教育研究業績の一覧

深町 博史
A 教育業績
教育実践上の主な業績 年月日概要
1 教育内容・方法の工夫(授業評価等を含む)
1 授業課題の講評と共有 2018-04-00 ~ 授業内で学生に課した課題をすべて匿名の形で一覧化し、学生に配布する。同時に、優秀なものへの評価と、添削が必要なものへのアドバイスを次回授業内で行っている。
教員ではなく同じ学生同士の考え方に広く触れられることで学生のモチベーションや回答の質に向上が認められる。
また、学生の授業理解だけではなく、その興味関心に応じてそれ以降の内容を調整することで、より学生の実態に即した授業を展開できた。
2021年度は前期で一部授業がオンラインとなったが、これを積極的に活用することで対面授業再開まで学生の学びへの意欲が保たれているように見えた。
2 卒論の中間発表とオフィスアワーでの補習的指導 2019-04-00
~2019-12-00
卒論ゼミの指導において、全ての学生に中間発表を求めた。学生同士の議論を踏まえてコメントすることで、卒業研究上必要な手法や多様な視点を全体で共有できるように努めた。また、研究上問題が見られる学生に対してはオフィスアワーを活用して補習的な指導も行った。これらにより多くの学生が一定水準以上の卒業論文を書き上げることができた。
3 卒業論文集の刊行 2020-03-00 口頭試問後に、学生に卒業論文に加筆を加えた論集を刊行させた。論文の改稿だけではなく、学生自身が表装や内容について自主的に議論して決め、大学生活を振り返る座談会を企画するなど、学生にとって有意義な活動となった。
2 作成した教科書、教材、参考書
1 日本文学の講義およびライティングの授業における教材(プリント、パワーポイント)の作成

2017-04-00 ~ 共通科目ではない、自分がシラバスを書いて行う授業では、必ず自分で作成したレジュメやパワーポイントを使用するようにしている。文学の授業では取り扱う資料が多岐にわたるため、それらの重要箇所を引用したレジュメが有用である。また、ライティングの授業では一般書籍などを使って文章の書き方を教えるよりも、自分自身の考え方や実践していることを示しながら段階的に身につけさせるほうが有効であった。
2 教材向け『森志げ全作品集』の刊行 2022-03-24 ~ 明治後期に活動した作家である森志げの全作品集を編集・刊行した。
森志げは森鷗外の後妻であり、森茉莉や森類らの実母である。志げは夫の薦めにより明治42年から大正元年にかけて合計23作品を発表し、単行1冊を刊行した。その後、単行本は絶版とされ、代表作数編はアンソロジーに収録されるなどしたが、大半は初出以降未刊行状態であった。
その作家・作品研究はほとんどなされていなかったが、志げの作品はこれまでに高く評価されてきた諸作とは違う視点から明治期の女性の生活と精神を伝えており、再読すべき価値がある。
そこで、全作品の本文一冊に取りまとめ、註釈と解題を付して『森志げ全作品集』として嵯峨野書院より2022年3月に刊行した。共編・瀧本和成。
3 教育方法・教育実践に関する発表、講演等
4 その他教育活動上特記すべき事項
1 立命館大学の大学院生とともに日本近現代文芸研究会を設立、同時に機関誌「日本近現代文芸研究」(ISSN 2435-2144)の刊行を行っている。 2018-04-00 ~ 大学院生にとって重要な論文の書き方や研究の基礎を身につけられる場として、また、学会にはない自由な発想を育てる場として有志の研究会を設立した。また、その機関誌として「日本近現代文芸研究」を創刊し、その編集を担当している。論文や特集を掲載しているが、論文は原則として外部の研究者に査読を依頼するなど公正を期して質の確保に努めている。大学からの補助金も給付されるなど、活動は一定の評価を受けている。
2 立命館大学「文学と社会」へのゲストスピーカー 2019-11-28 受講生に社会における文学の役割を考えさせる授業の中で、「文学と学校」に注目するセクションを用意した。そこへ中高一貫校の現職教諭を招聘して学校現場において文学が国語とどのように違い、どのように取り扱われているのかを講義して頂いた。受講生の中には教員志望の学生も多く、「論理国語」と「文学国語」の問題には深く考えさせられていたようであり、有意義な講義となった。

B 職務実績
1 文学グループパトスの会 2013-04-00 ~ 1979年に設立され、41年目を迎えた、兵庫県川西市で活動する市民団体。主に近現代の文学作品に関する講義を毎月開催している。そこへ毎年3、4回出講している。
2 川端康成文学館 2016-09-18 川端康成文学館からの依頼により、連続講座の一部を担当した。
3 川端康成文学館 2019-02-17 川端康成文学館からの依頼により、2018年度連続講座「明治の文豪たち」の第6回を担当した。題目は「脱漱石の門下生―芥川龍之介『枯野抄』、久米正雄『破船』を中心に―」。
4 大阪・京都文化講座オンライン 2021-11-22 ~ 大阪大学と立命館大学の共催による大阪・京都文化講座オンライン講座「東往西来-旅する人びとと文化」(2021年11月8日~12月13日)にて第3回講義を担当した。題目は「司馬遼太郎が歩いた道 -『街道をゆく』を読む」
5 立命館オンラインセミナー 2022-02-14
~2022-02-28
立命館大学が主催する立命館オンラインセミナ―「鷗外と漱石 - 百年の邂逅」(2022年2月7日~28日)のうち、第2回と第4回の講義を担当した。題目はそれぞれ第2回「夏目漱石の軌跡―「私の個人主義」を読む」、第4回「夏目漱石の晩年―『明暗』を読む」。
6 立命館オンラインセミナー 2022-07-05
~2022-07-19
立命館大学が主催する立命館オンラインセミナ―にて「背徳のベストセラー」と題して全2回(2022年7月5日、7月15日)の講義を行った。反道徳的とされる内容でありながら流行語を生み出すほどのベストセラーとなった作品を対象に、第1回「谷崎潤一郎「痴人の愛」を読む―「愛」と道徳」、第2回「石原慎太郎「太陽の季節」を読むー「衝動」」と道徳」をともに担当した。
C 学会等及び社会における主な活動
所属期間及び主な活動の期間 学会等及び社会における主な活動
1 2011-04-00~0000-00-00 日本近代文学会
2 2012-04-00~0000-00-00 日本文芸学会 2015年6月~2018年5月(監事)、2018年6月~2022年5月(常任理事)、2022年6月〜現在(理事)
3 2013-04-00~0000-00-00 国際啄木学会
4 2017-10-00~0000-00-00 日本近代文学会 関西支部
2018年4月~2022年3月運営委員
D 研究活動
著書、学術論文等の名称単著、
共著の別
発行又は
発表の年月
発行所、発表雑誌等
又は
発表学会の名称
概要
Ⅰ著書
以上0点
Ⅱ学術論文
1 夏目漱石『行人』論 : 長野一郎の軌跡

単著 2013-03-00『日本文藝学』(49) 日本文芸学会 主要な登場人物である長野一郎に焦点を当て、彼が自らの知性によって論理的に追い詰められ苦悩を深めていく過程とそのメカニズムの詳細を明らかにした。19頁(51-69頁)
2 石川啄木と夏目漱石 : 明治三九年の小説「雲は天才である」と「野分」をめぐって単著 2014-03-00『国際啄木学会研究年報』(17) 国際啄木学会 啄木と漱石がほぼ同時期に執筆した二作品を比較し、両者の教育観や青年観における類似点と相違点を考察した。ともに教育問題に関心を持ちつつも、既存の教育や社会を批判する啄木と、青年個人を奮発させようとする漱石との対照を明らかにした。13頁(19-31頁)
3 夏目漱石『硝子戸の中』論

単著 2014-12-00『立命館文學』(640)立命館人文学会

作品が当初の構想とは異なる内容を含み込んで行った過程を、単なる執筆動機の変化ではなく、執筆行為を通じた主題の展開であることを明らかにし、漱石自身がその手法を積極的に用いていた点に言及した。11頁(247-257頁)
4 夏目漱石後期文学の展開 ―「思ひ出す事など」、『彼岸過迄』、『行人』、『心』、『硝子戸の中』における「不定」の軌跡―単著 2016-03-00博士論文 所謂〈修善寺の大患〉以降、夏目漱石が新聞連載した作品のなかでも作者が執筆中に当初の構想を大きく変えて書きあげた5作品を対象とし、その「不定」の内に行われた創作の展開の内実を追求した。173頁
5 石川啄木『我等の一団と彼』考

単著 2017-03-00『東北文学の世界』 (25) 盛岡大学文学部日本文学会 これまで作品は作者である啄木の言説や思想から読み取られ、その主題も同時代主潮への批判に収斂されてきたが、作品の精読を通じて一元的なものには回収され得ない内的世界の諸相を明らかにした。17頁(13-29頁)
6 夏目漱石「永日小品」論 :「暖かい夢」、「心」の断面一考単著 2018-10-00『日本近現代文芸研究』(1) 日本近現代文芸研究会

作品の全体性や一貫された主題を問いがちであった先行研究とは異なり、特定の主題に収斂しない、多様なあり方こそが「永日小品」の本質であるとの立場から二篇を取り上げ、詩的散文である小品という形式の中に描かれた主題をそれぞれに論じた。11頁(4-14頁)
以上6点
Ⅲ 口頭発表・その他
1 「行人」論 ―長野一郎の苦悩をめぐって―口頭発表 2012-06-00第49回日本文芸学会大会(日本文芸学会) 主要な登場人物である長野一郎と妻である直との夫婦関係に焦点を当て、彼が自らの知性によって自己を追い詰め、苦悩を深めていく過程とそのメカニズムを明らかにした。(25分)
2 夏目漱石「彼岸過迄」論――須永市蔵を中心に――口頭発表 2012-12-00立命館大学日本文学会第137回研究例会(立命館大学日本文学会) 主要な登場人物であり、後半部の中心人物なる須永市蔵を取り上げ、帝国大学の法科出身という近代的立身出世主義の象徴ともいえる経歴を持ちながら内面的には前近代性を深く内面化された人物であるという視点から、須永が「退嬰主義」に陥っていく過程を考察した。(25分)
3 石川啄木と夏目漱石―明治末期の青年と社会-口頭発表 2013-04-00国際啄木学会2013年旭川セミナー(国際啄木学会) 啄木と漱石がほぼ同時期に執筆した二作品「雲は天才である」と「野分」を取り上げ、啄木が「教育」の問題を通じて描いた青年像と、漱石が「学問」の問題を通じて描いた青年像との比較を行い、いずれも次世代の若い世代への希望を込めて描かれた作品であると位置づけた。 (25分)
4 足立直子・金泯芝・田村修一・外村彰・橋本正志・渡邊浩史編『芥川と犀星』その他 2013-05-00『論究日本文学』(98)  (立命館大学日本文学会) 新刊紹介。該当書籍の紹介をおこなった。1頁(105頁)
5 夏目漱石後期の漢詩―漢詩と南画―口頭発表 2013-08-00立命館明治大正文化研究会(立命館明治大正文化研究会・国文学研究資料館共催) 漱石が晩年において連載休止期間中に創作した南画とその自賛の漢詩はそれほど研究が進んでいなかったが、先行研究においては一つの時期に括られることの多い画賛を、その創作時期と傾向から三つの時期に区分し、趣味的な画とで閑的な詩が調和した初期と、にわかに画が深刻に塗りこめられていくようになる中期と、創作の中心が漢詩に移っていく後期の特徴をそれぞれ概括的にではああるが論じた。(30分)
6 森しげ「波瀾」論口頭発表 2015-01-00二〇一五 ソウル・京都 東アジア次世代国際学術大会(立命館大学・高麗大学校) 「波瀾」の題とは裏腹に、非日常的な事件もそれほど劇的な展開も見らない作品であるが、作中に起こる日常レベルでの様々な出来事を「波瀾」と捉える主人公富子の視点に立った時に、作品が作者志げが夫鷗外に送ったメッセージが読み取れることを明らかにし、本作が同時代に寄り添って生きた女性達の心のありようを映し出すものとして従来の価値観とは異なる見方から再評価に値するのではないかと提起した。(20分)
7 小寺正敏著『幻視の国家-透谷・啄木・介山、それぞれの〈居場所探し〉-』その他 2015-03-00『国際啄木学会研究年報』(18) 国際啄木学会 新刊紹介。該当書籍の紹介をおこなった。1頁(80頁)

8 夏目漱石「点頭録」論 ―最晩年の戦争随想―口頭発表 2015-08-002015 西安•京都 戦後70年記念国際学術研究交流大会(西安交通大学・立命館大学) 作品は漱石が没した年の一月に執筆されたが、作者の病気により9回掲載されただけで中断し、打ち切られた。ごく短い随想であるが、それまでの作品とは異なり戦争を真正面から主題にしていることを特徴にしている。発表ではそれを語るために用いられている「一体二様の見解」が、随想『硝子戸の中』以降顕著になった思考法であり、それが『道草』や『明暗』、「則天去私」へと連なるものであることを指摘した。(20分)
9 明日の考察~130年の時を超えて~パネルディスカッション 2016-11-00国際啄木学会2016年盛岡大会(国際啄木学会) 啄木生誕130周年を記念した大会において、望月善次氏により若手研究者パネリストの一人として塩谷昌弘氏、劉怡臻氏とともに指名され、啄木が歌の中に詠んだ「新しき明日」に関する自身の見解と啄木研究の課題と展望について披歴し、それをもとに討論した。啄木の思想的展開は彼の刺激的な言葉により様々な「主義」の移り変わりとして論じられてきたが、その言葉の内実に寄り添って等身大の啄木像を構築する必要性を訴えた。(90分)
以上9点

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