教育研究業績の一覧

増成 一倫
A 教育業績
教育実践上の主な業績 年月日概要
1 教育内容・方法の工夫(授業評価等を含む)
1 講義科目「日本の歴史と文化」(大阪国際大学にて実施) 2020-04-01 ~ 2020年度以降、大阪国際大学にて非常勤講師として、講義科目「日本の歴史と文化」を担当している。当該講義は様々な学部の学生を対象とした配当科目であり、基礎的事項を丁寧に説明しつつ、最新の研究成果や歴史学の方法論にも積極的に言及したほか、授業ごとの課題の難易度を工夫した。これらの取り組みにより、あらゆる受講者が興味を持てる授業づくりを心掛けた。
2 講義科目「日本の文化」(大阪国際大学にて実施) 2022-04-01 ~ 2022年度以降、大阪国際大学にて非常勤講師として、講義科目「日本の文化」を担当している。当該科目は遠隔授業の形式で実施であり、様々な学部の学生を対象とした配当科目である。基礎的事項を丁寧に説明するとともに、各時代の文化を代表する文化財・作品を積極的に紹介した。また、授業ごとの課題の難易度を工夫した。これらの取り組みにより、あらゆる受講者が興味を持てる授業づくりを心掛けた。
3 歴史学基礎演習 2022-04-01 ~ 大谷大学にて2022年度より、文学部歴史学科の1回生を対象とした講義科目「歴史学基礎演習」を担当している。当該科目では、歴史学(主に日本史)の基礎的な研究手法(工具書・先行研究・史料の収集・活用など)を講義・実践を通じて学んだ上で、その後受講者が選択したテーマに基づき、各自が研究発表を実施した。
4 日本文化史演習Ⅰ 2023-04-01
~2024-03-31
2023年度に、同志社大学にて嘱託講師として、文学部文化史学科の1回生を対象とした科目である「日本文化史演習Ⅰ」を担当した。日本史の史料読解や研究に関する基礎的事項を講義形式で説明した後、各受講者が担当史料についてレジュメ作成し、報告・討論をおこなう形式で授業を進めた。報告にあたっては、資料作成や発表などの場面を中心に、受講者に対する助言・指導を行った。
2 作成した教科書、教材、参考書
1 講義科目「日本の歴史と文化」「日本の文化」(大阪国際大学) 2020-04-01 ~ 毎回の授業では、教材として、図表や写真などを積極的に掲載したプリントを作成・配布し、授業で適宜解説を加えた。授業プリントについては、紙媒体での配布とともに、PDFのデータをアップし、受講者の理解の手助けとした。また、新型コロナウイルスの流行による遠隔授業の実施にあたっては、音声資料(スライド)を作成・活用した。また、2022年度以降は遠隔授業の形式での実施となり、映像・音声教材を作成・配信し、各回の授業を実施した。
2 歴史学基礎演習 2022-04-01 ~ 授業の際には、各回においてレジュメを作成・配布し授業を実施した。また、各回の授業内容の着実な定着を図るために、課題を作成・配布した。
3 日本文化史演習Ⅰ 2023-04-01
~2024-03-31
日本史の史料の基本的な読解方法を説明する際に、漢文の句法や読み方についてまとめた資料を作成し、授業において用いた。
3 教育方法・教育実践に関する発表、講演等
4 その他教育活動上特記すべき事項
1 『令集解』勉強会の実施 2022-04-01 ~ 2022年度より大谷大学にて、世界史担当の助教と共同で、日本古代の法制史料である『令集解』をテキストに、史料読解や唐令との比較などを中心とした勉強会を実施している。勉強会には博士後期課程の大学院生も参加しており、史料の読解を中心とした議論・指導を行っている。
B 職務実績
1 科学研究費助成事業特別研究員奨励
費(研究課題17J05750)
2017-04-01
~2019-03-31
研究課題「官稲からみた日本律令地方財政組織の特質と展開-8世紀後半から9世紀を中心として-」に関して、科学研究費助成事業特別研究員奨励費の交付を受け、研究活動を行った。
なお、学術論文1、2、及び口頭発表11、12、13、14は、この成果の一部である。
C 学会等及び社会における主な活動
所属期間及び主な活動の期間 学会等及び社会における主な活動
1 2012-03-00~0000-00-00 洛北史学会
2 2012-06-00~2013-06-00 洛北史学会庶務委員
3 2015-07-00~0000-00-00 大阪歴史学会 
4 2015-07-00~2016-06-00 大阪歴史学会企画委員
5 2017-07-00~2019-06-00 続日本紀研究会例会(大阪歴史学会古代史部会)例会運営担当
6 2019-04-00~0000-00-00 続日本紀研究会
7 2019-10-00~0000-00-00 日本歴史学会
8 2020-10-00~0000-00-00 古代学協会
9 2021-10-00~0000-00-00 日本史研究会
10 2021-10-00~2023-10-00 日本史研究会研究委員(古代史)
11 2022-04-01~0000-00-00 大谷大学日本史の会
12 2022-04-01~0000-00-00 大谷大学日本史の会委員
D 研究活動
著書、学術論文等の名称単著、
共著の別
発行又は
発表の年月
発行所、発表雑誌等
又は
発表学会の名称
概要
Ⅰ著書
以上0点
Ⅱ学術論文
1 律令制下の「土毛」調達について 単著 2017-08-00大阪歴史学会発行『ヒストリア』 第263号 賦役令7土毛条について、法的規定と運用の実態の両面から検討し、本条文は様々な土地の産物である「土毛」を、国や郡などの地方行政組織が交易により調達する際の財源や価格を定めた規定であることを解明した。また、先行研究で、律令制以前の地方豪族の服属にともなう貢納を引き継ぐとされてきた「土毛」調達について、その性格は希薄であること、財源である郡稲は地方経費として機能したことを指摘した。
25頁(1~25頁)
2 新任国司への給粮と律令地方財政 単著 2019-06-00続日本紀研究会刊行『続日本紀研究』第416号 新任国司が職分田の収穫を得るまでの代替の給粮制度を、法規定・支給基準・支出の実態の3点から検討した。その結果、法規定は一貫して、中央政府の管理下による運用を意図していること、給粮額の基準は複数あり、中央政府はそれぞれの特徴を踏まえ、最適な基準を適用したこと、実際の給粮は規定に基づいて全国一律の基準で実施されており、財源である郡稲は地方経費として機能していることを解明した。
23頁(49~71頁)
3 救急料の展開と用途 単著 2020-12-00続日本紀研究会刊行『続日本紀研究』第422号 9世紀前期に設置された救急料について、設置以前の制度との関連性や、用途の性格の時期的な変遷を検討した。その結果、救急料は、それ以前に史料に見える「救急」とは別個の制度として、新設された面が強いこと、救急料は設置以来一貫して貧窮者が支出対象であった一方、9世紀前半には中央政府の指示に基づき個別用途に使用されるのに対し、9世紀中期以降は使用における国司の裁量が拡大することを解明した。
23頁(1~23頁)
4 日本律令地方財政制度の研究(博士論文) 単著 2021-03-00大阪大学大学院文学研究科 日本律令制下の地方支配制度の解明を目的に、地方財政制度、特に財源である官稲について検討した。地方における業務である、「土毛」の調達や貢献物制、新任国司への給粮は、いずれも中央政府の明確な関与の下で運用され、財源である郡稲は地方経費の性格が強いことを解明した。また借貸や救急料を対象に8世紀後半~9世紀の官稲を検討し、律令国家展開期においても、官稲が地方支配のために機能していることを解明した。(215頁)
5 公廨稲制度の展開と国司 単著 2021-12-00大阪歴史学会発行『ヒストリア』第289号 8世紀後半~9世紀後半における公廨稲の展開過程について、当該期に散見する「奪公廨」の表記に着目して検討した。「奪公廨」は一貫して、一義的には国司に対する処罰として位置づけられる一方、処罰と補填が一体として機能している例も多いことを明らかにし、律令国家の展開期である当該期において、中央政府が「奪公廨」を積極的に活用し国司統制をはかることで、地方支配に関与しようとした側面が存在することを指摘した。
30頁(51‐80頁)
6 賦役令貢献物条の特質と機能 単著 2022-02-00日本歴史学会編集『日本歴史』第885号 賦役令35貢献物条に着目し、日唐間の令文比較や品目の調達例を通じて、その特質や機能を検討した。日本の貢献物条は、地方経費である郡稲を財源に、地方行政組織が珍異な品目を調達・京進する規定として位置づけうること、該当品目の調達が中央政府の明確な管理・把握の下で実施されていることを論じ、日本でも貢献物条が、調庸等では収取困難な品目の調達規定として、実際に機能したと考えられることを指摘した。
18頁(1~18頁)
7 律令制下における借貸の機能と展開 単著 2022-12-00古代学協会発行『古代文化』第74巻第3号 日本の律令制下における官稲の無利息貸与である借貸について、天平6年(734)の国司借貸、9世紀における借貸の展開、の2点に着目して検討した。その結果、天平6年の国司借貸は運用における国司の裁量が大きく、国司の経済的得分としての機能が第一と考えられること。9世紀以降には、国司等の経済的得分としての借貸に加え、貧窮者に対しても借貸が積極的に活用されていることを指摘し、借貸が律令制下の地方支配において多様な面において活用されたことを明らかにした。
20頁(18‐37頁)
8 八世紀後半から九世紀前半における公廨稲制度の展開過程について―各機能の整備過程と共塡法採用に着目して― 単著 2024-03-00続日本紀研究会発行『続日本紀研究』第435号 8世紀後半~9世紀前半の公廨稲制度の展開過程を、①8世紀後半における「補塡」「国儲」「得分」の各機能の展開(整備)過程、②弘仁5年(814)の共塡制採用とそれ以前の補塡方式(「専当人補塡」「公廨物補塡」)との関係から検討した。公廨稲は当初、運用・用途の両面でやや大まかな規定であったが、8世紀後半を通じ各機能の明確化(分化)が進むこと。共塡法採用は「専当人補塡」「公廨物補塡」が抱えるそれぞれ異なる問題の解決を意図した一方、2つの補塡方式の差異は、共塡法採用以降も何らかの形で存続した可能性も考えられること、などを論じた。23頁(23‐45頁)

以上8点
Ⅲ 口頭発表・その他
1 ミヤケの展開と史的意義 ―実態と認識の観点から―口頭発表(一般発表) 2012-06-00続日本紀研究会・日本史研究会古代史部会合同部会 卒業論文大報告会
(於:ウイングス京都、京都市)

卒業論文の内容を報告したものであり、大化前代に設置されたミヤケについて、史料の表記のあり方に着目し、地方支配における位置づけの解明をめざした。個別に設置されていったミヤケが、6世紀には「屯倉制」と呼びうる形態に再編され、地方支配の重要な要素として機能したこと、大化改新以降のミヤケの廃止は、ミヤケ自体の廃止ではなく、名代などのミヤケが付属する制度の廃止に伴うものであったことを指摘した。
発表時間 35分 
発表要旨 『日本史研究』第611号
(2013 年7月 2頁(76~77頁))
2 律令制的官稲の成立と地方行政組織口頭発表(一般発表) 2014-01-00明治大学と大阪大学・京都府立大学・関西大学との考古学・古代史大学院生研究交流プログラム
(於:大阪大学、豊中市)
律令制下において地方財源として機能した様々な官稲のうち、主要な役割を果たした大税と郡稲の成立過程を検討した。成立時期をめぐる先行研究を検討し、大税や郡稲の起源を大化前代とする説に疑問を呈した。また、大税と郡稲の初見史料を検討したうえで、2つの官稲の成立はいずれも、国や郡などの律令制的な地方行政組織の成立と密接に関連
していると考えられ、画期として7世紀末の浄御原令制下を想定できることを指摘した。
発表時間 20分
発表資料 『明治大学と大阪大学・京都府立大学・関西大学との考古学・古代史大学院生研究交流プログラム成果報告書』(2014年3月 6頁(63~68頁))
3 官稲から見た日本律令財政の特質口頭発表(一般発表) 2014-12-00洛北史学会第 16 回定例大会
(於:京都府立大学、京都市)

律令制下における官稲のうち、大税(正税)と郡稲の用途を検討した。日本令の規定における官稲の位置づけや、郡稲帳や正税帳にみえる用途を分析し、いずれも中央政府の関与が明確であり、2つの官稲の差異は役割分担の違いによるものであることを指摘した。また、官稲の主要な用途である交易制について、令の条文とそれぞれの財源の対応関係を分析し、官稲の律令財政制度における財源としての位置づけを検討した。
発表時間 60分
発表要旨 『洛北史学』第17号
(2015年6月 2頁(141~142頁))
4 官稲からみた律令地方財政の展開-官稲混合以降を中心に-口頭発表(一般発表) 2015-08-00第43 回古代史サマーセミナー(分科会報告)
(於:高崎市中央公民館、高崎市)

8世紀前半に、郡稲をはじめとする官稲が大税(正税)に一本化された官稲混合について、官稲の運用の観点からその背景を指摘した。また、官稲混合後に設置された官稲である国分寺料について、他の国分寺の財源との関係に着目して検討し、国分寺料は国分寺の施設の維持管理の財源として機能しており、他の官稲と比較して国司からの独立性が相対的に強いことを指摘した。
発表時間 40分
また、本発表の準備報告(口頭発表)を、続日本紀研究会7月例会(古代史サマーセミナー準備報告・2015年7月・於:ホテルアウィーナ大阪、大阪市・発表時間50分)で実施した。
5 新刊紹介 鈴木靖民・川尻秋生・鐘江宏之編『日本古代の運河と水上交通』新刊紹介 2016-02-00大阪歴史学会刊行『ヒストリア』第254号 表題の書籍について、各収録論文の内容等を盛り込んだ形で、新刊紹介を執筆し、当該雑誌に掲載された。
2頁(182~183頁)
6 本庄総子氏「税帳と税帳使」(『日本研究』51、2015 年)

口頭発表(一般発表) 2016-04-00日本史研究会古代史部会(大会共同研究報告者業績検討会)
(於:機関紙会館、京都市)
2016年度日本史研究会大会共同研究報告古代史部会報告者である、本庄総子氏の論文「税帳と税帳使」について、業績検討会で報告した。同論文の論旨について整理を行ったうえで、問題点や論点について若干の提示をおこなった。
発表時間 40分
7 修理池溝料の成立とその背景

口頭発表(一般発表) 2016-04-00続日本紀研究会4 月例会
(於:ホテルアウィーナ大阪、大阪市)
9世紀前半に水利施設の修理財源として設置された官稲である修理池溝料の検討の前提として、主に8世紀における水利施設の修理制度の特質を検討した。律令条文における水利施設の修理規定を概観したうえで、実際の財源の支出のあり方や、修理のための労働力編成の実態とどのように関連するかを考察した。合わせて8世紀末以降における修理制度の展開過程について、発表時点での見通しを示した。
発表時間 60分
8 新刊紹介 条里制・古代都市研究会編『古代の都市と条里』新刊紹介 2016-06-00古代学協会刊行『古代文化』第68巻第1号 表題の書籍について、各収録論文の内容等を盛り込んだ形で、新刊紹介を執筆し、当該雑誌に掲載された。
1頁(140頁)
9 救急料の成立と機能口頭発表(一般発表) 2017-01-00大阪大学・関西大学・京都府立大学・明治大学4大学合同考古学・古代史大学院生研究交流プログラム
(於:大阪大学、豊中市)
9世紀前半に設置された官稲である救急料について、関係史料の基礎的検討を行い、それぞれ①恒常的用途、②臨時的用途、③文殊会料に分類し、その性格を分析した。あわせて、救急料の運営形態における国司の関与のあり方や、救急料成立以前の「救急」についても関係史料を提示し、発表時点における見通しと検討課題を提示した。
発表時間 20分
発表資料『大阪大学・関西大学・京都府立大学・明治大学4大学合同考古学・古代史大学院生研究交流プログラム成果報告書』(2017年3月 7頁(64~70頁))
10 賦役令貢献物条の特質と機能 ―律令財政制度における位置づけをめぐって― 口頭発表(一般発表) 2017-10-00歴史学研究会日本古代史部会10月例会 
(於:東洋大学、東京都文京区)
日本の律令制下において交易制の法的根拠の一つとして機能した賦役令35貢献物条について、令規定と実際の運用形態の双方から検討を加えた。特に条文中に列挙される品目に着目し、貢献物条は調庸などでは獲得困難な品目を、郡稲を財源に交易により調達する規定として機能したことを解明した。なお、本発表の内容をもとに、「学術論文6」に該当する論文を執筆した。
発表時間 60分
11 平安時代中期の地方財政研究と論点口頭発表(一般発表) 2018-08-00科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)基盤研究(C)「日本古代~中世における瓦陶兼業窯の多面的比較研究」研究会(第3回)
(於:大阪大学、豊中市)
10世紀を中心とした平安時代中期の収取制度をめぐる研究動向を整理し、論点と今後の課題を提示した。なお、本発表をもとに、「口頭発表・その他17」に該当の論文を執筆した。
発表時間 60分
12 新任国司への給粮と郡稲口頭発表(一般発表) 2018-11-00日本史研究会古代史部会11月部会
(於:機関紙会館、京都市)
新任国司が職分田の収穫を得るまでの代替となる給粮制度について、律令規定・支給基準・支出形態の3点から詳細な検討を加えた。給粮制度が制度と実態の両面において、中央政府の明確な管理下で運用されていることを解明した。
発表時間 60分
発表要旨 『日本史研究』第679号
(2019年3月 2頁(198~199頁))
13  新任国司への給粮と「公廨」―公廨稲成立以前を中心として―口頭発表(一般発表) 2019-01-00大阪大学・関西大学・京都府立大学・明治大学4大学合同考古学・古代史大学院生研究交流プログラム
(於:大阪大学、豊中市)
新任国司の給粮制度にみえる「公廨」の具体的な対象の解明を目的に、令規定の「公廨」と「公廨田」検討対象とし、あわせて新任国司給粮制度の関係史料にみえる、「公廨」表記を分析した。これらは支出の性格を反映し「公廨」と表記しており、8世紀中期に設置される公廨稲のような、特定の財源を指すものではないことを指摘した。口頭発表12・13の成果をもとに、「学術論文2」に該当する論文を執筆した。
発表時間 25分
発表資料 『大阪大学・関西大学・京都府立大学・明治大学4大学合同考古学・古代史大学院生研究交流プログラム成果報告書』(2019年3月 6頁(46~51頁))
14 池溝修理と律令地方財政―修理池溝料の検討を中心に―口頭発表(一般発表) 2019-02-00名古屋古代史研究会2月例会
(於:名古屋大学、名古屋市)
修理池溝料について、設置を命じた官符の構造や内容について再検討を行い、修理池溝料の成立過程を整理した。あわせて、8世紀末~9世紀における水利施設の修理に関係する史料を、特に国司との関係に着目して分析し、当該時期において国司が修理すべき水利施設の範囲や、修理を怠る公民に対する罰則などが次第に明確化したこと、その動向の延長線上に、財源である修理池溝料の設置を位置づけることができることを指摘した。
発表時間 60分

15 救急料の特質と機能―用途の分析を中心に―口頭発表(一般発表) 2019-09-00続日本紀研究会 9 月例会
(於:ホテルアウィーナ大阪、大阪市)
9世紀前半に設置された救急料について、個別用途の時期的変遷に着目し検討した。その結果、救急料は用途の決定において、次第に国司の裁量が拡大することを解明した。その成果をもとに、「学術論文3」に該当の論文を執筆した。
発表時間 60分
発表要旨 『続日本紀研究』第418号
(2019年12月 1頁(53頁))
16 10 世紀収取制度の研究をめぐってその他 2020-03-00大阪大学大学院文学研究科考古学研究室刊行『摂関期の瓦陶兼業窯をめぐる多面的研究―丹波・ 篠窯跡群を主な対象に―2016~2019 年度 JSPS 科学研究費補助金基盤研究(C)(課題番号 16K03155)研究成果報告書』) 高橋照彦氏を研究代表者とする科研費の研究に、研究協力者として参加し、「口頭発表10」を実施するとともに、その成果をもとに報告書に論稿を執筆した10世紀における収取制度の転換に関して、王朝国家論と、10世紀後半を画期とする研究(「後期律令国家」論、「初期権門体制」論)を中心に、先行研究や論点を整理した。その上で、双方の立場について、問題点や課題を指摘したうえで、今後の研究に関して若干の展望を提示した。
10頁(337~346頁)
17 公廨稲制度の展開と国司 口頭発表(一般発表) 2021-06-00大阪歴史学会2021年度大会古代史部会報告(於:神戸大学、オンライン開催) 8世紀中期に設置された公廨稲に関して、8世紀後半~9世紀の展開過程を検討した。大会報告では、「奪公廨」に着目し、「奪公廨」は国司への処罰の性格を持つ一方、処罰と補填が一体として機能する例も多いこと、中央政府が国司統制に「奪公廨」を積極的に活用したことを解明した。なお、本発表の内容をもとに、「学術論文5」に該当する論文を執筆した。
発表時間 60分
 なお、大会報告の準備にあたっては、続日本紀研究会例会において計6回(2020年1月・3月[於:ホテルアウィーナ大阪]、および2021年1月・3月・4月・6月[オンライン])の大会準備報告(いずれも口頭発表・発表時間60分)を実施した。
発表要旨 口頭発表17(大会報告)要旨
『ヒストリア』第286号
(2021年6月 2頁(80~81頁))
18 延暦年間における公廨稲停止・再設置についての再検討 口頭発表(一般発表) 2022-01-00国史学会1月例会(オンライン開催) 延暦17年(798)~19年において実施された公廨稲停止・再設置について、国司職分田や借貸との関係に着目し、その展開過程を再検討した。当該期において、公廨稲の補填機能の位置づけが相対的に低下していたことが、公廨稲停止の背景として想定できること、公廨稲停止期間中も、公廨稲の得分機能を対象とした処罰である「奪公廨」は、代わって設置された「国司俸」を対象に存続していた可能性が高いことを指摘した。
発表時間 60分
発表要旨『国史学』第236号(2022年9月 1頁(120頁))
19 「民間私富」の活用と律令地方財政制度 口頭発表(一般発表) 2022-09-00大谷大学日本史の会9月例会
(於大谷大学、京都市)
律令制下における、地方有力者の提供による「民間私富」の活用(「民間私富」の提供)について、貧窮者の救済の用途に着目して検討した。8・9世紀における、「民間私富」の提供者の個別表彰記事とともに、それぞれの法令(制度)における「民間私富」の活用の位置づけを分析し、8世紀後半~9世紀前半にかけて、提供者への褒賞として叙位を行うことが定着し、制度が整備されていくこと。褒章の対象や叙位の基準の決定には個別的側面が大きく、制度上は中央政府や国司が主導権を有していることなどを指摘した。
発表時間 60分
発表要旨『歴史の広場』第26号(2024年3月 1頁(83頁))
20 8世紀後半~9世紀前半における公廨稲制度の展開過程について―補填機能と得分機能の関係に着目して― 口頭発表(一般発表) 2023-02-00続日本紀研究会2月例会(オンライン開催) 8世紀後半~9世紀前半における公廨稲制度の展開について、特に補填機能と得分機能の関係に着目して検討した。成立当初の公廨稲は、それぞれの機能や運用がやや大まかに規定されていたが、その後8世紀後半を通じて、相互の機能の関係を明確化・限定化する形で整備が進められること。弘仁5年(814)年の共填制の成立以降も、それ以前の「当時専当人」による補填と、「公廨物」(公廨稲)による補填は、少なくとも制度上は別個のものとして位置づけられたと考えられることを指摘した。
発表時間 60分
発表要旨『続日本紀研究』第432号(2023年6月 1頁(35頁))
21 書評と紹介 神戸航介著『日本古代財務行政の研究』  書評・紹介 2023-08-00日本歴史学会刊行『日本歴史』第903号  表題の図書について、書評と紹介を執筆し、掲載された。3頁(92-94頁)
22 得分機能の位置づけからみた公廨稲制度の展開  口頭発表(一般発表) 2024-01-00日本史研究会古代史部会1月
(於機関紙会館、京都市 ※対面・オンライン併用のハイブリット形式での開催)
8世紀中期~9世紀前半の公廨稲制度の展開過程について、得分機能に着目し検討した。まず、関係史料を整理し、得分機能の位置づけが明確化・拡大していく過程を具体的に確認した。また、9世紀中期以降に散見する、公廨稲を財源とする個別用途についてその基本的な特徴を検討した。そして、これらの個別用途の登場は、公廨稲の得分機能の拡大と時期的に並行しており、双方の関連について、さらに分析を深める必要があることを指摘した。(報告時間 60分)
23 「越前国雑物収納帳」の再検討からみた公廨稲運用の特質 口頭発表(一般発表) 2024-03-00大谷大学日本史の会3月例会(於大谷大学、京都市)
「越前国雑物収納帳」を検討対象に、8世紀中期における公廨稲の具体的な運用のあり方を検討した。先行研究を踏まえつつ、史料のそれぞれの記載内容を確認した。また、個別の論点として、①各国司への得分の配分額(割合)については、様々な個別の事情を踏まえ決定されている側面も強いと考えられること、②国司とともに国分寺に大量の公廨米が配分されており、これは公廨稲が国(国司や国衙)における幅広い用途に使用されている実例と考えられること、などの点を指摘した。
発表時間 60分
以上23点

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