A 教育業績 | |||
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教育実践上の主な業績 | 年月日 | 概要 | |
1 教育内容・方法の工夫(授業評価等を含む) | |||
1 | 編入学希望者に対する小論文の個別指導 | 2019/03/31
~ 2022/02/28 |
短期大学に勤務した際、4年制大学への編入学を希望する学生に対し、小論文の添削指導を中心に、編入学対策の個別指導・面談を行った。その他、就職試験での作文課題など、文章作成に関することは全般的に指導を担当した。 |
2 | 学生による口頭発表の実施 | 2019/03/31
~ 2022/02/28 |
短期大学に勤務した際、「近代日本文学」の授業では、文学の素養が少ない学生でも充実感を得やすくするために、扱う作家・作品の要点をまとめる発表を各学生が行うこととし、事前の調査・考察に取り組ませた。
また、その際、情報機器の整った教室でスクリーンを用いて発表させた。 |
3 | 作家・作品についてのワークシートの作成・配布 | 2019/03/31 ~ | 文学作品を扱う授業では、学生自身が作品について主体的に思考することが重要であると考え、授業で扱う作家・作品に関する設問をワークシート形式で授業ごとに準備し、学生に対して記入のうえ提出させている。 |
4 | 学生に対する授業外学習の促し | 2019/03/31
~ 2022/02/28 |
短期大学に勤務した際、小論文を書く授業では、事前に課題文を渡しておき、授業までに調べ作業などに取り組ませ、授業外学習を促した。毎週の授業で書かせた小論文は添削のうえ返却し、復習を促した。 |
5 | 学外研修 | 2019/03/31
~ 2022/02/28 |
短期大学に勤務した際、「近代日本文学」の授業では、学生の理解の促進を図って、「かごしま近代文学館・メルヘン館」での学外研修を行った。また、「かごしまの芸術」の授業では、「鹿児島市立美術館」や「長島美術館」での学外研修を行った。 |
6 | 高等学校での出張講座、およびオープンキャンパス等での公開授業
ⅰ:「入試説明会」での高校教員に対する公開授業(「コピーライティング入門」) |
2020/06/04 | 勤務校で実施された「入試説明会」で、高校教員に対する公開授業として「コピーライティング入門」の授業を行った。所属するコースが、造形表現やデジタルデザインを主とする教育を行っていることに合わせ、自身の表現物を効果的に言葉で伝達する力を身につけることを目的とする授業を行った。 |
7 | 高等学校での出張講座、およびオープンキャンパス等での公開授業
ⅱ:鹿児島県立鹿児島南高等学校での出張講座 「小論文講座」 |
2020/07/28 | 鹿児島南高校で『鹿児島純心女子短期大学出張講座』として行った小論文の講座。
高校生120人を受講生として、小論文の書き方について90分間の講義を行った(40人ずつで3部屋に分け、ひとつの部屋で行った講義をZoomを用いてリモートでつなぐ方法をとった)。特に小論文の構成に注目し、書き方に関するレクチャーを行ったうえで、論の展開に合わせた構成メモを作らせ、それをもとにして400字程度の文章にまとめさせた。 |
8 | 遠隔授業の実施 | 2021/03/31 ~ | Google MeetやZoomを使用して遠隔授業に取り組んでいる。その他ICTツールを活用し、授業および授業外における学生との円滑なやり取りの実施に取り組んでいる。 |
9 | 高等学校での出張講座、およびオープンキャンパス等での公開授業
ⅲ:鹿児島県立開陽高等学校での出張講座 「小論文講座」 |
2021/07/13 | 鹿児島県立開陽高校で『鹿児島純心女子短期大学出張講座』として行った小論文の講座。高校生28人を受講生として、小論文の書き方について90分間の講義と実践練習を行った。 |
10 | 高等学校での出張講座、およびオープンキャンパス等での公開授業
ⅳ:鹿児島県立鹿児島南高等学校での出張講座 「小論文講座」 |
2021/07/30 | 昨年に引き続き、鹿児島南高校で『鹿児島純心女子短期大学出張講座』として小論文の講座を行った。高校生118名を対象に、小論文の書き方について100分間の講義と実践練習を行った |
11 | 学科専門の演習授業における学修促進の取り組み | 2022/03/31 ~ | 学科専門の演習授業において、将来的な卒業論文作成に向けた学生の研究能力向上を視野に入れ、研究に必要な基礎的作業を分割して各学生に割り当て、それぞれの学生に各作業に専念する機会を与える方法をとった。作業内容については、作品に関わる注釈作業、先行研究の整理・要約、それらを踏まえての作品読解を基本に、学年ごとの習熟度に鑑みて設定した。上記を通して、研究活動における各作業の必要性や意味を理解させることを目指した。 |
12 | 小説創作に係る演習授業における学修促進の取り組み | 2022/03/31 ~ | 小説創作の技術向上を目指す演習授業において、学生に対し、オリジナル作品の創作のみならず、以下のような課題を出すことで、より効果的な学修が達成されるよう企図した。
・既存の作品のストーリーのみを共有し、その他はすべて各受講生が自由に創作する。 ・既存の小説の結末部のみを隠した状態でその作品を読解し、その上で各自がラストを創作する。 それによって、プロットの練り込みや細部の設定などの重要性を学生に理解させること、また、学生の読解力が向上されることを企図した。 |
13 | 高等学校での出張講座、およびオープンキャンパス等での公開授業
ⅴ:オープンキャンパス「学び紹介」(「あなたは〝ことば〟をどう使う? ー「文学」で学べることー」) |
2023/03/19 | オープンキャンパスの「学び紹介」(模擬授業)において、文学科で何が学べるかを説明することを目的として30分間の講義を行った。まず、芥川龍之介「トロッコ」を素材として、大学における基本的な文学作品の読み方を示し、「近代文学」の意味をレクチャーした。また、小説創作の授業において学生が書いた作品を紹介することで、「読むこと」と「書くこと」の関連性を示した。 |
14 | 講義内容のWEB上での公開 | 2024/08/31 ~ | Panoptを使用して講義内容をWEB上で公開している。 |
2 作成した教科書、教材、参考書 | |||
1 | 授業用資料(未公刊) | 2019/03/31 ~ | 担当する多くの授業で、できるだけ丁寧に要点をまとめたレジュメや、学生の取り組みの助けになる資料、ワークシート等を提供している。 |
3 教育方法・教育実践に関する発表、講演等 | |||
1 | 「短大教育のなかの文学―― 一般教養科目、表現技術、コピーライティング――」
(『日本文学』第70巻第9号、日本文学協会、2021年9月) |
2021/09/10 | 『日本文学』(日本文学協会)編集委員会の依頼により、「国語・文学教育のこれから」をテーマにした特集に寄せる論考として書いたもの。実用性が重視される傾向がある現在の国語教育に対して文学研究者は何ができるのか、という問いを置き、その実践例の一つとして、筆者が勤務した短期大学における文学教育の経験を書いた。 |
2 | 「小特集・改作「神様」 はしがき」
(『萌芽』第5号、大谷大学文藝塾、2023年2月) |
2023/01/31 | 自身が担当する授業内で学生が書いた小説作品を集めて、学内機関誌で小特集を組み、その作品と授業実践についての説明を「はしがき」として記した。 |
4 その他教育活動上特記すべき事項 | |||
1 | 鹿児島純心女子短期大学 学生による授業評価の例
ⅰ:「近代日本文学」 |
2018/11/30 | 「近代日本文学」の授業の最終日には、受講生からは以下のような感想が出された。(回答者数23人のうち)
「全ての作品に対して、毎回新たな考えを産み、それを深めることが出来た」 「毎時間ごとに違う作品を読む中で、自分とは違う考えを持っていたりするのだなと学ぶこともできた。また、自分が作品について調べる上で沢山の知らなかったことを知れて嬉しかったです。」 |
2 | 鹿児島純心女子短期大学 学生による授業評価の例
ⅱ:「表現技術」 |
2019/11/30 | 担当科目「表現技術」(日本語での文章表現力の上達を目指す科目)では、受講生からは以下のような感想が出された。(回答者数62人のうち)
「苦手としていた小論文だが、ポイントを抑え、添削をしていただき、しだいに苦手意識が薄れた。さらには、表現技術で学んだことで、他の教科のあらゆるレポートに応用して、伝えたいことを以前より上手く書けるようになった。予習復習に力を入れ、新聞を読むようにしたり、ネットでさらに深く、興味を持って調べることができた」 |
3 | 鹿児島純心女子短期大学 学生による授業評価の例
ⅲ:「教養講座(国語)」 |
2020/11/30 | 担当科目「教養講座(国語)」では、受講生からは以下のような感想が出された。(回答者数12名のうち)
「様々なテーマで意見文を書いてきたが、直感ではなく、ネットで調べたり、現状を理解してから意見を書くことが多かったため、様々な視点からテーマについて考えることができた。また、自分の意見をはっきりと持つことができた。この授業を通して、これからの就活にも役立つと思い、とてもためになった。」 |
B 職務実績 | |||
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1 | 鹿児島純心女子短期大学での委員会活動等 | 2019/03/31
~ 2022/02/28 |
学習力・編入学支援委員会(2020年度より委員長に就任)
キャリア支援委員会 教学評価(IR)委員会 カリキュラム委員会(2020年度より一般教養科目のコーディネーターを担当した。) 図書委員会(2020年度より) 情報通信技術(ICT)活用推進委員会(2021年度より) ESDプロジェクト委員会(2021年度より) |
2 | シルバー世代のための健康・教養講座「大江健三郎『新しい人よ眼ざめよ』を読む――ノーベル賞作家は「家族」をどう描いたか?――」
(『2020年度 純心市民講座・こども講座』) |
2020/08/01 | 鹿児島純心女子短期大学講師として行った市民講座。
大江健三郎の小説集『新しい人よ眼ざめよ』(1983)について、〈障害を持つ子供〉と〈父〉との関係に焦点を絞り、『ヒロシマ・ノート』(1965)以来の大江による核兵器をめぐる時代状況との向き合いにも注目して講義した。 主催は鹿児島純心女子短期大学内の「江角学びの交流センター」。 |
3 | 「月曜文学講座「大江健三郎を読む」」 | 2021/06/28 | かごしま近代文学館主催の市民向けの文学講座で、大江健三郎の文学に関する講座を計3回実施。(当初の予定は5回。コロナ感染拡大防止の観点から内2回が中止となった。)
『ヒロシマ・ノート』や『新しい人よ眼ざめよ』のほか、『個人的な体験』『沖縄ノート』などを扱った。 |
4 | 「月曜文学講座「大江健三郎を読む」」 | 2021/07/19 | かごしま近代文学館主催の市民向けの文学講座で、大江健三郎の文学に関する講座を計3回実施。(当初の予定は5回。コロナ感染拡大防止の観点から内2回が中止となった。)
『ヒロシマ・ノート』や『新しい人よ眼ざめよ』のほか、『個人的な体験』『沖縄ノート』などを扱った。 |
5 | 「月曜文学講座「大江健三郎を読む」」 | 2021/10/18 | かごしま近代文学館主催の市民向けの文学講座で、大江健三郎の文学に関する講座を計3回実施。(当初の予定は5回。コロナ感染拡大防止の観点から内2回が中止となった。)
『ヒロシマ・ノート』や『新しい人よ眼ざめよ』のほか、『個人的な体験』『沖縄ノート』などを扱った。 |
6 | シルバー世代のための健康・教養講座「向田邦子作品のスタイル――楽しくて、悲しくて、わたしをつくる思い出たち――」(『2021年度 純心市民講座・こども講座』) | 2022/01/22 | 鹿児島純心女子短期大学講師として行った市民講座。
鹿児島にゆかりのある作家向田邦子のエッセイ作品について、鹿児島との関わり、父との関わりなどを軸としてレクチャーした。 主催は鹿児島純心女子短期大学内の「江角学びの交流センター」。 |
7 | R5 川端康成文学館連続講座「昭和の文豪たち〈完結編〉」「大江健三郎『ヒロシマ・ノート』再読」 | 2023/10/15 | 茨木市立川端康成文学館が開催した講座「昭和の文豪たち〈完結編〉」において、『ヒロシマ・ノート』を中心に、1960〜1970年頃の大江健三郎が、1945年の原子爆弾の被爆者と自身の関係性を軸にしていかに〈日本〉や〈日本人〉という概念を捉え直そうとしていたのかについて、講話を実施した。その際、2023年9月に東京大学に開設された「大江健三郎文庫」において閲覧した大江の自筆原稿から得られた情報を活用した。 |
C 学会等及び社会における主な活動 | |||||
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所属期間及び主な活動の期間 | 学会等及び社会における主な活動 | ||||
1 | 2010/03/31~ | 全国大学国語国文学会 会員 | |||
2 | 2013/03/31~ | 日本文学協会 会員 | |||
3 | 2013/03/31~ | 日本近代文学会 会員 | |||
4 | 2014/03/31~ 2019/02/28 | 言語態研究会 会員(東京大学大学院言語情報科学専攻内) | |||
5 | 2015/03/31~ 2019/02/28 | 上記、言語態研究会 会誌『言語態』編集委員 | |||
6 | 2016/03/31~ | 日本社会文学会 会員 | |||
7 | 2018/03/31~ 2020/02/29 | 上記、日本近代文学会 運営委員 | |||
8 | 2019/03/31~ 2022/02/28 | 江角学びの交流センター 所員(鹿児島純心女子短期大学内) | |||
9 | 2020/11/30~ 2021/07/31 | 上記、日本社会文学会 会誌『社会文学』第54号 編集委員 | |||
10 | 2023/03/31~ | 昭和文学会 会員 | |||
D 研究活動 | |||||
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著書、学術論文等の名称 | 単著、 共著の別 | 発行又は 発表の年月 | 発行所、発表雑誌等 又は 発表学会の名称 | 概要 | |
Ⅰ著書 | |||||
以上0点 | |||||
Ⅱ学術論文 | |||||
1 | 「大江健三郎初期の「思い出」をめぐる言説――《玉音》表象と戦後民主主義アイデンティティーの形成――」 査読済 | 単著 | 2010/06/30 | 『文学・語学』第197号(全国大学国語国文学会事務局) | 本論文では、大江健三郎が1960年前後に発表したエッセイ等において、敗戦時の玉音放送の「思い出」を語ることで、自身を「戦後世代」として位置づけようとしていたことに注目した。それによって、敗戦時の「思い出」に言及することで戦後憲法の価値を訴えるという晩年まで続いた大江の表現行為の意味を、その原点にまで遡って分析し、大江における作家としてのアイデンティティ形成の様態を明らかにした。
12頁(pp.1-12)〔査読付き〕 |
2 | 「大江健三郎の「自殺」する肉体――「セヴンティーン」「政治少年死す」という投企――」 査読済 | 単著 | 2014/08/31 | 『日本文学』第63巻第9号(日本文学協会) | 大江健三郎の小説「セヴンティーン」二部作(1961)は、現実に起こった右翼テロ事件をモデルにしたと語られることが多い。それに対して本論文では、そうした受容状況を批判的に再検討し、当時の大江が事件について〈共感〉と〈非難〉という分裂した評価を行なっていることを明らかにした。そのうえで、その分裂を止揚すべく書かれた小説として「セヴンティーン」二部作を分析した。
11頁(pp.36-46)〔査読付き〕 |
3 | 「「戦争体験論」の意味――『われらの時代』を「批判」するということ――」 査読済 | 単著 | 2015/02/28 | 『言語態』第14号(言語態研究会(東京大学言語情報科学専攻内)) | 本論文では、1950年代後半に視点を定め、大江健三郎と橋川文三の言説を比較した。大江はこの時期、「戦後世代」として自己を位置づけようとし、一方で、いわゆる「戦中派」の橋川は、第二次世界大戦を現在の問題として考えようとする「戦争体験論」を展開していた。本論文では、一見〈対立〉と見える両者の言説の形成過程を分析することで、「戦争」をいかに認識するかをめぐるこの時期の思想状況を再検討した。
14頁(pp.132-145)〔査読付き〕 |
4 | 「大江健三郎『沖縄ノート』における歴史意識の交差――新川明の「沈黙」に吸引される言葉――」 査読済 | 単著 | 2015/10/31 | 『日本近代文学』第93集(日本近代文学会) | 本論文では、大江健三郎『沖縄ノート』(1970)について、そこに語られる沖縄の詩人・新聞記者である新川明の著作「新南島風土記」(1964)との関係性に注目して論じた。新川は当時、沖縄返還問題を背景に「反復帰論」を展開し、「日本」という国家を相対化すべく沖縄の歴史風土の異質性を問うていった。本論文では、大江が、新川と自己との差異を認識していきながら、「本土の日本人」としての自己を問い直す様態を明らかにした。
16頁(pp.90-105)〔査読付き〕 |
5 | 「『ヒロシマ・ノート』における「原水爆被災白書」の思想――「被爆者」について語ることと、その〝批判〟に対する意識のあいだ――」 査読済 | 単著 | 2017/10/31 | 『日本文学』第66巻第11号(日本文学協会) | 本論文では、大江健三郎『ヒロシマ・ノート』(1965)について、そこに語られる新聞記者・金井利博による「原水爆被災白書」の作成運動との関係性に注目して論じた。それにより、大江が、被爆者の個別的な生に注目する金井の運動に共感しつつ、その限界をも意識し、自身の視野からこぼれ落ちる被爆者へと想像力を向けようとする様を分析した。それにより「戦後世代」としてのそれまでの大江の言説が相対化されていく様相を示した。
12頁(pp.44-55)〔査読付き〕 |
6 | 『戦後思想史のなかの大江健三郎――「評論」と「小説」の相互関係に注目して――』
〔博士論文〕 | 単著 | 2019/01/31 | 東京大学大学院 | 大江健三郎の文学について、1950年代後半から70年頃までの初期作品を中心に考察した。その際、特にエッセイ等の「評論」に注目し、「戦後思想史」の問題として大江の文学を位置づけることを目指した。大江自身による作家としての自己表象を相対化し、評論作品に現れる大江の政治的主張を社会的構築物として捉える方法により、文学研究の分野にとどまらず、歴史社会学や日本思想史の研究にも関わる問題として、大江文学を提示した。
186頁(pp.1-186) |
7 | 「「声のない」呼びかけを聴く――大江健三郎『個人的な体験』における規範への意識と、規範を差異化する身体――」 査読済 | 単著 | 2019/02/28 | 『社会文学』第49号(日本社会文学会) | 本論文では、大江健三郎『個人的な体験』(1964)について、特に物語の結末に注目して分析した。同時代評では、主人公が「障害」を持つ子供を育てることを選ぶ結末は、「安易なハッピーエンド」として批判された。それに対して本論文では、高度成長を謳う当時の社会状況に照らし、結末を読み直した。それによって、これまで批判されてきた物語の結末が、当時の優生思想や身体管理の状況に対する批評的意味を持つことを明らかにした。
13頁(pp.159-171)〔査読付き〕 |
8 | 「日本近代化論と『万延元年のフットボール』――異なる「明治」を構成する「民衆」へのまなざし――」 | 単著 | 2020/02/29 | 『想林』第11号(江角学びの交流センター(鹿児島純心女子短期大学内)) | 本論文では大江健三郎『万延元年のフットボール』について、当時盛んに展開された日本近代化論との関わりを軸にして論じた。日本近代化論とは、日本を西洋以外で唯一「近代化」に成功した国として捉えながら、あらゆる社会環境の変化を直線的な歴史の発展として肯定的に説明する議論である。本論文ではその議論と対比しながら、周縁的な土地に生きた「民衆」に想像力を向ける『万延元年のフットボール』の同時代的な意義を論じた。
15頁(pp.21-35) |
9 | 「「世代」的な表象の手前で――大江健三郎「飼育」における《戦争》の意味――」 | 単著 | 2020/12/31 | 『鹿児島純心女子短期大学研究紀要』第51号 | 大江は1957年に小説家としてデビューした後、59年頃からは徐々に評論を発表する機会も増えていく。〈戦争〉に対する認識の仕方をめぐって「世代」間の対立が前景化する思想状況のもと、大江もまた自らを「戦後世代」として表象することで、作家としてのアイデンティティを構築していった。本論文では、そうしたエッセイが発表され始める前に書かれた小説「飼育」(1958)を分析し、大江による自己表象を相対化することを試みた。
13頁(pp.145-157) |
10 | 「短大教育のなかの文学―― 一般教養科目、表現技術、コピーライティング――」 | 単著 | 2021/08/31 | 『日本文学』第70巻第9号(日本文学協会) | 本論文では、短期大学における有意義な文学教育のあり方を考察した。筆者が勤務した短大では、多くの学生にとって「文学」というジャンルは選択肢の一つに過ぎないが、一方で、〈適切な文章の書き方を学ぶ〉ということはキャリアプランの形成において社会的に重要な意味を持った。本稿では、筆者が持つ「文学」的な教養や能力を、指導する学生にとって社会的な意義を持つ問題へと変換した方法を、短大教育の経験に即して論述した。
11頁(pp.2-11) |
11 | 「置き直すべく試み、隔て、または奪い去られ ーー島尾敏雄「石像歩き出す」における語りの意味ーー」 | 単著 | 2022/02/28 | 『想林』第13号(鹿児島純心女子短期大学江角学びの交流センター地域人間科学研究所) | 戦争を題材とした島尾敏雄の小説は、島尾自身が特攻隊隊長であったという経歴と関わって、島尾自身の体験をもとにした、死を覚悟しながら生き延びることの苦悩が描かれていると読まれることが多い。それに対し本論文では、島尾の短編小説「石像歩き出す」(1947)の冒頭における語りの視点の不安定さなどを分析することで、戦争直後の島尾の小説が、作家自身が提示するような一定のテーマに回収できるものではないことを示した。
14頁(pp.25-38) |
12 | 「「われらの性の世界」と一九五九年のリアリティが絡み合うところーー『われらの時代』に関するいくつかの批評」(総特集=大江健三郎ーー1935-2023) | 単著 | 2023/06/30 | 『ユリイカ』第55巻第10号(青土社) | 本論文では、大江健三郎のエッセイ「われらの性の世界」(1959)を吉本隆明らの言説との関わりにおいて分析した。このエッセイでは、「他者」と対立する存在「政治的人間」と、「他者」と同化する存在「性的人間」という、二項対立的な概念が提示される。本稿では、このエッセイにおいて一見否定的に評価されているように見える「性的人間」にこそ、社会に対して能動的に関わり得る可能性が見出されていることを明らかにした。
13頁(pp.442-454) |
13 | 「大江健三郎研究史・緒言ーー荒正人、倉橋由美子、栗原貞子、あるいは川満信一に導かれて」 | 単著 | 2024/07/31 | 『社会文学』第60号(日本社会文学会) | 本論文では、大江健三郎の文学に関する研究史を概観した。大江研究史は、1967年の松原新一『大江健三郎の世界』以降、50年以上の蓄積を持つ。その研究史の全体像を浮かび上がらせるにあたり、本稿では、むしろこれまでの研究史の観点からはノイズとされるであろう大江批判の言葉を軸とし、その批判の意味を検討した。それにより、研究史が見逃してきた問題を提示し、反転的に研究史の全体像を浮かび上がらせることを方法とした。
16頁(pp.37-52) |
14 | 「大江健三郎『沖縄ノート』の自筆原稿を読むーー「あまりにも巨きい罪の巨塊」という言葉の生成と、その意味ーー」 | 単著 | 2025/03/14 | 『文藝論叢』第104号(大谷大学文藝学会) | 2023年9月、東京大学文学部内に「大江健三郎文庫」が開設された。大江健三郎文庫には、一万八千枚(2023年7月現在)に及ぶ自筆原稿や校正刷り等の資料が収蔵されている。本稿はそのうち、『沖縄ノート』(1970)の自筆原稿を検討対象とした。大江健三郎は2005年に、『沖縄ノート』のうち「集団自決」に関する記述をめぐって、名誉毀損の不法行為にあたるとして提訴された。その訴訟において問題のひとつとなった「あまりにも巨きい罪の巨塊」という言葉を含む箇所の自筆原稿も現存する。本稿では、その箇所の自筆原稿を検討することで、「あまりにも巨きい罪の巨塊」という言葉の生成過程を分析し、「集団自決の責任者」と自身を重ねようとする、『沖縄ノート』執筆時における大江の思考の様態を追究した。
28頁(pp.71-98) |
15 | 「岡田利規/チェルフィッチュ『地面と床』における現れの境界――幽霊(のような存在)としての「さとみ」と、人間の縁(へり)を歩く「由紀夫」――」 | 単著 | 2025/03/19 | 『大谷學報』第104巻第2号(大谷学会) | 本論文では、演劇カンパニー・チェルフィッチュの演劇作品『地面と床』(2013年)について、東日本大震災後の社会状況との関わりに注目して論じた。その際、戯曲・演出を担当したチェルフィッチュ主宰の岡田利規が、能に強い関心を持っていることを踏まえ、能との共通点および差異を見ることも、分析の手がかりとした。本論文において特に注目したのは、「さとみ」と「由紀夫」である。「さとみ」は、作品の序盤では、物語とは直接関係のない批評的な言葉を観客に向けて饒舌にまくしたてるのみだが、のちに、実は物語を根底で形成している人物であることが明らかになる。一方で「由紀夫」は、その「さとみ」に対置され、相対的貧困に基づく劣等感を抱えながら、舞台上を〈四足歩行〉の体裁で動き回る。この二人に注目し、『地面と床』という演劇作品が観客にとっての虚構と現実の境界を揺るがす過程を、映像記録と戯曲の双方を用いて分析した。
19頁(pp.92〜110) |
以上15点 | |||||
Ⅲ 口頭発表・その他 | |||||
1 | 「大江健三郎「セヴンティーン」「政治少年死す」と「民主主義」の思想」 | 口頭発表(一般発表) | 2013/06/30 | 日本文学協会 第32回研究発表大会(神戸大学) | 上記、学術論文2の内容。
発表時間=45分 発表要旨=『日本文学』第62巻第6号(日本文学協会)、2頁(pp.94-95) |
2 | 「1950年代末における「世代論」の運動――「戦争体験」をめぐる橋川文三と大江健三郎の思想的交錯を中心に――」 | 口頭発表(一般発表) | 2014/06/30 | 言語態研究会 ワークショップ「〈戦後〉特集―主体と責任―」(東京大学) | 上記、学術論文3の内容。「戦中派」に当たる橋川文三の思想と比較しながら、大江健三郎による「戦後世代」としての自己表象について分析した。それを通し、1950年代末の「戦争」をめぐる思想状況を再検討した。
発表時間=40分 |
3 | 「【著者セッション】中谷いずみ『その「民衆」とは誰なのか――ジェンダー・階級・アイデンティティ』」 | 口頭発表(対談) | 2014/11/30 | 叙述態研究会(国立オリンピック記念青少年総合センター) | 中谷いずみ氏の著書『その「民衆」とは誰なのか――ジェンダー・階級・アイデンティティ』を元にして、1930年代および50年代における、「民衆」として括られる人々とその「民衆」による表現行為の様態について、著者である中谷氏と口頭で意見交換した。
発表時間=1時間30分 (共同発表:北山敏秀・中谷いずみ) |
4 | 「連続ドキュメンタリー映画上映会『ギフト』『ラダック それぞれの物語』」 | 報告文 | 2016/03/31 | 『CAPS Newsletter』第130号(成蹊大学アジア太平洋研究センター) | 成蹊大学アジア太平洋研究センターでの映画上映会の報告文。それぞれ沖縄と北インドを舞台として、「周縁性」や「戦争の記憶」をテーマにして制作された2本の映画について所感を記した。
1頁(p.2) |
5 | 「大江健三郎「飼育」における《戦争》表象の意味―― 一九五〇年代後半の「戦争体験」をめぐる批評言説との関係性を軸に――」 | 口頭発表(一般発表) | 2016/05/31 | 日本社会文学会 2016年度春季大会(東京大学) | この発表では、大江健三郎の小説「飼育」(1958)について、小説本文を詳細に分析したうえで、同時期の「戦争」をめぐる他の小説や批評言説との比較を行なった。それによって、「飼育」を1950年代後半の「戦争体験」をめぐる言説状況の中に位置づけることを試みた。
発表時間=40分 発表要旨=『社会文学通信』第104号(日本社会文学会)、1頁(p.2) |
6 | 「〈優生思想〉という問い――『個人的な体験』と『ヒロシマ・ノート』の連関から読む――」 | 口頭発表(一般発表) | 2017/04/30 | 第11回 学際日本駒場フォーラム(「大江健三郎における暴力の構造」)(ストラスブール大学・東京大学の共催) | 大江健三郎の小説『個人的な体験』(1964)について、同時代における「優生思想」や「安楽死」をめぐる社会的議論との関わりから論じた。
発表時間=20分 |
7 | 「二〇一七年度春季大会報告、「特集・戦後の詩と文化運動を問い直す」講演・シンポジウム印象記」 | 学会印象記 | 2017/09/30 | 『社会文学通信』第107号(日本社会文学会) | 第二次世界大戦後の混乱の中で生じた、詩の表現をめぐる文化運動をテーマにして開催されたシンポジウムに関する所感を記した。
1頁(p.7) |
8 | 「2018年度 春季大会研究発表の記録」 | 学会印象記 | 2018/08/31 | 『会報』第129号(日本近代文学会) | 学会での個別発表の印象記。安部公房を分析対象とした2名の研究発表で司会を担当し、その発表に関して所感を記した。
(共著者:北山敏秀、安西晋二) 1頁(p.27) |
9 | 「日本近代文学会・昭和文学会・日本社会文学会合同国際研究集会分科会・研究発表の記録」 | 学会印象記 | 2020/03/31 | 『会報』第132号(日本近代文学会) | 学会での個別発表の印象記。林京子、および大江健三郎を分析対象とした3名の研究発表で司会を担当し、その発表に関して所感を記した。
(共著者:北山敏秀、佐々木さよ) 1頁(p.43) |
10 | 「長谷川啓編『大田洋子 原爆作品集 屍の街』」 | 新刊紹介 | 2021/07/31 | 『社会文学』第54号(日本社会文学会) | 「長谷川啓編『大田洋子 原爆作品集 屍の街』」を紹介する文章。これまで単行本未収録だった作品が含まれていることを踏まえ、この作品集が刊行されたことの意義を、作品の読解も含めて述べた。
1頁(p.210) |
11 | 「山尾三省『五月の風 山尾三省の詩のことば』」 | 書籍紹介 | 2023/01/31 | 『萌芽』第5号(大谷大学文藝塾) | 屋久島の詩人・山尾三省の詩集『五月の風 山尾三省の詩のことば』を、その現代的意義を踏まえて学生に向けて紹介した。
1頁(p.9) |
12 | 「書評 那波泰輔『「わだつみ」の歴史社会学――人びとは「戦争体験」をどう紡ごうとしたのか――』」 | 書評 | 2025/06/07 | 『図書新聞』第3690号(武久出版) | 那波泰輔著『「わだつみ」の歴史社会学――人びとは「戦争体験」をどう紡ごうとしたのか――』(雄山閣、2025年1月)についての書評。本書を、〈戦争の非体験者がいかに「戦争体験」を継承し得るか〉について、言語論的転回以後の歴史社会学の観点から検討した書籍として評した。なお、記事見出しは以下の通り。「戦争体験の語りはいかに「作られる」のか/わだつみ会が、現在に至るまでどのように変容してきたのかに注目する」。
1頁(p.4) |
13 | 名作の世界 死者の奢り(大江健三郎) 「どう生きるか」を自問 | 取材記事 | 2025/07/29 | 『毎日新聞』朝刊(毎日新聞大阪本社) | 大江健三郎の小説「死者の奢り」、「セヴンティーン」、およびルポルタージュ『ヒロシマ・ノート』の3作について、一般読者に向けて紹介した。この記事は、世界の「名作」の魅力を、それをまだ読んだことのない新聞読者に分かりやすく伝えることを趣旨としたシリーズの一つである。口頭で取材を受け、それをもとに三角真理記者が記事を執筆・構成した。
1頁(p.14) |
以上13点 |