教育研究業績の一覧

井黒 忍
A 教育業績
教育実践上の主な業績 年月日概要
1 教育内容・方法の工夫(授業評価等を含む)
1 パワーポイントを用いたマルチメディア資料(写真・動画・衛星画像・DVD)の積極的な利用 2004-04-00
~2012-03-00
現地調査時に撮影した写真やGoogle Earth衛星画像、関連する動画、DVDなどの画像・映像を盛り込んだpptを作成し、授業において利用してきました。
2 リアクションペーパーの活用 2004-04-00 ~ 受講者の要望や授業の問題点、感想を記載するリアクションペーパーの提出を求めました。個別にレスポンスを行うとともに、授業全体に関わる内容や多くの受講者が疑問を感じた点などについては、次回の授業冒頭の時間に伝え、問題の改善につとめました。
3 グループ学習およびプレゼンテーションの実施 2005-09-00 ~ 大学導入、学科導入授業を担当した際に、少人数のグループで作業を行い、プレゼンテーションを行う方法を用いることで、受講者のスムーズな授業参加、自発的な発言が促されました。また、発表後にグループごとに質問票を作成し質疑応答を行うことで、ディスカッションやディベートの体験もできるようつとめました。
4 授業時間以外における研究・学習支援―史料読書会 2006-04-00
~2013-03-00
授業時間以外における学生の研究・学習活動を支援するために、有志が参加する史料読解のための読書会を組織しました。大谷大学では『高僧伝』、『大元至元弁偽録』、早稲田大学では『日知録』、『三朝北盟会編』を取り上げました。
2 作成した教科書、教材、参考書
1 「中国都市史」ノートおよびパワーポイントスライド 2004-04-00
~2011-04-00
阪南大学における「東洋史講義」の教材として作成。早稲田大学法学部・政治経済学部での「外国史概論」に際して改訂増補。都市の変遷を切り口に古代より現代に至る中国史を概述する。
2 「東北アジア交流史」ノートおよびパワーポイントスライド 2005-04-00
~2006-03-00
阪南大学における「東洋史講義」の教材として作成。日本を含めた東北アジア全域における交流の歴史を古代から近世までのスパンで考察する。沿海州・アムール流域から、サハリン、北海道、東北日本へと至る「北の視線」の重要性を解説する。
3 「中国の文化と社会」ノートおよびパワーポイントスライド 2006-04-00
~2007-03-00
阪南大学における「東洋史講義」の教材として作成。中国の社会と文化の歴史的な流れを概述する。各時代の代表的な思想や著作を取り上げ、その時代的な背景や当該時期の文化・社会の特徴を解説する。
4 「中国環境史」ノートおよびパワーポイントスライド 2011-04-00
~2013-03-00
早稲田大学オープン教育センターにおける「環境史の現在と諸問題」の教材として作成。環境問題を歴史という切り口から考える。(1)環境学と環境史、歴史学と環境史の関係、(2)水利用の歴史から見た環境と社会、(3)沙漠化から見た自然環境と人間活動の相互作用を取り上げる。
3 教育方法・教育実践に関する発表、講演等
1 新開講科目「専門の技法」に関する授業内容報告 2007-03-00 新開講科目である新入生導入授業「専門の技法」の東洋史担当者として、授業内容の紹介と問題点、改善すべき点等を執筆した。「新開講科目<専門の技法>報告:学科通信」(『大谷大学史学論究』13、pp. 67-74)
4 その他教育活動上特記すべき事項
1 2016年度後期優秀授業賞「歴史学基礎演習1」 2017-11-01 1年生を対象とした歴史学の導入授業です。特に本授業ではプレゼンテーションとディスカッションのスキルアップを目的とします。各自のテーマについて調べ、文章を書くだけでなく、それを口頭で分かりやすく説明するために必要なことは何か、さらに聞き手はどのような点に注意すべきなのかといった基礎的な事柄を実践を通して学びます。
2 2020年度後期優秀授業賞「歴史学演習1」 2020-09-00
~2021-03-00
歴史学を学ぶ上での基本的な考え方、モノの見方、史料の扱い方について説明を行い、常識やこれまでの理解にとらわれず自由に発想する想像力と物事と物事の関係を合理的に考える論理性を身につけることを目指した。
B 職務実績
1 外国人研究者への研究支援
(1)通訳
(2)外国人研究者の招聘
2005-12-17
~2011-12-00
(2005.12.17)
京都大学文学研究科・北京大学歴史学部・交流協定締結記念国際シンポジウム「京都と北京:光の交わるところ-学問知から人類知へ」において同時通訳(中→日)を行う。

(2010.10.31)
中国水利史研究会2010年度大会において張俊峰氏の報告「近十余年来中国水利社会史研究的新進展」および質疑に対する通訳(日⇄中)を行う。

(2010.10~2010.11)
山西大学中国社会史研究中心張俊峰副教授を招聘し、同氏の中国水利史研究会大会における研究発表の通訳を務める。

(2011.11~2011.12)
復旦大学歴史地理研究所王大学講師およびペンシルバニア大学Jingping Wang講師を招聘し、国際ワークショップ「近世華北における社会的紐帯としての宗族と宗教-2001~2011年における石刻史料調査の成果と新展開-」を開催。
2 外部資金の獲得 2006-04-01 ~ (2006.4.1~2009.3.31)
日本学術振興会特別研究員奨励費「中国近世の山西汾河水系における水資源の開発と利用」(06J01498)に基づく研究を研究代表者として実施。

(2009.4.1~2011.3.31)
科学研究費補助金・研究活動スタート支援「中国山西省山間部における資源開発と社会変容の関係:碑刻資料を用いた環境社会史研究」(21820067)に基づく研究を研究代表者として実施。

(2009.4.1~2010.3.31)
財団法人クリタ水・環境科学振興財団研究助成(萌芽研究)「前近代中国半乾燥地域の水利権売買・貸借に関する比較研究」に基づく研究を研究代表者として実施。

(2011.4.1~2015.3.31)
科学研究費助成事業・若手研究(B)「清代生態環境档案を用いた西北開発における環境認識と技術的対応に関する研究」(23720352)に基づく研究を研究代表者として実施。

(2015.4.1~2019.3.31)
科学研究費補助金・基盤研究(C)「前近代中国黄河中流域における水利権と水利組織」(15K02822)に基づく研究を研究代表者として実施。

(2020.4.1~2025.3.31予定)
科学研究費補助金・基盤研究(B)20H01305「アフロ・ユーラシア乾燥・半乾燥地域の水利権に関する比較史研究」研究代表者
3 社会教育講座における講師 2009-09-00
~2010-03-00
龍谷大学エクステンションセンター講師として「沙漠に埋もれゆく都市“ハラホト”-オアシスをめぐる遊牧民と農耕民の対立・共存の歴史をひもとく-」を講義。
4 FD推進ワークショップへの参加 2014-08-06
~2014-08-07
一般社団法人日本私立大学連盟が主催する平成26年度FD研修に参加し、FDについての討議および模擬授業を行う。
5 高大連携講義 2014-09-20 ~ 飯田女子高校(2014.9.20)、西宮今津高校(2014.12.9)、伊那西高校(2015.7.23)、法隆寺国際高校(2015.11.25)、山城高校(2017.2.8)、米原高校(2023.12.13)にて東洋史に関する授業を行う。
6 外国人留学生の受け入れ・指導 2014-10-01
~2015-09-30
中国からの留学研究生の指導教員として、週1回の個人指導を行う。
7 在外研究 2022-04-01 ~ 2021年度(新型コロナウィルス流行のため渡航は2022年度に延期)在外研究員として、アメリカ合衆国UCLA, Department of Historyにて在外研究に従事。研究課題は「アフロ・ユーラシア乾燥・半乾燥地域の水利権に関する比較史研究」。
C 学会等及び社会における主な活動
所属期間及び主な活動の期間 学会等及び社会における主な活動
1 2000-04-00~0000-00-00 東洋史研究会会員、編集委員(2000.4~2003.3)
2 2003-04-00~0000-00-00 史学研究会会員
3 2003-04-00~2023-12-31 満族史研究会会員
4 2003-04-00~0000-00-00 内陸アジア史学会会員
5 2005-04-00~2023-03-31 史学会会員
6 2006-04-00~0000-00-00 東方学会会員
7 2007-05-00~2015-03-31 日本沙漠学会会員
8 2008-11-00~0000-00-00 中国水利史研究会会員、編集委員(2014.11~現在に至る)
9 2011-10-00~0000-00-00 The Association of East Asian Environmental History 会員
10 2017-04-01~2019-03-31 独立行政法人大学入試センター教科科目第一委員会委員(世界史)
11 2018-12-01~2021-11-30 日本学術振興会科学研究費委員会専門委員
12 2019-10-27~2021-09-10 The Association for East Asian Environmental History Council member
13 2020-11-04~0000-00-00 中国水利史研究会、理事
14 2023-07-02~0000-00-00 The Asian Association for Environmental History, Council member
15 2023-12-02~2025-06-00 東洋史研究会、監事
D 研究活動
著書、学術論文等の名称単著、
共著の別
発行又は
発表の年月
発行所、発表雑誌等
又は
発表学会の名称
概要
Ⅰ著書
1 『人文知の新たな総合に向けて』共訳 2004-03-00京都大学大学院文学研究科 京都大学大学院文学研究科21世紀COEプログラム「グローバル化時代の多元的人文学の拠点形成」の研究活動の一環として、「金代提刑司考-章宗朝官制改革の一側面」(『東洋史研究』60-3、2001年12月)を中国語訳。中国語訳。総頁数174頁、本人担当23頁(131頁~153頁)。共著・訳者:夫馬進・范金民・李成珪・井黒忍・櫻井智美。
2 『17世紀以前の日本・中国・朝鮮関係絵図地図目録』共著 2007-03-00京都大学大学院文学研究科 京都大学大学院文学研究科21世紀COEプログラム「グローバル化時代の多元的人文学の拠点形成」の研究活動の一環として、17世紀以前にアジア・ヨーロッパにて作成された地図・絵地図の目録を作成。井黒がアジア図(中国・朝鮮)および世界図を担当し、尾下が日本図を担当。総頁数207頁。共著者:尾下成敏・井黒忍
3 『オアシス地域史論叢-黒河流域2000年の点描』共著 2007-03-00松香堂 「モンゴル時代区田法の技術的検討」を分担執筆。ハラホト出土のモンゴル時代の文書資料および当該時代に編纂された農業技術書・災害救済指南書・法典に共通して見られる記載と図を基に、耐乾救荒を目的とした農業技術である区田法の技術を復元し、政策実施のねらいを明らかにする。総頁数246頁、本人担当30頁(93頁~122頁)。共著者:中尾正義・吉本道雅・森谷一樹・沈衛栄・佐藤貴保・愛新覚羅烏拉熙春・井黒忍・白石典之・弓場紀知・井上充幸・加藤雄三・フフバートル。
4 『辺界、辺地与辺民-明清時期北方辺塞地区部族分布与地理及生態基礎研究』(中文)共著 2009-09-00斉魯書社(中国) 「雍乾時期甘粛河西地域的“界線”-開発、環境、紛争」を分担執筆。国家や地域を分ける境界線が自然環境に与えた影響を清代河西回廊の事例に基づき考察する。清朝政府による辺墻内での積極的な農地開発は、辺墻外への水供給を滞らせる原因となった。また、辺墻内での開墾が進展するにつれ、牧民は辺墻外に閉め出され、山林・草地の減少に一層の拍車をかけることとなった。総頁数400頁、本人担当10頁(206頁~215頁)。共著者:安介生・邱仲麟・胡英沢・張萍・井黒忍・樊如森・張慧芝・王晗・何群・郝平・曹雪峰・朱永傑・韓光輝・路偉東・牛淑貞。
5 『中世東アジアの周縁世界』共著 2009-12-00同成社 「耶懶完顔部の軌跡-大女真金国から大真国へと至る沿海地方一女真集団の歩み」を分担執筆。耶懶完顔部と呼ばれた北東アジア沿海地方に居住した女真集団は、その戦略的価値により、皇室の一門として迎えられ、始祖同系の伝説が形成されていった。金朝の東アジアへの重心の傾斜とともにその重要性は減少していったが、国家が滅亡に瀕する中、再び女真統合のシンボルとしてその存在がクローズアップされていく。総頁数349頁、本人担当13頁(313頁~325頁)。共著者:池田栄史・白石典之・木山克彦・中澤寛将・笹田朋孝・小野哲也・上原静・瀬川拓郎・三宅俊彦・中村和之・小田寛貴・後藤雅彦・右代啓視・臼杵勲・小野裕子・天野哲也・土肥直美・井黒忍・鈴木靖民。
6 『文化交渉による変容の諸相』共著 2010-03-00関西大学文化交渉学教育研究拠点 「中国山西省東南部における祈雨祭祀-天水農業地域の水神信仰に関する歴史学的考察-」を分担執筆。山西省東南部における祈雨祭祀の広域化に着目し、灌漑農業地域における水神信仰が流域内に限定されるのに対して、天水農業地域における信仰圏は行政区画や商業圏などからより強い影響を受け、広域化することを指摘する。総頁数357頁、本人担当24頁(75頁~98頁)。共著者:Joseph Bosco・山田明広・井黒忍・川端泰幸・崔元碩・川邉雄大・吉本康子・黄蘊・孫青・鮮明・千葉謙悟。
7 『中国多文字時代的歴史文献研究』共著 2011-05-00社会科学文献出版社(中国) 「元代区田法簡論-以黒城出土文書、『救荒活民類要』和『至正条格』為依拠」を分担執筆。モンゴル時代に全国において実施された農業技術である区田法の内容を、カラホト出土文書・災害救済指南書・『至正条格』から復元し、大元ウルスが区田法を実施させた目的とその普及の方法を明らかにする。総頁数456頁、本人担当16頁(317頁~332頁)。共著者:索夫羅諾夫・伊麗那波波娃・索羅寧・戴忠沛・段玉泉・蘇航・楊志高・杜建録・荒川慎太郎・池田巧・聶鴻音・韓小忙・賈常業・孫伯君・彭向前・崔紅芬・史金波・孫継民・陳瑞青・杜立暉・佐藤貴保・呼格吉勒図・松田孝一・舩田善之・井黒忍・照那斯図・松川節・喬瑪・烏蘭・朝剛巴特爾・白石典之・呉英哲・劉鳳・瑶百舸・牛達生・劉景雲・李秀蓮。
8 『分水と支配―金・モンゴル時代華北の水利と農業』単著 2013-05-00早稲田大学出版部 ジュシェンやモンゴルが主体となる金・モンゴル帝国の統治下においては、水の管理と農業技術の強制的実施、共同体の再編という方法を通して、地域社会のミクロレベルにまで国家が介入し、国家主導で積極的に水利・農業開発が推進された。モンゴル時代に地方には水資源管理・分配を専管する機関が設置されたが、明代になると地方常設機関は廃止され、公権力の介入は後退する。かわって、その管理・分配の業務は、民間社会の水利組織によって担われることとなる。総頁数464頁。博士論文『金元時代華北農業水利史の研究』(2006年3月、京都大学)を改訂増補。
9 『中国経済史』共著 2013-11-00名古屋大学出版会 西高東低の地勢と東南沿海部からのモンスーンの吹きこみによって、華北と江南の降水量の差はきわめて大きい。時期的・地域的な偏りこそが中国の水資源の特徴であり、人間活動によって自然環境を改変し、水資源の多少をいかに調整し配分するかが問題解決の鍵となる。テーマ2「水利・治水」を分担執筆。総頁数354頁、本人担当3頁(35頁~37頁)。編者:岡本隆司、共著者:岡本隆司・宮宅潔・丸橋充拓・古松崇志・梶谷懐・加島潤・村松弘一・井黒忍・大澤正昭・新宮学・伊藤正彦・渡辺信一郎・冨谷至・佐原康夫・中村圭爾・佐川英治・大津透・島居一康・荒川正晴・宮澤知之・三木聰・木田知生・高橋弘臣・松田孝一・松井太・臼井佐知子・夫馬進・安冨歩・岩井茂樹・高嶋航・檀上寛・本野英一・新村容子・後藤春美・陳來幸・富澤芳亜・久保亨・奥村哲・山本真・田島俊雄・厳善平・丸川知雄・加藤弘之・新保敦子・久末亮一・やまだあつし。
10 『外交史料から十~十四世紀を探る』共著 2013-12-00汲古書院 「受書礼に見る十二~十三世紀ユーラシア東方の国際秩序」を分担執筆。金-南宋、モンゴル-南宋間で取り交わされた外交文書のうち、致書形式の文書および文書授受の儀礼に着目し、至元3年の日本国王宛「大蒙古国皇帝奉書」の意味を探る。モンゴル-南宋関係が金-南宋の君臣(上下)関係を継承し、致書形式を用いたのに対して、日本宛ての文書に奉書形式が用いられたことから、そこに君臣(上下)関係を内包しないとのモンゴル側の意図を読み解くことができる。総頁数384頁、本人担当26頁(211頁~236頁)。編者:平田茂樹・遠藤隆俊。共著者:廣瀬憲雄・赤木崇敏・松本保宣・山崎覚士・豊島悠果・毛利英介・井黒忍・藤善真澄・曹家斉・郭万平・金栄済・矢澤知行・徐仁範。
11 Environmental History in East Asia: Interdisciplinary Perspectives共著 2013-12-00Routledge(UK) “A Study of Agricultural Water Supply Technology in 18th century Northwestern China: Historical Knowledge and the Response to Desertification”を分担執筆。18世紀の河西回廊における事例を取り上げ、塩類集積による沙漠化を阻止し、耕地開発を進めるための清朝の取り組みを明らかにする。河西地域においては、水路の開削と安定した水供給によってオアシス周辺の荒漠地に開発の手が伸びた。適切な施水管理によって一旦は耕地として開発された土地も、排水に対する認識不足によって再生アルカリ化を進行させ、放棄された耕地はさらなる沙漠化の原因となった。総頁数416頁、本人担当14頁(199頁~212頁)。編者:Ts'ui-jung Liu、共著者:Ts'ui-jung Liu, Mark Elvin, Susumu Kitagawa, Jin Liu, Yan Gao, Kohei Matsunaga, Jianxiong Ma, Shu-min Huang, Chih-Da Wu, Xin-hao Du, Shinobu Iguro, Peter Lavelle, Zhaoqing Han, Emiko Higami, Hiroshi Kawaguchi, Michael Shiyung Li, Mika Merviö, Paul Jobin.
12 『黒水城両千年歴史研究』共著 2013-12-00中国人民大学出版社(中国) 井黒忍著:烏雲格日勒訳「探討蒙古時期的区田法技術」を分担執筆。ハラホト出土のモンゴル時代の文書資料および当該時代に編纂された農業技術書・災害救済指南書・法典に共通して見られる記載と図を基に、耐乾救荒を目的とした農業技術である区田法の技術を復元し、政策実施のねらいを明らかにする。著書3の中文訳。総頁数254頁、本人担当36頁(108頁~143頁)。編者:井上充幸・加藤雄三・森谷一樹。訳者:烏雲格日勒。共著者:吉本道雅・森谷一樹・沈衛栄・佐藤貴保・白石典之・井黒忍・弓場紀知・井上充幸・加藤雄三・呼和巴特爾。
13 『当代日本中国研究』(第三輯、経済・環境)共著 2014-09-00社会科学文献出版社(中国) 井黒忍著:閆雪訳「清濁灌漑方式所具有的対水環境問題的適応性―以中国山西呂梁山脈南麓的歴史事例為中心」を分担執筆。人間文化研究機構「現代中国地域研究」の研究成果発信を目的として、現代中国の経済・環境に関わる論考を中国語に翻訳して出版。中国環境史に関する研究として「清濁灌漑方式が持つ水環境問題への対応力―中国山西呂梁山脈南麓の歴史的事例を基に」が取り上げられた。学術論文8の中文訳。総頁数335頁、本人担当29頁(194頁~222頁)。共著者:丸川知雄・川井伸一・渡辺真理子・駒形哲哉・大島一二・加島潤・高田誠・朱蔭貴・袁鋼明・小島麗逸・福士由紀・阿部健一・井黒忍・大西暁生・窪田順平・島谷幸宏・黄錚・諸富徹・井村秀文・色音・飯島渉。
14 『有為而治:前現代治辺実践与中国辺陲社会変遷研究』共著 2014-12-00三晋出版社(中国) 「流域的分開与結合:以黒河流域平天仙姑信仰為中心」を分担執筆。甘粛省・内蒙古自治区を流れる黒河流域において信仰された仙姑を取り上げ、明代に対モンゴル防衛のために形成された言説を分析する。また、清代において、モンゴルの脅威が払拭された後には、仙姑が流域中の全ての人びとに恩恵をもたらす水神へと変化したことを明らかにする。総頁数544頁、本人担当14頁(408頁~421頁)。編者:安介生・邱仲麟。共著者:安介生・劉祥学・楊暁春・鄭維寛・特木勒・李嘎・邱仲麟・郝平・井黒忍・島田美和・胡英沢・張俊峰・樊如森・楊煜達・王晗。
15 『海外中国水利史研究:日本学者論集』共著 2014-12-00人民出版社(中国) 井黒忍著:閆雪訳「清濁灌漑方式所具有的対水環境問題的適応性―以中国山西呂梁山脈南麓的歴史事例為中心」を分担執筆。山西省西南部の三峪地区における水問題は、清水の稀少さと濁水の量的および時期的な不安定性にあった。これに対して、清濁両水の利用村庄を区別し、水源と村庄との対応関係を決定する地域・水源の別という人為的制限を加えることで、同一の扇状地における水資源の共有が図られた。人為的制約と水利契約に支えられた清濁灌漑方式の長期持続性は、不安定性からの脱却を目指す中で既に失われた自然環境との調和的なあり方を今に伝える。学術論文8の中文訳。総頁数527頁、本人担当25頁(487頁~511頁)。編者:鈔暁鴻。共著者:豊島静英・好並隆司・濱川栄・南埜猛・大川裕子・佐藤武敏・町田隆吉・山口栄・西岡弘晃・長瀬守・川井悟・村松弘一・中村圭爾・川勝守・森田明・森永恭代・藤田勝久・鶴間和幸・藤川和俊・小野泰・伊藤敏雄・本田治・濱島敦俊・松田吉郎・馬場毅・薄井俊二・上谷浩一・井黒忍・宮崎洋一。
16 『春耕のとき-中国農業史研究からの出発』共著 2015-09-00汲古書院 「井灌論の系譜:明清時代における井戸灌漑の理論と実践」を分担執筆。前近代における井灌の試行錯誤の経緯を追う。地下水灌漑に対する認識と、その理論と実践はいかに展開されたのか、その流れを明らかにすることで、井戸灌漑に関する理論の展開、情報の伝播、認識の変化がいかになされたのかを明らかにする。代表的な理論を各人の言説から考察することとし、特に井灌の代表的研究者である王心敬の言説に着目して、同時代の実践と後世に与えた影響を明らかにする。総頁数344頁、本人担当63頁(83頁~145頁)。編者:大澤正昭・中林広一、共著者:中林広一・大川裕子・井黒忍・村上陽子・大澤正昭・小野恭一・藤本公俊。
17 『環世界の人文学-生と創造の探究』 共著 2021-03-30人文書院 「村のいしぶみから見た生活用水をめぐる日常史-中国河南・山西・河北の井戸とため池の事例をもとに」を分担執筆。生活用水として利用される水をめぐって、中国北部(華北)の農村において展開された日常的ないとなみを歴史資料に基づき考察する。農村における井戸やため池は、水源の保持のみならず風水の維持という観点からもその維持が求められるものであった。コモンズとしての性格を有した井戸やため池など、生活用水の利用という観点から、農村の日常生活の一コマを再現する。総頁数447頁、本人担当22頁(395~416頁)。編著者:石井美保・岩城卓二・田中祐理子・藤原辰史、共著者:松嶋健、森本淳生、立木康介、篠原雅武、ホルカ・イリナ、大浦康介、山崎明日香、松村圭一郎、能作文徳、岡安裕介、唐澤太輔、田中雅一、橋本道範、武井弘一、井黒忍、池田さなえ、瀬戸口明久、近藤秀樹。
18 『金(女真)と宋 : 12世紀ユーラシア東方の民族・軍事・外交』 (京大人文研漢籍セミナー 9) 共著 2021-12-00研文出版 「女真の形成―東北アジアにおける諸集団の興亡―」。金による東北アジアの制覇が按出虎水完顔部の同族とみなされた耶懶完顔部や曷蘇館女真ら女真集団のみならず、渤海や胡里改ら非女真集団を含むツングース系諸集団の統合によって成し遂げられたものであった。金代に進行した非女真集団の女真への吸収・融合によって女真・非女真をともに包摂する新たな女真の意識が形成され、金の滅亡後には胡里改ら旧非女真集団こそが女真の正統と位置づけられることになった。総頁数169頁。本人担当61頁(109頁~169頁)。共著者:古松崇志、井黒忍、伊藤一馬。
19 『岩波講座 世界歴史 第7巻 東アジアの展開 8~14世紀』 共著 2022-04-00岩波書店 「宋金元代の華北郷村社会―山西地域を中心に」を分担執筆。宋金元代の郷村社会の特徴は、石碑立石という方法を用いて民が地域の歴史の中に明確な足跡を刻み始めたという点にある。その背景には、宋代から続く人口増加の流れを受け、金代においてさらに高まった人口圧が土地および水資源の開発を推し進めると同時に、資源をめぐる争いを激化させるという状況があった。総頁数306頁。本人担当18頁(115頁~132頁)。責任編集:冨谷 至・荒川正晴、共著者:宮澤知之、丸橋充拓、舩田善之、井黒忍、金文京、山崎覚士、徳永洋介、渡辺健哉、川村康、佐々木愛、矢木毅、大竹昌巳。
20 『歴史の転換期:1348年 気候不順と生存危機』 共著 2023-07-00山川出版社 「元明交替の底流」を分担執筆。度重なる災害が襲った14世紀半ば以降の元朝統治下における政治、社会情勢の変化を論述。特に黄河の河道変移に伴う水害の頻発、淮河流域の開発と挫折、大運河の改修による水系の統合とそれによりもたらされた洪水被害の拡大といった諸問題を黄河治水という視点から通観する。[総頁数255頁]、[本人担当188頁~241頁]。編者:千葉敏之、共著者:長谷部史彦、井上周平、四日市康博、井黒忍、松浦史明。
以上20点
Ⅱ学術論文
1 「山西洪洞県水利碑考―金天眷二年都総管鎮国定両県水碑の事例」 単著 2004-01-00『史林』87-1
(史学研究会)
山西省洪洞県広勝寺には金初より清末に至る間の霍水を利用した灌漑水利の歴史を記録する碑刻が多数存在する。その内、金代天眷年間に作られた「都総管鎮国定両県水碑」には灌漑用水を南北に三対七の割合で分配することが明記され、以後この分配割合は時代を越えて継承される標準となる。また、当該碑刻は単なるモニュメントではなく、後世においてもなお標準を記す最古の記録として現実的な利用価値を持つものであった。掲載頁数34頁(70頁~103頁)。
2 「モンゴル時代関中における農地開発―涇渠の整備を中心として―」 単著 2004-03-00『内陸アジア史研究』19
(内陸アジア史学会)
オゴデイ時代に始まる涇渠の潅漑整備は同時に大規模な集団入植による屯田の形成を意味し、関中地域はトゥルイ家領からオゴデイの直轄領へと転換がはかられた。政府主導による水利復興事業は,新たに陝西における権益を認められた全真教団の教線拡大の動きとあいまって渭北地域の開発にさらなる進展をもたらした。掲載頁数22頁(1頁~22頁)。
3 「満訳正史の基礎的検討-『満文金史(aisin gurun i suduri bithe)』の事例をもとに-」単著 2004-07-00『満族史研究』3
(満族史研究会)
『満文金史』の読解および漢文『金史』との比較に基づき、清初の正史翻訳に関わる諸状況を考察する。太宗ホンタイジの時代に入り、『金史』・『遼史』・『元史』の満洲語への翻訳事業が実行に移される。中でも、大清帝国の中枢を担う満洲人が同族意識を強く有した金代女真族に対する認識は、彼等自身のアイデンティティに直結する重要な問題であった。掲載頁数19頁(112頁~130頁)。
4 「『長安志図』に見る大元ウルスの関中屯田経営」 単著 2005-03-00『大谷大学史学論究』11
(大谷大学文学部歴史学科)
渭北地域の屯田は、四川戦線への増援部隊として徴兵された兵士らを中核として設置された。サンガ執政期において民屯として再編された後、屯田総管府の所属に帰する。屯田総管府には屯田の経営が委ねられるとともに、その職責には当該地域における重要課題である涇渠灌漑システムの維持管理をも含まれた。屯田経営と灌漑水利整備は屯田総管府のもとに一元化されたことを意味する。掲載頁数25頁(31頁~55頁)。
5 「『救荒活民類要』に見るモンゴル時代の区田法―カラホト文書解読の参考資料として」 単著 2005-03-00『オアシス地域研究会報』5-1
(総合地球環境学研究所オアシスプロジェクト)
長らく研究者の間では区田法の実効性と普及度に関する疑問が呈されてきたが、それは必要とする労働力が膨大であるという問題に由来するものであった。モンゴル時代において、ともに膨大な労働力と専門的な技術を必要とする区田法実施と灌漑整備、この両事業は国家権力が直接的に及びうる各地の屯田兵・民を動員することで積極的に、もしくは半ば強制的に推進された。掲載頁数29頁(24頁~52頁)。
6 「耶懶と耶懶水-ロシア沿海地方の歴史的地名比定に向けて-」 単著 2006-05-00文部科学省科学研究費補助金特定領域研究「北東アジア中世遺跡の考古学的研究(2005-2009年度)」平成17年度研究成果報告書 金代の耶懶水を現在の蘇城河に比定することで、安出虎水完顔部を中心とした全女真の統一、さらに金朝建国へと到る過程において、耶懶路完顔部の有した地理的・人的役割の一端が明らかとなる。また、同地域からは東夏時代の遺構が数多く発見されており、「耶懶路猛安印」の発現によって、耶懶路完顔部が東夏政権に組み込まれたことが明らかとした。掲載頁数19頁(50頁~68頁)。
7 「太原竇大夫祠金元時代祈雨碑刻研究二題」(中文) 単著 2008-10-00『建設特色文化名城―理論探討与実証研究』
(北岳文芸出版社)
山西省太原北郊の竇大夫祠に現存するモンゴル時代の石刻資料を用いて、山西におけるモンゴル王族の分地の問題、道教集団との関係、雨乞いの儀式を行う場所が異民族の防衛地点に位置することを明らかにした。掲載頁数7頁(163頁~169頁)。
8 「清濁灌漑方式が持つ水環境問題への対応力―中国山西呂梁山脈南麓の歴史的事例を基に」 単著 2009-01-00『史林』92-1
(史学研究会)
山西省西南部の三峪地区における水問題は、清水の稀少さと濁水の量的および時期的な不安定性にあった。これに対して、清濁両水の利用村庄を区別し、水源と村庄との対応関係を決定する地域・水源の別という人為的制限を加えることで、同一の扇状地における水資源の共有が図られた。人為的制約と水利契約に支えられた清濁灌漑方式の長期持続性は、不安定性からの脱却を目指す中で既に失われた自然環境との調和的なあり方を今に伝える。掲載頁数34頁(36頁~69頁)。
9 「区田法実施に見る金・モンゴル時代農業政策の一断面」 単著 2009-03-00『東洋史研究』67-4
(東洋史研究会)
金・モンゴル時代における農業政策としての区田法実施は、大きく(1)金代章宗朝、(2)金末~中統・至元初年、(3)至元20年代、(4)泰定年間という四つの時期に分けられる。既に金代章宗朝末期より顕在化していた自然災害発生時における緊急措置的農法としての区田法受容のあり方は、モンゴル時代にも引き継がれ、多大な勞働力と精緻な技術を要する区田法の根本的問題点ともあいまって、その継続的な実施を阻害する要因となった。掲載頁数35頁(1頁~35頁)。
10 「金初の外交史料に見るユーラシア東方の国際関係-『大金弔伐録』の検討を中心に-」 単著 2010-06-00『遼金西夏史研究の現在』3
(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)
金と各国との関係は誓書交換の変形としての誓表の上呈と誓詔の下賜という方法を通して規定される。盟約の締結を通して国家間の各種規定を定めるという澶淵体制の枠組みを維持したまま、形式を誓表の上呈と誓詔の下賜へと置き換え、さらに宋・夏・高麗元首の冊封を行うことで、ユーラシア東方諸国家間における顕在化された君臣関係を構築することが、金初30年間を経る中で新たに志向された国際秩序であった。掲載頁数15頁(31頁~45頁)。
11 「清濁灌漑方式具有的対水環境問題的適応性-以中国山西呂梁山脈南麓的歴史事例為中心」(中文) 単著 2010-10-00『日本当代中国研究』2010
(現代中国地域研究)
訳者:王睿。人間文化研究機構「現代中国地域研究」の研究活動の一環として、中国環境史に関する研究として「清濁灌漑方式が持つ水環境問題への対応力―中国山西呂梁山脈南麓の歴史的事例を基に」が取り上げられた。学術論文8の中文訳。山西省西南部の三峪地区における水問題は、清水の稀少さと濁水の量的および時期的な不安定性にあった。これに対して、清濁両水の利用村庄を区別し、水源と村庄との対応関係を決定する地域・水源の別という人為的制限を加えることで、同一の扇状地における水資源の共有が図られた。人為的制約と水利契約に支えられた清濁灌漑方式の長期持続性は、不安定性からの脱却を目指す中で既に失われた自然環境との調和的なあり方を今に伝える。掲載頁数20頁(13頁~32頁)。
12 「山西翼城喬沢廟金元水利碑考-以《大朝断定使水日時記》為中心-」(中文) 単著 2011-05-00『山西大学学報(哲社版)』3
(山西大学)
山西省翼城県喬沢廟に現存する水利碑の分析を通して、モンゴル帝国期における華北投下領の支配形態および地域社会の具体像を考察する。楊宜ら漢人世侯に加えて、王十官人、寧七官人らによって分割支配される翼城県の状況は、ジョチ家投下領である平陽路の弊害を記した郝経「河東罪言」の信憑性を裏付ける格好の事例である。また、用水帳簿を毎年官府に提出し、管理部門が水利用許可の由帖を発するという由帖制の実施例を確認することができる。掲載頁数6頁(92頁~97頁)。
13 「水利碑研究序説」 単著 2012-03-00『早稲田大学高等研究所紀要』4
(早稲田大学高等研究所)
水利用に関わる諸事象を記録した水利碑に焦点を合わせ、形態や主題により分類を行うことでその特性を抽出し、調査・利用にあたって踏まえるべき基礎的な知見と研究の新たな可能性を提示する。生活に密着したテーマを扱う水利碑は、碑刻全般に共通するモニュメントとしての役割にとどまらず、実際の水利用に関する権利その根拠を示す証拠としての実用的意義を強く有する。掲載頁数8頁(77頁~84頁)。
14 「至元年間における関中の復興と地域開発―ヒトとモノの動きを中心に」 単著 2013-01-00『13、14世紀東アジア史料通信』19
(13,14世紀東アジア諸言語史料研究会)
至元年間に山東の一商人である劉斌によって行われた覇橋架設事業を通して、クビライ時代における関中地域の開発およびその中心都市である京兆の復興に関する人的、物的資源の流れを明らかにする。碑刻および典籍資料に基づき、当時の関中地域を領有した安西王による資源調達のための使者派遣が関中を中心として青海から山西に至るまでの広大な範囲に及ぶものであり、さらに木材運搬のために黄河の水運が積極的に利用されたことを明らかにする。掲載頁数37頁(1頁~37頁)。
15 近世・近代華北の水利権売買に関する一考察―山西・陝西・河南の事例に基づいて 単著 2017-05-00『歴史科学』229号 13~19世紀の中国北部(山西省・河南省・陝西省)の事例から、水資源の管理主体と管理方法の変化を明らかにする。さらに、その変化の中から生み出された資源の商品化という問題を取り上げ、国家と地域社会の水利権売買に対する認識と対応を考察する。
16 華北「水と社会」史研究の現状と展望 単著 2017-10-25『中国史学』第27巻 華北の中でも特に多くの研究が集中する山西省中南部と陝西省東部に着目し、水と社会をめぐる歴史研究の近年の成果を整理して、その特徴と傾向を分析するとともに、今後の課題と展望を提示する。[127頁~144頁]
17 女真と胡里改―鉄資源と加工技術の行方に見る完顔部の勃興 単著 2018-03-00『環北太平洋地域の伝統と文化 2 アムール下流域・沿海地方』第32回北方民族文化シンポジウム網走報告書 完顔部勃興の内在的要因の一つとして、鉄資源とその加工技術の確保という問題を取り上げる。鍛鉄を業とする職能集団であり、渤海発祥の地である敦化地方を根拠地として、鉄製武具の製造および販売を半ば独占的に行った胡里改を吸収し、鉄資源とその加工技術を手に入れた完顔部は、東北アジアの諸集団を統一し、金の建国を成し遂げる。[本人担当13頁~17頁]
18 旧章再造:以一石三記与三石一記水利碑為基礎資料 単著 2018-07-00『社会史研究』第5輯 山西省曲沃県に現存する水利関連の碑刻資料を分析し、王朝の時代を超えて水利権の根拠として受け継がれていく増刻碑と水利権の証明のためにある特定の時代の状況を復元する重刻碑との性格の違いを指摘する。特に伝統を作り上げるモノとしての重刻碑の意義を再評価し、さらに研究を進めるべき対象であることを指摘する。[本人担当37頁~59頁]
19 女真と胡里改-鉄加工技術に見る完顔部と非女真系集団との関係 単著 2019-04-30『金・女真の歴史とユーラシア東方』アジア遊学 鍛鉄を業とする職能集団であった胡里改は、敦化地方を拠点として、鉄製武具の製造および販売を半ば独占的に行っていた。渤海および契丹文化の周辺に起こった新興勢力の完顔部は、軍事行動や同族説話の宣伝といった方法により、渤海時代以来の高度な文化や技術を継承した胡里改や渤海などの非女真系集団を取り込み、その技術を吸収することによって成長を遂げたのである。[54頁~68頁]
20 彫り直された伝統:前近代山西の基層社会における水利秩序の形成と再編 単著 2019-11-00『歴史学研究』990号 中国山西省曲沃県の温泉水利をめぐる伝統は、14世紀初めの大地震の後の復興を起点として成立した。さらに、18世紀前半に伝統復活の名のもとに再編が加えられ、19世紀前半には重刻碑の製作によってこれが再確認されるという道筋をたどった。この伝統再生のプロセスにおいては、歴史を復元する碑刻と水冊が大きな役割を果たした。[49頁-61頁]
21 生み出される「公」の水-伝統中国における水をめぐる認識とその変容- 単著 2021-03-19『大谷学報』第100巻第2号 所有や利用、売買貸借など、水に関わる諸種の権利をいかに設定するかという問題は、歴史上のみならず現代においても人類が抱える重要な課題である。本発表では、伝統中国の事例を基に、「公水」という概念に着目し、水に対する認識とその変容の過程を明らかにする。[本人担当39~59頁]
22 晋北における水利公司の設立とその事業 単著 2021-03-31『中国水利史研究』第48号 中央研究院近代史研究所所蔵の民国期の档案や日本人による現地調査の報告書などを用いて、20世紀初頭における晋北地域の水利公司の設立の経緯と組織、定款、事業内容、土地利用の状況から、その実像を明らかにする。[本人担当122~138頁]
23 自我与他者的辺界:基于碑刻水渠網絡図対山西水利社区的空間分析 単著 2021-06-00『社会史研究』第11輯 山西省曲沃県の龍岩寺に現存する金代・明代・清代の沸泉水利碑を分析し、地域社会における水利秩序の形成過程を明らかにした。加えて、石碑に刻まれた水利図を用いて、水資源管理における村落の役割と相互の関係性、境界の問題について考察した。[本人担当133頁-145頁]
24 『知本提綱』に見る灌漑の技術と認識 単著 2024-03-00『大谷大学史学論究』第29号 清代中期に関中興平の人である楊屾が著した『知本提綱』は、農作業の中における灌漑の位置づけを明らかにし、降水時に出現する洪水(山洪)を灌漑に用いる方法とその危険性を述べ、地形的な理由により水源を得ることが難しい場所でため池や井戸の造成を説くなど、関中渭北地域の自然環境に対応した灌漑水利の技術を記載する特徴ある資料である。これらの記載を読み解き、灌漑に関する技術と認識を読み解く。[本人担当1頁~30頁]
以上24点
Ⅲ 口頭発表・その他
1 「『満文金史』の基礎的検討」口頭発表 2003-07-00日本アルタイ学会 太宗ホンタイジの時代に入り、『金史』・『遼史』・『元史』の満洲語への翻訳事業が実行に移される。特に、大清帝国の中枢を担う満洲人が同族意識を強く有した金代女真族に対する認識は,彼等自身のアイデンティティとも絡む重要な問題であった。『満文金史』に焦点を当てて正史翻訳に関わる諸状況を考察する。発表時間30分。発表要旨:『東洋学報』86-1(2004年6月)。
2 「山西・河南訪碑行報告(附:山西・河南訪碑行現存確認金元碑目録)」共著 2005-03-00『大谷大学史学論究』11
(大谷大学文学部歴史学科)
2004年に実施した山西・河南地域における金元時代碑刻資料の現地調査報告及び現存碑刻目録。山西省東南部における金代碑刻と金代建築の残存量とその高い価値は、金元交代期における当該地域の被害が少なかったことを物語る。舩田善之・飯山知保との共著。掲載頁数40頁(117頁~156頁)。
3 「北東アジア出土官印集成表(稿)」単著 2005-03-00文部科学省科学研究費補助金特定領域研究「北東アジア中世遺跡の考古学的研究(2005-2009年度)」平成15・16年度研究成果報告書 北東アジアにおいて出土した官印資料のデータベースを作成。出土官印に記載される文字データ、出土時期や出土地点を整理し、これを地理情報や遺構、土城平面図等の考古学の成果と組み合わせてデジタルマップを作成した。掲載頁数17頁(80頁~96頁)。デジタルコンテンツを「北東アジアの考古学」HP(http://jinbunweb.sgu.ac.jp/~siberia/)にて公開。
4 「遼金時代北東アジアにおける仏教の諸相―仏塔と陀羅尼幢を手がかりに―」 口頭発表 2005-05-00満族史研究会第20回大会 遼金塔および陀羅尼幢に刻まれた銘文から、北東アジアにおける仏教を通した文化交流を明らかにする。さらに、ロシア沿海州において「泰州主簿」銘を持つ菩薩像が出土したという事実は、泰州移住後の耶懶女真族が本地である耶懶路との人的・物的交流を存続させていたことを物語る。この他、内モンゴル東部に位置する臨潢府の名が刻まれた独鈷杵が出土するなど、沿海地域と内モンゴル東部との仏教を通した交流を示す考古文物が相次いで発見されている。[発表時間30分]
5 「金朝の建国と耶懶路完顔部」 口頭発表 2006-07-00国際シンポジウム「東北アジアにおける遼・金・蒙元期の都市」 文献史料の稀少な中国東北沿海地方とそこに居住した人々の果たした歴史的役割を、11~12世紀の金朝建国期における耶懶完顔部の動向に焦点を当て考察し、沿海地方をも含めた北東アジア史の全体像を再検討する。開催地は中国吉林省吉林大学。[発表時間30分]
6 「蒙元時代的区田法-以黒城出土文書与《救荒活民類要》為線索」 口頭発表 2006-09-00カラホトの歴史と環境に関する国際シンポジウム カラホト出土文書と災害救済に関する典籍史料に共通して確認できる、耐乾救荒を目的とした農業技術「区田法」の技術面に関する具体的内容を復元し、政策実施の経緯を検証した。開催地は中国内蒙古自治区額済納旗。[発表時間20分]
7 「区田法の「復活」実施に見る金元時代の農業政策」 口頭発表 2006-11-00東洋史研究会第58回大会 金・モンゴル時代における農業政策としての区田法実施は、大きく(1)金代章宗朝、(2)金末~中統・至元初年、(3)至元20年代、(4)泰定年間という四つの時期に分けられる。既に金代章宗朝末期より顕在化していた自然災害発生時における緊急措置的農法としての区田法受容のあり方は、モンゴル時代においても見られ、多大な勞働力と精緻な技術を要する区田法の根本的問題点ともあいまって、その継続的な実施を阻害する要因となった。[発表時間45分]
8 「北鎮訪碑行報告(附:北鎮訪碑行現存確認金元碑目録)」共著 2006-12-00『史滴』28
(早稲田大学東洋史懇話会)
2006年に実施した遼寧省における金元時代碑刻資料の現地調査報告及び現存碑刻目録。ある程度広い地域を対象とし、そこに点在する碑刻の伝存状態をできる限り網羅的に確認することを目的とした前回までの調査と異なり、今回の調査は北鎮廟、奉国寺といった特定の寺廟を主要な調査対象として設定し、そこに保存される碑刻の確認を目的とした。飯山知保・舩田善之・小林隆道との共著。掲載頁数15頁(120頁~134頁)。
9 「新開講科目<専門の技法>報告:学科通信」共著 2007-03-00『大谷大学史学論究』13
(大谷大学文学部歴史学科)
2005年度後期に初めて開講された「専門の技法」の担当者である両名が授業内容の概要と問題点、受講者へのメッセージをまとめ、以降の参考材料を提示した。川端泰幸との共著。掲載頁数8頁(67頁~74頁)、本人担当4頁(70頁~71頁、73頁~74頁)。
10 「歴史資料に見る18世紀河西地域の塩害」 口頭発表 2007-05-00日本沙漠学会第18回学術大会 18世紀の河西回廊における塩類集積に対して、清朝政府はその対策のために灌漑水路の開鑿と厳格な灌漑管理を行ったが、排水の問題に対する認識不足と政策の転換に伴う耕地の放棄によって再生アルカリ化が発生したことを明らかにする。[発表時間20分]
11 「石刻資料でたどる黒河中流域の古跡―黒河にまつわる信仰・祭祀のあとを尋ねて」単著 2007-07-00『地球環境を黒河に探る:アジア遊学99』
(勉誠出版)
研究協力者として参加した人間文化研究機構総合地球環境学研究所研究プロジェクト「水資源変動負荷に対するオアシス地域の適応力評価とその歴史的変遷」の一環として、平成18年度に実施した甘粛省黒河流域における現地資料調査の報告である。環境問題と宗教との関わりを述べる。掲載頁数8頁(64頁~71頁)。
12 「太原竇大夫祠金元時代祈雨碑刻研究二題」 口頭発表 2007-08-00太原建設特色文化名城国際学術研討会曁山西省古都学会2007年年会 主催者による招聘発表。太原竇大夫祠に現存するモンゴル時代の石刻資料を用いて、山西におけるモンゴル王族の分地の問題、道教集団との関係、雨乞いの儀式を行う場所が異民族の防衛地点に位置することを明らかにする。開催地は中国山西省太原市。[発表時間30分]
13 「雍乾時期甘粛河西地区的“界線”-開発・環境・紛争」 口頭発表 2007-11-00明清時期北方辺塞地方民族分布与環境変遷学術研討会 主催者による招聘発表。18世紀、清代雍正、乾隆期に推進された西北開発によって生じた環境問題および紛争の具体像を考察し、問題解決のために行政区画の境界が変更されたことが、新たな問題の引き金となったことを明らかにする。開催地は中国上海市復旦大学歴史地理研究中心。[発表時間30分]
14 「清代河西回廊の水利施設-文献史料を用いた技術面へのアプローチ-」 口頭発表 2007-12-00沙漠誌分科会第14回例会 18世紀に実施された柳林湖屯田開発の水利工事の事例を取り上げ、档案資料に記される灌漑水利施設の開鑿・補修・管理・利用に関わる規定から、当時の施設形態と諸問題を明らかにする。灌漑農業が行われる乾燥地域において、生命維持に不可欠な水利施設が具体的にいかなる形態を有するものであったのかを明らかにすることで、当時の克服すべき問題点の所在を探る。[発表時間30分]
15 「官印資料に見る金代北東アジアの「周辺」―“南船北馬”と女真の水軍」単著 2008-02-00『特集北東アジアの中世考古学:アジア遊学107』
(勉誠出版)
研究協力者として参加した文部科学省特定領域研究『中世考古学の総合的研究』「北東アジア中世遺跡の研究」の研究成果として、官印資料を用いて、北東アジア日本海沿岸部の女真族が航海技術に優れ、朝鮮半島・中国に対する海上攻撃を行ったことを明らかにした。掲載頁数10頁(88頁~97頁)。
16 「金元碑刻資料と汾河流域水利史研究」 口頭発表 2008-03-00遼金西夏史研究会
第8回大会
形態・内容・作用によって水利碑を分類・整理し、その性格と有効性を示す。その作用としては、(1)水利用に関する正当性の明示、(2)水利規定・契約の開示、(3)水位の測定、(4)水利空間の図示などの項目が挙げられる。また、水利碑が後世の水利用や社会にいかなる影響を与えたのかという点に着目することで、記念碑monumentという一面には止まらない水利碑の持つ「実用性」を指摘する。[発表時間30分]
17 「山西省呂梁山脈南麓の清洪灌漑方式に見る欠水問題への対応―明清時代の水利石刻をもとに―」 口頭発表 2008-04-00史学研究会2008年例会 中国山西省西南部の河津三峪地区においては、呂梁山脈中に湧き出る泉水と、山々の雨水を集めて流出する濁水という異なる水源を併用する清濁灌漑方式が用いられた。そこには、清水の稀少さと降雨の時期的偏りに由来する濁水の量的、時期的な不安定性という問題が存在した。三峪清濁灌漑方式の長期持続性を支えたものは、地域・水源の別という制限規定と水利契約による融通性にあり、そこに不安定な自然環境への適応のあり方が見いだせる。[発表時間45分]
18 「金初の外交文書様式と国際関係―『大金弔伐録』の検討を中心に」 口頭発表 2008-09-00国際シンポジウム「10-14世紀東アジアの外交交流史料」 主催者による招聘発表。12世紀初頭に東アジアに存在した遼・金・西夏・宋の間に取り交わされた多数の外交文書を収録する『大金弔伐録』を手がかりに当該時期の東アジアにおける国際関係を考察する。開催地は高知大学。[発表時間30分]
19 「蒙元時代区田法資料的文献学研究」 口頭発表 2008-11-00遼夏金元歴史文献国際研討会 カラホト出土文書、『救荒活民類要』、『至正条格』に収録される区田法関連の記載を比較検討し、本来の記載内容を復元するとともに、14世紀に統治下全域に対してなされた区田法実施の具体的な経緯を明らかにする。開催地は中国北京市中央民族大学。[発表時間20分]
20 「中国山西省北部における金元石刻の調査・整理と研究」共著 2008-11-00『三島海雲記念財団研究報告書』平成19年度(第45号)
(三島海雲記念財団)
2007年に実施した山西省北部および内モンゴル自治区南部での遼金元時代碑刻資料の現地調査報告および現存碑刻目録。当該地域における碑刻資料の特徴の一つとして、遼金時代の経幢が豊富に残る点が挙げられる。こうした傾向は、遼代における華厳思想の流行や金代東北アジアにおける文殊信仰の拡がりなど、五台山を中心として展開する動きと密接に関連する。舩田善之・飯山知保との共著。掲載頁数5頁(103頁~107頁)。
21 「区田法とエチナ緑城南方の蜂の巣状土地パターンについて」 口頭発表 2009-02-00沙漠誌分科会第15回例会 現地調査と衛星写真の解析、文献資料の分析という異なるアプローチを組み合わせることで、内蒙古自治区エチナ旗に残る蜂の巣状の土地区画がモンゴル時代に区田法を実施した遺跡であることを明らかにする。[発表時間30分]
22 「“環境保護装置”としての信仰と文化」単著 2009-04-00月刊『同朋』61-4
(東本願寺出版部)
碑刻調査の過程で体験した現地住民とのやり取りと実際に存在するモノとしての碑刻が持つ意味を述べる。碑刻はそこに記された内容だけではなく、それ自体が信仰の対象となるなど、過去においては信仰と文化に支えられた地域社会が環境を自ら保護するという意識が存在した。掲載頁数2頁(10頁~11頁)。
23 「外交方式(文書・儀礼)から見た金・宋・モンゴルの国際関係-澶淵体制における「対等」と「上下」-」 口頭発表 2009-05-00第120回宋代史談話会・ミニシンポジウム「外交文書から見た東アジア海域世界―宋代を中心に」 主催者による招聘発表。金-南宋、モンゴル-南宋間で取り交わされた外交文書のうち、致書形式の文書および文書授受の儀礼に着目し、当該時期の国際関係を考察し、至元3年の日本国王宛「大蒙古国皇帝奉書」の意味を探る。盟約(和議)に基づく誓書(表・詔)の交換によって国家間の各種規定が定められ、共存関係が維持されたが、その一方で、国家間における君臣(上下)関係が明示された。開催地は大阪市立大学。[発表時間30分]
24 「至元年間における京兆の復興-梓匠劉斌の活動を中心に-」 口頭発表 2009-05-00東北中国学会第58回大会 灞橋架設への取り組みは、山東の梓匠と称される劉斌によって開始された。工事の進展にともなって、劉斌のもとには安西王マンガラや安西王府・陝西行省の官員といった当地の有力者からの資金援助が集まり、さらには大ハーン・クビライへの謁見を果たし、莫大な資金と労働人員を賜与されるに至る。灞橋架設事業を成功に導いた背景には、無位無官の劉斌をしてクビライへの謁見をも実現させた京兆人士の人的関係が存在した。[発表時間30分]
25 「外交方式から見た12-13世紀東アジアの国際関係-金宋関係を中心に」 口頭発表 2009-07-00シンポジウム「外交文書から見た東アジア海域世界」 主催者による招聘発表。大蒙古国による金の覆滅は、単に一国の滅亡を意味するものに止まらず、盟主の交替をも意味するものとなる。盟主なき国際盟約から盟主を戴く国際盟約へと変容をとげた12~13世紀の東アジア国際関係は、9世紀以来の複数国家の共存状況がユーラシア東方の統一へと向かう最終段階と位置づけることができる。開催地は大阪市立大学。[発表時間30分]
26 『沙漠の事典』 共著 2009-07-00丸善株式会社
(丸善出版)
日本沙漠学会編、共著者多数につき省略。「前近代の沙漠化と沙漠化対処」を分担執筆。ユーラシアの東西をむすぶシルクロードの主要ルートであった河西回廊(中国甘粛省の黄河以西)の事例をとりあげ、前近代における沙漠化に対する認識とその対処法を述べる。総頁数264頁、本人担当1頁(24頁)。
27 「中国農書の世界-元朝 / モンゴル時代を中心に-」 講演 2009-09-00学習院大学東洋文化研究所「学習院大学東アジア学ナリッジセンター・漢籍データベースセクション」、文部科学省オープンリサーチセンター整備事業「東アジア学ナリッジセンター」,連続講座「東アジア書誌学への招待」(第19回) 主催者による招聘講演。元代の三大農書と称される大司農司編『農桑輯要』、王禎撰『東魯王氏農書』、魯鉄柱撰『農桑撮要』(『農桑衣食撮要』を取り上げ、以下の版本に関する解説を行う。元刊本『農桑輯要』、高麗刊本と明刊本『農桑輯要』、嘉靖山東布政使司刊『東魯王氏農書』、影元鈔本『新刊農桑撮要』と明刻『養民月宜』。元代において乾燥・半乾燥地域に属する華北農業と湿潤地域に属する江南の農業技術が総合化され、後世および他の地域に大きな影響を与えたことを解説する。開催地は学習院大学東洋文化研究所。[発表時間1時間]
28 「北東アジア出土猛安・謀克印研究序説-猛安・謀克の名称と分類を中心に-」 口頭発表 2009-10-00哈爾濱金代文化展記念学術シンポジウム「金王朝とその遺産」 主催者による招聘発表。印章・銅鏡・牌など出土史料を用いて、地名・職名・年号の考証など、個別事例の検討を行う。特に、出土史料を用いた猛安謀克制の再考を行い、明確な構造理解を目指す。猛安・謀克印の名称から固有名詞(自然地形+行政区画等)を除き、一般名詞を抽出し、この一般名称をもとに猛安謀克を類別することで、猛安・謀克の構造を分析する。開催地は新潟市歴史博物館。[発表時間30分]
29 「消えゆく水と現れでる碑-環境社会史研究の可能性」単著 2009-11-00RIHN-CHINA Newsletter『天地人』8
(総合地球環境学研究所オアシスプロジェクト)
山西省汾河下流域における水利碑調査の際に知り得た三峪ダムの老朽化と文化大革命時期に水利碑が地下に埋められ難を避けた事実を報告し、環境社会史研究の重要性を提示する。掲載頁数1頁(16頁)。
30 「中国山西省東南部における祈雨祭祀の諸形態-天水農業地域の水認識と水神信仰に関する歴史学的考察-」 口頭発表 2009-12-00第2回次世代国際学術フォーラム「文化交渉による変容の諸相-自然信仰、エスニック要素、宗教実践、言語概念と教育を手がかりに-」 主催者による招聘発表。華北天水農業の歴史的展開を明らかにし、自然環境と人間活動との歴史的な相互関係を探るため、「取水」や「拝水」と称された祈雨祭祀の具体的内容および関連する伝統的習俗を碑刻史料および地方志の記載から復元し、天水農業地域における水への認識を考察する。開催地は関西大学。[発表時間30分]
31 「「哈爾濱金代文化展」および記念シンポジウム観覧・参加報告」単著 2009-12-00『満族史研究』8
(満族史研究会)
新潟市において「哈爾濱金代文化展-12世紀の中国,北方の民族が建国する-」に関連して開催された「哈爾濱金代文化展」記念シンポジウム-「金王朝とその遺産」および「中国金の建国と女真族の社会」における報告・討論の概要を記し、あわせて展示内容の一端を紹介する。掲載頁数5頁(73頁~77頁)。
32 「緑城遺跡南東の「蜂の巣状」土地パターンと区田法」 口頭発表 2010-02-00シルクロード国際ミニシンポジウムⅡ「天、人、地からみた居延,エチナ,楼蘭-高解像度衛星画像・文書・現地調査から探る衛星考古地理学の試みと展望-」 主催者による招聘発表。緑城遺跡(中国内蒙古自治区アラシャン盟エチナ旗)の南東約1㎞の地点に広がる蜂の巣状の土地パターンが,いかなる目的で作られ、そこでは何が行われたのかという問題を取り上げ、乾燥地域における農業技術および技術移転とそれに伴う問題点を歴史的角度から考察する。開催地は奈良女子大学。[発表時間30分]
33 「河東訪碑行報告」共著 2010-04-00『東洋史論集』38
(九州大学東洋史学研究室)
2006年に実施した山西省における金元時代碑刻資料の現地調査報告及び現存碑刻目録。呉鈞氏に代表される郷土史家らの活動とその成果は地域の外へは伝わりにくい。地方の大学の紀要や現地の新聞などに掲載されるその成果を我々が把握することには大きな困難が存在する。今後は現地の生き字引とも言うべき呉氏ら郷土史家の知識や経験を国内外問わず広く公開していくとともに,学術交流の中でその成果をさらに活用することが必要である。舩田善之・飯山知保・小林隆道との共著。掲載頁数37頁(1頁~37頁)。
34 「中国内蒙古自治区エチナ旗の「蜂の巣状」土地パターンに見る歴史的農業技術としての区田法」 ポスター発表 2010-05-00日本沙漠学会第21回学術大会 現地調査と衛星写真の解析、文献資料の分析を通して、内蒙古自治区エチナ旗に残る蜂の巣状の土地区画がモンゴル時代に耐乾救荒を目的として全国的に実施された区田法の遺跡である可能性を指摘する。[発表時間30分]
35 「山西翼城喬沢廟金元水利碑考-以《大朝断定使水日時記》為中心-」 口頭発表 2010-08-00首届中国水利社会史国際研討会 主催者による招聘発表。山西省翼城県喬沢廟に現存する水利碑の分析を通して、モンゴル帝国期における華北投下領の支配形態および地域社会の具体像を考察する。開催地は中国山西省臨汾市。[発表時間20分]
36 「従内蒙古額済納旗的蜂窩地形来看的辺疆地区歴史上的農業土地開発」 口頭発表 2010-10-00前現代中国的治辺実践与辺陲社会歴史変遷学術研討会 主催者による招聘発表。現地調査と衛星写真の解析、文献資料の分析を通して、内蒙古自治区エチナ旗に残る蜂の巣状の土地区画がモンゴル時代に耐乾救荒を目的として全国的に実施された区田法の遺跡である可能性を指摘する。開催地は中国上海市復旦大学歴史地理研究中心。[発表時間20分]
37 「清代干旱地区対塩碱化的認識与対策-以18世紀河西三清湾屯田為例」 口頭発表 2010-11-00明清以来的環境変遷与水利社会国際学術研討会 主催者による招聘発表。18世紀の河西回廊における塩類集積に対して、清朝政府はその対策のために灌漑水路の開鑿と厳格な灌漑管理を行ったが、排水の問題に対する認識不足と政策の転換に伴う耕地の放棄によって再生アルカリ化が発生したことを明らかにした。開催地は中国福建省武夷山市。[発表時間20分]
38 「歴史学と文理融合-オアシスプロジェクトの経験と反省から-」 口頭発表 2010-11-00政治社会学会創立記念研究大会 過去2000年間という時間軸を設定し、文理融合型の研究を行ったオアシスプロジェクトにおいて、歴史学、特に文献史学に求められた役割は二つあった。一つはプロジェクト全体のバックグラウンドとなる通時的ストーリーを構築すること、二つ目はその細部を詰めるデータを文献から抽出することであった。上記プロジェクトの経験と問題点を述べる。[発表時間20分]
39 「水利碑から見た分地支配と社会-山西ジョチ家投下領の事例をもとに」 口頭発表 2010-12-00九州史学会平成22年度大会 山西省翼城県喬沢廟に現存する水利碑の分析を通して、モンゴル帝国期における華北投下領の支配形態および地域社会の具体像を考察する。楊宜ら漢人世侯に加えて、王十官人、寧七官人らによって分割支配される翼城県の状況は、ジョチ家投下領である平陽路の弊害を記した郝経「河東罪言」の信憑性を裏付ける格好の具体例である。また、ここに用水帳簿を毎年官府に提出し、管理部門が水利用許可の帖を発するという由帖制の実施例を確認することができる。[発表時間30分]
40 「伊藤正彦著『宋元郷村社会史論-明初里甲制体制の形成過程』」 単著 2011-03-00『中国研究月報』65-3
(中国研究所)
1970年代半ばから80年代半ばにかけて、地主佃戸関係、宋朝国家の農民支配原理、江南の農業生産力に関する新たな事実認識が示され、中国前近代の社会構成と唐宋変革に関する理論的理解が生み出された。そこから著者は中国における専制国家形態の生成要因と唐宋変革から明末清初に至る時期の歴史的展開を提示するという次なる課題を提起し、これらの課題に接近する方法として北宋後半から元代における社会問題・地方行政課題と密接にかかわる社会組織としての義役の結合原理と展開過程を追い、その帰結点としての明代里甲制体制の歴史的形成過程を検討する。掲載頁数3頁(43頁~45頁)。
41 「流域的分開与結合―以黒河流域平天仙姑信仰為切入点」 口頭発表 2011-09-00流域歴史与政治地理学術研討会 主催者による招聘発表。甘粛省・内蒙古自治区を流れる黒河流域において信仰された仙姑を取り上げ、明代に対モンゴル防衛のために形成された言説を分析する。また、清代において、モンゴルの脅威が払拭された後には、仙姑が流域中の全ての人びとに恩恵をもたらす水神へと変化したことを明らかにする。開催地は中国広東省中山大学。[発表時間20分]
42 「明清以来的環境変遷与水利社会国際学術研討会参加報告」 口頭発表 2011-10-00中国水利史研究会2011年度大会 2010年11月12日より15日にかけて、福建省武夷山市にて行われた厦門大学人文学院主催「明清以来的環境変遷与水利社会国際学術研討会」の報告内容をまとめ、その概要を報告する。[発表時間30分]
43 “A Study of Agricultural Water Supply Technology in 18th century Northwestern China: Historical Knowledge and the Response to Desertification” 口頭発表 2011-10-00The first conference of East Asian Environmental History 2011 18世紀の河西回廊においては、ジュンガル遊牧集団制圧のために国家の政策として農地開発が推進された。その障害となった塩類集積と沙漠化に対して、政府は灌漑水路を開鑿し、厳格な施水管理と森林植生の保護が行った。しかし、排水施設の不備と行政区画の変更に伴う水資源管理上の問題が再生アルカリ化を惹起し、開発事業はわずか数年の後に頓挫することとなった。開催地は台湾台北市中央研究院。[発表時間20分]
44 「「明清以来的環境変遷与水利社会国際学術研討会」参加報告」単著 2012-03-00『中国水利史研究』40
(中国水利史研究会)
2010年11月に福建省武夷山市にて行われた厦門大学人文学院主催「明清以来的環境変遷与水利社会国際学術研討会」の概要を紹介する。本テーマである水利社会史とは特定の区域内の人びとと組織を研究対象とし、いかなる水利方式を用いて安定的な相互関係が構築されたのか、水利を中心としていかなる活動が展開されたのかを考察する研究であり、近年著しい進展が見られた。掲載頁数11頁(72頁~82頁)。
45 張俊峰著「1990年代以降の中国水利社会史研究」単著 2012-03-00『中国水利史研究』40
(中国水利史研究会)
水利社会史に関する中国の最新の研究を日本国内に紹介するため、張俊峰「1990年代以来的中国水利社会史研究」(中国語)を日本語訳。水利社会史は現在の中国の学界において最も注目される学術領域の一つであり、歴史学や人類学など多くの学科の研究者の関心を集めている。本文では歴史人類学の角度から、中国国内外の人類学者や社会史学者の水利社会史研究に対して系統的な整理と評価を行う。掲載頁数20頁(2頁~21頁)。
46 「従水契碑刻来看前近代的水権売買-以清代山西河津三峪為実例-」 口頭発表 2012-05-00「改革開放以来的中国社会史研究」国際学術研討会曁第十四回中国社会史学会年会 主催者による招聘発表。中国山西省河津市に現存する水利権および水利用地の売買に関する契約書を刻んだ碑刻を取り上げ、従来不明とされてきた、もしくは不法行為とされてきた水利権売買の具体的内容を明らかにする。売り手は自らの先祖から受け継いだ水利用権を、時間を単位として自らが属する村に売却した。村は水利組織を通して実体を持つ買い手となり、売買によって水利権が村落外に流出することが防がれた。開催地は中国山西省山西大学。[発表時間20分]
47 「小野泰著『宋代の水利政策と地域社会』」 単著 2012-05-00『中国研究月報』66-5
(中国研究所)
本書における分析方法は、中央政府と地域社会における水利政策をめぐる議論に着目し、その政治過程を明らかにするというものである。したがって、中央・地方の別を問わず、水利をめぐる士大夫の奏議が主たる史料となるとともに、それぞれの思想的背景および人的関係が考察の対象となる。これは、従来の一部の中国水利史研究が、ある種、淡々と政策の内容およびその技術的側面を考察することに意を注いできたことに対する反論であり 、さらには社会経済史的手法がもつ人の顔の見えない水利史研究に対するアンチテーゼでもある。掲載頁数3頁(38頁~40頁)。
48 「森田明著『山陝の民衆と水の暮らし-その歴史と民俗-』」 単著 2012-05-00『社会経済史学』78-1
(社会経済史学会)
不灌漑水利、すなわち灌漑をしない(させない)水利用とは、山西省臨汾地区の四社五村と呼ばれる地域で受けつがれてきた伝統的な水利用方式である。極端な水不足のなかで地域内の全人畜の生命を維持するため、灌漑用水としての利用をかたく禁じ、生活用水としての利用にのみその目的が限られた。時に厳罰をもふくむ節水教育をとおして、最後の一滴まで水を無駄にせず、限界まで水を用いない節水観念がうえつけられ、一種の節水型社会が構築された。掲載頁数3頁(153頁~155頁)。
49 「中国汾河流域における分水の知恵-稀少な資源をいかに分けるのか」 講演 2012-07-00文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「新時代における日中韓周縁域社会の宗教文化構造研究プロジェクト」公開シンポジウム「ユーラシア乾燥地域における河水利用~水が育む歴史・文化・環境~」 主催者による招聘講演。水資源の乏しい乾燥・半乾燥地域において、人間は限りある水をいかに分配・利用してきたのかという問題に対して、中国山西省を縦断する汾河の流域に多く現存する水利用に関わる石碑の読解と分析を通して、分水の方法を明らかにする。歴史的経緯の中で生み出された用水秩序が長期持続性を有した背景には、水神祭祀を通して結びつけられた地域社会による水資源の自治管理が大きな役割を果たしたことを解説する。開催地は東北学院大学アジア流域文化研究所。[発表時間45分]
50 「晋北訪碑行報告」共著 2012-11-00『遊牧世界と農耕世界の接点―アジア史研究の新たな史料と視点―』(調査研究報告No.57)
(学習院大学東洋文化研究所)
2007年に実施した山西省北部および内モンゴル自治区南部における金元時代碑刻資料の現地調査報告および現存碑刻目録。調査時において、近年経幢が多く盗難の被害にあっていることを耳にした。これは幢頂・幢身・台座を分割することで、容易に持ち運びが可能となることに加えて、仏龕を有するという美術的価値が災いしたといえよう。また,石刻目録などに代表される近年の学術調査の成果が犯罪者に利用されたとも考えうる。飯山知保・舩田善之との共著。掲載頁数30頁(1頁~30頁)。
51 「近世華北の水利紛争における裁定の根拠」 口頭発表 2012-12-00学術シンポジウム「前近代中国の司法制度」 主催者による招聘発表。水利組織によって秘匿される媒体である水冊に対して、水利碑は人々の前に平等に開かれた媒体であり、その公開性こそが信用を担保するものであった。ただし、水案裁定と立碑というサイクルは、慣習・旧例を再生させる力は持ち得ても、水争を抜本的に解決する力は持ち得ず、このサイクルこそがかえって終わることのない水争を引き起こす原因そのものともなった。開催地は富山大学。[発表時間30分]
52 「東アジアにおける水資源分配の技術とその思想」 講演 2013-01-00早稲田大学高等研究所セミナーシリーズ・第3回シンポジウム「アジアの水利問題と国家・社会」 主催者による招聘講演。有限かつ稀少な資源をいかに利用するかという問題は、いかにこれを分配するかという問題に行き着く。本報告では、歴史的に見た水資源の分配という問題を取り上げ、水資源分配の技術とその思想を考察する。分水という行為を通して結びつけられた国家と社会、個人の関係性をひもとくとともに、水売買に関する日中の比較検討を通して、その地域性の違いを解説する。開催地は早稲田大学。[発表時間45分]
53 「高橋文治著『モンゴル時代道教文書の研究』」 単著 2013-06-00『東洋史研究』72-1
(東洋史研究会)
直訳体風白話文の語彙は一種の記号であり、それぞれにはある明確な指示性が賦与されている。さらに、これらは実際の口頭語とは別次元の、ある政治的な背景の中で制度や現実を担うタームとして用いられた。当時の書き手、読み手の双方には明白であった記号が示す指示性を明らかにすること、すなわちコード(記号)化された語彙やフレーズをデコード(解読)することによって、直訳体風白話文を「読む」ことが可能となり、さらにそこから歴史状況の理解へと至ることができる。掲載頁数21頁(167頁~187頁)。
54 ”Carved Contracts in Stones: Water Trading in Premodern China” 口頭発表 2013-10-00The second conference of East Asian Environmental History 2013 碑刻に刻まれた水利権売買契約書の解読を通して、売り手と買い手の関係性を明らかにする。売り手は先祖から受け継いだ水利用権を、時間を単位として自らが属する村に売却した。村は水利組織を通して実体を持つ買い手となり、売買によって水利権が村落外に流出することを防いだ。村が買い手となり、水利組織が水利権の転移を仲介する役割を果たすことで、水利権の完全な商品化が阻止され、地域内における資源利用の最大効率化が果たされた。開催地は台湾花蓮市国立東華大学。[発表時間20分]
55 "Reconstruction of dual irrigation system in northern China from inscriptions on stone tablets connected with the water conservancy and water trade"ポスター発表 2014-07-00The Second World Congress of Environmental History ギマライシュ市(ポルトガル)にて開催された国際会議でのポスター発表。年間降水量500mm以下の半乾燥地域に位置する中国山西省において稀少な水資源を有効利用するために用いられた灌漑システムを検証する。泉水とともに雨水を水源として用いることで、灌漑用水を確保するとともに、村落ごとに利用可能な水源を限定することで長期にわたる水利秩序の維持がなしとげられたことを明らかにした。
56 「社会史史料としての碑刻:「今」そこにある意味を問う」 口頭発表 2014-07-00東アジア石刻研究会 明治大学にて開催された研究会での研究発表。碑刻の両義性は、テキストとしての碑刻とモノとしての碑刻という点にある。このうち、モノとしての碑刻という性質はそれが存在することによってのみ成立しうる。残るべくして残り、残されるべくして残った碑刻の代表例として水利碑を取り上げ、その存在・伝存の背景を考察する。碑刻をめぐる人々の認識と「善悪」双方の行動を読み解くことで、水利碑が水利用に関する権利の所在を示すという現実的価値を持つことに加え、地域社会における知識の共有と継承のための媒体という役割を担ったことを明らかにする。[発表時間30分]
57 「前近代中国における水利権売買―華北の事例をもとに」 口頭発表 2014-10-00第38回中国環境問題研究拠点研究会「中国半乾燥地域における水と人」 総合地球環境学研究所にて開催された研究会での研究発表。18~19世紀の清朝治下における水利権売買慣行を石刻や文書の形態で売買契約書が現存する山西省の事例を分析し、陝西省における事例を比較材料として検討する。地域社会の資源分配への関わり方は、オストロムのコモンズ論やシヴァのウォーター・デモクラシーを想起させるものであり、持続的な資源分配の将来型モデルを構築する上でローカル・ナレッジとその歴史学的検討の重要性を指摘する。[発表時間30分]
58 「水権売買再考―華北の事例に基づいて」 口頭発表 2014-11-002014年度中国水利史研究会研究大会 兵庫教育大学にて開催された学会での研究発表。18~19世紀の清朝治下における水利権売買慣行を石刻や文書の形態で売買契約書が現存する山西省の事例を分析し、陝西省における事例を比較材料として検討する。年間降水量500mm程度という過酷な水環境のもとで、生存および生業活動のために水利権の商品化を防ぎ、地域外への水利権の移転を阻止するという狙いがあったと考えられる。[発表時間45分]
59 「前近代華北における水利権売買」 口頭発表 2014-11-00関西農業史研究会第334回例会 大阪経済大学にて開催された研究会での研究発表。水利権売買は水資源の過不足を調整し、最大限に有効利用するための技術とみなしうる。しかし、商品化の進展にともなって、売買契約を通して地域外へと水利権が流出する危険性を想定することができる。固鎮水利碑刻の分析によれば、水利権の完全な商品化を押し止めたのは、村による水利権の共有と水利組織を媒介として分配、回収、再分配のサイクルのハブとしての機能した村落の役割であったと考えられる。水利組織を通じて主体的に水利権売買に関与する村落の姿は、弱い凝集力と低い村民意識といった通説的理解とは異なる地域社会像を示す。[発表時間1時間]
60 「回顧と展望:東アジア・五代宋元」単著 2015-05-00『史学雑誌』第124編第5号 2014年に国内において発表された五代宋元期に関する研究成果をレビューし、全体的な傾向や今後の課題をとりまとめた。本人担当8頁(216頁~223頁)。
61 「中国近世の水利をめぐる紛争と秩序―黄河中流域の事例に基づく水利組織の検討を中心に」 口頭発表 2015-06-00洛北史学会第17回大会 京都府立大学にて開催された学会(大会テーマ「権力・地域と平和」)での研究発表。前近代中国における水利をめぐる紛争裁定の基調は旧例遵守にあり、水利慣行の維持こそが基本原則であった。したがって、裁定の場において事実認定や双方の主張の是非を検証する材料とされたのも直接的な経験を伝達する個人の見聞や口伝であり、あるいは間接的ながらも各人の主張に関する歴史性を具現化する水利碑や水冊に記載された内容であった。特に水利碑と水冊の関係性は、民間水利組織の性格や水利秩序の形成・維持に果たした役割を考える上で重要な意味を持つ。[発表時間30分]
62 Water management organisations in pre-modern China 口頭発表 2015-06-00Water History Conference Delft 2015 デルフト市(オランダ)のデルフト工科大学にて開催された国際会議における研究発表。清代山西省の水利碑を材料として、地域社会の水管理組織の構造と水利権売買の具体例を検証し、前近代の中国における地域社会主導型の水資源管理および分配のあり方を明らかにした。[発表時間20分]
63 「治水から利水へ―中国史上における資源分配をめぐる国家と社会、そして民族」 口頭発表 2015-12-00大阪市立大学国際学術シンポジウム「文化接触のコンテクストとコンフリクト」 主催者による招聘発表。大阪市立大学にて開催された公開シンポジウムの「セッションⅢ」境域をめぐる環境史における研究発表。従来の研究において治水という角度から映し出される像は、あくまで主体としての国家や公権力の姿であり、専制国家としての特徴を捉えた静止画を現出しこそすれ、歴史的変化という動態がそこに現されることはなく、これが中国に関する停滞論的理解を生み出す原因であった。これに対して、利水、すなわち水利用という角度から考察することにより、当事者としての人が動きをもって立ち現れてくる。とくに水資源の管理・分配に見える人と自然との関わり合いのあり方は、人と人との関係性によって構築される社会や国家の姿を逆照射するものともなる。[発表時間20分]
64 水資源の分配・管理に見る前近代中国の国家・社会関係 口頭発表 2016-03-05大阪歴史科学協議会3月例会 主催者による招聘発表。13~19世紀の中国北部(山西省・河南省・陝西省)の事例から、水資源の分配・管理に関わる主体と方法の歴史的変遷を明らかにするとともに、その変化に伴って発生した水利権売買という事象を資源の商品化として捉え、これに対する国家と地域社会の認識と対応を考察する。[発表時間1時間]
65 [Panel 2B] Water Management as a Conjunction of Imperial Projects and Regional Influences: The Cases of the Qing Western Regions, Russian Turkistan, and Ottoman Egyptに対するコメント コメント 2016-05-27International Workshop, "Empires of Water: Water Management and Politics in the Arid Regions of China, Central Eurasia and the Middle East (16th-20th centuries)" エジプト(18世紀)、中央アジア(19-20世紀・カザフスタン)、中国西部(18-19世紀・新疆)の灌漑水利史に関する三報告に関して、量的拡大と質的転換に関する点から分類を行い、その特徴の違いを指摘した。[発表時間15分]
66 旧章再造:以山西曲沃县“一石三記” 与“三石一記”水利碑為中心材料 口頭発表 2016-09-24“銘刻文献所見古代法律和社会”学術研討会 山西省曲沃県に現存する水利関連の碑刻資料を分析し、王朝の時代を超えて水利権の根拠として受け継がれていく増刻碑と水利権の証明のためにある特定の時代の状況を復元する重刻碑との性格の違いを指摘する。[発表時間20分]
67 旧章再造:以増刻、重刻的水利碑為基礎資料 口頭発表 2016-12-03第二届中国人口資源環境与社会変遷学術研討会 山西省曲沃県に現存する水利関連の碑刻資料を分析し、王朝の時代を超えて水利権の根拠として受け継がれていく増刻碑と水利権の証明のためにある特定の時代の状況を復元する重刻碑との性格の違いを指摘する。特に伝統を作り上げるモノとしての重刻碑の意義を再評価し、さらに研究を進めるべき対象であることを指摘する。[発表時間20分]
68 女真と胡里改:鉄資源と加工技術の行方に見る完顔部の勃興 口頭発表 2017-10-07第32回北方民族文化シンポジウム 本報告では、完顔部勃興の内在的要因の一つとして、鉄資源とその加工技術の確保という問題を取り上げる。鍛鉄を業とする職能集団であった胡里改は、渤海発祥の地である敦化地方を根拠地とし、鉄製武具の製造および販売を半ば独占的に行った。胡里改は自らを女真とは異なる集団であると認識し、牡丹江流域から図們江下流域に至る地域の諸集団と結び、完顔部への侵攻を繰り返した。[発表時間45分]
69 Borders between Self and Others: Spatial Analysis of Local Communities Connected by Water in Shanxi, in Late Imperial China, Based on the Canal Network Maps on Steles 口頭発表 2017-10-27The Fourth Conference of East Asian Environmental History 2017 水利用に関わる日中の地図・絵図を比較して、その共通点と相違点を抽出する。特に大きな違いとして、境界線の有無を取り上げて、その違いが意味する背景を考察した。[発表時間20分]
70 移動可能な資源をいかに捉えるか? コメント 2018-01-26京都大学人文科学研究所「転換期中国における社会経済制度」研究班 片山剛報告「土地改革前夜、土地利用に対する共同規制と〈村の領域〉の存在形態:広東省高要県金東囲を中心に」に対するコメントを行う。華北の村と水利権に関する状況を比較の材料として、村の領域と資源の所有形態について議論を行った。[発表時間30分]
71 中国近世水権試論―水をめぐる「伝統」の形成過程口頭発表 2018-06-30近世史フォーラム6月例会 歴史事象を事例として水資源の不足と偏在に対する持続的有効利用のあり方を考察。いのちをつなぎ、なりわいを成り立たせる前提条件としての水に着目し、その量的稀少性から生み出された水資源に対する認識や「伝統」的な水利用のわざを文献史料に基づき考察する。[発表時間1時間]
72 重刻碑にみる近世山西の水をめぐる「伝統」の形成過程口頭発表 2018-10-28広島史学研究会大会東洋史部会 18世紀の山西曲沃県では地震や火災などの自然災害や人心荒廃に伴う訴訟の頻発といった社会不安に対する地域社会の応対が、21村の水利連合として、あるいは宗族の結集として現出した。その後、19世紀には伝統を確認するという名のもとに当時の状況を反映した形で水利秩序および社会秩序の再編が図られた。[発表時間25分]
73 18~19世紀山西の水利に見る村の役割―宗族との関係をまじえて口頭発表 2019-02-09科研費ワークショップ「宗族と水利から華北の「村」を再考する」 18世紀から19世紀における地震や火災などの自然災害や人心荒廃に伴う訴訟の頻発といった社会不安に対する地域社会の応対が,21村の水利連合として,あるいは曲村を中核とする靳氏宗族の結集として現出した。その際に,伝統を確認するという名のもとで,当時の状況を反映した形で村を単位として水利秩序および社会秩序の再編が図られた。[発表時間45分]
74 The Establishment of Water Companies in Modern China口頭発表 2019-10-27The Fifth Biennial Conference of East Asian Environmental History 20世紀初頭に山西省北部に設立された水利公司について検討を行い、設立の理由を分析した。水利公司の組織や設立者、投資者の分析を行うとともに、水利開発および土地改良の具体的経緯、栽培作物の考察を通して、当該地域におけるケシ栽培およびアヘン製造と水利開発・土地改良との関係性を明らかにした。[発表時間20分]
75 前近代陝山地區水權交易與村莊的關係口頭発表 2019-12-06"Irrigation Works and Local Communities in East Asian History" 個別事例を通して、16世紀以降に本格化する地権と分離した水利権の売買の実態を明らかにし、これが地域社会に与えた影響とこれに対する地域社会の側の対応を分析する。[発表時間30分]
76 Inter-state Relationship and Order in Eastern Eurasia during the 11th to 13th centuries口頭発表 2019-12-10"North China as Part of the Inner Asian System 10th-15th centuries" 11-13世紀のユーラシア東部において、複数国家の併存状態を現出させた「澶淵体制」に着目し、これが12世紀における金の建国によって、いかに変容したのかを明らかにするとともに、その歴史的意義を分析する。[発表時間20分]
77 生み出される「公」の水―伝統中国の水をめぐる認識とその変容―口頭発表 2020-10-23大谷学会 所有や利用、売買貸借など、水に関わる諸種の権利をいかに設定するかという問題は、歴史上のみならず現代においても人類が抱える重要な課題である。本発表では、伝統中国の事例を基に、「公水」という概念に着目し、水に対する認識とその変容の過程を明らかにする。[発表時間30分]
78 「女真」の形成—東北アジア諸集団の興亡口頭発表 2021-03-15第16回京都大学人文科学研究所TOKYO漢籍SEMINAR 12世紀に東北アジアに覇権を確立し、金を建国した生女真安出虎水完顔部はもともと後発の集団であったが、遼と東北アジアをつなぎ,その権威と武力の傘のもとに耶懶完顔部、曷蘇館女真と渤海人、非女真系集団を吸収・併合して覇権を確立した。金滅亡後には,旧非女真系集団が女真の正統と位置づけられ,金と後金,女真と満洲をつなぐ存在となる。[発表時間1時間]
79 解説:環境と災害の歴史 共著 2021-03-22『デジタル時代の中国学レファレンスマニュアル』 漢字文献情報処理研究会編『デジタル時代の中国学レファレンスマニュアル』(好文出版)の一節として、中国学を学ぶ上で自然環境や災害の影響をいかに考慮すべきかという問題について解説した。[本人担当143頁〜146頁]
80 R. Bin Wong教授の基調講演に対するコメントコメント 2021-09-09Sixth Biennial Conference of East Asian Environmental History R. Bin Wong教授 (UCLA)の基調講演 “East Asian Environmental History & Contemporary Global Environmental Challenges”に対して、水資源管理における地域社会の役割と地域間比較の方法に関するコメントを行った。[発表時間10分]
81 Humans are their own worst enemy:
The development and abandonment of land in the Huai River basin during the 12th to 14th centuries
口頭発表 2021-09-10The Sixth Biennial Conference of East Asian Environmental History 宋金元代における黄河の河道変化によって生じた影響を政治的、社会的、環境的側面から考察する。結果として、自然環境的変化による影響はもとより、それに伴う人為的改変の影響が人間社会に大きなインパクトを与えたことを明らかにした。[発表時間20分]
82 新刊紹介:堀直著:堀直先生論集刊行会編『清代回疆社会経済史研究』 単著 2022-03-00『内陸アジア史研究』37号 堀直著:堀直先生論集刊行会編『清代回疆社会経済史研究』の紹介。[本人担当56頁〜57頁]
83 Decentering Song-dynasty China: The Chanyuan International Order, 1004-1266 講演 2022-10-03CEAS (Council on East Asian Studies) Colloquium Series, Yale University 11世紀初頭に締結された澶淵の盟は、9世紀以降、断続的に出現した誓約に基づく複数の国家が共存する国際秩序を確立し、長期的に持続する「システム」を作り上げた。このシステムは、契丹遼と北宋の関係を形式的に対等なものとし、この2国間のみならず、他の政権との関係も120年にわたり規定した。しかし、金の成立により、金と周辺諸国との間に宗主・臣下関係が発生するようになった。金は、誓文や国書の交換によって複数国家の共存を認めるという澶淵体制の枠組みを維持しつつ、外交儀礼の面で宗主国である金とその属国とを区別した。この国際秩序は、澶淵体制の変革期であると同時に、東ユーラシアにおける複数国家の共存からモンゴルという単一国家による統一へと向かう最終段階でもあった。[発表時間45分]
84 Decentering Song-dynasty China: The Chanyuan International Order, 1004-1266 講演 2022-10-05East Asian Studies Program, Princeton University 11世紀初頭に締結された澶淵の盟は、9世紀以降、断続的に出現した誓約に基づく複数の国家が共存する国際秩序を確立し、長期的に持続する「システム」を作り上げた。このシステムは、契丹遼と北宋の関係を形式的に対等なものとし、この2国間のみならず、他の政権との関係も120年にわたり規定した。しかし、金の成立により、金と周辺諸国との間に宗主・臣下関係が発生するようになった。金は、誓文や国書の交換によって複数国家の共存を認めるという澶淵体制の枠組みを維持しつつ、外交儀礼の面で宗主国である金とその属国とを区別した。この国際秩序は、澶淵体制の変革期であると同時に、東ユーラシアにおける複数国家の共存からモンゴルという単一国家による統一へと向かう最終段階でもあった。[発表時間45分]
85 Decentering Song-dynasty China: The Chanyuan International Order, 1004-1266 講演 2022-10-06Center for East Asian Studies, University of Pennsylvania 11世紀初頭に締結された澶淵の盟は、9世紀以降、断続的に出現した誓約に基づく複数の国家が共存する国際秩序を確立し、長期的に持続する「システム」を作り上げた。このシステムは、契丹遼と北宋の関係を形式的に対等なものとし、この2国間のみならず、他の政権との関係も120年にわたり規定した。しかし、金の成立により、金と周辺諸国との間に宗主・臣下関係が発生するようになった。金は、誓文や国書の交換によって複数国家の共存を認めるという澶淵体制の枠組みを維持しつつ、外交儀礼の面で宗主国である金とその属国とを区別した。この国際秩序は、澶淵体制の変革期であると同時に、東ユーラシアにおける複数国家の共存からモンゴルという単一国家による統一へと向かう最終段階でもあった。[発表時間45分]
86 『馬首農言』試釈(一)―地勢気候・種植― 共著 2022-11-00『上智史学』第67号 19世紀半ばに刊行された農書『馬首農言』の訳注。当該時期の華北黄土地帯の農業事情の一端をうかがうことのできる極めて重要な史料であり、農業技術のみならず山西省寿陽県における流通や商品経済についても多くの記載が見られる。共著者:大川裕子・村上陽子・井黒忍・丸橋千加子・大澤正昭。[本人担当81頁〜82頁]
87 書評 熊倉和歌子著『中世エジプトの土地制度とナイル灌漑』 単著 2023-02-00『社会経済史学』88-4 熊倉和歌子著『中世エジプトの土地制度とナイル灌漑』に対する書評。地域や時代の専門性を超えた、人類史や環境史という観点から本書の意義を捉え直す。[109頁~113頁]
88 Boundary Perceptions of Wells and Ponds as Sources of Water for Domestic Use in Rural Communities in Northern China from the eighteenth to the twentieth Centuries口頭発表 2023-06-30The Seventh Biennial Conference of East Asian Environmental History (EAEH 2023) パネル「水利社会再考: エジプト・インド・中国の農村社会における水ガバナンスに関する比較研究」。本報告では、生活用水の水源として利用されてきた井戸やため池の利用と管理に着目し、18世紀から20世紀にかけて中国北部の村落社会において水をめぐる個人と集団との線引きがいかになされたのかを明らかにした。[発表時間25分]
89 『知本提綱』に見る灌漑の技術とその認識 口頭発表 2023-09-16科研シンポジウム「農書から見る中国-生産技術・自然環境・生活文化」 清代中期に関中興平の人である楊屾が著した『知本提綱』は、農作業の中における灌漑の位置づけを明らかにし、降水時に出現する洪水(山洪)を灌漑に用いる方法とその危険性を述べ、地形的な理由により水源を得ることが難しい場所でため池や井戸の造成を説くなど、関中渭北地域の自然環境に対応した灌漑水利の技術を記載する特徴ある資料である。これらの資料に基づき、灌漑の技術を復元し、その認識を明らかにする。[発表時間50分]
以上89点

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