教育研究業績の一覧

田中 正隆
A 教育業績
教育実践上の主な業績 年月日概要
1 教育内容・方法の工夫(授業評価等を含む)
1 学内アンケート 2006-00-00 2006年、2012年に実施した学内でのアンケートでは、
Ⅰシラバスの有効性、Ⅱ履修者の受講態度、Ⅲ授業内容への評価、Ⅳ授業目標の達成度、Ⅴ授業への満足度と総合評価
の各項目について、学内平均以上の評価(3.7-4.5ポイント)をとれている。ただ、学生自身の自己評価(出席、予習復習)については当人への評価であり、教員の授業内容評価に比してへりくだったポイント(3.2-3.4ポイント)となった。各自への質問や討論形式などの参加型への評価は良好で、要所をおさえた映像資料使用は履修者の学習意欲を向上させている。
2 講義担当科目「社会学」 2006-00-00
~2015-00-00
講義担当科目「社会学」では、グローバリゼーションの社会情勢を土台とする。概念や用語、学説、事例研究などを紹介したのち、受講者が具体的イメージをもつように国内外の報道番組のルポルタージュやニュース、映画、演劇の資料など多くの映像資料を用いる。また、参加型授業として、トピックごとにレスポンスペーパーを課し、それをもとに教室内でプレゼンさせる。教室内をグループに分け、グループディスカッションを行なっている。この方法では①問題発見・解決能力 ②学問的リタラシー・表現力 を教員と学生がともに高めてゆくことができる。グループ内でプレゼンをすることで、フリーライダーをなくし、全員が直接参加し、主体的で実質的な学習ができることが最大の長所といえる。
2 作成した教科書、教材、参考書
1 「神をつくる-ベナン南西部におけるフェティッシュ・人・近代の民族誌」を使用した教育実践 2010-00-00
~2014-00-00
アフリカ社会をもとにした異文化の理解という観点から、私の調査地西アフリカ、ベナンの事例を出発点に、受講者の比較社会学、人類学への興味を深めた。地域社会の情勢を深く掘り下げることでグローバルな理解に到達するという教育理念にもとづく。村落の生活、伝統と近代の葛藤、貧困と格差の問題、宗教と政治の絡み合いや世界中の黒人離散民(ディアスポラ)との協調という論点を講義した。つねに具体的事例や映像、音声資料とともに学説や理論の紹介につとめた。西アフリカの情勢は東部や南部アフリカ地域でも共通し、欧米やアジアとつながるグローバリズムのなかでのアフリカを考えるきっかけを提供した。
3 教育方法・教育実践に関する発表、講演等
4 その他教育活動上特記すべき事項
1 大学ホームページにおける学内、学外に向けての情報発信 2015-00-00
~2016-00-00
勤務校のカリキュラムでは国内の話題からの実学的な科目が多い。主に学生を対象に、社会学的視点から国際的な視野や現在的な関心をもってもらうため、「高千穂オピニオン」というコーナーでヨーロッパにおけるテロリズムと難民問題、アメリカ大統領選挙での民意について解説、分析した。
「パリ・アタック」 http://www.takachiho.jp/news/20151209.html
「アメリカ大統領選挙2016」 http://www.takachiho.jp/news/20160518.html
B 職務実績
1 日本学術振興会特別研究員(DC2)の資格、科学研究費補助金獲得 1996-04-00
~1998-03-00
科学研究費補助金「西アフリカ諸社会における情報認識の動態的比較研究」(5518)によりベナン南西部の現地調査を行う。
2 外部資金獲得(トヨタ財団研究助成:研究代表者) 2004-04-00
~2005-03-00
「西アフリカ社会の「下からの」民主化における民営メディアの果す役割」(課題番号D04A214)
3 高千穂大学市民公開講座「経済と文化」講座担当およびオーガナイザー担当 2007-04-01
~2007-07-31
比較社会学の観点から世界各地の経済について考えるために、学内と地域(杉並区)に開かれた講座を主催した。自らのアフリカの事例紹介のほか、スペイン、南インド、バリ、ニューギニア、西南日本を調査する研究者を招き、各地の文化的多様性にねざした経済取引、つきあい慣行の様子が具体的に紹介した。その事例は商取引のだけにとどまらず、誕生式、結婚式、葬式などの行事から巡礼と接待、地域通貨の使われ方にまで及んだ。14回の講座で各回100名超の多数の市民の参加があり、大学の知名度向上と地域との交流の活性化に貢献した。
4 外部資金獲得(文部省科学研究費補助金:研究代表者)基盤研究C 2010-04-00
~2012-03-00
「政治変革期西アフリカにおけるメディアの民主化とリテラシーに関する研究」(課題番号22520829) 
5 外部資金獲得(文部省科学研究費補助金:研究代表者)基盤研究C 2015-04-00
~2017-03-00
「変動期アフリカ系社会におけるメディアリテラシーと公共圏の展望」(課題番号15K03055)
6 外部資金獲得(文部省科学研究費補助金:研究代表者)基盤研究C 2019-04-00
~2023-03-00
「民主化以降、世代交代がすすむ西アフリカにおいて、メディアと若者が抱く「変化」の展望」(課題番号19K12514)
C 学会等及び社会における主な活動
所属期間及び主な活動の期間 学会等及び社会における主な活動
1 1995-04-00~0000-00-00 日本民族学会(現 日本文化人類学会)
2 2000-03-00~0000-00-00 日本アフリカ学会
3 2000-07-00~0000-00-00 日本民俗学会
4 2001-09-00~0000-00-00 慶應義塾大学三田哲学会
5 2003-04-00~0000-00-00 国士舘大学教養学会
6 2004-04-00~2015-07-00 国際協力機構(JICA)国際協力総合研修所にて、ベナン派遣前の専門技師に任国事情(政治、経済、文化)講義講師(アフリカ地域任国事情講義 担当)
7 2007-10-00~2008-03-00 日本文化人類学会評議員選挙選挙管理委員
8 2014-01-00~0000-00-00 International Union of Anthropological and Ethnological Sciences membership
9 2018-00-00~2019-00-00 「文化人類学」(日本文化人類学会)投稿論文査読員
10 2020-11-00~2021-03-00 総合研究大学院大学博士学位請求論文審査員
11 2021-11-00~2022-03-00 日本アフリカ学会評議員・理事選挙選挙管理委員選挙管理委員長
D 研究活動
著書、学術論文等の名称単著、
共著の別
発行又は
発表の年月
発行所、発表雑誌等
又は
発表学会の名称
概要
Ⅰ著書
1 文化人類学のレッスン―フィールドからの出発 共著 2005-04-00学陽書房 一般読者を対象に、儀礼が象徴で満ちていることを示し、私たちが象徴的分類をとおして世界を認識することを説いた。分類に当てはまらない変則性には特別な意味を付与する。人は儀礼をすることで自然界に恣意的に区切り目を入れ、意味を付与し、人の世界を秩序付けて生活している。通過儀礼理論を身近な事例から平易に説明した。
総頁数308頁、担当部は第6章、「儀礼と分類―人はどのように人生を区切るのか?」、21頁(pp.131-151)。共編者は花渕馨也、奥野克巳、共著者は西本太、田中正隆など、総数10名。
2 呪術化するモダニティ―現代アフリカの宗教的実践から 共著 2007-06-00風響社 伝統宗教ヴォドゥンは神霊を物質化し、金銭で売買することが民間の伝統医のあいだで行われてきた。彼らは卜占や医療に加えて農業、畜産業や賃貸業などのサイドビジネスを展開している。呪術や神体作成がこれらに矛盾なく接合し、貨幣-商品経済的でありながら、独自の経済原理で行われていることを明らかにした。近代化論が前提とした宗教と経済の分離ではなく、むしろ不可分離であることを明らかにした。
総頁数408頁、担当部は第5章、「神々をめぐる経済―ベナン南西部における伝統宗教と経済活動」、37頁(pp.225-265)。共編者は阿部年晴、小田亮、近藤英俊。共著者は海野るみ、田中正隆など、総数9名。
3 神をつくる―ベナン南西部におけるフェティッシュ・人・近代の民族誌 単著 2009-09-00世界思想社 博士学位論文をもとにした、西アフリカ・ギニア湾岸地域に広がる伝統宗教ヴォドゥン(ブードゥ)の実態を解明した民族誌。この信仰の特色は、霊的存在がさまざまなモノ-神として物質化されること。人は一生を通じて、モノ-神と関わる。そこで、村落生活での儀礼実践、日々の経済活動、地域史の流れがどのように連関して、人とモノの「現実」を構築するかを記述した。それは近年の貨幣-商品経済の浸透と不可分であった。人-モノ関係を理解する新たなフェティシズム論への理論的展望を示した。総頁数230頁
4 新版 文化人類学のレッスン―フィールドからの出発共著 2011-01-00学陽書房 2005年4月発行の増補改訂版。方針により、表記と論述の微修正にとどまった。文化人類学の学説にそって儀礼の類型、機能論から意味と象徴に焦点をあてる象徴的分類論から過渡―リミナリティ論を説明する。ついで通過儀礼を題材として儀礼の規則論、行為論について平易にといた。アフリカ、ベナン南西部村落の事例を構造論的に分析し、通過儀礼とその実践の社会変化との関わりにも言及した。前著で掲載のマッピングを修正し、よりわかりやすくなっている。
総頁数312頁、担当部は第6章、「儀礼と分類―人はどのように人生を区切るのか?」、23頁(pp.130-152)。共編者は梅屋潔、シンジルト。共著者は西本太、田中正隆など、総数11名。
5 共在の論理と倫理―家族・民・まなざしの人類学 共著 2012-12-00はる書房 フィールドの矛盾や混乱をも見据える、清水明俊の「徹底した経験主義」の概念に拠り、2006年、2011年ベナン大統領選挙について分析した。2006年、ボニ・ヤイは圧倒的な支持を集めて当選したが、経済的に発展した南部の住民のもつ北部出身の大統領への不満が潜在する。2011年選挙結果を分析し、権力側と民衆の板ばさみに苦しむメディアの多様な語りをとおして、リベラル・デモクラシーの矛盾を明らかにした。
総頁数467頁、担当部は第11章、「選挙とジャーナリズム―ベナン大統領選挙をめぐる語りの多様性について」、23頁(pp.273-295)。共編者は吉田匡興、山口裕子、中野麻衣子、風間計博。共著者は岡田浩樹、田中正隆など、総数18名。
6 フェティシズム研究 第2巻―越境するモノ 共著 2014-02-00京都大学学術出版会 ベナン、アジャ村落社会では人の運命を卜占で判じ、壺を供えて祠にする。生涯の階梯を通じて献酒や儀礼を繰り返す。彼らはモノが人にそれらを要求するのだという。おびただしいモノの儀礼を重ねることで人の成長を促す。従来偶像崇拝とみなされた彼らの特異な人-モノの関わりを、関係論、構築論的なアクター・ネットワーク理論の視座からよみとり、事例研究をとおして人間中心主義、主体-客体図式からの超克をしめした。
総頁数510頁、担当部は第6章、「モノ化する『運命』―西アフリカ・ベナン南西部の宗教実践」、32頁(pp. 181-211)。編者は田中雅一、共著者は石井美保、田中正隆など、総数19名。
7 響きあうフィールド 躍動する世界 共著 2020-03-00刀水書房 社会主義期をへて1990年代の民主化が順調にすすんだベナンに対して、トーゴは民主化への転換をエヤデマ大佐を首班とするトーゴ人民連合(RPT)のほぼ一党体制のまま経てきた。彼の死後も息子フォールによる権威主義体制が継続するトーゴでは、民放局やリベラルな市民が存在しつつも、十全には声を上げることができない。両国は、体制の変化への希望をつなぐものがメディアである点は共通だが、トーゴの事例からはベナンのデモクラシーがポピュリズムや商業主義に転ずる危険も孕んでいることが浮き彫りとなった。
総頁数 830頁、担当部は第Ⅶ部、「デモクラシーへの対し方―ベナン、トーゴの政治変動と『意見する人々』」、17頁(pp.627-643)。編者は和崎春日、共著者は有末賢、田中正隆など、総数42名。
8 現代世界の呪術―文化人類学的探究 共著 2020-06-00春風社 本論では、アフリカにおける近年の宗教とメディア、世俗主義論について整理した。キリスト教では福音派やカリスマ派、ペンテコステがテレビ伝道で信者を集め、イスラームでは説教DVDが流通するなど、各地でメディアによる宗教復興が顕著になっている。ベナン、トーゴでは在来信仰ブードゥの知識やその伝統文化としての意義を伝えようとする番組が人々の人気を集めている。媒介作用 mediation 概念を導入して、人同士、人とモノ、人とカミを媒介するメディアが宗教に必要不可欠であることを論じた。
総頁数482頁、担当部は第6章、「ベナンにおけるブードゥのメディア転回」、24頁(pp.203-226)。共編者は川田牧人、白川千尋、飯田卓、共著者は近藤英俊、田中正隆など、総数16名。
9 アフリカの聞き方、アフリカの語り方―メディアと公共性の民族誌単著 2021-02-00風響社 アフリカ社会にもっとも浸透しているマスメディアとして、ラジオに焦点をあて、ジャーナリストたちの仕事や、番組と関わる視聴者の活動から、メディアが社会の中にどう埋め込まれ、また社会を作り出しているかを明らかにした。情報環境の大きな変動期にある今日、人々はパーソナルな携帯端末を用いて民放の討論番組などパブリックな場に参加する。視聴者参加番組や伝統文化を継承するなどの事例から、それが権威への対抗となり、かつ暴露欲求や商業主義という二面性をもちながら、アフリカの人々の次世代への希望を生み出していることを論じた。総頁数284頁。
以上9点
Ⅱ学術論文
1 運命をとりあつかう―西アフリカ村落社会における「フェティッシュ」と「個」再考 単著 2002-01-00『哲學』(慶應義塾大学三田哲学会) 107 伝統信仰の人類学的研究では人の表象は精霊や祖霊、運命の概念と結びついて議論されてきた。アジャ村落社会では人が生まれると卜占で運命を判じ、死ぬと遺体が小屋の内部に埋められ、運命をあらわす壺は藪に捨てられる。壺は人の運命それ自体であり、他の何かを意味するものという象徴の定義や主-客二元論とは異なる。調査資料をもとに、表象論や象徴概念の再検討を行った。44頁(pp.189-232)
2 ヴォドゥン民俗祭祀における「モノ」をめぐる儀礼実践と「個」という布置―ベナン共和国アジャAja社会の民族誌的研究、(博士論文) 単著 2002-07-00一橋大学大学院社会学研究科 社 第57号 西アフリカ民主化のモデル国でもあるベナンの社会文化構造を理解するために、現地調査資料から、民衆に広く浸透しているブードゥの解明に努めた。この信仰を霊的存在が多彩な祠や呪物に表わす信仰と捉え、個人の儀礼実践、経済活動、地域史との重層的連関を記述した。人と物質との固有の位置づけを明らかにし、この結びつきがブードゥの動態性を成り立たせていることを立証した。民族誌的研究から歴史研究への展望を論じた。総224頁。
3 黒アフリカ社会研究における「人」の位置づけに関する一考察―西アフリカ・ヴォドゥン信仰研究にむけて 単著 2003-02-00『一橋論叢』(日本評論社) 129(2) 西アフリカ・ギニア湾岸の社会にねづく信仰世界の理解のために、従来等閑視されてきた「人」と「もの」の相互浸透的状況へ着目した。フェティッシュを象徴として解釈するのではなく、地域社会に固有の文脈において流動する「もの」の方から人の社会関係を照射する視点を提示した。もの論の理論的射程を、生産、流通、消費、改変という多様な場面でのインターフェイス論へ拡充すべきことを論じた。18頁(pp.37-54)
4 流動する神々―ベナン共和国南西部の地域史とヴォドゥン信仰の動態 単著 2003-03-00『リトルワールド研究報告』(野外民族学博物館リトルワールド) 19 祖霊崇拝、卜占体系とともに多様な神霊が祀られるこの地域の豊穣な信仰は、植民地期以前の民族集団の移住史や経済史と密接に関わっている。近年ギニア湾岸地域にひろがる、経済的成功をもたらすマミワタ・カルトをとりあげた。20世紀以降の近代化論的分析を再検討することで、経済史と信仰の相関において、経済的要因だけには還元されない文化要素の研究の必要性を明らかにした。22頁(pp.1-22)
5 ベナン共和国南西部における子供、親族、霊の相関についての一考察 単著 2004-03-00『アジア・アフリカ言語文化研究』(アジア・アフリカ言語文化研究所) 67 アジャ社会では父系出自集団が社会、文化をになう基本的な生活単位となっている。彼ら特有の個人のありかたを解くために、施術師が新生児に施す処置に加えて、出自集団から排除する事例(嬰児殺し)と他家を介して再導入する調査事例を検討した。子供の特徴をとらえ、神格と関係づける儀礼を通して、西欧的な孤立する個人ではなく、物質の多様な関係性において成立する個人を明らかにした。この事例研究により、人格概念や身体性だけでなく、物質性を含む全体的社会事象において把握する途を示した。48頁(pp.163-210)
6 民主化する神々―1990年代以降のベナンにおける政治と伝統信仰 単著 2004-03-00『アフリカ・レポート』(アジア経済研究所) 38 複数政党制へと民主化移行をはたしたベナン政府は伝統芸術・文化祭の実施から、ユネスコの支援をえた奴隷貿易の慰霊碑建設などによって伝統文化の再評価をすすめている。90年代のこの推移を整理することで、政治側、宗教側双方が伝統文化を掲揚し、「民主化」すると語ることで、国内の矛盾を抑圧し、国家をこえた離散黒人同士の連帯へと昇華させていることを明らかにした。8頁(pp.27-34)
7 神とものをめぐる儀礼実践の一形態―ベナン共和国アジャ社会におけるボ-ヴォドゥン考 単著 2004-03-00『民族學研究』(日本民族学会) 68(4) ベナン南西部で広く行なわれているヤムイモ献納祭祀が祖先崇拝、呪物祭祀、妖術対抗という多様な要素の複合態として展開している事例を検討した。地域社会の政治-経済の動態を考慮すると、この儀礼は共同体の紐帯を維持しつつ、近代以降生じた社会矛盾を超克するための活動でもあった。本稿はものの文化的、社会的意味の構築過程を分析し、彼らがものを集団で作成し、分有する儀礼で、社会的状況の変化に対応していることを明らかにした。17頁(pp.569-585)
8 神をつくる―ベナン南西部における伝統医の活動への一考察 単著 2004-12-00『アフリカ研究』(日本アフリカ学会) 65 多様な神々を物質にして祀るヴォドゥン信仰は、伝統医たちが他地域から金銭で神格を購入することで広がってきた。彼らにとっては医療とともに、こうした流通にたずさわることが経済活動でもある。薬、呪物、霊でもある「もの」の売買を分析した結果、神々をめぐる取引はきわめて貨幣-商品経済的でありながら、利潤の最大化が唯一の目的ではなく、社会関係の構築が重要であるという経済原理が明らかとなった。18頁(pp.1-18)
9 Vodun in Democratization : A brief review of the entanglement of religion and politics in modern Benin, West Africa単著 2005-03-00『國士舘教養論集』(国士舘大学教養学会) 57 1990年、民主化移行をとげたベナンは伝統芸術・文化祭の実施から、ユネスコの支援をえた奴隷貿易の慰霊碑建設などによって伝統文化の再評価をすすめている。他方で、伝統司祭による学校や公的行事への積極的な参加によって、地域社会の活性化がなされ、観光産業も根づきつつある。ブードゥを民主化するという彼らの語りの文脈を追いつつ、伝統文化の現代的展開を明らかにした。2004年論文をもとに英語論文化。11頁(pp.39-49)
10 地域社会における祭祀の持続と変化をめぐる一考察―トカラ列島の事例から 単著 2005-05-00『日本民俗学』(日本民俗学会) 214 近代以降のトカラ列島における社会環境の変化と祭祀の変動の独特のズレを考察した。島では変化の流れに対して伝統を保ちつつ実践される祭祀がある。この島は他島出身の女性巫者をうけいれ、男性司祭は神籤で選出されている。そのため、儀礼様式が厳格に守られながら、その継承と実践が柔軟であることが特徴的である。従来祭祀が廃れてゆくとされた事例を再考し、この島の儀礼実践では個々の諸要素を変化させつつ存続することが本質的であることを明らかにした。34頁(pp. 1-34)
11 語る儀礼、黙する儀礼―トカラ列島におけるヒチゲー(日違え)行事の体験と記憶 単著 2006-01-00『高千穂論叢』(高千穂大学商学会) 40(3) トカラ列島の小正月行事であるヒチゲーは、部落全体の忌籠り日であり、従来節分の一形態として解釈されていた。だが現地調査での聞き取りを分析した結果、忌籠りのあいだに司祭が神事を語る行事があるとわかった。これによって、島民のあいだで儀礼の意味が共有され、継承されている。司祭の個人的体験の反復と人々のあいだの意味世界の共有とが、この沈黙する儀礼を成り立たせていることを明らかにした。30頁(pp.103-132)
12 西アフリカ・ギニア湾岸社会における交換媒体とその流通についての試論 単著 2007-02-00『高千穂論叢』(高千穂大学商学会) 41(4) ベナンの前身、ダホメは周辺地域に侵攻して捕虜をとらえ、黒人奴隷として西洋諸国に売り、さらに武装強化を進めた。奴隷はアフリカと西洋という異質な価値体系をもつ社会のあいだの取引に用いられた交換財であった。カール・ポランニーの経済人類学研究を再検討するなかで、交換の多元的理解を示唆し、交換における貨幣の特異性を明らかにした。24頁(pp.83-106)
13 アフリカの民主化移行におけるメディアの関わり―2006年ベナン大統領選挙の検討から 単著 2007-09-00『高千穂論叢』(高千穂学会) 42(2) ベナンでは1997年に民営メディアへの周波数の門戸が開かれた。新聞、ラジオを中心とする民営メディアは政府当局との葛藤や、国営報道機関との競争のなかで統廃合をしつつも自国の問題点を広く発信している。2006年大統領選挙では新候補者のメディア広報戦略が焦点となり、リスナー参加型の番組には人々の生の声が寄せられた。こうした事例から、民主化以降の市民の政治参加とそのアクティヴィティの多様化を明らかにした。22頁(pp.17-38)
14 ベナンの政治と伝統宗教―民主化以降の動きを中心として、『朝倉世界地理講座 アフリカⅡ』 単著 2008-04-00朝倉書店 ベナン90年代以降の民主化をめぐる時代的推移に、伝統宗教側がどのような対応を迫られたのかを明らかにした。二人の大統領の文化政策の転回を背景に民間伝統医らの活動と語りを分析した。その結果、社会変革性よりも道徳・倫理的性質から伝統文化復興を主張する立場が採用されていた。民主化が非政治的アクターによる「下からの」社会改革の展望を拓いた点を評価しつつ、その光と影の共存を指摘した。
総頁数464頁、担当部は14章、16頁(pp.708-723)。共編者は池谷和信、武内進一、佐藤廉也、執筆者は水野一晴、田中正隆など、総数29名。
15 ジャーナリストと生活戦略―民主化以降ベナンにおける人とメディアの関わり 単著 2012-07-00『文化人類学』(日本文化人類学会) 77(1) ベナンのラジオ局におけるジャーナリストの生活史から、アフリカにおけるメディア、人、デモクラシーの連関の具体を提示した。先行研究が偏るマクロな議論を批判的に補完した。ベナンの近現代史を支えた知的エリート層出自の事例から、ブルデューの社会再生産論を参照し、不確定な未来を希望や可能性と読みかえる、ジャーナリストたちの生活戦略を引き出した。日常の多様な戦略が次代のデモクラシーの再生産をなすことを明らかにした。26頁(pp.1-26)
16 Medias,Elections and Democracy : A comparative study of presidential elections in modern Benin 単著 2012-09-00『高千穂論叢』(高千穂学会) 47(2) カメルーン政治学者ンベンベは、アフリカ人の自己表現が抑圧的歴史に加えて、現代のグローバルな文化流動によって揺らいでいると述べる。矛盾や葛藤を含んだ自己表出の揺らぎが、今日のジャーナリズムに認められる。近年の大統領選挙の資料から、ベナンにおけるメディア報道の揺らぎを分析した。従来の郷土や党派ひいきの集票戦略とは異なった選挙活動を指摘し、世論の多元化や不安定化の現状をメディアの浸透との連関から論じた。英文論文。25頁(pp.75-99)
17 ベナン大統領選挙とジャーナリズム 単著 2012-09-00『AFRICA』(アフリカ協会) 52(3) 民主化以降の選挙のうち、おもに2011年ベナン大統領選挙の背景を分析した。2006年、ボニ・ヤイは圧倒的な支持を集めて当選したが、経済的に発展した南部の住民と北部出身の大統領派閥が対立している。ヤイⅠ期を総括すると、経済政策で一定の成果はあるが、大統領も含んだ汚職や不正への批判がうっ積するようになった。権力側と民衆の板ばさみにあるジャーナリストの語りと、2011年選挙結果分析から、混沌としたデモクラシーの状況を明らかにした。5頁(pp.49-53)
18 ベナンのメディアとパブリックなるもの―参加型番組の事例から、『森羅万象のささやき―民俗宗教研究の諸相』単著 2015-03-00風響社 ベナンではメディアの視聴者参加番組が人気を博しているが、そこは市井の人々が不満を吐露し私見を公にするという公共空間となっている。本論は、オーディエンスが意識していると思われる、身近な体験でありつつ、他の皆も共有するイシュー=パブリックなるものを焦点化した。こうした民衆発のジャーナリズムが展開しつつある。同時に、癒着や情報の偏向性、倫理性が、市民参加のメディア公共圏においても問題となっていることを明らかにした。
総頁数 1000頁、担当部は16章、28頁(pp.347-374)。編者は鈴木正崇、執筆者は脇田道子、田中正隆など、総数42名。
19 メディアをめぐる公共圏の検討―ベナンの視聴者参加番組の事例をとおして 単著 2015-03-00『国立民族学博物館研究報告』(国立民族学博物館) 40(1) ベナンの民放では多くの視聴者参加番組があり、オーディエンスの声を取り入れている。人々は番組にメールや電話をかけて日々の暮らしの不満や政治的意見を放送にのせる。なかでも何度も複数の局に電話するアクティヴな人々がおり、活発に言論が交錯している。本稿は、こうした番組の常連参加者の実態を示し、役所や政治家への不正告発が同時に情報の偏向や癒着が生ずることが、いまメディア公共圏で問題となっていることを明らかにした。44頁(pp.149-192)
20 In the Hope for Change : Media and Audience in the Post-Charisma Era in Benin and Togo. 単著 2019-03-00『真宗総合研究所紀要』36 民主化以降2度の政変をかさねて政治アクターが交代したベナンと、大統領職の世襲をめぐる騒乱をへて徐々に世代交代が進むトーゴという両国は、カリスマ的政治アクターの世代交代と、民営メディアの隆盛など興味深い共通点と差異が存在する。こうした事情から、ベナンでは世代交代による刷新に希望をもつが、トーゴでは同一政権の持続のなかに変化を模索しようとする。政治的文化的に不都合な過去を措いて、捉えどころがなく不確定な未来を望むアフリカの人々の希望と郷愁を、メディアがとりあげる民衆の声と活動から明らかにした。2019年の口頭報告の内容を発展させた。英文論文。17頁(pp.61-77)
21 Mediation between the Secular and the Religious : A local radio program in Benin and the Post-Secular argument 単著 2019-11-00『大谷学報』99(1)
アフリカ伝統宗教と文化政策とのからみあいのなかで、宗教間の対話や融和をすすめる民間の活動を先行資料と調査資料により紹介した。文化人類学における1990年代の呪術、妖術研究のリバイバルののち、宗教社会学、政治学におけるポスト世俗主義論はそれと関連し並行して展開してきている。世俗と宗教との分離の是非や世俗主義の再検討が議論をよんでいる。本稿はベナンを対象に、90年代以降の伝統宗教の民主化の事例と、南西部のローカルラジオにおける宗教間理解の放送番組の事例をとりあげ、人々の生活における宗教文化の意義と複数宗教の共生の試みについて検討した。英文論文。19頁(pp.17-35)
以上21点
Ⅲ 口頭発表・その他
1 吐噶喇列島における祭祀形態の持続と変化に関する一考察 口頭発表 1995-03-00日本民族学会関東地区研究懇談会 日本の南西諸島、トカラ列島における、人口変動、生業・経済の変化、交通手段の整備といった社会環境の変化に対しての、祭祀組織と行事内容などの文化的側面の対応を分析した。島の祭祀形態の「変化」と「持続」の両面に、政治・経済が大きな変動要因となりながらも、島民の間での民俗知識の不均衡と分散が、儀礼の存続を裏面から支えていることを明らかにした。発表時間25分
2 トカラ列島における祭祀の「現在」―ヒチゲ-再考口頭発表 1995-05-00第29回日本民族学会研究大会 トカラの全島で行われているヒチゲーという小正月行事は、部落全体の忌籠り日であり、従来節分や季節祭の枠で解釈されていた。だが現地調査の結果、忌籠りという性質上、原理的に一般島民が儀礼執行の現場に立ち会うことができず、ゆえに「語り」による儀礼的経験と知識の(再)構成が行われているということが判明した。個人的体験と語りの共有が積み重なり、島特有のコスモロジーを形成していることを明らかにした。発表時間25分、研究発表抄録 p.67
3 運命をつかさどる者、判ずる者―ベナン共和国アジャAjaにおける運命と霊魂 口頭発表 2000-05-00第34回日本民族学会研究大会 ベナン南西部、アジャ社会の民俗を支える、卜占師-伝統医(男性)と、親族集団の儀礼をうけもつ女性施術師という2種の施術師の対比と分析を行った。前者は今日、地域共同体をこえて活発な活動が見られる一方、親族紐帯を司る後者の活動も存続しており、民俗行事が互いの相補的な活動によって支えられている。個人(アメ) の生を構築してゆく男/女施術師の相補的活動を事例を通して明らかにした。発表時間25分、研究発表抄録 p.47
4 ベナン共和国・調査の印象 単著 2001-03-00『日本アフリカ学会会報』(日本アフリカ学会) 32 1996-1999年のベナン南西部村落部での滞在調査をふまえ、特に調査初期における言語・慣習・社会関係への調査者の取り込まれ方を記述した。ヴォドゥン信仰を担う祭祀組織調査には加入儀礼とともに伝授される言葉の知識が不可欠となる。この知識の有無と不可分に結びついた現地固有の社会力学を、他者である調査者の占めるポジショニングとして報告した。5頁(pp.18-22)
5 子供のカテゴリーとその周辺―ベナン共和国アジャ社会における集団と個という問題系口頭発表 2001-05-00第35回日本民族学会研究大会 アジャ社会の父系出自集団アコは労働や生活、儀礼活動の単位となっている。そして生まれた状況、差異から子供についての分類範疇があり、それぞれが特定の神格ヴォドゥンと結びついている。男/女施術師が新生児に施す儀礼を検討し、単に子供に愛称をあたえるだけではなく、さまざまな特徴から、新来の個人を親族集団に取り込んで行き、かつ集団のなかで個人は自らを発現するという構造を明らかとした。発表時間25分、研究発表抄録 p.142
6 排除と取り込み―ベナン・アジャ社会村落部における「個」再考 口頭発表 2001-05-00第38回日本アフリカ学会学術大会 アジャ社会における父系出自集団アコは瘢痕、食物禁忌、行動規範などにおいてそれぞれ独自のやり方を守っている。一例としてワシ=奴隷と呼ばれる養子慣行を取り上げた。その結果、子供を集団から排除するのではなく、受け手と与え手の家族の間で貨幣によって子供と物質を交換可能にし、集団から儀礼的に排除しつつ同時に取り込みをはかる、アコ集団の柔軟性の一端を明らかとした。発表時間15分、研究発表要旨 p.97
7 神とものをめぐる祭祀複合の一形態―ベナン共和国アジャ社会におけるヴォドゥン祭祀の今日的実践口頭発表 2002-05-00第39回日本アフリカ学会学術大会 調査地において特異な展開をみせるヤムイモ献納の農耕祭祀を検討した。先行研究では初物献納-農耕儀礼として解釈されていたが、現地調査資料をもとに地域社会固有の政治-経済の動態を視野に入れて再検討した。その結果、当地の人-ものの固有の結びつきと民俗論理に基づいた複合的儀礼として、伝統儀礼を分析する可能性を示した。発表時間15分、研究発表要旨 p.30
8 神々の「民主化」―西アフリカ・ベナン共和国における文化振興策を事例として口頭発表 2003-05-00第37回日本民族学会研究大会 政治的民主化を進めるベナン政府は、ヴォドゥン芸術・文化祭の実施や、ユネスコの支援をえた(黒人)奴隷の道慰霊碑の建設、定期国家祭祀などをとおして伝統文化の再評価を進める。この推移を整理することで、政治側、宗教側双方がヴォドゥンの伝統性、倫理性を称揚し、「民主化」という語り口で、国内の対立を抑圧し、むしろ国家を超えた離散黒人との連帯へと昇華させていることを明らかとした。発表時間25分、研究発表要旨 p.12
9 民主化・宗教・伝統文化―ベナン共和国 90年代の推移とある伝統医の活動の事例口頭発表 2003-05-00第40回日本アフリカ学会学術大会 1990年代以降、国家的規模で行われた伝統文化振興政策と伝統信仰の関わりを、「民主化」という語り口に注目して検討した。国家―政府という枠組みで行なわれた諸政策に加えて、逸脱を含みながら活動する、ある宗教職能者の事例から、伝統信仰が秘儀的儀礼や妖術の巣窟なのではなく、親和と連帯をはぐくむ生活史の基層をなしてきた固有の資源(文化資本)であるという、彼らの意識を分析した。発表時間15分、研究発表要旨 p.106
10 「民主化」をめぐる政治と伝統信仰―西アフリカ・ベナンの事例(2) 口頭発表 2004-06-00第38回日本文化人類学会研究大会 1980年代以降、アフリカ社会を対象とした政治学で「民主化」、「市民社会」論が蓄積されている。この動向を踏まえて、現代政治の領域に文化要素がいかに影響しているかを解明するために、民主化から10年を経たベナンの二人の大統領の文化政策を対照させ、民間伝統医らの活動と語りを分析した。現代政治状況における宗教・文化要素の絡まりあいの具体例を示した。発表時間25分、研究発表抄録 p.34
11 地域社会における祭祀の持続と変化をめぐる一考察―儀礼の歴史研究という視角から 口頭発表 2004-10-00第56回日本民俗学会年会 社会の移り変わりのなかで地域社会の祭祀はどのような変化をとげるのかを、日本南西諸島のトカラ列島の事例から検討した。祭祀形態の変化は社会・経済的な変化が要因の一つではあるが、むしろ人々はそれを「改善化」と説明し、神に関わる作法を厳格に遵守している。分析の結果、祭祀の変化は社会・経済的な変化だけには還元できず、変化に呼応するものと自律的に機能する側面が常に相互連関しあっていることを明らかにした。発表時間20分、研究発表要旨p.95
12 ベナン90年代の文化政策からみた政治変動について―A.Mbembeの所論を手がかりに 口頭発表 2005-05-00第42回日本アフリカ学会学術大会 アフリカ市民社会論に啓発的な議論を展開するカメルーン人学者ンベンベの議論を整理し、ベナン民主化移行期の2大国家元首の文化政策の相違の分析に適用した。伝統の弾圧から伝統文化振興への転回、世界歴史遺産認定をめぐる文化の政治学の事例を分析することで、民主化の葛藤や不安定要素の構図を饗宴化という概念で整理した。発表時間15分、研究発表要旨 p.41
13 書評:阿久津昌三著『アフリカの王権と祭祀』書評 2007-05-00『アフリカ研究』(日本アフリカ学会) 71 アフリカ諸社会の比較から、王権と祭祀の連関を社会人類学的に考察した浩瀚な民族誌の書評。ガーナ、アサンテ王国の王権が祭祀を権威づけ、その反復によってどのように権力の正当性をささえているかを説いている。中心となるヤムイモ収穫祭と王の葬儀の記述を要約した。先行する王権研究の整理と王位継承の資料提示を評価しつつ、近年の伝統王国リバイバル研究をふまえて批判的に論評した。3頁(pp.157-159)
14 マスメディアから見る民主化移行とそのゆくえ―ベナンの政治情勢の検討から口頭発表 2007-06-00第41回日本文化人類学会研究大会 ベナンでは、独立期、革命政権期と民主化移行期をへて1997年に放送電波の開放が施行された。以降、民間ではラジオをはじめとするマスメディアが続々と開局している。2006年大統領選挙では新候補者のこれらのメディア広報-利用戦略が焦点となり、投票のゆくえを左右した。変化-変革が鍵概念となった選挙戦の進展と結果を、メディアの報道内容から明らかにした。発表時間25分、研究発表抄録 p.36
15 書評:阿久津昌三著『アフリカの王権と祭祀』書評 2007-10-00『信濃毎日新聞』(2007年10月14日付朝刊) 上掲書評を一般向けに平易に概説した。なじみの薄いアフリカ諸社会の王権と祭祀の連関をといた本書の魅力を、端的な事例に注意を促すことで読者を惹きこむように記述した。ガーナ、アサンテ王国の王権の祭祀による権力の正当化を、ヤムイモ収穫祭と王の葬儀の記述に読み解いた。王権史の裏側に秘められた、継承をめぐる王と王母をめぐる闘争や闇に葬られた悲劇の存在を指摘し、それを近年の伝統王国リバイバル研究に接続するよう、期待をこめて論評した。1頁(p.13)
16 マスメディアと民主化―ベナンの政治情勢との関わりから口頭発表 2008-05-00第45回日本アフリカ学会学術大会 2006年のベナン大統領選挙では民主化転換期を代表した政治アクターからの世代交代が明らかとなった。新大統領のヤイ・ボニは政治経験の乏しい経済畑のテクノクラート出身だが、選挙戦ではさまざまなメディアを利用して巧みに「変化-改革」のイメージを浸透させていった。大統領が国民に直接、政策の是非を問うという新たなメディア-政治状況に分析を加えた。発表時間15分、研究発表要旨集 p.96
17 今日のジャーナリズム―民主化以降ベナンにおけるメディアと社会口頭発表 2009-05-00第46回日本アフリカ学会学術大会 インフラの整備が遅れるアフリカでは、マスメディアのなかではラジオが政治、文化情報を伝え、大きな影響を与えている。メディアの先行研究は欧米のメディア事情に偏重し、メディアをめぐる人々の日常生活も等閑視してきた。そこで、人々の生活の場の目線からメディアを記述し、それが形成する社会・政治情勢の変化から、今後のメディア研究の展望をしめした。発表時間15分、研究発表要旨集 p.68
18 今日のジャーナリズム―メディアをめぐる生活史という視座口頭発表 2010-06-00第44回日本文化人類学会研究大会 民主化以降のベナンにおけるメディア、とくにラジオ放送についての現状から、社会、政治情勢について考察した。メディアの担い手であるジャーナリストの生活史に注目し、個々の生活戦略からメディアの実情とその問題点をさぐった。ベナンの人々がもつメディアをとおした政治文化の一端を明らかにした。発表時間25分、研究発表要旨 p.71
19 書評:落合雄彦編著『スピリチュアル・アフリカ―多様なる宗教的実践の世界』書評 2011-05-00『アフリカ研究』(日本アフリカ学会) 78 8名の寄稿者によるアフリカ各地の宗教研究の論文集の書評。スピリチュアリティ (霊性) をキーワードとして、アフリカの宗教実践がもつ多様性や豊かさ、危うさを多角的に描き出している。各論稿の対象はキリスト、イスラム、伝統宗教、新宗教などバランスよく配分されている。論文間の議論の交流や議論を期待しつつ、全体の見取り図や展望についての私見を提示して論評した。4頁(pp.25-28)
20 もの-神のはかりかた―西アフリカ・ベナン南西部のブードゥ信仰への計量的アプローチ単著 2012-04-00京都大学CIAS共同研究ディスカッションペーパー集「聖なるもののマッピング」 人びとの宗教実践を宗教施設や聖なるモノの場所や量の定量データから、信仰する人びとがもつ地域像を捉えようとした。呪物、聖像であるボやヴォドゥンが伝統医のあいだでどう取引されているかの資料を提示し、その持続性、反復性、共同性を指摘した。今後、聖像の拡散や履歴を空間図と対応させ、質的と計量的研究を融合する展望を示した。6頁(pp.83-88)
21 ジャーナリズムと選挙―2011年ベナン大統領選挙をめぐる語りから 口頭発表 2012-05-00第49回日本アフリカ学会学術大会 2011年3月の大統領選挙の模様を、現地の聞き取りを加えて報告した。順調に民主化をへたベナンでは、人々のあいだでも民主主義国家としての意識が浸透し、混乱を嫌う。2006年に圧倒的支持をえたボニ・ヤイ政権は、5年間の政策への人々の不満や、スキャンダル発覚から、政権は決して安泰ではない。だが、2011年はやはりヤイの再選が決まった。選挙後の現状をジャーナリズムの困難さとともに明らかにした。発表時間15分、研究発表要旨集 p.47
22 ジャーナリストの生活戦略とデモクラシー―ベナン南部におけるラジオ局調査をもとにして口頭発表 2012-06-00第46回日本文化人類学会研究大会 ベナンのラジオ局につとめるジャーナリストたち個々の生活戦略から、彼らの暮らしとデモクラシーとの関わりを考察した。国営民営の第一、第二世代のジャーナリストの事例を分析し、社会環境と就業との関係、職獲得における戦略の具体、雇用状況の不安定さとともに流動性の激しいメディア機関の現状を説いた。変動期社会における人々の共通性、デモクラシーの矛盾ともいえる未来の不確定性への生活戦略を明らかにした。発表時間25分、発表要旨集 p.71
23 International Forum : A Forum for Scientific Exchange between France and Japan ディスカッサント 2012-11-00国立民族学博物館 11月30日に国立民族学博物館で開催された国際会議の A Forum for Scientific Exchange between France and Japan : A Demographic View of the World に依頼があり、ディスカッサントとして参加した。Centre for Population and Development, Paris Descartes University の Yves Charbit 氏による報告、“The Theory of Change and Response : Towards a Comprehensive Demography”をうけ、討論となった。途上国開発における応用人口学の量的、統計学的アプローチの事例と問題点の指摘に対して質的研究アプローチなど学際的な方法論との比較や節合について意見交換した。日本側からは他に鈴木裕之(文化人類学)、正木響(経済学)、小川了(文化人類学・歴史学)らのコメント、参加があった。仏語、英語による討論。
24 ベナンにおけるトークラジオとオーディエンス 口頭発表 2013-05-00第50回日本アフリカ学会学術大会 ベナンの視聴者参加番組をめぐるアクティヴ・オーディエンスの活動について紹介した。参加型番組には頻繁に電話をかけるリピーターがいる。彼らの生活史と不満内容の分析から、参加する視聴者が社会、経済関係において自由度のある社会層と考えられた。個人の意見が放送を通して他者へのよびかけとなる、同意や承認を求める政治的活動につながる事態を明らかにした。発表時間15分、研究発表要旨集 p.52
25 デモクラシーに不満を叫ぶ―ベナンのメディアと視聴者参加番組について 口頭発表 2013-06-00第47回日本文化人類学会研究大会 ベナンでは民放を中心に多くの視聴者参加番組があり、オーディエンスの声を取り入れている。人々は番組にメールや電話をかけることで、日々の暮らしの不満や意見を放送にのせる。いまだ少数だが何度も複数の局に電話するアクティヴ・オーディエンスがおり、活発な言論が交錯している。彼らの現状と活動を紹介し、パブリックからのジャーナリズムが展開しつつある。また、癒着や情報の偏向性、倫理性が、市民からの言論活動においても問題となってくることを問題提起した。発表時間25分、研究発表要旨集p.90
26 Audience in Engagement : Call in Radio and Public Sphere in Modern Benin, West Africa.口頭発表 2014-05-00International Union of Anthropological and Ethnological Sciences 2014 : Makuhari,Japan ベナンにおけるラジオの参加型番組が公共圏としてどのように機能するのかを考察した。ラジオ・テレビが受信できる携帯端末は、移動中や外出先でも放送へのアクセスを容易にした。番組で役所や政治家の不正を告発し、権威への対抗や暴露のために電話するアクティヴ・オーディエンスの事例から、デモクラシーがどのように展開してゆくのかを報告した。(英文報告)発表時間20分、program p.129
27 書評:柄木田康之、須藤健一編『オセアニアと公共圏―フィールドワークからみた重層性』書評 2014-12-00『文化人類学』(日本文化人類学会) 79(3) オセアニア島嶼社会をフィールドに、公共圏を発見的な概念として考察し、その可能性と問題点を論じた論集の書評。第三世界の新興国家には市民社会がしばしば欠如していると批判されてきた。本書は人々の自由な議論がなされる公共圏を、地域の分離運動や贈与交換儀礼、地方選挙やラジオ放送など多彩な事例において検討している。この点を評価し、理論の重複について批判的論評を加えた。4頁(pp.332-335)
28 ポスト・エヤデマ期におけるトーゴのメディア事情 口頭発表 2015-05-00第52回日本アフリカ学会学術大会 2005年の国家元首急死以降のポスト・エヤデマ期トーゴ情勢を追いつつ、メディア、とくにラジオに焦点をあててその特質を検討した。人々の生活にラジオが深く浸透しているトーゴでは、風刺や愚弄表現などで権力の矛先をかわす動きがあった。しかし、近年の与野党間の駆け引きや政治アクターの交代についても民衆の野党への失望や支持疲れが生じている情勢を報告した。発表時間15分、研究発表要旨集 p.100
29 The Narrative of Democracy, the Practice of Journalism in West Africa : The Case of Radio Broadcasts in Republic of Benin.口頭発表 2015-07-00International Union of Anthropological and Ethnological Sciences 2015 : Bangkok, Thailand ベナンのローカルメディアの具体を紹介し、ジャーナリストの生活史からメディアの変化を提示した。先行研究はとかくマクロな視点に偏っていたが、ミクロな視点での人の生活史に重点をおいた。1997年の放送周波開放で言論の自由を呼びかけるジャーナリストも、自らは雇用状況が不安定で生き延びることに腐心する、リベラルデモクラシーの矛盾を提示した。(英文報告)発表時間20分
30 番組で不満を叫ぶ―アフリカのラジオリスナーがつくるもう一つのデモクラシー単著 2015-11-00SYNODOS : Accademic Journalism (SYNODOS Inc.) 学術の知を一般に啓く荻上チキら主催のウェブジャーナルへの研究内容の紹介。アフリカ・メディア、ラジオへ興味がひかれたきっかけからメディア研究史の短いレヴューをふまえ、ベナンでの調査事例へと誘導するなど、ウェブコンテンツに則した論述へと改めた。リスナー参加型番組の紹介をし、欧米でトークラジオと呼ばれるもののアフリカ的展開を特徴づけてから、アクティヴオーディエンスの実践がもつ社会的意味を論述した。国内の話題や欧米のニュースに偏りがちなコンテンツのなかで独自なものとなっている。http://synodos.jp/?post_type=international&p=15435&page=2
31 書評:鈴木裕之著『恋する文化人類学者―結婚を通して異文化を理解する』書評 2016-04-00『文化人類学』(日本文化人類学会) 80(4) アフリカ、ポピュラー音楽と音文化の専門家による自らの異文化間結婚の経験を入口とした入門書の書評。西アフリカの楽師と離散民についての民族誌記述と親族論、機能論、構造主義学説についての教科書記述の両立について、個々の章を紹介したうえで論評した。読者をひきこむ文体と周到に配置された理論が、アフリカを多面的に描き出し、読者に伝えることに成功していると論じた。5頁(pp.663-667)
32 Vodun in Democracy and Media Use : Religion and the Public Sphere in Benin 口頭発表 2016-10-00The 6th IAS Humanities Korea(HK)International Conference : 龍仁、韓国 龍仁の韓国外語大学校(HUFS)で開催されたアフリカ研究国際会議に出席、研究報告した。会議のテーマは「アフリカ社会と文化の越境性混淆性を可視化する」であり、韓国、中国をはじめ各国のアフリカ地域研究者による情報交換、討論が行われた。本報告では1990年代以降のアフリカ市民社会論をレヴューした上で、伝統宗教ブードゥが国家の民主化政策とのかかわりのなかでどのような葛藤を経てきたかを紹介した。土着の信仰が伝統文化として掲揚され、定期祭祀化や観光資源化がすすむなかで宗教実践者の発信も変化した。信仰を題材とするTVドラマとラジオ番組における卜占の解説などの事例から、ブードゥの刷新が多様な領域で進んでいると論じた。(英文報告)発表時間60分
33 書評:石原美奈子編著『せめぎあう宗教と国家―エチオピア 神々の相克と共生』書評 2016-12-00『アフリカ研究』(日本アフリカ学会) 90 科研プロジェクト「民族連邦制国家エチオピアにおける宗教の共同体のもつ公共性に関する人類学的調査」の成果として2014年に刊行された当該書の書評。多様性とまとまりをもつ「大エチオピア」の歴史的な成り立ちを、宗教に注目して解明する9本の個別研究論文を概説し、共同研究というアプローチについて論評した。国全体ではエチオピア正教、キリスト教カトリック、プロテスタント、イスラーム、伝統信仰が融和・共存している国家ともいわれるが、2000年代に入ってキリスト、イスラーム信徒間で暴力的な衝突もあった。とりわけ伝統信仰に着目した論稿における精霊憑依カルト(アヤナ・カルト)の伝播や社会階層との結びつきに言及し、フィールド情報の比較や交換を、前景化することでより豊かな成果となったと論評した。3頁(pp.109-111)
34 The 6th IAS Humanities Korea(HK)International Conference 参加報告 共著 2017-03-00『アフリカ研究』(日本アフリカ学会) 91 2016年10月6-7日、龍仁、韓国外語大学校(HUFS)におけるアフリカ研究国際会議の参加報告。日本アフリカ学会からの海外研究発表助成を得て行った。1954年創設の斯大学校にて、1977年から学術研究拠点となっている研究所が主催するこの会議では、第一に多様な文化のるつぼとしてのアフリカを学術的分野を超えて研究を進めること、第二に国家の枠組みを超えたアジアの研究者、研究機関のネットワークを構築することを狙いとしている。各報告60分ほどの口頭報告15件と4件のポスター報告について概説したうえで、各国の行政と研究機関との関係や経済や政治に関する事情の相違があるなかでの報告は、多様な関心から議論にアクセスでき、さまざまな対話が創発される刺激的な学会だったと報告した。大石高典との共著。5頁(pp.57-61)
35 書評: 松田素二、平野美佐編著『紛争をおさめる文化―不完全性とブリコラージュの実践』書評 2017-11-00『アジア・アフリカ地域研究』(京都大学大学院地域研究研究科) 17(1) 2011年から2015年までの科研共同研究「アフリカ潜在力を活用した紛争解決と共生の実現に関する総合的地域研究」の研究成果である当該書の書評。アフリカに在来の紛争解決や共生の方法に焦点をあてた「潜在力」の各論は、故郷と移民とのネットワーク、婚資交渉、隣人についてのイメージや教育のありかた、森の所有をめぐる土地把握の仕方など多岐にわたり、その射程は広大である。ゆえに「紛争がない状態」まで含めた事例研究は、「争い」自体の価値判断を相対化してしまう不安がある。これらを説明するのに、「社会関係資本」や「絆(帯)」、「平等主義」、「在来知」といった従来の社会科学の術語との異同や、「潜在力」概念からの再発見的な有効性をていねいにとく必要があると論評した。5頁(pp.116-170)
36 Comments to Religious Encounters and Areas Studies ディスカッサント 2017-12-00京都大学稲盛財団記念館 12月1-3日、京都大学において、EHESS(仏)との連携により地域研究者を招いて行われた国際会議、France-Japan Area Studies Forum : New spatiality on Asian and African Area Studies にディスカッサントとして参加、討論した。おもにMarin FERRY 教授、Eloi FICQUET 教授、Emmanuelle Kadya TALL 教授の報告へのコメントを担当しつつ、全体討論でも意見交換した。とくにギアツのイスラーム研究を参照して社会ごとの宗教文化の波及と変容を論じたFICQUET氏の報告について、アジア-アフリカ間のイスラームの交流や相互影響に問を発して、報告者の応答や他の地域研究者からの意見を引き出した。英文コメント時間15分
37 Crying for Democracy : The Case of Radio Broadcasts in Republic of Benin口頭発表 2018-07-00International Union of Anthropological and Ethnological Sciences 2018 : Florianopolis, Brazil ベナンでは民放を中心に多くの視聴者参加番組があり、オーディエンスがメールや電話で活発にアクセスし、日々の暮らしの不満や意見を放送で述べる。なかでも複数の局の番組に何度も電話するアクティヴ・オーディエンスがいる。彼らの現状と活動をテクストと音声資料で紹介し、アフリカ的公共圏が展開していることを論じた。各国の参加者と質疑応答をし、経済や政治に閉塞感をもつ南米の研究者から同様な番組の説明をうけ、市民発の言論活動における問題を共有することが出来た。(英文報告) 発表時間20分
38 In Hope of Change : Active Audiences and their Solidarity in the Post-Charisma Era in Benin and Togo口頭発表 2019-08-00International Union of Anthropological and Ethnological Sciences 2019 : Poznan、Poland 本報告では政治転換について対照的なアフリカの二国の人々が、ポスト・カリスマ期を社会変化について抱く希望や感情の特徴を明らかにした。ベナンとトーゴは国民会議を経た民主化、カリスマ的政治アクターの世代交代、民営ラジオの躍進などの共通点をもつ一方、ベナンでは順調に政治アクターの交代があり、トーゴでは世襲大統領によって旧体制が継続するという対照的な政治状況にある。報告では両国の政治史を整理したのち、interactive radio programに積極的に参加して意見する市民へのインタヴューから、人々の政治意識をさぐった。(英文報告) 発表時間20分
39 ベナン、トーゴにおける意見する人の20年口頭発表 2021-06-00日本アフリカ学会第58回学術大会 国民会議を経た民主化転換、カリスマ的政治アクターの世代交代、民間メディアが言論の民主化を後押し、などの共通点が、互いに隣接するトーゴとベナンにはある。こうした世代交代期をむかえた政治状況・経済システムの変化に、人々は何を期待するのか。 あらたな情報環境のなか、近年の政治情勢の変化に対して、人々の語りの場がどのような対応を迫られたか。近年の情報環境のなか、政治情勢の変化によって、人々の語りの場がどのような対応を迫られたか。コロナ禍の制約により、2019年までの調査資料から検討する。発表時間15分
40 Thirty years after the Democratic Transition in Benin, West Africa : Case of public opinions in an Radio Call-In Show口頭発表 2021-11-00International Union of Anthropological and Ethnological Sciences 2021 : Yucatan, Mexico 2010年代、新自由主義やポピュリズムに対抗するデモや抗議行動が世界各地で活発化したが、ベナンではラジオの放送番組に、人々の assembly が見出せる。人々の語りから、デモクラシーの現状と展望をよみとりつつも、民主化転換からポピュリズムをへて、あらたな権威主義の不安へが、この国の閉塞感として広まっていることを指摘した。インターネットや携帯端末による新たな情報環境のなか、政治情勢の変化に対して、人々の語りの場がどのような対応を迫られたかを報告する。(英文報告)Zoom発表時間20分
41 不満の場のゆくえ―ベナンにおける「意見する人」の語りとデモクラシー 口頭発表 2022-06-00第56回日本文化人類学会研究大会 ベナンで20年以上つづく人気ラジオ番組「朝の不満」では、ラジオと携帯電話や、ラジオとスマートフォンのSNSが連動して、リスナー参加型の意見交換が行われている。だがこの民主化のモデル国でも、近年言論の抑圧やメディアへの制限が強まっている。世界各地で見られる民主的政権の強権化、権威主義化のアフリカ的展開を報告しつつ、「意見する人」たちが国外 (欧米諸国) に離散しながら、マスメディアからソーシャルメディアへと表現の場を移動し、皮肉や隠喩といった表現を巧みに利用して情報発信する状況を論じた。現状を受け入れつつも、政治参加を求め、批判を続けるウェブアクティヴィストについて考察した。発表時間20分
42 不満の場のゆくえ―ベナンにおける「意見する人」の語りとデモクラシー口頭発表 2023-05-00日本アフリカ学会第60回学術大会 世界各地で見られる民主的政権の強権化、権威主義化について整理、紹介し、ベナンでは都市から村落部まで広く浸透したラジオの放送番組に、人々の assembly が見出せることを指摘した。メディアと報道をめぐる人々の語りから、抑圧を増す政治情勢の変化に抗して、マスメディアからソーシャルメディアへと人々の社会批判の場が移行し、独自の展開を見せていることを報告した。
43 Where the Grogneures gone ? : Online Politics from Below in the 21st century of Benin 口頭発表 2023-06-00European Conference on African Studies 09 2010年代、新自由主義やポピュリズムに対抗するデモや抗議行動が活発化した世界情勢を背景として紹介し、アフリカ、ベナンでは都市から村落部まで広く浸透したラジオの放送番組に、人々の assembly が見出せることを指摘した。
以上43点

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