教育研究業績の一覧

渡邊 拓也
A 教育業績
教育実践上の主な業績 年月日概要
1 教育内容・方法の工夫(授業評価等を含む)
1 ミニレポートによるフィードバック 2009-10-00 ~ 授業内課題で短い論述をしてもらい、出された意見を次回授業冒頭でコメントしつつ紹介、フィードバックを行っている。
2 「社会調査士」資格関連科目(カリキュラムA)担当 2009-10-00
~2013-03-00
社会調査の初歩および調査倫理についての講義。教科書は『社会調査へのアプローチ[第2版]』(ミネルヴァ書房)を使用し、必要に応じて適宜プリント教材で補足する。(「社会調査論」金城学院大学)
3 マルチメディア・映像資料の活用 2010-04-00 ~ 「人間関係論」(大谷大学)、「グローバル社会特論」(関西学院大学)などにおいて、DVDなど映像資料を用いて理解の助けとしている。上記のミニレポートと組み合わせ、高い効果を上げている。
4 授業時間外の学生指導 2015-04-00 ~ オフィスアワー以外にも研究室を開放し、学生の学習相談・生活相談に乗っている。
5 中川学区調査(京都市北区) 2015-06-00
~2017-03-00
大谷大学地域連携室(コミュ・ラボ)の活動の一環として、中川学区(京都市北区)の山間集落において、地域住民の暮らしに関する聞き取り調査を、学生たちと共に長期的かつ継続的におこなうことで、学生と地域住民との親睦を深めると同時に、学生の学外での実践的な学びおよび調査スキル向上に貢献している。
6 社会調査の総合的学習指導 2015-10-00 ~ 「フィールドワーク入門」「探究フィールドワーク」といった社会調査系の授業において、聞き取り・アンケートなど社会調査の方法論について講義した後、調査企画、プレ調査、実調査、データ処理、成果報告書作成に至るまで、授業時間外を含めた手厚い指導をおこなっている。
7 美山町調査(京都府南丹市) 2016-09-05
~2016-09-08
美山町平屋地区地域福祉推進協議会(京都府南丹市)の依頼により、山間地域の地域住民の暮らしと福祉ニーズに関する聞き取り調査・アンケート調査を、学生たちと共に短期集中的におこなうことで、学生と地域住民との交流を図ると同時に、学生の学外での実践的な学びおよび調査スキル向上に貢献した。
8 ディベートの活用 2021-04-00 ~ 演習の授業においてディベートを取り入れ、ルールに則った討論(ルールは標準ディベートstandard debateを採用)を行うことで、学生のプレゼンテーションの力を伸ばすとともに、相手側の立場に立ってものを見る力や、相手側の論理矛盾を看破するスキル、批判的思考力の向上に役立てている。
2 作成した教科書、教材、参考書
1 授業で使用する教材(プリント) 2009-10-00 ~ 授業では毎回、関連する参考資料をプリントに見やすくまとめ、配布している。場合によっては吹き出しつきのキャラクターイラストで注意を引くよう、オリジナルな工夫をこらしている。いずれにせよ単なる授業レジュメではなく、ときには空欄をあけるなど、学生が授業中に「人の話を聞き、自分の頭で考える」よう配慮してある。
2 フランソワ・デュべ著『教えてデュべ先生、社会学はいったい何の役に立つのですか?』 2015-04-00 ~ 共訳書(研究業績D-I-1参照)。椙山女学院大学などで教科書指定。
3 教育方法・教育実践に関する発表、講演等
4 その他教育活動上特記すべき事項
B 職務実績
1 《報告書》
平田昌司・渡邊拓也共編著
『国際交流の観点から見た文学研究科webサイトの調査報告および文学研究科への提言』
(京都大学大学院文学研究科学生支援・国際交流プロジェクト)
2010-04-00 コーディネーターとして京都大学文学部「国際交流プロジェクト」を指揮した。全147頁にわたるこの調査報告書は、近年の受入れ留学生増加の流れを受け、平田昌司教授の指導下で作成されたものである。内容は、京都大学文学部・大学院文学研究科のwebサイト(ホームページ)上での、主に外国人(京都大学への留学志望者)向けの情報提供が十分なものであるかどうかを、(a) 国内外の代表的な大学webサイト(日、中、韓、米、英、独、仏、伊の8ヶ国、64大学)との比較調査、(b) 文学部教務掛・総務掛へのアンケート調査、(c) 京都大学文学部在学中の留学生へのアンケート調査によって明らかにするというものであり、京都大学文学部に改善策の提言を行った。この報告書は本部を含む学内全学部に配布された。
2 『アクティブラーニング授業報告第4回 2015年度学科科目実践研究「フィールドワーク1・2」成果集』 2016-03-00 ~ 社会学科の「フィールドワーク1・2」の授業でおこなわれたフィールド調査の成果報告集。今年度は11の班がそれぞれのテーマにそって、アンケート調査、聞き取り調査などの手法を用いながら、企画、プランニング、実調査、プレゼンテーションなどをおこなった。総頁数130頁、担当分:2頁(まえがき)。
3 『アクティブ・ラーニング授業報告第5回 2016年度学科科目実践研究「フィールドワーク」成果集』 2017-03-00 ~ 社会学科の「フィールドワークI・II」の授業でおこなわれたフィールド調査の成果報告集。2016年度は13の班がそれぞれのテーマにそって、アンケート調査、聞き取り調査などの手法を用いながら、調査計画立案、実調査、報告書作成などをおこなった。総頁数160頁、担当分:1頁(まえがき)および全体の校正。
4 『アクティブ・ラーニング授業報告第6回 2017年度学科科目実践研究「フィールドワーク」成果集』 2018-03-00 ~ 社会学科の「フィールドワークI・II」の授業でおこなわれたフィールド調査の成果報告集。2017年度は12の班がそれぞれのテーマにそって、アンケート調査、聞き取り調査などの手法を用いながら、調査計画立案、実調査、報告書作成などをおこなった。総頁数128頁、担当分:1頁(まえがき)および全体の校正。
5 『2017年度社会調査実習報告書ー昭和初期世代の戦争・暮らし・家』 2018-03-00 ~ 現代社会学科科目「社会調査実習I・II」の成果報告書。京都市左京区にて聞き取り調査を行い、そのデータをまとめ分析した。総頁数46頁、担当分1頁(p.4, 調査概要)。
6 大谷大学地域連携室副室長 2018-04-00
~2020-03-00
大谷大学地域連携室(コミュ・ラボ)の運営業務、および大学の正課授業その他で学外にて地域社会と連携して活動・調査を行う「地域連携プロジェクト」の全体統括を行った。
7 教務委員会・FD部会部会長 2018-04-00 ~ 大学のFD活動の統括およびFD研修会の企画・運営を行った。
8 内部質保証委員会・作業部会(アンケート)部会長 2018-04-00
~2020-03-00
学内のアンケート調査(授業評価アンケート、卒業生アンケート、在学生満足度アンケート)の実施および報告会の運営業務の統括を行った。
9 『アクティブ・ラーニング授業報告第7回 2018年度学科科目実践研究「フィールドワーク」成果集』 2019-03-00 ~ 社会学科の「フィールドワークI・II」の授業でおこなわれたフィールド調査の成果報告集。2018年度は13の班がそれぞれのテーマにそって、アンケート調査、聞き取り調査などの手法を用いながら、調査計画立案、実調査、報告書作成などをおこなった。総頁数126頁、担当分:1頁(まえがき)および校正。
10 『2018年度社会調査実習報告書ー盆踊りと人のつながり』 2019-03-00 ~ 現代社会学科科目「社会調査実習I・II」の成果報告書。京都市左京区にて聞き取り調査を行い、そのデータをまとめ分析した。総頁数32頁、担当分2頁(pp.2-3, 調査概要)。
11 『アクティブ・ラーニング授業報告第8回 2019年度学科科目実践研究「フィールドワーク」成果集』 2020-03-00 ~ 現代社会学科の「フィールドワーク入門1・2」の授業でおこなわれたフィールド調査の成果報告集。2019年度は17の班がそれぞれのテーマにそって、アンケート調査、聞き取り調査などの手法を用いながら、調査計画立案、実調査、報告書作成などをおこなった。総頁数186頁、担当分:1頁(まえがき)および校正。
12 『2019年度社会調査実習報告書ー多様なアクターによる場づくり:左京西部いきいき市民活動センターを中心に』 2020-03-00 ~ 現代社会学科科目「社会調査実習I・II」の成果報告書。京都市左京区にて聞き取り調査を行い、そのデータをまとめ分析した。総頁数48頁、担当分1頁(p.4, 調査概要)。
13 大谷大学インスティテューショナル・リサーチ室副室長 2020-04-00 ~ 大学のインスティテューショナル・リサーチ(IR)関連業務のうち、主にアンケート調査関連部門の統括を担当した。
14 『アクティブ・ラーニング授業報告第9回 2020年度学科科目実践研究「フィールドワーク」成果集』 2021-03-00 ~ 現代社会学科の「フィールドワーク入門1・2」の授業でおこなわれたフィールド調査の成果報告集。2020年度は18の班がそれぞれのテーマにそって、アンケート調査、聞き取り調査などの手法を用いながら、調査計画立案、実調査、報告書作成などをおこなった。総頁数206頁、担当分:1頁(まえがき)および校正。
15 『探究フィールドワーク報告書2020ー新型コロナウイルスの地域社会への影響:左京西部いきいき市民活動センターの活動を中心に』 2021-03-00 ~ 現代社会学科科目「探究フィールドワーク1・2」の成果報告書。京都市左京区にて聞き取り調査を行い、そのデータをまとめ分析した。総頁数44頁、担当分3頁(pp.2,4-5、はじめに・調査概要)。
C 学会等及び社会における主な活動
所属期間及び主な活動の期間 学会等及び社会における主な活動
1 1998-04-00~0000-00-00 関西社会学会
2 2013-04-00~0000-00-00 日本社会学会
3 2013-04-00~0000-00-00 日本社会病理学会
D 研究活動
著書、学術論文等の名称単著、
共著の別
発行又は
発表の年月
発行所、発表雑誌等
又は
発表学会の名称
概要
Ⅰ著書
1 フランソワ・デュベ著『教えてデュベ先生、社会学はいったい何の役に立つのですか?』共訳 2014-04-00新泉社 François Dubet, Dintes-nous, François Dubet, A quoi sert vraiment un sociologue ? (Paris, Armand Colin, 2011) の、フランス語からの全訳。内容は、現代社会における社会学の存在意義、聞き取りや数量調査など具体的な研究方法の紹介、「社会学的介入」を軸にしたトゥレーヌからデュベに流れるフランス社会学の思想についてなど、高校生・学部学生にも分かりやすい社会学の入門書となっている。監訳:山下雅之、訳:濱西栄司・渡邊拓也。全267頁中、担当95頁(訳:163-251, 262-267頁)。
2 パトリック・ルモアンヌ著『教えてルモアンヌ先生、精神科医はいったい何の役に立つのですか?』単訳 2016-04-00新泉社 Patrick Lemoine, Dites-nous, Patrick Lemoine, A quoi sert vraiment un psy?(Paris, Armand Colin, 2010)のフランス語からの全訳。内容は、精神医学の歴史、患者への差別や偏見の歴史などに始まり、反精神医学について、精神分析学との関係について、薬学や司法とのかかわりについて、そして現代の精神科医の業務や「こころの病気」の内実についてなど、若い読者向けに平易に解説した本となっている。(全275頁、訳:3-260頁、あとがき:261-272頁)
3 せめぎ合う親密と公共:中間圏というアリーナ(シリーズ「変容する親密圏/公共圏」第12巻)共編著 2017-01-00京都大学学術出版会 変容する現代の「コミュニティ」を扱った地域社会学的研究。国内外の事例を取り上げつつ、メンバーの固定化が前提とされない不定形な新しいコミュニティについて詳細に検討し、さらにそれがネットワーク型の人間関係に還元されないこと、および人々が集う<場>の重要性について論じた。(全326頁中、担当:第8章(217-237頁)、終章(289-316頁)、各章前文(26-27,55,85,112-113,135,163,191-192,216-217,239,263-264頁)、合計63頁)
4 パスカル=アンリ・ケレール著『うつ病——回復に向けた対話』共訳 2017-06-00白水社(文庫クセジュ) Pascal-Henri Keller, La Dépression(Collection "Que sais-je?" n°4021, PUF, Paris, 2016)の全訳。フランスにおけるうつ病研究の最先端の内容であり、うつ病の歴史から現代の精神医療におけるアプローチまでを扱っている。全181頁中、担当53頁(61-85, 106-133頁)。
5 セルジュ・ポーガム編著『100語ではじめる社会学』共訳 2019-01-00白水社(文庫クセジュ) Serge Paugam (sld.), Les 100 mots de la sociologie, (Coll. "Que sais-je?" no.3870, Paris, PUF, 2010, 2015)の全訳。社会学のキーワード100語を小辞典の形でまとめた本書は、とりわけ現代のフランス社会学が何を重視して研究を進めているかの見取り図となっている。全174頁中、担当80頁(訳:27-51, 89-117頁、巻末2-24頁、あとがき:147-149頁)。
6 ドラッグの誕生:一九世紀フランスの〈犯罪・狂気・病〉 単著 2019-12-00慶應義塾大学出版会 京都大学に提出した博士論文に、大幅な加筆を行ったものの刊行物。19世紀フランスの事例を中心に、阿片、大麻、モルヒネなどの物質が「医薬品」から「ドラッグ」へと変化していくプロセスを追い、またそこから逆照射して、近代以降の社会における社会的排除と予測困難なものに対する不寛容の拡大について論じた。文部科学省・研究成果公開促進費(19HP5097)の助成を受けている。(256頁)
7 アディクション・スタディーズ:薬物依存症を捉えなおす13章共著 2020-07-00日本評論社 松本俊彦編の薬物依存に関する著作。第2章「薬物はいかにして「悪」とみなされるに至ったか:「ドラッグ」の社会史」において、紀元前から20世紀前半に至るまでの、主にヨーロッパ世界における阿片、モルヒネ等の事例を扱いつつ、それらの物質にまつわる解釈枠組みの歴史的変遷について論じた。全253頁中、担当17頁(26-42頁)。
以上7点
Ⅱ学術論文
1 G.H.ミードにおける「主我」と主体性:ラカン精神分析の見地から単著 1999-12-00『京都社会学年報』(京都大学文学部社会学研究室)第7号 G.H. ミードの学説に関する理論社会学的研究。ミードは自我を「主我と客我(I とme)」に区分したが、このうち「主我」はミード自身の言及が少ないこともあり、いまだ謎の多い概念として残されている。本稿では「話者は自分の話していることを知らない」とした精神分析理論を手がかりに、「主我」概念の再検討を行うとともに、コミュニケーションによる相互理解がそれほど調和的ではないことを明らかにする。
26頁(204-229頁)
2 モルヒネ中毒と法医学:フランスの事例(一八八〇−一八九九)単著 2002-10-00『ソシオロジ』(社会学研究会)第47巻2号(vol.145) 近代西欧のドラッグ問題の形成過程を扱った歴史社会学的研究。モルヒネ中毒は1870年代のドイツで「発見」された。これは普仏戦争で生じた多数の負傷者に鎮痛剤としてのモルヒネが広く投与されたためである。しかし1880年代フランスにおいて、モルヒネ中毒者による犯罪が多数報告されると、司法概念としてのモルヒネ中毒が現れた。現在のドラッグ中毒者に関する、いたわるべき「病者」と非難すべき「逸脱者」という二重の定義が、医学と司法との結託にその起源を持っていることを、歴史社会学的アプローチにより明らかにする。
 16頁(21-36頁)
3 医療化の周辺:ADHDの出現とその功罪単著 2004-12-00『京都社会学年報』(京都大学文学部社会学研究室)第12号 現代日本の「こころの病」の問題を扱った社会病理学・医療社会学的研究。ADHD(注意欠陥/多動性障害)は、目下日本の学校を悩ませている子供の病のひとつである。学校での彼らは問題児と見なされ、また家庭においては母親たちに、育て方に関する自責の念を生むこともあった。平成11年(1999)になってここに救いの糸のように垂らされたのが、ADHDという病名だったといえる。それは教師や親たちの責任を減免したが、その一方で、いじめや学級崩壊の「原因」として祭り上げられ、他のあらゆる要因を不可視化してしまうという問題点もあった。そのことを小学校教師たちへのインタビュー調査により明らかにする。
18頁(91-108頁)
4 医薬品からドラッグへ:一九世紀フランスにおける阿片単著 2011-06-00『ソシオロジ』(社会学研究会)第56巻1号(vol.171) 近代西欧のドラッグ問題の形成過程を扱った歴史社会学的研究。19世紀西欧の阿片は、阿片戦争、公衆衛生学の予防的な政策提言、ドラッグに溺れる「心の弱さ」の言説による私的領域への責任の送付といった諸要素が複雑に絡み合って、禁止薬物への階梯を下っていく。また人口概念の傍らでこのプロセスの進行を促進する役割を果たしたのは、当時の進歩主義的な時代認識だった。進歩発展に対する楽観や未来への指向性が、つまるところ社会的ノルムの持つ「正常化=均質化」機能の隠れた必要条件だったのであり、本稿ではそのことを歴史社会学的な文献調査から明らかにする。
16頁(3-19頁)
5 L'émergence de la drogue. La construction d'une catégorie à partir des cas de l'opium, du haschisch et de la morphine, XIXe-XXe siècles, France.単著 2012-09-18《Ph.D論文》
Thèse de histoire et civilisations, EHESS-Paris,
soutenu publiquement le 18 septembre 2012.
近代西欧のドラッグ問題の形成過程を扱った歴史学的研究(Ph.D論文、歴史学)。阿片、大麻、モルヒネといった物質は、西欧医学において初め「優れた医薬品」と認識されていた。だが19世紀に近代市民社会が成立し、産業化・近代化が進行するとともに、それらは危険視され「ドラッグ」と見なされるようになる。その変容の過程を、医学・精神医学・文学などの文献資料を元に社会史的アプローチから描き出し、近代の「正常と病理」の境界線の変遷を丁寧に追いながら、薬物中毒を生-権力(フーコー)の貫徹が生み出した近代特有の病理として分析する。
300頁(仏語)
6 ドラッグの誕生:19世紀フランス単著 2012-11-26《博士論文》
京都大学大学院
文学研究科
近代西欧のドラッグ問題の形成過程を扱った歴史社会学的研究(博士論文、社会学)。上記のフランス語のPh.D論文(歴史学)を、社会学の論文として全編書き改めたものである。内容はほぼ上に準ずるが、19世紀に発生する「科学への信頼」を軸として、現代(後期近代)社会へと視点を折り返しつつ、正常性がいまやリスク概念と切り離せないものとなっていること(確かなものから「確からしい」ものへ)について分析を行った。
 170頁
7 日本の職場における「現代型うつ病」に関する試論:その社会的要因とポストフォーディズム時代の「社会-人」の条件
単著 2013-02-00『「再本質化」される親密圏と新たなシチズンシップ』、京都大学グローバルCOEプログラム「親密圏と公共圏の再編成をめざすアジア拠点」GCOEワーキングペーパー次世代研究、101号 現代日本の「こころの病」の問題を扱った社会病理学・医療社会学的研究。2000年代に入ってから、日本国内のうつ病患者数は倍増する。その原因のひとつはヒーリーらの指摘したSSRI(抗うつ薬)の登場だったが、他方でこの時期は、日本政府(小泉内閣)がネオリベラル路線へと大きく政策転換した時期と重なっている。本稿では、職場での「やる気・モチベーション」や自己の感情コントロール能力、コミュニケーション能力の過度の重視が、かえって(勤労意欲の低減としての)うつ状態を生み出していくパラドクスについて指摘した。 22頁(116-137頁)
8 後期近代と非包摂型の福祉:コモンウェルスと観光をめぐって単著 2013-10-00『観光科学』(琉球大学大学院観光科学研究科)vol.5 J・ヤングの「過剰包摂」概念を手掛かりに、将来の福祉のあり方について論じた地域社会学・理論社会学的研究。排除型社会に移行した後期近代において、福祉国家モデルに続き(包摂型社会を前提としていた)福祉社会モデルもまた機能不全に陥っていく。そのような状況で<共>なるものを再創生するために、異質な(見知らぬ)他者の間でも必要時のみ作動するような、セーフティネット型かつ非包摂型の福祉のあり方を模索することの必要性について指摘した。 4頁(88-91頁)
9 創られた犯罪不安:1970-80年代『警察白書』を中心に単著 2020-03-00大谷学報(大谷大学)vol.99, No.2 現代日本の犯罪不安を扱った、社会病理学・歴史社会学的研究。2000年代以降、犯罪率は減少しているのに犯罪不安が増大するという矛盾(安全と安心の乖離問題)が表面化する。本稿では、日本で犯罪不安概念が形成される1970-80年代の『警察白書』の分析を通じて、統計データの示し方によって犯罪不安の高低が作為的に操作される危険性について論じた。 17頁(1-17頁)
10 正常と異常の中間領域:19世紀ドイツ・フランス・ベルギーにおける精神病質概念と人格概念 単著 2022-11-00社会学雑誌(神戸大学社会学研究会)vol.39 現在のDSMのパーソナリティ障害概念の起源を尋ねつつ、正常性と異常性がいかに規定されてきたかを扱った、精神医学史的研究。19世紀西欧を中心に、カント、ハインロート、コッホ、リボー、ジャネ、ダルマーニュらの論考に現れる精神病質および人格の概念の変遷を追い、それらが20世紀初頭のクレペリンにおいて合流しつつ、人間精神の正常と異常の中間領域を指す概念へと措定されていく様子について明らかにした。 19頁(95-113頁)
以上10点
Ⅲ 口頭発表・その他
1 ハシッシュと狂気:19世紀フランスの事例口頭発表 2003-05-00関西社会学会第54回大会(追手門学院大学) 19世紀フランスにおいて、精神疾患に対する薬物治療を試みた《薬理心理学の父》J.-J. モロー・ド・トゥールを取り上げ、当時の西欧精神医学における「幻覚」概念を中心に、ハシッシュ(大麻)が医療言説のなかで精神疾患と結びつけられていく歴史的プロセスについて報告を行った。
 発表時間、15分
2 魔法使いの遺産:まちづくりはなぜ失敗するのか/大曽根商店街(名古屋市北区・東区)
単著 2012-12-00『方法としてのジモト:地域社会の不可視化された領域をめぐるフィールドワーク』、京都大学グローバルCOEプログラム「親密圏と公共圏の再編成をめざすアジア拠点」GCOEワーキングペーパー次世代研究、91号 現代日本の地方都市(商店街)の事例を扱った地域社会学・歴史社会学的研究。大曽根商店街(名古屋市)は、1980年代後半の「地域活性化」政策による再開発によって、小綺麗な白い街並み(「オズモール」商店街)へと変貌した。だが1970年代以来の集客率下降に歯止めはかからず、経済的な観点からは完全に失敗したケースとなった。本稿においては、バブル期の行政による上からのまちづくりが失敗したのは、「地域への愛着」を高めることと経済的利益を高めることという、二つの方向性を混同したためであるとの指摘を行った。
 20頁(118-137頁)
3 ローカルエリートからローカルセレブへ:ゆるキャラとまちづくりに関する一考察(大曽根商店街、名古屋市北区・東区)
単著 2013-02-00『ジモトという視座:身近な世界を/から批判的に読み解く』、京都大学グローバルCOEプログラム「親密圏と公共圏の再編成をめざすアジア拠点」GCOEワーキングペーパー次世代研究、102号 現代日本の地方都市(商店街)の事例を扱った地域社会学・歴史社会学的研究。2012年の秋に大曽根商店街の一角に現れたマスコットキャラクターは、素人(地元の高校生たち)の作品だった。地元愛の名目で行われるこうした無償労働の搾取を批判する向きもあるが、本稿ではむしろ、手作りマスコットが「売れること」よりは「愛されること」を主眼にしている点に着目する。各地で似たようなご当地マスコットが産出される事態を「反転したグローカリゼーション」の動きと捉えつつ、ローカリティの新たな表出のあり方について考察した。 18頁(29-46頁)
4 『「再本質化」される親密圏と新たなシチズンシップ』共著 2013-02-00京都大学グローバルCOEプログラム「親密圏と公共圏の再編成をめざすアジア拠点」GCOEワーキングペーパー次世代研究、101号 京都大学グローバルCOEプログラムによる研究成果報告集(ユニット代表:水野英莉)。他者への気遣いを「女性らしさ」と結びつけるようなジェンダー観は、社会的虚構として一度は批判・棄却されたはずだった。しかし現代では産業構造の変化と感情労働市場の拡大が、そうしたイメージの「再本質化」をもたらす。その様子をさまざまな事例から批判的に検討する(総頁数139、担当:1-4頁(前書き)、116-137頁)。
5 後期近代と非包摂型の福祉:コモンウェルスと観光をめぐって口頭発表 2013-03-00研究会「マルチチュードの場所と観光流動:「生政治」にアプローチする社会調査の想像力」(琉球大学観光産業科学部) 地域社会における「社会的絆」の重要性が叫ばれて久しいが、もしもそうした「社会的包摂」が過度に強調され制度化され、上から強制されるようなことがあれば、かえって新たな社会病理を生み出す危険性があることを、J. ヤングの「過剰包摂」概念とネグリ=ハートの「マルチチュード」を手がかりに分析し、報告した。
 発表時間、20分
6 L'émergence de la catégorie de drogue, au point de vue historique講演 2014-04-00Séminaire inter-laboratoire d'anthropologie, "Prise et Emprise des Drogues. Les sociétés observées dans leurs substances", deuxième séance, le 11 avril 2014, Université d'Aix-Marseille, France. フランス(エクスアンプロヴァンス)で開かれた、「ドラッグと社会」をテーマにした学際的シンポジウムでの招待講演。エクス=マルセイユ大学主催。内容は、ドラッグ使用を逸脱視する社会的なまなざしの形成過程と近代化との関連について。
 発表時間、45分(仏語)
7 邯鄲の夢:真弓の歴史単著 2016-03-00『中川学区の暮らし再発見プロジェクト活動記録集ー真弓編ー』、大谷大学地域連携室・京都市北区中川学区社会福祉協議会「中川学区の暮らし再発見プロジェクト」編 現代日本の過疎山村の事例を扱った地域社会学・歴史社会学的研究。京都市の「北区民まちづくり提案支援事業」の助成を受け、大谷大学と中川学区社会福祉協議会が提携し作成した成果の一部。真弓集落(京都市北区・中川学区)の史料データ収集とフィールド調査をおこない、とくにその歴史の忘却された部分に光を当てつつ、学区という行政区を超えた横の連携の重要性について指摘した。 6頁(14-19頁)
8 医療化の功罪:医学への過剰な期待がもたらすもの単著 2016-04-00『大阪保険医雑誌』(大阪府保険医協会)No.595 現代日本の「こころの病」を扱った、社会病理学・医療社会学的研究。とくに医療化の進行が現代社会にもたらした影響を扱った。ADHD、うつ病といった病名がつけられることで、正当な治療を受けられるといったプラスの効果が生まれる。だが、病名が一人歩きしてしまい医療現場に混乱がもたらされたのも事実である。本稿ではその原因について「啓発のジレンマ」「管理責任モデル」といった観点から分析した。 4頁(20-23頁)
9 創られる「犯罪不安」と地域防犯の民間委譲:1980年代の変化口頭発表 2016-09-00日本社会病理学会第32回大会(福岡県立大学) 『警察白書』『犯罪白書』の検討を通じて、国内の犯罪不安の上昇言説が、地域防犯という刑事司法の(部分的)民間委譲傾向の高まりと親和性を持つことについて、主に1980年代の事例を取り上げつつ研究報告をおこなった。
 発表時間、20分。
10 書評「萩上チキ・浜井浩一著『新・犯罪論——「犯罪減少社会」でこれからすべきこと』」単著 2017-09-00日本社会病理学会編『現代の社会病理』第32号、93-95頁。 萩上チキ・浜井浩一『新・犯罪論』(現代人文社、2015年)への書評。犯罪および犯罪者の処遇に関する従来の二つのモデル(司法モデルと医療モデル)の限界を超えて著者らが提示した、犯罪を福祉の問題として捉える「生活モデル」に特に焦点を当てて論評した。
11 「新型コロナの「自粛警察」が抱いている「恐怖」の構造:アルコール・ドラッグの歴史から考える」単著 2020-05-12現代ビジネス(講談社) インターネット記事。コロナ禍のなか感染者が極端なバッシングを受けるケースについて、アルコール中毒の歴史を事例に考察を行なった。(URL:https://gendai.ismedia.jp/articles/-/72493)
12 「大谷大学におけるオンライン授業の現在地:2020年度前期学生アンケートの結果から」口頭発表 2020-12-19大谷大学文学部人文情報学科 人文情報学科ほか主催「人文情報学研究の最前線2020 シンポジウム:ウイズ・コロナ時代の大学の学び:大谷大学の取り組みから」における基調講演。IR室副室長の立場から本学のオンライン授業の現状と課題について報告を行った(報告25分、質疑15分)。
13 医薬品からドラッグへ:19世紀フランスの阿片を中心に 口頭発表 2022-02-25アスニー特別講演会(京都アスニー) 京都アスニー(京都市生涯学習総合センター)での講演。古代より強力な鎮痛剤として用いられていた阿片は、19世紀にその危険性を指摘され「ドラッグ」へと変化していくが、その背景にあった公衆衛生学およびナショナリズムの勃興と発達について講演を行った(発表時間90分)。
14 幻覚剤の何が危険視されたのか:19世紀以降の欧米社会と精神医学 口頭発表 2023-03-06精神展開剤の精神科治療応用を考える会(慶應義塾大学医学部) 「精神展開剤と社会」と題された慶應大医学部の研究会でのゲスト講演(Webex、オンライン)。シロシビン、大麻、LSDといった幻覚剤が、歴史的また社会的にどのように危険視されていったかについて講演を行った(講演時間60分)。
15 「不気味なもの」と場所性 口頭発表 2023-07-29『オルタナティヴ地域社会学入門』書評会 新刊本の書評会(龍谷大学深草キャンパス)にゲストコメンテーターとして招かれ、その後のパネルディスカッションにも登壇。特に過疎地における地域活性化に関して、著者らがフロイトの「不気味なもの」概念を用いて論じた部分を中心に書評を行った(発表時間20分)。
16 社会が病気である:19世紀フランス公衆衛生学と薬物依存 口頭発表 2023-08-24伊敷の病院&哲学ウェブセミナー 伊敷病院主催のセミナーに招かれての講演(オンライン形式)。疫学の原型となる19世紀公衆衛生学の発展と、薬物依存が集合的病理と認識されつつ社会的逸脱として登記されていくプロセスについて講演した(講演時間60分)。
以上16点

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