教育研究業績の一覧

松金 直美
A 教育業績
教育実践上の主な業績 年月日概要
1 教育内容・方法の工夫(授業評価等を含む)
1 2023年度前期「真宗教団史」
(大谷大学)
2023-06-24 授業「真宗教団史」の一環として、「東本願寺と周辺地域」をテーマとしたフィールドワークを実施。➀東本願寺両堂参拝(渡り廊下の展示観覧)、➁となみ詰所、③柳原銀行記念資料館を、各施設に携わる方の案内で見学した。それにより、周辺地域や民衆・門徒とのかかわりを通して、東本願寺の歴史を学ぶ機会を持った。
2 作成した教科書、教材、参考書
1 佛教史学会編『仏教史研究ハンドブック』(法藏館、2017年) 2017-02-15 インド、アジア諸国・地域、中国・朝鮮半島、日本の〈仏教史〉に関する研究テーマを地域横断的、通時代的に見渡しながら、わかりやすくコンパクトにまとめた入門書(総頁数410頁)。そのうち、第3部3章「日本近世」の編集を担当し、分担執筆した。「日本近世総説」(266頁~267頁)、「浄土真宗」(286頁~287頁)、「異端的宗教」(312頁~313頁)。
3 教育方法・教育実践に関する発表、講演等
4 その他教育活動上特記すべき事項
B 職務実績
1 「幕末維新期護法論の思想史的研究」(科学研究費助成事業;研究分担者) 2012-04-01
~2015-03-31
科学研究費助成事業(基盤研究C)「幕末維新期護法論の思想史的研究」(研究課題番号:24520078、2012.4.1~2015.3.31、研究代表者:桐原健真)において、近世東派学僧に関連する書物の調査と分析を担当した。
2 「近代日本の教化政策と伝統仏教教団の教化活動の総合的研究」(科学研究費助成事業;研究分担者) 2023-04-01
~2026-03-31
科学研究費助成事業(基盤研究B)「近代日本の教化政策と伝統仏教教団の教化活動の総合的研究」(研究課題番号:23H00569、2023.4.1~2026.3.31、研究代表者:大谷栄一)において、近世仏教における教化を担当する。
C 学会等及び社会における主な活動
所属期間及び主な活動の期間 学会等及び社会における主な活動
1 2002-07-00~0000-00-00 大谷大学日本史の会(2004年4月より委員、現在に至る)
2 2003-06-00~0000-00-00 真宗連合学会
3 2004-08-00~0000-00-00 越中史壇会
4 2004-10-00~0000-00-00 佛敎史學會(2010年10月より委員、現在に至る)
5 2010-07-00~0000-00-00 真宗大谷派教学学会
D 研究活動
著書、学術論文等の名称単著、
共著の別
発行又は
発表の年月
発行所、発表雑誌等
又は
発表学会の名称
概要
Ⅰ著書
1 近世の宗教と社会3 民衆の<知>と宗教共著 2008-09-00吉川弘文館 近世の地域社会における真宗道場の性格を明らかにする一環として、真宗道場であった越中国射水郡葛葉村(富山県氷見市葛葉)の名苗家について、その蔵書の分析をもとに、書籍からいかなる〈知〉を受容したかを考察。
総頁数276頁
本人担当:「Ⅱ 地域のなかの知」の「近世後期真宗道場における文化受容―越中国射水郡葛葉村名苗家蔵書を素材として―」
30頁(186~215頁)
編者:澤博勝・高埜利彦
共著者:高埜利彦、宇野田尚哉、小池淳一、小林准士、澤博勝、綱川歩美、引野亨輔、松金直美、武知正晃
2 福光町史 上巻共著 2011-03-00南砺市 現在の南砺市域には、井波別院瑞泉寺(井波御坊、南砺市井波)と城端別院善徳寺(城端御坊、南砺市城端)という、真宗大谷派(東派)の別院が2カ寺所在する。両寺は、同国における寺院支配の中核であるが、一方で多くの門末から信仰を集める地域における真宗信仰の結節点でもあった。代表する法会である、瑞泉寺の太子伝会と善徳寺の虫干法会、ならびに巡回布教を紹介していくことで、そのような特徴を明らかにする。
総頁数497頁
本人担当:「宗教史」「第三章 福光町域の信仰生活の様相」の「第五節 井波瑞泉寺・城端善徳寺における太子伝会・虫干法会と巡回布教」
7頁(480頁~486頁)
編集:福光町史編纂委員会
共著者:草野顕之、加藤直子、加藤基樹、加藤享子、松金直美、佐伯安一
3 佛光寺の歴史と文化共著 2011-05-00真宗佛光寺派宗務所 佛光寺末の門徒であった摂津国住吉郡平野郷町野堂町(大阪市平野区平野本町)の奥野家を取り上げる。地域社会における真宗の担い手から教団仏教をとらえることで、従来の「上からの教団史」の印象が強い組織・制度論による教団史とは異なった仏教教団像を明らかにする。またこれまでの真宗史では、東西本願寺の門末を対象とする場合が多いことからも、佛光寺門徒を取り上げることで、「真宗と地域社会」に新たな像を提示する。
総頁数450頁
本人担当:「近世佛光寺と地域社会―摂津国住吉郡平野郷町奥野家を事例として―」
17頁(227頁~243頁)
編集:大遠忌記念出版『佛光寺の歴史と文化』編集委員会
共著者:金龍静、西岡芳文、草野顕之、山田雅教、津田徹英、神田千里、小山正文、北島恒陽、安藤弥、岡村喜史、松金直美、大畑博嗣、辻岡健志、塩谷菊美、渡辺信和、田中仁、蒲池勢至、西口順子
4 真宗本廟(東本願寺)造営史―本願を受け継ぐ人びと―共著 2011-07-00真宗大谷派宗務所出版部(東本願寺出版部) 文政6(1823)年に東本願寺は、境内からの出火によって2度目の焼失に遭う。その「山内失火と再々建」について、まず「二度の仮両堂建立」を「二期にわたる教化運動」に着目しながら紹介し、続いて「本建両堂と大門の再建」の動向を取り上げる。また全国から上京した僧俗が出身地別に設けた宿泊所である「本山門前の詰所」について、江戸時代から明治以降への展開を紹介する。
総頁数816頁
本人担当:「二度の仮両堂建立」「本建両堂と大門の再建」「本山門前の詰所」
15頁(236頁~250頁)
4頁(429頁~432頁)
監修:木場明志・平野寿則
編集:大谷大学真宗総合研究所真宗本廟(東本願寺)造営史資料室
共著者:安藤弥、川端泰幸、岸泰子、工藤克洋、登谷伸宏、平野寿則、松金直美、山岸常人、江上琢成、加藤享子、蒲池勢至、近松誉
5 伊賀市史 第5巻 資料編 近世共著 2012-09-00伊賀市 「第九章 寺社」のうち、第一節では、寺社と藤堂家の関係と藩の宗教政策について、第二節は、寺社について組織構造や地域社会との関わりを示す史料を収める。浄土真宗の史料としては、東本願寺が末寺からの申請に対して免許下付した物件の記録である「申物帳」を掲載する。伊賀国の真宗寺院は、寺院数が少なく、現存史料も限られている。「申物帳」の記載でしか所在が確認できない寺院もあるため、貴重な史料である。
総頁数:1075頁
本人担当:「第九章 寺社」
88頁(907頁~994頁)
編集:伊賀市
共著者:東谷智、三宅正浩、藤本仁文、藤谷彰、亀岡哲也、上井俊記、増田雄、福持昌之、宮本知恵子、寺嶋一根、平塚理子、横山輝樹、長縄智美、小林秀樹、松金直美、佐竹朋子
6 教如と東西本願寺共著 2013-12-00法藏館 本願寺の東西分派は、慶長7(1602)年の徳川家康による寺地寄進、元和5(1619)年に秀忠から寺領安堵の朱印状の授与を経て、段階的に進められた。各本願寺を支援する家臣団や門末の勢力の分派、つまり教団全体の東西分派とその安定化には、さらに期間を要した。近世真宗教団が、東西分派後における教団内外の流動的状況を経て整備されていった経緯について明らかにしていく。
総頁数:292頁
本人担当:「東西分派後の東本願寺」
17頁(137頁~153頁)
編者:同朋大学仏教文化研究所
共著者:安藤弥、木越祐馨、草野顕之、遠藤一、吉井克信、岡村喜史、川端泰幸、松金直美、金龍静、太田光俊、青木馨、山口昭彦、小山正文、蒲池勢至
7 シリーズ日本人と宗教―近世から近代へ5 書物・メディアと社会共著 2015-05-00春秋社 真宗東派を対象として、近世から近代にかけて、仏教世界において学問と書物がいかに継承され、僧侶の教養形成に活用されていったかを明らかにしていく。近世・近代の各時代における僧侶の教養形成の実態から、時代を架橋した学問・書物の展開について再考する。
総頁数:272頁
本人担当:「僧侶の教養形成―学問と蔵書の継承―」
36頁(89頁~124頁)
編者:島薗進・高埜利彦・林淳・若尾政希
共著者:若尾政希、万波寿子、柳沢昌紀、松金直美、小池淳一、山本英二、引野亨輔、小川原正道、大谷栄一
8 伊賀市史 第2巻 通史編 近世共著 2016-09-00伊賀市 近世伊賀国における寺院関係史料をもとに、全体を概観した上で、特徴的な点について詳述する。
総頁数:1007頁
本人担当:「第五章 地域をとりまく諸相」の「安政伊賀地震」、「第七章 寺社と人びとの信仰」の「キリシタン禁制と宗門改め」「神仏習合の世界」「宗派別に見た寺院の分布」「本末関係と住職の交替」「触頭寺院と触の伝達」「付表4 寺院一覧」
4頁(474頁~477頁)、19頁(594頁~612頁)、20頁(626頁~645頁)、16頁(946頁~961頁)
編集:伊賀市
共著者:藤田達生、福井健二、三宅正浩、藤本仁文、東谷智、山崎善弘、郡山志保、寺嶋一根、藤谷彰、鍛治宏介、澤井廣次、上井俊記、山本厚、松金直美、小林秀樹、山形隆司、鎌谷かおる、笠井賢治、福持昌之、鈴木善幸、増田雄、宮本知恵子、太田光俊、横山輝樹、久世奈欧、佐竹朋子、浅井良亮、上田長生
9 仏教史研究ハンドブック 共編著 2017-02-00法藏館 インド、アジア諸国・地域、中国・朝鮮半島、日本の〈仏教史〉に関する研究テーマを地域横断的、通時代的に見渡しながら、わかりやすくコンパクトにまとめた入門書。そのうち、第3部3章「日本近世」の編集を担当し、分担執筆する。総頁:410頁
本人担当:「日本近世総説」2頁(266頁~267頁)、「浄土真宗」2頁(286頁~287頁)、「異端的宗教」2頁(312頁~313頁)。
編者:佛教史学会
共著者:松金直美、安藤弥、他115名
10 本願寺教団と中近世社会共著 2020-06-00法藏館 三河の真宗寺院である専福寺(真宗大谷派・愛知県岡崎市)と東泉寺(真宗高田派・愛知県岡崎市)の由緒書・縁起を取り上げ、真宗寺院が統一権力と関連する歴史像を語ることを通して、いかなる現実的な権利や権威性を獲得しようとしたのか検討する。
総頁数:308頁
本人担当:「真宗寺院の由緒書にみる統一権力像」
18頁(255頁~272頁)
編者:草野顕之
共著者:草野顕之、工藤克洋、安藤弥、川端泰幸、山本春奈、湊悠介、木越祐馨、青木馨、山田哲也、老泉量、松尾奏子、大畑博嗣、松金直美
以上10点
Ⅱ学術論文
1 近世山村社会における真宗道場の性格―越中国射水郡葛葉村名苗家を事例として―単著 2006-01-00『眞宗研究』第50輯(眞宗連合学会) まず先行研究において、真宗道場の形態や変遷がいかに理解されているかを確認する。その後、自庵的真宗道場であった越中国射水郡葛葉村(富山県氷見市葛葉)の名苗家を取り上げる。道場の側に残存する史料をもとに、近世真宗道場の地域社会における日常的な姿を浮かび上がらせる事で、先行研究では見えなかった真宗道場の形態や機能を見出していく。
28頁(101頁~128頁)
査読あり。
2 近世真宗における<教え>伝達のメディア単著 2006-12-00『大谷大学大学院研究紀要』第23号
(大谷大学)
近世に真宗教団上層(学僧)が発信した〈教え〉の内容が、広く寺・道場・門徒まで伝達される過程の一端を明らかにするため、学僧による講義を筆録した講録や、それが流布される際の媒介者が果たしたメディア(媒介)としての機能を考察する。近世に真宗道場であった名苗家所蔵の講録の分析を通して、真宗の〈教え〉が伝達される際、道場主や門徒団の主導者が大きな役割を果たしたことに言及する。
34頁(383頁~416頁)
査読あり。
3 近江の廻り道場―近世後期における「惣」道場の一形態―単著 2007-10-00『宗教民俗研究』第17号(日本宗教民俗学会) 従来の真宗道場の分類ではほとんど取り上げられてこなかった、常設の建物がなく、門徒集団内において、本尊(方便法身尊像や六字名号など)を回り持ちし、各門徒宅にて法要を行なう習俗である「廻り道場」の形態について検討する。建物の設置によってではなく、本尊の存在によって成立するという真宗信仰の場の特性が、「廻り道場」を取り上げることで、明らかになると考える。
24頁(22頁~45頁)
査読あり。
4 『教行信証』後序にみる流罪記録単著 2007-10-00『頸城文化』第55号(上越郷土研究会) 『教行信証』後序の流罪記録は『親鸞伝絵』に引用される。また『歎異抄』や『血脈文集』には、流罪・死罪となった法然弟子の名など『教行信証』後序にない記述があり、非僧非俗の身となって「禿」を姓としたと書かれる。『教行信証』後序に親鸞自らが記し、その後『歎異抄』『血脈文集』『親鸞伝絵』などに改めて書かれた点こそ、親鸞が到達してその後歩んで行った念仏者としての姿勢で、後世に受け止められた親鸞像の起点を示す。
6頁(32頁~37頁)
5 名苗家における<知>の受容―真宗道場の「俗」をめぐって―単著 2007-11-00『氷見春秋』第56号(氷見春秋会) 名苗家蔵書の最も特徴的な点は多くの真宗関連書を有する事であるが、その他にも多様な分野の書籍を有する。それは、村落上層の知識人にみられる傾向と言えるだけではなく、近隣の門徒が参詣に来ていた道場であり、当主が宗教者としての役割を果たす場合もある道場主という点による。「聖」の側面を持ちながらも、身分上は百姓であり、行政的・経済的な活動を盛んに行っていたという「俗」の側面も併せ持つ、当家の性格をあらわす。
8頁(1頁~8頁)
6 近世地域社会における真宗道場の性格(博士論文)単著 2009-03-00大谷大学 真宗道場あるいは道場主・旦頭といった人々に焦点をあて、近世仏教世界像の再構築を目指す。第一部では「真宗道場の社会的存在形態」を考察するため、第一章「越中の自庵」と第二章「近江の「廻り道場」」を取り上げる。第二部では、近年研究の盛んな蔵書論やメディア論の視点を取り入れながら、地域社会における「宗教的〈知〉の展開」について、道場主・旦頭の位置づけを特に意識して考察する。
総頁数88頁
7 親鸞の妻恵心尼―恵心尼書状を通して―単著 2010-09-00『頸城文化』58号(上越郷土研究会) 恵心尼書状を通して、(1)恵心尼が夫である親鸞をどのようにとらえていたかを確認し、また(2)恵心尼の浄土観を親鸞との比較を通してみていくことから、女性の視点から真宗についてとらえ直してみたい。それはその後の真宗教団の特質を明らかにすることにも結び付くものと考える。
7頁(41頁~47頁)
8 近世地域社会における宗教関係の形成―摂津国住吉郡平野郷町奥野家を中心として―単著 2011-03-00『大谷大学史學論究』第16号(大谷大学文学部歴史学科) 真宗佛光寺末の門徒であった摂津国住吉郡平野郷町野堂町(大阪市平野区平野本町)の奥野家を取り上げる。仏教教団による組織化と、それに対応する門徒の教団内部における社会的地位の確立、一方での地域社会における自律的な宗教関係の構築について、同時に論じることを目論む。それによって、仏教史研究と、その他の諸宗教を扱う研究の有機的な接合を目指す。
22頁(18頁~39頁)
9 近世真宗東派における仏教知の展開―正統教学確立と異安心事件をめぐって―単著 2013-03-00『真宗文化』第22号(京都光華女子大学真宗文化研究所) 近世の真宗東本願寺教団(東派)の主要な学僧である香月院深励と香樹院徳龍の2名を取り上げ、正統教学が確立され、その仏教知が伝達・受容されていく過程を明らかにする。正統教学とはいかなるものであるのか追究される動向の中で、真宗の異端的信仰とされる異安心の疑いのある者が摘発され、取り調べられた。そのため異安心事件についても言及していく。
21頁(107頁~127頁)
査読あり。
10 天保四年東本願寺門跡達如の関東参向単著 2013-03-00『近世の天皇・朝廷研究』第4号(朝幕研究会) 東本願寺門跡の関東参向を取り上げ、近世における東本願寺の門跡ならびに教団の社会的位置を考察する。特に、天保4(1833)年に実施された達如と新門主である宝如(1813~41)が同道した関東参向を取り上げる。その際、①門跡をはじめとする教団上層、②幕藩権力、③民衆(門徒)・地域社会、三者の関係性に留意することにつとめる。
20頁(99頁~118頁)
査読あり。
11 近世における寺院一山組織の形成―伊賀国観菩提寺を事例に―単著 2014-03-00『寺社と民衆』第10輯(民衆宗教史研究会出版局) 藤堂藩領の伊賀国に所在し、当初は無本寺であったものの山城国嵯峨大覚寺(京都市右京区)の末寺となった近世寺院としての観菩提寺(三重県伊賀市島ヶ原)の特色を明らかにしていく。さらには近代に至り、近世に形成された体制が崩壊し混乱をきたした様相も取り上げることから、従来は十分に検討されてこなかった、寺院組織の近世から近代への変容について検討する足がかりとする。
16頁(6頁~21頁)
12 真宗寺院における建築・荘厳の形成―洛中堂僧寺院を事例として―単著 2016-06-00教学研究所編『教化研究』158号(真宗大谷派宗務所) 近世に代々堂僧(堂衆)を務めた長覺寺(京都市下京区五条通西洞院西入平屋町)を取り上げ、真宗寺院の建築・荘厳の形成を検討する。堂衆寺院の建物の多くは、座敷と内陣・余間・外陣からなる御堂とが一体化した座敷御堂形式で、御堂の内陣は押板形式である。これまでは、特殊事例として認知されるに留まっていたが、道場形式を残存させている寺院形態として、道場から寺院への変遷を考える上で重要な事例として位置づける。
29頁(165頁~193頁)
13 京坂「切支丹」一件に対する佛光寺教団の対応単著 2016-10-00『歴史の広場―大谷大学日本史の会会誌―』19号(大谷大学日本史の会) 19世紀前半に起こった京坂「切死丹」一件において、門徒から「切死丹」の発覚した佛光寺教団における対応を考察し、教団が主体的に担うべき信仰の問題として受け止めていたことを明らかにする。14頁(3頁~16頁)
14 地域真宗史研究の可能性―新潟県をフィールドとして―単著 2016-12-00教学研究所編『教化研究』159号(真宗大谷派宗務所) 調査報告を交えつつ、地域や民衆の視点から真宗史に取り組む際の方法を、新潟県をフィールドとして提起する。なお、一定度の史料が残存する近世から近代を対象として、地域真宗史の方法を提示しながら、その研究の可能性を模索する。
12頁(69頁~80頁)
15 学寮講者にみる護法思想―香樹院徳龍を事例として―単著 2017-06-00『真宗教学研究』第38号(真宗教学学会) 19世紀前半における東本願寺教団の代表的学寮講者である香樹院徳龍にみられる語法思想を取り上げ、それが生み出された背景に、挫折や苦悩があったことを明らかにする。
17頁(68頁~84頁)
査読あり。
16 近代における「伝統宗学」史観単著 2017-12-00教学研究所編『教化研究』第161号(真宗大谷派宗務所) 近代における教学の担い手らは「伝統宗学」の緻密な学問姿勢を継承しつつ、乗り越えるべき対象として真摯に向き合った。「近代教学」は、「伝統宗学」からの系譜の延長上に構築された歴史として長く語られてきた。
15頁(38頁~52頁)
17 近代真宗における伝統性の構築―富山県西礪波郡刀利村の民衆世界を通して―単著 2019-01-00教学研究所編『教化研究』第163号(真宗大谷派宗務所) 富山県西部を流れる小矢部川の上流にあった真宗村落である刀利村(富山県西礪波郡、現・南砺市〈旧福光町〉刀利)を対象とする。近世から近代、そして現代までの変遷と、本願寺歴代と直結した同村の歴史が、近代以降、当該地域の民衆によっていかに認識され、語られてきたかを検討する。そこには前近代からの伝統性の系譜の上に、真宗門徒としての自らを認識する様相が見られる。
19頁(120頁~138頁)
18 近世近代における聖徳太子信仰展開―井波瑞泉寺とその周辺地域―単著 2020-07-00教学研究所編『教化研究』第166号(真宗大谷派宗務所) 井波瑞泉寺とその周辺地域における聖徳太子信仰が近世から近代にかけて、どのように社会へ浸透していったのか、その様相と要因に迫る。真宗寺院やその門徒における太子信仰を取りあげることで、個別の宗派史・寺院史としての研究成果もふまえつつ、それにとどまらない総合的な視点での仏教史、さらには宗教・宗派を横断する視点からの宗教史研究との接合も可能にする。
25頁(136頁~160頁)
19 近世における東本願寺周辺地域の被差別部落と真宗単著 2022-06-00教学研究所編『教化研究』第168号(真宗大谷派宗務所) 東本願寺の周辺地域にあった被差別部落について、真宗の集落として言及する。東西本願寺は、政治権力の政策による影響を受け、全国の寺院・門徒を統括した真宗の本山であるのみならず、諸関係の中で地域社会に存立した一寺院であった。東西本願寺周辺の地域性を検討することは、そのような東西本願寺の実態に迫ることとも連動する。
28頁(152頁~179頁)
20 明治期北海道における真宗布教の様相単著 2024-01-00『眞宗研究』第68輯(眞宗連合学会) 明治期における北海道での真宗布教の実態や移民の具体像に迫った。移民として北海道の地に赴いた僧侶や門徒には、社会的経済的に抑圧された人びとも多かった。生きていくための居場所を求めて移住した北海道は、先住民族であるアイヌの住む地であり、そこでは植民者であった。そのような状況が生まれた社会的な構造を明らかにしながら、北海道をめぐる複雑な状況をとらえる方法を模索する必要性を提起した。
20頁(270頁~289頁)
21 近世真宗と地域社会単著 2024-10-00『歴史評論』894号(歴史科学協議会) 「真宗寺院の成立過程」のとらえ方を提示した上で、近江国の真光寺を取り上げた。前半では法宝物や文書から確かめることのできる同寺の歴史をたどった。後半では、近世と近代の縁起において、そこに至るまでの歴史がどのように記述されているのかを紹介した。真宗寺院において、古代・中世以来の歴史がいかに認識されていたのかを確かめることによって、「真宗と地域社会」を考えた。
15頁(17頁、42頁~55頁)
以上21点
Ⅲ 口頭発表・その他
1 近世山村社会における真宗道場の性格
―越中国射水郡葛葉村名苗家を事例として―
口頭発表、一般発表 2005-06-03真宗連合学会第52回大会
(於、龍谷大学)
まず先行研究で取り上げられている真宗道場の形態・変遷と真宗道場事例を紹介する。その上で、真宗道場の一事例として越中国射水郡葛葉村(現富山県氷見市葛葉)の名苗家を取り上げ、本山側の史料(『故実公儀書上』)や、先行研究で取り上げられた事例などからだけでは見えてこなかった、真宗道場の形態・機能を見出す。(20分)
2 近江の廻り道場口頭発表、一般発表 2006-06-10日本宗教民俗学会大会
(於、大谷大学)
従来の真宗道場の分類ではほとんど取り上げられてこなかった、常設の建物がなく、門徒集団内において、本尊(方便法身尊像や六字名号など)を回り持ちし、各門徒宅にて法要を行なう習俗である「廻り道場」の形態について検討する。建物の設置によってではなく、本尊の存在によって成立するという真宗信仰の場の特性が、「廻り道場」を取り上げることで、明らかになると考える。
3 近世後期における真宗の講とその由緒形成
―近江の番方講を素材として―
口頭発表、シンポジウム 2007-10-07日本民俗学会第59回年会、小シンポ「真宗と民俗」
(於、大谷大学)
近世後期に形成された真宗の講の実態と、その講で伝える由緒について考察する。具体的には、寛正年中の大谷本願寺破却後、蓮如が近江国蒲生郡日野に隠棲していた際、当該地域の門徒が番方として守護したとする伝承を伝える、番方講と歯黒講をとりあげる。近世後期に、由緒形成の動きなどと連動し、地域社会のアイデンティティを形成して結集を強めるための一形態として、これらの講が形成された。
4 書評 児玉識著『近世真宗と地域社会』書評 2010-03-00『佛敎史學研究』第52巻第2号(佛敎史學會) 著者による長年の研究成果から、西日本の西本願寺門末を中心とした「近世真宗と地域社会」像を鮮やかに描いた著書である。ただし他地域の真宗を対象とした真宗史研究では、また異なるイメージが提示されている。今後、様々な研究成果を多様性として終わらせるのではなく、それらをもとに「近世真宗と地域社会」の全体像を描くための方法を試案として提示した。
11頁(85頁~95頁)
5 門主達如の下向・参向―近世東本願寺教団の社会的位置をめぐって―口頭発表、一般発表 2010-10-23佛教史学会第61回学術大会
(於、佛教大学)
近世における東本願寺教団の社会的位置を考察するため、20世門主達如が各地へ下向あるいは関東へ参向したことを取り上げる。東本願寺門主の下向・参向を通して、仏教教団の自律性と国家権力(特に藩権力へ着目)による統制の関係を明らかにし、さらに地域社会において仏教教団がいかに認識・対応されたかも検討する。(30分)
6 東本願寺門跡の関東参向口頭発表、一般発表 2012-09-16近世の天皇・朝廷研究第5回大会
(於、学習院大学)
東本願寺門跡の関東参向を取り上げ、近世における東本願寺の門跡ならびに教団の社会的位置を考察する。東本願寺歴代門跡の中でも多くの下向・参向が確認され、また下向・参向の形態や目的が変容していったと考えられる20世達如の時代に着目する。その際、①門跡をはじめとする教団上層、②幕藩権力、③民衆(門徒)・地域社会、三者の関係性に留意する。
7 近世仏教教団の「切支丹」に対する認識と対応─京坂「切支丹」一件を通して―口頭発表、シンポジウム 2013-01-27佛教史学会1月例会、ミニシンポジウム
(於、龍谷大学)
文政10年(1827)に京都・大坂で「切支丹」が発覚し、文政12年(1829)12月に処罰が下された「京坂「切支丹」一件」を取り上げ、当該期の「切支丹」認識や当該事件を機に変容した宗教政策について検討する。その際、大坂町奉行所・幕府と仏教教団の差異に留意する。
8 門跡達如と近世後期の東本願寺教団口頭発表、一般発表 2014-07-12東海印度学仏教学会第60回学術大会
(於、同朋大学)
東本願寺20世達如が在職・在世した近世後期は、東本願寺教団における組織や体制の基盤が再編成された時代である。達如は歴代門跡の中でも多くの下向・参向を行い、また下向・参向の形態や目的が変容していった時期である。当該期の関東参向に着目しながら、近世後期における東本願寺教団の組織・体制と社会的位置について検討していく。(20分)
9 仏教における学問と蔵書の継承―近世から近代へ―」口頭発表、一般発表 2014-08-21日本宗教史懇話会サマーセミナ―
(於、白浜荘)
真宗東派を対象として、近世から近代にかけて、仏教世界において学問と書物がいかに継承されていったかを明らかにする。僧侶による学問は、仏教・宗学に限定したものではなく、また宗学に関してもその中には様々な内容と立場があった。幅広い分野について学ぶ営みが、正統と異端のはざまで模索する僧侶の姿も生み出していくこととなった。
10 真宗僧侶にみる自省自戒意識―近世後期における護法思想として―口頭発表、パネルディスカッション 2014-10-25日本思想史学会パネルセッション「近代日本仏教の「前夜」―幕末維新期における護法論の射程―」
(於、愛知学院大学)
19世紀前半に活躍した真宗東本願寺教団の学寮講者である香樹院徳龍(1772~1858)にみられる護法・排耶思想を取り上げる。排耶思想にあたる「切支丹」への対応は、「切支丹」を制禁して社会的に異端と位置付けていた近世を通しての課題であった。護法・排耶論を、教団内外の危機に対して明確化していった思想ととらえながら、幕末へ至るまでの展開を考察する。
11 東本願寺教団と幕藩権力―加賀藩領を事例として―口頭発表、シンポジウム 2014-11-26京都大学人文科学研究所共同研究「日本宗教史像の再構築」第5回研究会、公開研究会「近世仏教像の新たな構築に向けて―真宗論からのアプローチ―」
(於、京都大学人文科学研究所)
近世後期の東本願寺教団における①門跡の下向、②両堂再建、を対象に、加賀藩領における動向を取り上げる。その際、幕藩権力による統制と真宗教団の自律性の関係を検討することを課題とする。(40分)
12 学寮講者にみる護法・排耶思想口頭発表、一般発表 2016-07-03第23回真宗大谷派教学大会
(於、大谷大学)
幕末維新期に先行する19世紀前半において、真宗東本願寺教団の学寮講者にみられる護法・排耶思想を取り上げる。
当該期の代表的な護法僧である香樹院徳龍(1772~1858)らの動向・思想は、当該期の教団内外の危機への対応と言えよう。これは、幕末に顕在化する護法・拝耶論へ展開していく前段階のものとして位置づけられる。(20分)
13 書評 和田幸司著『近世国家における宗教と身分』書評 2017-11-00『日本史研究』663号(日本史研究会) 本書は、近世西本願寺教団の被差別寺院と本山・有力寺院を対象に、「近世国家における宗教と身分」を考察している。被差別寺院について、前提として特殊な存在とみなさず、非部落寺院との差異のみならず共通性も意識した検討の必要性を提示した。
8頁(111頁~118頁)
14 〈書評〉中西直樹著『近代西本願寺を支えた在家信者―評伝 松田甚左衛門』書評 2019-05-00『近代仏教』26号(日本近代仏教史研究会) 本書は「近代西本願寺を支えた在家信者」として、松田甚左衛門(1837~1927)を取り上げた評伝である。近代知識人を中心に描かれてきたこれまでの近代仏教史研究に対し、在家信者にも着目すべきことを指摘しており、その視点からの新たな近代仏教史像の一端が提示されている一書と評価できる。ただし在家信者の台頭を、近代的な動向としてのみとらえているが、近世以来の土壌の中から生み出された存在であることに着目すべき、と指摘した。
5頁(147頁~151頁)
15 書評 大橋幸泰『近世潜伏宗教論―キリシタンと隠し念仏―』書評 2019-12-00『歴史学研究』No.991(歴史学研究会) 本書は、これまで近世日本のキリシタン民衆をめぐる問題をテーマに研究へ取り組んできた著者が、近世を通じて潜伏キリシタンが存在し続けた意味を解明するため、キリシタン以外の「異宗」「異法」にも着目して論じた成果をまとめたものである。ただし真宗の“隠し念仏”に言及しているにもかかわらず、真宗教団や真宗寺院側の史料をあまり取り扱っていない点が気にかかると指摘した。
3頁(29頁~31頁)
16 書評 芹口真結子著『近世仏教の教説と教化』書評 2020-10-00『史学雑誌』第129編第10号(東京大学文学部内史学会) 本書は、本山権威のもと教学の「正統」であった学寮の講者が、様々な教学論争のなかで異安心と疑わしい事象へ向き合う姿を鮮やかに描き出している。ただし東派教団における教学は、学寮、堂僧、相伝などが交錯しながら並存し、安心をめぐる争論が度重なって起こる混沌とした世界でもあった。近世前期から後期、そして近代への展開も含めて、そのような様相を具体的に明らかにすることが次なる課題となることを指摘した。
8頁(93頁~100頁)
17 研究課題「現如上人と北海道の開拓・開教」への取り組み過程口頭発表、一般発表 2022-07-30大谷大学日本史の会大会
(於、大谷大学)
まず2022年の現如上人百回忌を迎えるにあたり、現如上人の足跡、特に、北海道開拓事業の象徴的存在として参画した歴史の検証を求める機運が高まっていたことからこの研究課題に取り組み始めた事を述べた。そして、これまでの研究成果を確かめた上で、実施したフィールドワークの概要について報告した。
(40分)
18 呉西の真宗風土と東本願寺両堂再建の歴史口頭発表、パネルディスカッション 2022-09-04井波御坊フェス
鼎談「真宗の生活」
(於、井波別院瑞泉寺)
「呉西の真宗風土」とは、越中と京都・本山を往来した数多くの僧侶・門徒によって醸成された文化である。それは民衆史としてとらえられ、また真宗教団史の地域的展開を示すものでもある。そのような歴史を持つ呉西は、呉東も含めた越中国全体をけん引する存在とも言える。
19 井波別院瑞泉寺と周辺地域の信仰―聖徳太子信仰を中心として―講演 2023-03-03千總文化研究所調査報告会
(於、千總文化研究所)
井波瑞泉寺(井波別院瑞泉寺、富山県南砺市)と周辺地域で継承されてきた信仰について、特に聖徳太子信仰に着目して紹介する。本報告を通して、本山-御坊・別院-一般寺院・門徒という真宗教団と、宗派の枠組みを超えた地域社会と、両面の結節点として、太子信仰を基盤とする井波瑞泉寺が存在してきたことが確かめられた。(45分)
20 北海道における真宗布教の様相口頭発表、一般発表 2023-06-17真宗連合学会第69回大会
(於、京都女子大学)
北海道における真宗布教に従事した僧侶の語りや、大谷派が示す布教方針から、布教現場の実態に迫る。具体的には、浩々洞から刊行された明治34(1901)年創刊の雑誌『精神界』に掲載されている記事などをもとに言及する。北海道布教をめぐる社会構造と、そこで述べられた言説を明らかにし、内包される課題を考える一助とする。(20分)
21 大桑斉著『寺檀の思想』解説解説 2023-07-15大桑斉著『寺檀の思想』(法藏館文庫) 昭和54(1979)年3月に刊行された大桑斉による最初の単著『寺檀の思想』が、法蔵館文庫で再刊された際の解説。「寺檀の思想」を追究し、さらに寺檀制を越えるような方向性も仏教に見出した一書である、と位置づける。
12頁(271頁~282頁)
22 [最近読んだ本]草野顕之著『親鸞伝の史実と伝承』 書評 2024-03-00『歴史の広場』26号(大谷大学日本史の会) 本書の特徴は、親鸞の生涯をめぐる重要なトピックを編年で章立て、各章のテーマについての主要な研究史を整理し、現在における研究の到達点が示されていることである。ただし伝承史料を扱う上で、「行実の一端を把握する」ことや「親鸞の生涯を明らかにする」ことを目指す方法には、検討の余地もあるのではないか、指摘した。
5頁(74頁~78頁)
以上22点

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