を、質的調査(参与観察や聞き書き)を通して実証的に考察することによって、高齢社会現代日本における老いる経験について地域的な文脈を踏まえながら論証した(著書1は本博士論文を改稿したものである)。
総頁数214頁
14 「行楽地―『私』の場合―」 単著 2015-03-00福岡市史編集委員会(編)『新修福岡市史 民俗編2 ひとと人々』、福岡市発行 福岡市史編さん委員会の専門委員として調査を実施した福岡市内の聞き取り調査および文献調査に基づいて「行楽地」についてまとめた論考。前半は昭和50年代以降の福岡市内の行楽の変遷を福岡市内で生まれ育った自己の経験をもとに体験的に記述し、資料化するという地域史における試験的な試みを行うとともに、後半ではそうした筆者自己の体験と照らしつつ戦後の福岡市における行楽地の発展の概要について論じた。
34頁(673~706頁)
15 研究ノート「畏怖の保存―情感の共有を考えるための一試論―」 単著 2020-02-00『日本民俗学』第301号、日本民俗学会発行 沖縄離島の現地調査で得られた事例をもとに、沖縄離島で生きる人びとの畏怖の情感を伴う体験について、柳田國男の「幻覚の体験」に関する議論を参照しながら、島の共同感覚の成立の条件について考察した論考。島における場所性を伴う畏怖の体験は多様だが、すべてが人々に共有されるわけではない。共有化には出来事の蓄積とそれに伴う語りの反復、聞き手の受容といった2点が大きく関与している点について事例から考察を行った。
18頁(83~100頁)、査読有
16 「〈おじひ〉の諸相―中山身語正宗『親仏体験談集』の〈おじひ〉体験に関する一考察」 単著 2021-04-00『身語正研究』第2号(中山身語正宗教学研究所研究紀要vol.10)、中山身語正宗教学研究所発行 佐賀県基山の中山身語正宗という、佐賀県旧きやぶ地域の民衆宗教である隠し念仏信仰(内信心信仰)との関わりの深い西日本を中心に支部を持つ仏教系教団が発行した体験談集を資料とし、本稿では福岡教区の教団の教師たる「親仏」たちの神秘的な宗教体験である〈おじひ〉の体験について、シャーマニズムと仏教の関わりを考察した。仏告を与える〈おじひ〉の主体は多様な仏だが、教団の組織化と共に宗祖が大きな位置を占めていることが見受けられた。
22頁(3~24頁)
17 「地域の教会とコミュニティ―長崎佐世保・北松・平戸・生月を中心に」 共著 2021-07-00『南山宗教文化研究所 研究所報』第 31 号、南山宗教文化研究所発行 藩政期に長崎教区の潜伏キリシタンが多く居住していた歴史を持つ佐世保、北松、平戸、生月に明治以降に建設された教区教会とそのコミュニティの近代以降の関わりについて論じた深堀彩香(南山宗教文化研究所非常勤研究員)との共著。4章構成の内、主として1、2、4章を担当し、宗教社会学と民俗学の先行研究を元に整理した。また深堀と実施した巡検と深堀の当該地区の司祭へのインタビューをもとに日本の他の地域とは異なる教区教会とコミュニティのあり方について考察した。
20頁(54~73頁)
共著者:後藤晴子・深堀彩香
18 「大正世代の親仏とそのシャーマニズム性―中山身語正宗『親仏体験談集』にみる信仰の契機を中心に」 単著 2022-01-28『身語正研究』第3号(中山身語正宗教学研究所研究紀要vol.11)、中山身語正宗教学研究所発行 佐賀県基山に本山を構える中山身語正宗の大正生まれの親仏たちの実践について、その実践のシャーマニズム性に着目して検討した。大正時代の親仏たちの実践は教団内に留まらず地域に広がるものであり、教団を越えた活動が散見されるとともに、民間宗教者たちのシャーマニスティックな実践とも類似する点を見て取ることが出来る。本稿では、とくに北部九州の他地域民間宗教者と比較しながら議論を行った。
22頁(2頁~24頁)
19 「老いる人びとと多様な〈死者〉との縁―南島を事例に―」 単著 2023-03-15東洋英和女学院大学死生学研究所(編)『死生学年報 2023 死生学の拡がり』、リトン 南島で生きる高齢者と家族親族といった「親しき死者」や祖先祭祀の対象となる「祀るべき死者」に限られない日常の中で関わる(接する)多様な〈死者〉との交流の有様を、南島の事例をもとに検討した論考。彼/彼女らの存在は、島で老いる人びとにとって死後も変わらない「つながり」を感じさせるものとして機能し、老いの日常を豊かにしている。
20頁(128頁~148頁)、査読有
20 「盆の宵―少女たちの盆踊り 西区宮浦・西浦」 単著 2023-03-31福岡市史編集委員会(編)『新修福岡市史 民俗編3 夜』、福岡市発行 現在福岡市西区に編入されている旧村「北崎」地区の盆踊りについてその来歴を、『糸島新聞』等地元新聞誌などの資料から明らかにするとともに、2018年および2019年時点の現況について記述した論考。「北崎」の盆踊りは、全国の他の地域と同じく明治から大正にかけて風紀上の観点から警察によって取り締まられたものの、最初は歌が、そして踊りが「近代的」に改編された。そして少子化が進むなか現在も変化しようとしている。
17頁(569頁-585頁)
21 「〈おじひ〉と『病なおし』をめぐる試論―中山身語正宗の宗教体験を事例に」 単著 2023-04-28『身語正研究』第4号(中山身語正宗教学研究所研究紀要vol.12)、中山身語正宗教学研究所発行 佐賀県基山に本山を構える中山身語正宗の「病なおし」の物語について、教団教師たちの宗教体験の事例から考察を行った。教団における「病なおし」の実践は開教当時の宗祖の実践だけでなく、戦後の教師たちにも引き継がれている(ここでいう「病なおし」とはあくまでも語られる物語としての「病なおし」)。本稿では〈病い〉に対する教団教師の宗教実践と近代医療との関係について医療人類学の知見をもとに検討した。
22頁(3頁~24頁)
以上21点
Ⅲ 口頭発表・その他
1 「老人の創られ方―老人・老化の文化人類学的考察―」 口頭発表(一般発表) 2004-03-00日本文化人類学会九州・沖縄地区懇談会(九州人類学研究会)平成15年度修士論文発表会(於 九州大学) 修士論文の一部に関する発表。文化人類学におけるエイジングの議論を検討するとともに、福岡市近郊の農村の事例から老齢の文化について検討を行った。本地域では、地元神社への長寿鑑の奉納など長寿を祝う風習があり、近代以降は5年ぐらいの幅で形成されている年齢組が存在する。年齢組は、中年期以降祭祀や参拝旅行などを通して生涯付き合いが続く。本発表ではこの付き合いが高齢期の人間関係で重要な役割を持つことを提示した。
発表時間(質疑応答込):20分
2 「『不幸の語り』の彼方に―災因論再考を端緒に―」口頭発表(セッション発表) 2005-10-00日本文化人類学会九州・沖縄地区懇談会(九州人類学研究会)第5回オータム・セミナー(於 サンビレッジ茜) セッション「『そなえ』の技法―<むすぶ>・<つながる>の彼方に」(代表:山口勇人(九州大学大学院博士課程))における個人口頭発表。福岡市近郊の農村で生きる高齢男性のライフヒストリーにみられる人生の語りの有り様について、宗教学や文化人類学における災因論の議論を手がかりに内容の検討を行い、人びとのこれからの「老い」への「そなえ」のあり方について分析し、考察した(学術論文2は本発表を基に作成した)。
発表時間:20分
3 「老いを形成するもの―沖縄離島における『老い』へのまなざし」口頭発表(一般発表) 2007-06-00日本文化人類学会第41回研究大会(於 名古屋大学) 食生活や車での移動といった生活スタイルの変化から「長寿」の揺らぎを迎えている沖縄離島において、人びとの社会的・文化的な老いる経験がどのように形成するのかについて人びとの実践をもとに考察を行った。沖縄の「おばぁ」のイメージ見られるような、わかりやすい年寄りへのイメージを離島の日常生活の中で具体的に見て取ることは難しい。一方で齟齬はほとんど問題とせず、「おばぁ」のイメージを受け容れているあり様もある。
発表時間(質疑応答込):20分
発表要旨:『日本文化人類学会第41回研究大会プログラム研究発表抄録』(日本文化人類学会)、214頁
4 「シマで生きる/老いる―沖縄離島における高齢女性の物語から―」口頭発表(一般発表) 2008-05-00日本文化人類学会第42回研究大会(於 京都大学) 長き人生を生きる上で家族をはじめとする「親しき他者」の存在は大きい。ある女性は、亡くなった夫との関わりから足を引きずりながら、子ども達の居る沖縄本島には移住せず医療環境に恵まれてはいない島での生活を希望している。そこには一種の生き難さを感じる一方で、幸せな日常への有り方の多様性を見て取れる。本発表では沖縄離島における高齢女性の人生の物語をもとに、高齢期における他者との関係性について考察した。
発表時間(質疑応答込):20分
発表要旨:『日本文化人類学会第42回研究大会プログラム研究発表要旨集』(日本文化人類学会)、306頁
5 「老いる身体の処方箋―治療行為の差し控えにみる身体との付き合い方―」口頭発表(一般発表) 2009-05-00日本文化人類学会第43回研究大会(於 国立民族学博物館・大阪交流センター) 長らく近代医療に恵まれなかった島の人びとには不調や衰えに関する様ざまな処方箋には、近代医療とは別に瀉血や針のような民間療法から野草、ヤギやアヒルなどの滋養のつく動物の摂取、御願などがある。近代医療とは異な対処法には一見すると「差し控え」にもみえる消極的な関わり方は、島の文脈で培われた身体との積極的なかかわり方でもある。本発表では島における身体との独特の対峙法について取り上げ、その可能性を提示した。
発表時間(質疑応答込):20分
発表要旨:『日本文化人類学会第43回研究大会プログラム研究発表要旨集』(日本文化人類学会)、254頁

6 「高齢者研究/事業と人類学―異質なモノとしての隣接・ 他領域に対峙する―」口頭発表(分科会発表) 2010-06-00日本文化人類学会第44回研究大会(於 立教大学)

分科会「人類学で/を豊かにすること:人類学の拡張可能性を考える」(代表:伊藤泰信(北陸先端科学技術大学院大学))における個人発表。申請者がこれまで関わってきた老年学や高齢者向け事業起業のプロジェクトへの参与の経験から、(1)老年学という学問のもつ志向性と、(2)高齢者ビジネスに対峙することでもたらされた「違和感」から共同の可能性とは違った可能性を提示した。(学術論文11は本発表内容を基に作成した)。
発表時間:20分、査読有
発表要旨:『日本文化人類学会第44回研究大会発表要旨集』(J-stage)(日本文化人類学会)、47頁
7 「家族の作られ方―Marshall Sahlinsの社会生物学批判を端緒に―」

口頭発表(セッション発表) 2010-07-00九州大学人間環境学府多文化連携プログラム2010「人間諸科学における『進化心理学』の位置」第3回研究会(於 九州大学) セッション「文化人類学からの理解と疑問―進化と文化のインターフェイスを考える―」(代表:浜本満(九州大学)における個人発表。社会生物学批判を行った人類学者マーシャル・サーリンズの議論をもとに人類学の立場から進化心理学を再考。サーリンズの批判以降人類学では進化に関する議論がほとんど行われてこなかった。本発表では人類学の立場を示しながら、対話の糸口を探った(学術論文13は本発表内容の一部を基に作成)。
発表時間:30分
8 「老いと安寧の関わり」 口頭発表(セッション発表) 2010-10-00日本文化人類学会九州・沖縄地区懇談会(九州人類学研究会)第9回オータム・セミナー(於 サンビレッジ茜) セッション「エイジングの人類学―高齢期と『幸福』―」(代表:後藤晴子)における個人発表。沖縄離島の事例をもとに高齢期の幸せと死との関係について社会学者・井上俊の「死にがい」(死の意味づけを与えるシステム)というキーワードからその可能性を論じた。島では様々な祖先祭祀に加え、日常的な死者との交流が見て取れる。そこには島で弔われることを人びとが希求する「死にがい」の装置を見て取ることができる。
発表時間:20分
9 「沖縄『で』エイジングを考える」口頭発表(グループ発表) 2011-10-00日本民俗学会第63回年会(於 滋賀県立大学) グループ発表「沖縄で脱「沖縄研究」に挑む」(代表:加賀谷真梨(日本学術振興会))における個人発表。沖縄離島とともに沖縄以外の調査地(北部九州)で調査を行ってきた立場から、沖縄「で」研究することが、沖縄「の」研究に対してどのような寄与を行うことが出来るのかについて考察を行った。沖縄「で」研究することは沖縄学を中心に「沖縄」の研究で蓄積されているさまざまな業績とは異なる視点をもっている点を指摘した。
発表時間:20分
発表要旨:『日本民俗学会第63回年会発表抄録』(日本民俗学会)、55頁
10 資料「起居往来」 共著 2012-03-00福岡市史編集委員会(編)『新修福岡市史民俗編1 春夏秋冬・起居往来』、福岡市発行

福岡市史編さん委員会民俗部会の調査委員として、明治22年市制当時の福岡市区域内(現・博多区および中央区の一部)の寺社・小祠・現代モニュメントの調査をもとに、データを整理した網羅的な資料。申請者はおもに寺社および小祠、美術作品以外の概説を担当した。福岡市内の寺院の多くは大きく分けると①室町期からの古刹と②江戸期に黒田家と共に大分県から移ってきた寺院に分けられる。
426頁(570-995頁、共同調査に基づく民俗資料のため担当箇所の細かな抽出は不可)。
共著者:後藤晴子・田鍋隆男・谷知子
11 「『死にがい』のありか―南島の人びとの死者との付き合い方を事例に―」口頭発表(一般発表) 2013-03-00西日本宗教学会第3回学術研究大会(於 九州大学) 博士論文の一部に関する発表。本発表では、沖縄離島で生きる人びとと彼らの亡父や亡夫といった「親しき死者」との関わりから、地域的で世代的な経験としての「死にがい」(社会学者・井上俊)について考察を行った。祭祀や日常生活を通して保たれる島の濃密な死者との関わりは、島の高齢者だけでなく時にそれまでほとんど宗教的なものと関わりを持たなかった人びとにも、日常的に宗教的なものへとの接近をもたらすことを提示した。
発表時間(質疑応答込):40分
12 書評「河合利光(編著)『家族と生命継承―文化人類学的研究の現在』」単著 2013-09-00『文化人類学』第78巻2号、日本文化人類学会発行 当該図書に関する書評。新しい家族・親族論を提示しようとする当該書に対し、それぞれの論者の要点をまとめた上で、批評を行った。人類学の初期において盛んに研究された家族親族論はその後衰退の一途をたどっている。本書ではその家族・親族研究のあらたな動向と可能性をそれぞれの著者がそれぞれの立場から論じているため、多様性が保持されている一方で、共通する新たな議論が待望される点について指摘した。
4頁(290~293頁)

13 「畏怖と場所を考えるための一試論―沖縄離島を事例に―」口頭発表(セッション発表) 2013-10-00日本文化人類学会九州・沖縄地区懇談会(九州人類学研究会)第12回オータム・セミナー(於 基山町民会館) セッション「出来事と人々が織りなすもの――空間の成り立ちを巡って」(代表:長谷千代子(九州大学))における個人発表。沖縄離島における畏怖に関する聞き書きの事例をもとに土地と土地を印づける情感と土地の可塑性の要因としての畏怖の有り様について議論した。畏怖の情感を伴う体験をした土地は、何ら「印」がなくとも話をとおして人びとに共有され、認知されていく。その過程を考察し場所と畏怖の問題について議論した。
発表時間:20分
14 事典項目「第二の人生」単著 2013-12-00民俗学事典編集委員会(編)『民俗学事典』、丸善出版発行 Ⅲ-3.「老いと死」の一項目である「第二の人生」について簡潔に解説し、参考文献を示した。日本民俗学において社会伝承のひとつとして古くから考察されてきた隠居研究についてまとめるとともに、1990年代以降宮田登をきっかけに一時民俗学内部で隆盛した「老人の民俗」以降の学術的な研究の動向について記述。「老人の民俗学」は宮田の急逝後衰退したが、老いに関わる研究は近年多様性を増している点を指摘した。
2頁(476-~477頁)
15 資料「第二章 唐人町 附 当仁校区自治協議会会長 木立晴久さんの一年間」 共著 2015-03-00福岡市史編集員会(編)『新修福岡市史 民俗編2 ひとと人々』 後藤晴子・西村明の共著。当該インフォーマントへの聞き書きをもとに、一年間の出事をまとめた。地元出身で自治協議会会長を務める木立氏の地域に関わる出事(でごと)を網羅的に記すことで、福博の町で生きる人の日常生活の一端を描くことを目的とし、唐人町に関する西村の論考の資料として掲載した。申請者は主として年後半の出事について担当した。
25頁(397~421頁、共同調査に基づく民俗資料のため担当箇所の細かな抽出は不可)。
16 「『わたし』の語りかた―個人の生活史と記憶をめぐる問題」口頭発表(学会ミニシンポジウム発表) 2015-10-00日本民俗学会 第67回年会(於 関西学院大学) ミニシンポジウム「拡大する民俗学―近現代史をとりこむ試み」(代表:髙岡弘幸(福岡大学))における口頭発表。現在民俗学者が取り組むべき課題としての近現代史について、これまでの沖縄離島や北部九州の事例をもとに、個人レベルの記憶と近現代史の問題から民俗学的近現代研究の可能性を論じた。民俗学の主たる方法である聞き書きは、聞き手である調査者の属性によって得られる語りも変化し、そこに可能性もある点を提示した。
発表時間:20分
発表要旨:『日本民俗学会第67回年会研究発表要旨集』(日本民俗学会)、45頁
17 「面をめぐる畏怖の語りについて―『博多松ばやし』の御神面を事例に―」口頭発表(一般発表) 2018-03-00西日本宗教学会第9回学術大会(於 中山身語正宗大本山瀧光寺) 「博多松ばやし」行事で用いられる御神面は、行事のなかでは神様に扮する男性象徴的な「道具」であり、かつては「貧民」が博多町人の代わりにその役目を担っていた。しかし、現在では面をつけるのは神役が乗馬する馬を扱える乗馬クラブの面々である。本発表では、祭自体が市民の祭としての「博多どんたく港祭」に取り込まれ世俗化する一方で、松ばやしを開催する町内では聖性に関する物語が御神面を起点として語られる状況について検討した。
発表時間(質疑応答込):40分
18 報告論文「戦後の博多松ばやし―復興と博多どんたく港まつりとの関わり―」単著 2018-03-00福岡市教育委員会(編)『福岡市文化財業書第六集 博多松ばやし調査報告書』、福岡市 福岡市文化財課の調査員として参与した国の記録保存を講ずべき無形民俗文化財に指定されていた福岡市の「博多松ばやし」行事(現、国指定無形文化財)の戦後の変遷と現況に追った。具体的には松ばやし復興に尽力を尽くした人物のひとり故・落石栄吉氏の収集した資料や新聞記事を分析し、敗戦直後から現在に至るまでの松ばやしの変遷の経緯を追った。戦後の変遷の背景には旧町割の解体や戦前から続く商業化の影響がある。
6頁(38~43頁)
19 報告論文「組織と行事―「博多松ばやし」現況―」単著 2018-03-00福岡市教育委員会(編)『福岡市文化財業書第六集 博多松ばやし調査報告書』、福岡市 福岡市文化財課の調査員として参与した国の記録保存を講ずべき無形民俗文化財に指定されていた福岡市の「博多松ばやし」行事(現、国指定無形文化財)について申請者が2015年度から2017年度にかけて行政の学芸員と共に実施した行事に関わる現地調査、および博多松ばやし振興会や博多独自の行政組織である流の関係者への聞き取り調査をもとに、松ばやしに関わるそれぞれの流の組織と行事の運営のあり様を記述した。
6頁(44~49頁)
20 資料「聞き書き」単編 2018-03-00福岡市教育委員会(編)『福岡市文化財業書第六集 博多松ばやし調査報告書』、福岡市 調査員として参与した国の記録保存を講ずべき無形民俗文化財に指定されていた福岡市の「博多松ばやし」行事(現、国指定無形文化財)について申請者が2015年度から2017年度にかけて行政職員とともに実施した松ばやし行事に関わる博多の町割りである「流」の人びとの聞き書きで収集した音源を基に、資料として保存するため書き起こし編纂した。編集の際にはできるだけ、人びとの語りの流れが分かるように編集した。
6頁(179~184頁)
21 「トシヨリと子どもの祭」口頭発表(一般発表) 2019-09-00日本宗教学会第78回学術大会(於 帝京科学大学) 少子高齢化が加速するなか、高齢者は重要な祭礼の担い手としてその役割を果している。もちろん地域社会の「古老」たる年寄りが祭礼に関わるのは伝統的である。しかしこれまでの研究でも指摘されているとおり現在祭礼の担い手である高齢者はもはや「古老」だけではない。本発表は、地方都市福岡で毎年5月の連休に開催される博多松ばやしに参加する男性中高齢者の語りをもとに、現代地方都市の都市祭礼を支える人びとの実践のあり様と祭の位相について考察した。
発表時間(質疑応答込):15分、査読有
発表要旨:『宗教研究』第93巻別冊 第78回学術大会紀要特集(日本宗教学会、2頁(359~360頁)
22 「老年期における人びとと宗教の関わり―沖縄離島・九州北部を事例に」口頭発表(個人発表) 2019-10-00第10回 南山宗教研究会(南山サロン)(於 南山宗教文化研究所) 老齢期における人びとと宗教の関わりについて、沖縄離島と北部九州の事例をもとに議論した。具体的には沖縄離島の霊性が高い(サーダカウマリ)と言われる女性と北部九州の仏教寺院に足繁く通い自らも仏教的な宗教実践を行う高齢女性の実践を取り上げ、彼女たちの自らの実践を問い直す語りについて身じまいの準備や次世代への継承等の点から考察し、地域を越えた老齢期における宗教者の実践について議論を試みた。
発表時間:30分
23 報告:「第5回日本宗教研究・南山セミナー報告」 単著 2020-07-00『南山宗教文化研究所 研究所報』32号、南山宗教文化研究所発行 2020年1月に南山宗教文化所が名古屋大学・人類文化遺産テクスト学研究センターとの共催で実施した「第5回日本宗教研究・南山セミナー」に関する報告。当日司会として参与し、日本宗教を研究する若手外国人研究者の発表及びコメンテーターやオーディエンスとの討論の概要をまとめた。
8頁(45~52頁)
24 「『講的なもの』としての女性宗教者の集まり―沖縄を事例に―」口頭発表(パネル発表) 2020-09-00日本宗教学会第79回学術大会(於 駒澤大学(オンライン開催)) パネル「講と女性をめぐる研究―ジェンダー視点が拓く可能性」(代表:小林奈央子(愛知学院大学))における口頭発表。調査地とする沖縄離島では村落祭祀は中高齢女性司祭者たちの緩やかな集まりによって開催されている。またそこでは他の社会組織(主として父系血縁集団である門中や男性中心の行政組織)と密接に関わりあっており、女性の「講的な」集まりは男性のそれとは異なる機能を持っている点について考察を行った。
発表時間:15 分、査読有
発表要旨:『宗教研究』第94巻別冊 第79回学術大会紀要特集(日本宗教学会、2頁(43~44頁)
25 「〈おじひ〉の体験―中山身語正宗『親仏体験談集』に関する一考察―」口頭発表(一般発表) 2021-03-00第12回 南山宗教研究会(南山サロン)(於 南山宗教文化研究所) 佐賀県基山町に本部を構える中山身語正宗と、きやぶ地域にみられた隠れ念仏(内信心信仰)との関わりを整理し、内信心信仰でも信仰の重要な要素であった仏告を授かる「御慈悲」が中山身語正宗では〈おじひ〉として教団の信仰上の重要な位置を占めていることを示し、〈おじひ〉の主体を分析した。(おじひ)の主体には多様な仏が確認できる。また〈おじひ〉の受け取りは教団教師たる親仏だけでなく、一般信者にも開かれている。
発表時間(質疑応答込):40分
26 書誌紹介:「富澤公子著『幸福な老いを生きる―長寿と生涯発達を支える奄美の地域力―』」単著 2021-08-00『日本民俗学』第307号、日本民俗学会発行 世代間の共生・協働を実現している長寿地域として奄美を取り上げ︑そこで生きる八五歳以上の超高齢者を地域経営の立場から考察した本書の内容について簡単に紹介した。
1頁(102頁)
27 「高齢女性宗教者の物語と家族―沖縄の事例を中心に―」口頭発表(一般発表) 2021-09-00日本宗教学会第80回学術大会(於 関西大学(オンライン開催)) 本発表は、沖縄離島の「高齢女性宗教者」と「家族」をめぐる語りを検討することで、高齢期の宗教者の実践の特徴の一端を考察した。すでに沖縄研究で指摘されている通り、沖縄の女性宗教者の成巫物語のなかで、夫や親族といった「親しき他者(家族)」は「カミダーリィ(巫病)」の過程で、「信仰実践に反対」する人びととして登場するが、成巫時に比すると老年期のそれは融和的になることも多く、高齢期の宗教実践は形を変えて継続されている。
発表時間:15 分、査読有
発表要旨:『宗教研究』第95巻別冊 第80回学術大会紀要特集(日本宗教学会、2頁(298~299頁)
28 コメント:「『沖縄の女性祭司―村落祭祀における就任と承認』に対するコメント」 コメント(単独) 2021-10-00ワークショップ「宗教とジェンダーの最前線Ⅳ」(龍谷大学・南山宗教文化研究所共催(オンライン開催)) 澤井真代氏(RPD)の発表「沖縄の女性祭司―村落における就任と承認―」に対するコメント。女性祭司を取り巻く様ざまな力学を捉えなおすことは、古来の「ヲナリ信仰」や南島の人びとに内面化された「ヲナリ信仰」批判のみに帰結しない議論へとつながる可能性があること、沖縄の「生身の人間」でありながら「聖性を持った」女性祭司は、本ワークショップのコーディネーターでもある川橋範子氏がすでに指摘している通り、従来の男性モデルの儀礼論を打ち破る可能性も持っているのではないかとコメントした。
コメント時間:10分

29 報告「ワークショップ報告:宗教とジェンダーの最前線IV」 単著 2022-08-31『南山宗教文化研究所 研究所報』32号、南山宗教文化研究所発行 2021年10月に南山宗教文化研究所が龍谷大学ジェンダーと宗教研究センターとの共済で実施した「宗教とジェンダーの最前線Ⅳ」(研究業績・その他28)に関する報告。当日発表をした三木メイ氏(同志社大学神学部嘱託講師)および澤井真代氏(日本学術振興会)の発表内容および発表に対するコメントの概要をまとめた(当日自身は澤井氏のコメンテーターとして参与した)。
8頁(11~18頁)
30 「老いる人びとと多様な死者との関わり―南島を事例に―」 口頭発表(一般発表) 2022-09-00日本宗教学会第81回学術大会(於 愛知学院大学(オンライン開催)) 南島では形を変えながら死者儀礼や祖先祭祀が存在し、〈呪術―宗教的職能者〉を通して、または直接感得される死者との遭遇の体験を通して、日常的に肉親のような「親しき死者」に限られない死者とのつながりが語られることがある。本発表は、南島における老いる人びとと「多様な死者」との関わりを考察することを目的とし、フィールドの事例をもとに老いる人びとと多様な死者との親疎について考察した。
発表時間(質疑応答込):15分、査読有
31 「祭礼復興にみる揺らぎと忘却 ―戦後の博多松ばやしを事例に―」 口頭発表(グループ発表) 2022-10-00日本民俗学会第74回年会(於 熊本大学) グループ発表「都市祭礼の近現代―松ばやしからどんたくへ―」(代表:後藤晴子)における口頭発表。
(個人発表内容)
地方の都市祭礼である博多松ばやしの戦後の変遷の一端を明らかにするために、博多松ばやし保存会会長を務めた故・落石栄吉氏が収集した資料「落石栄吉関連資料」(福岡市図書館所蔵、以下落石資料)を主として用い、現地調査で得られた聞き書きで得られたデータを踏まえながら、「博多松ばやし」の戦後の復興過程における揺らぎを検討した。
グループ発表時間:120分
グループメンバー:水野哲雄(文化庁)、平山昇(神奈川大学)、後藤晴子、岸川雅範(神田神社)、コメンテーター:松村利規(福岡市博物館)。
個人発表時間:20分
32 「『日常』を捉える―エイジング・宗教・フォークロア」 口頭発表(個人発表) 2023-03-00大谷社会学会研究会(於 大谷大学マルチメディア演習室) 報告者のこれまでの研究テーマに関してエイジング、宗教、フォークロアをキーワードに簡単に説明した後、南島における死者との付き合い方に関する直近の研究成果について報告を行った。
発表時間:20分
33 「地方都市祭礼の戦後復興とその変遷―博多松囃子・どんたくを事例に―」 口頭発表(個人発表) 2024-01-00京都民俗学会第358回談話会(於 職員会館かもがわ) 戦後日本各地で様々な祭礼が、地域の人びとの尽力により復興していった。そうして復興した地方都市祭礼のなかには、現在でも当該地域を象徴するものとして機能しているものは少なくない。期間中、新聞・テレビをはじめとする地方メディアはこぞって報道し、マチは祭一色に染まる。「博多どんたく港まつり」も、そうした祭礼のひとつであり、福岡市民にとって五月の大型連休の風物詩になっている。本発表では戦後の博多松囃子・どんたくを考える上で重要な契機のひとつである、昭和22年の官民一体による「復興ドンタク」とその後の動きについて、特に復興時の行政・商工会議所・祭礼の担い手の動きを軸に取り上げて考察を行った。
発表時間:60分
34 コメント:「『専門職による死別をめぐる実践―個人化社会の協同性』の可能性 単独 2024-01-00大谷大学真宗総合研究所東京分室公開シンポジウム(於 大谷大学メディアホール) シンポジウム「『専門職による死別をめぐる実践―個人化社会の協同性」(コーディネーター:磯部美紀)に対するコメント。専門職として「死別」現場に関わる/研究を行っている登壇者の各発表者に対して、本シンポジウムのテーマでもある「共同性」の観点からコメントを実施した。
コメント時間:15分
以上34点

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