教育研究業績の一覧

安藤 香苗
A 教育業績
教育実践上の主な業績 年月日概要
1 教育内容・方法の工夫(授業評価等を含む)
1 演習授業「近現代文学を読む」における実践 2016-04-00 ~ 文学科の演習授業「近現代文学を読む3」は分類上は「演習」の授業であるが、受講者が40~50名程度と多い。そこで毎回受講生全員にワークシートを課し、そのワークシートの内容を授業評価に活かしている。毎回違う近代小説を取り上げ、事前に各自がその小説を読んできていないとワークシートが書けない仕組みとなっているため、殆どの学生が予習をして授業に臨んでいる。
2 「日本文学史2」における実践 2016-04-00 ~ 写真資料や動画なども多く用い、明治以降の文壇史における主要な人物を具体的なエピソードを交えながら紹介している。
3 卒業論文の指導 2016-04-00 ~ 卒業論文を執筆する学生に対しては、特に4年生後期からは個別に論文指導をしている。各学生が週に一度ずつ研究室を訪れ、論文の進行状況を報告し、次の課題を持ち帰る。メールでの相談も受け付けている。
4 文藝コンテスト出張講義 2017-11-27 神港橘高等学校にて、一年生向けに文藝コンテスト出張講義をおこなった。ある単語をもとに連想を広げる発想法としてノンストップライティングを紹介し、生徒自身に体験させた。授業後のアンケートでは「文章を着想する新たな刺激になった」と好評を得た。
5 文藝塾機関誌の作成指導 2018-06-00 ~ 全学的学習支援施設「文藝塾」の新規プロジェクトとして、学生主体の機関誌『萌芽』を立ち上げた。有志の学生を募り、企画・編集・校正・執筆・デザイン等の各要素を学生の手によって作り上げるように、誘導した。「2018年度学長裁量経費による教育改革事業」「2019年度学長裁量経費による教育改革事業」採択。(代表者)
2 作成した教科書、教材、参考書
3 教育方法・教育実践に関する発表、講演等
4 その他教育活動上特記すべき事項
1 FD推進ワークショップ(新任教員向け)への参加 2016-08-04
~2016-08-05
日本私立大学連盟主催の新任専任教員向けのFD推進ワークショップに参加した。専門の垣根を越えたグループによるディスカッションや模擬授業の実践などで、様々な分野や環境に置かれた大学教員がそれぞれおこなっている講義における工夫や悩みなどを共有することができた。
B 職務実績
1 人権センター員 2017-04-00
~2019-03-00
C 学会等及び社会における主な活動
所属期間及び主な活動の期間 学会等及び社会における主な活動
1 0000-00-00~0000-00-00 大谷学会委員
2 2003-04-00~0000-00-00 神戸大学国語国文学会
3 2003-06-00~0000-00-00 日本近代文学会
4 2003-06-00~0000-00-00 阪神近代文学会
5 2003-09-00~0000-00-00 泉鏡花研究会
6 2012-12-00~2016-07-00 阪神近代文学会運営委員
7 2017-04-00~2019-03-00 大谷学会委員
D 研究活動
著書、学術論文等の名称単著、
共著の別
発行又は
発表の年月
発行所、発表雑誌等
又は
発表学会の名称
概要
Ⅰ著書
以上0点
Ⅱ学術論文
1 「春昼」「春昼後刻」の論理構造―散策子と読者の言語的体験単著 2005-03-00『広島女子大国文』第20号 泉鏡花の小説「春昼」「春昼後刻」(明治三九年)は、言葉の発信と受信の往還の中で生じるずれを作中に記す。語り手である散策子が住職と交わす宗教談義は、二つの要素を対立関係としてではなく相補的関係として捉えることを訴えている点で、このテクストそのものの論理構造を示していることを論証した。またヒロインの「みを」は、「春昼」では〈読まれるもの〉として存在しているが、「春昼後刻」では自ら多義的な解釈を要求し、読もうとする者にパラダイムの転換を迫るメタフィクショナルな存在であることを明示した。(20-31頁、全12頁)
2 「春昼」「春昼後刻」△○□考単著 2006-01-00『国文学研究ノート』第40号 泉鏡花「春昼」「春昼後刻」(明治三九年)における最大の謎として、作中記される〈△〉〈○〉〈□〉という符号があるが、〈△〉は蛇の象徴、蛇は男(客人)が抱く情念の具象として、〈○〉は「玉脇みを」及び「霊魂」が行き交う「海」の象徴として、〈□〉は、〈△〉と〈○〉とを隔てる境界の象徴として読み解く解釈の可能性を示した。この三種の符号は「春昼」での配列は〈△□○〉、「春昼後刻」での配列は〈○□△〉となり、独自の言語として読み説くことができることも合わせて論じた。(16-26頁、全11頁)
3 泉鏡花「貧民倶楽部」考―脱二元論へのアプローチ単著 2011-05-00『阪神近代文学研究』第12号 泉鏡花「貧民倶楽部」(明治二八年)の〈貴族〉と〈貧民〉との表面的な対立構造は、最終的にその対立を崩すカタスロトフのための装置と捉えるべきだと結論づけ、「心の鬼」という言葉と貧民行列の描写に着目し、観念小説的で同時代的な素材とあやかしの姿とを二重写しにする手法を鏡花がとっていることを指摘した。また、桜田文吾「貧天地飢寒窟探検記」の影響も指摘した。以上の点から、この作品が二元論的思考を乗り越えようとする新しさを持つものであることを評価した。(1-11頁、全11頁)
4 明治期泉鏡花論(博士論文)
単著 2012-03-00神戸大学 作家泉鏡花の変遷を通時的に捉えつつ、同時代の言説とも引き比べながら共時的にも捉えることで、泉鏡花の文学が時代を超えて持ち続ける強度の一端を読み解くことを本稿の目的とし、鏡花が明治期に書き記した著作を中心に論じた。作品その他のテキストから具体的に分析し、世界を二項対立で固定的に捉えるのではなく、極から極へと移りゆく運動として捉え、それを文体としても表現しようとする作家の挑戦的な姿勢を評価した。(全97頁)
5 自然主義興隆下の泉鏡花―幻想の〈技法〉構築について単著 2013-09-00『国文論叢』第47号 泉鏡花という作家は「反自然主義」の作家であると評されてきたが、鏡花が反発していたのはあくまで自然主義を標榜する人々がとる排他的な態度に対してであるという点を作家自身の言葉を論拠として分析した。その結果、鏡花が主張するのは〈文脈〉を重視する姿勢であることが明確となった。「妖怪年代記」(明治28年)の構造にもその論理はすでに表れており、堆積する時間の象徴としての文字表現の効果を活かして恐怖を生み出している点を指摘した。(95-107頁、全13頁)
6 「愛火」から「夜叉ヶ池」へ―泉鏡花によるハウプトマン「沈鐘」享受の行方―単著 2017-03-00『文藝論叢』第88号 泉鏡花「夜叉ヶ池」にハウプトマン「沈鐘」が影響を与えているという定説に対して、「夜叉ヶ池」は「沈鐘」を直接摂取したものではなくまず「愛火」という戯曲作品によって「沈鐘」を享受した後に「夜叉ヶ池」に受け継がれた、という新たな視点を導入して論じた。これまで「沈鐘」からの直接摂取としては説明できなかった「夜叉ヶ池」の要素も、「愛火」を経由していることを踏まえることで論じることが可能になることを指摘した。(164ー178頁、全15頁)
7 【研究ノート】江見水蔭「鉱夫の恋」からみる一九〇〇年代の文学意識単著 2021-03-00大谷学報第100巻第2号 『神戸新聞』立ち上げに携わった江見水蔭が新聞社から退陣するきっかけとなった小説「鉱夫の恋」を巡る問題を整理し、初出時にあったとされる紙面の前後組み替えは「下の巻」の中で発生したのではないかという仮説を示した上で、この小説全体としては、前近代的な物語の形式から始まり、硯友社的なスタイルを経て、前期自然主義的なリアリズムへと至る、明治期の小説史を模した構成が試みられている可能性を指摘した。(61-73頁、全13頁)
以上7点
Ⅲ 口頭発表・その他
1 「春昼」「春昼後刻」論 ―散策子と読者の〈言語的体験〉口頭発表 2002-10-00広島女子大学国文学会 拙稿「「春昼」「春昼後刻」の論理構造―散策子と読者の言語的体験」と要旨を同じくする。(30分)
2 泉鏡花と〈自然/反自然〉主義口頭発表 2005-10-00広島女子大学国文学会 拙稿「自然主義興隆下の泉鏡花―幻想の〈技法〉構築について」とほぼ要旨を同じくする。(30分)
3 石川達三「蒼氓」を読む講演 2008-04-00神戸文学館土曜サロン 第一回芥川賞受賞作品である石川達三「蒼氓」を紹介。2008年はブラジル移民100年記念の年であり、神戸を舞台として書かれた作品であることなどを紹介しつつ、小説の登場人物描写を中心に作品を読み解いた。(90分)
4 泉鏡花戯曲の方法口頭発表 2008-07-00阪神近代文学会 従来、設定や構成等から劇的空間を創り上げる上での鏡花作品と演劇・映画との親和性は指摘されてきたが、戯曲の文体そのものに対する考察は少ない。そこで戯曲という形式が浮き彫りにする泉鏡花の文体意識に着目し、当時議論されていた演劇の方法論との関係性や鏡花作品における戯曲と小説との相関関係を考察することで、鏡花がおこなってきた文体上の模索の一環として戯曲執筆期を捉えなおした。(40分)
5 「貧民倶楽部」小考口頭発表 2009-03-00泉鏡花研究会 拙稿「泉鏡花「貧民倶楽部」考―脱二元論へのアプローチ」と要旨を同じくする。(60分)
6 『兵庫近代文学事典』分担執筆共著 2011-11-00『兵庫近代文学事典』日本近代文学会関西支部兵庫近代文学事典編集委員会編/和泉書院 「石川達三」「東山魁夷」「児玉隆也」「早野臺氣」「米口實」項目執筆担当。
7 硯友社ゆかりの作家と神戸-江見水蔭と泉鏡花講演 2013-09-00神戸文学館土曜サロン 神戸新聞立ち上げの主要人物として約2年間神戸に滞在し精力的に活動した作家江見水蔭を紹介。硯友社関係の作家が如何に神戸を取材し、作品に活かしたかを考察した。(90分)
8 三品理絵『草叢の迷宮―泉鏡花の文様的想像力』書評 2015-05-00『阪神近代文学研究』第16号 三品理絵『草叢の迷宮―泉鏡花の文様的想像力』(ナカニシヤ出版)の書評。(全1頁)
9 『高野聖』再読口頭発表 2017-10-21大谷大学国文学会 泉鏡花『高野聖』における語り手「私」の存在意義を考える上で、「私」が旅僧(宗朝)の語りに聖性を見出したポイントとして「女人救済」があった可能性を示唆した。宗朝の道心が孤家の「婦人」の救済なり得たとすれば、語り手はそこに聖性を見出し、小説の結末部の描写へと繋がる。またこの作品における女性解釈は、明治後半期の夏目漱石作品との相互影響関係からも読み解くことができるのではないか。(90分)
以上9点

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