教育研究業績の一覧

中川 眞二
A 教育業績
教育実践上の主な業績 年月日概要
1 教育内容・方法の工夫(授業評価等を含む)
1 古文現代語訳添削指導
(3年間指導計画の実施)
2008-04-00 ~ 特進クラス全学年(学年1クラス)の教科担当をしているため、3年分の指導予定を作成し、入試対策として過去に大学入試で出題された本文を自主課題として提出させ、添削指導をしている。進度は個人により異なる。(2008年4月~2011年3月)
2 現代文要約プリント指導 2010-04-00
~2013-03-00
読解力、論理力養成のため、2000字程度の文章を100字要約する自主課題を個別に行う。
3 小論文の作成と添削 2012-04-00
~2015-03-00
授業名:「文章表現学1・2」
毎時間500字程度の小論文課題作成を実施し、それを添削したものを次回授業で返却した。自分が作成した文章を振り返ることで、「読み」・「書き」のスキル向上を目指している。
4 アクティブラーニング型の授業の実施 2012-04-00 ~ 1~4年生の演習の授業において、KP法やジグソー法等を用いながら、テキストの「読み」を行った。
5 リアクションペーパーの利用 2012-04-00 ~ 「日本文学の歴史1」・「日本文学史1」の授業において、授業終了時にリアクションペーパーを配布。本時での気づきや疑問等を記入してもらい、次時において前時の復習をする際、疑問に答えた。
6 歌物語の創作 2012-09-00
~2015-03-00
授業名:「文章表現学2」
ジャンルを問わず、自分が好きな曲の歌詞の向こう側にあるストーリーを創作する課題を与えることで、文章表現の充実を図った。また、優秀な作品については授業で発表し、意見交換を行った。
7 「文学の楽しさ」 2013-10-00 「オープンキャンパス模擬授業」
「恋する気持ち」を例にとり、古典作品の和歌(『万葉集』・『小倉百人一首』等)と現代歌人の短歌(俵万智・枡野浩一・穂村弘等)を比較することで、昔から変わらぬ思いやその表現があること(「不易」)を示す一方で、平安時代の作品をパロディ化した江戸時代の作品を例にとり、その時代による「流行」があることも踏まえながら、「文学の楽しさ」についての授業を行った。
2 作成した教科書、教材、参考書
1 「日本文学の歴史1」の参考資料の作成 2012-04-00
~2017-07-00
授業名:「日本文学の歴史1」
奈良時代から江戸時代までの和歌史の展開を考えるための資料を、授業の進行にあわせて、毎時作成・配布している。
2 「学習指導要領」テスト 2013-09-00 ~ 授業名:「国語科教育法1」
「学習指導要領」に関する空欄補充テストを実施し、国語科教育のための専門教養力の充実を図っている。(現在に至る)
3 古典講読プリント 2013-09-00 ~ 授業名:「国文学演習Ⅱ」
古文プリントを配布。品詞分類等の作業等を通して、古文の理解力充実を目指した。
4 「日本文学史1」の教科書の作成 2017-04-00 ~ 授業名:「日本文学史1」
「日本文学の歴史1」の授業資料を下敷きにして、韻文を中心とした文学史の教科書を作成し、授業で配布した。
3 教育方法・教育実践に関する発表、講演等
1 第21回全国漢文教育学会全国大会研究授業(大谷大学、研究授業のみ大谷中高等学校) 2005-00-00 高校における漢文教育の実践。
授業内容は、『孟子』「告子上」篇「性猶湍水也」の導入。
思想史の上での孟子の位置や時代的背景について、本文を用
いながら説明を行った。
2 小論文指導の方法と添削
(京都府立網野高等学校教員対象)
2017-09-00 京都府立網野高等学校の先生方に、小論文の指導について、要約教材を利用した指導、新聞記事を利用した指導、現代文の授業を利用した指導などの指導の方法と添削の際の注意点などを講演した。(80分)
4 その他教育活動上特記すべき事項
B 職務実績
1 京都府私学中学高等学校国語科研究会委員長 2008-04-00
~2009-03-00
2008年度、京都府私学中学高等学校国語科研究会委員長として研究会等を主催する。
2 人権センター員 2013-04-00
~2014-03-00
3 入学センター長 2017-04-00
~2020-03-00
C 学会等及び社会における主な活動
所属期間及び主な活動の期間 学会等及び社会における主な活動
1 1985-04-00~1994-03-00 滋賀県『大般若波羅蜜多経』調査補助員
(滋賀県教育委員会文化財保護課)
2 2012-03-00~0000-00-00 全国大学国語国文学会
3 2012-04-00~0000-00-00 日本近世文学会
4 2014-05-00~0000-00-00 日本文学協会
5 2016-04-00~0000-00-00 全国大学国語教育学会
6 2018-05-00~0000-00-00 解釈学会
7 2021-12-00~0000-00-00 日本文学協会 委員(近世文学)
D 研究活動
著書、学術論文等の名称単著、
共著の別
発行又は
発表の年月
発行所、発表雑誌等
又は
発表学会の名称
概要
Ⅰ著書
1 『魚太平記-校本と研究-』共著 1995-02-00勉誠社 近世初期に成立した仮名草子『河海物語』には、幾段階かの諸本が標本のように存在する。本書は、阪本龍門文庫蔵『魚太平記』を底本とし、天理大学附属図書館蔵『河海物語』、名古屋市鶴舞中央図書館蔵『河海物語』、国立国会図書館蔵『河海物語』と対照し、忠実に翻刻した。(本文については、全員で検討した。)
総頁数231頁
共同執筆 沙加戸弘・石川稔子・岸本ひろの・黒田寿栄・田尻紀子・中川眞二・中嶌容子・米田晴行
2 『明義進行集 影印・翻刻』共著 2001-03-00法蔵館 鎌倉時代に成立した源空門流の言行集『明義進行集』について、河内金剛寺蔵本を底本とし、大谷大学図書館蔵本を参照しながら、忠実に翻刻した。(本文・補注については、全員で検討した。)
総頁数356頁
共同執筆 沙加戸弘・石川稔子・岸本ひろの・黒田寿栄・田尻紀子・中川眞二・中嶌容子・米田晴行・西畑幸雄
以上2点
Ⅱ学術論文
1 『伊勢物語』百十七段の解釈をめぐって
-為顕流の存在とその影響-
単著 1991-03-00『大谷大学大学院研究紀要』第8号 『伊勢物語』117段は、古今集注釈書等において、鎌倉時代初期までは、住吉行幸を行ったのは平城天皇で、その際天皇自ら和歌を詠んだと解釈されてきた。しかし、鎌倉時代後期の為顕流では、住吉行幸は文徳天皇が行い、和歌を詠んだのは在原業平であるという解釈がなされた。これは、住吉明神から業平への血脈を作ろうとしたためであり、その解釈は冷泉流に引き継がれ、以後の文献に大きな影響を与えることになる。19頁(169~187頁)
2 中世古今集灌頂系秘書における神道享受
-『 玉伝神秘巻 』を中心として-
単著 1992-03-00『東山学園紀要』第37集
室町時代の二条流古今伝授には山王神道や卜部神道といった神道思想の影響が見て取れる。その濫觴を、それに先立つ時代、特に鎌倉時代後期以後の古今集灌頂系秘書為顕流の『玉伝深秘巻』に求め、同流の秘伝にあらわれた両部神道や天台本覚思想といった、時代的に流行しつつあった思想を秘伝に取り入れ、自流の権威付けをしていったことを明らかにした。11頁(1~11頁)
3 伊勢物語注釈書としての『 玉伝神秘巻 』の位置
-『 和歌知顕集 』との比較を中心として-
単著 1992-06-00『滋賀大国文』第30号

鎌倉時代における『伊勢物語』の注釈について考えるとき、一般に『和歌知顕集』や冷泉家流の伊勢物語注釈書が重視される。しかし、藤原為家の子為顕流の『玉伝神秘巻』に所収されている『伊勢物語』に関する記述の内容は、後に現れる冷泉家流の伊勢物語注釈書と一致する点が多く、為顕流の影響を考えるのに十分である。同時に、『玉伝神秘巻』に秘伝ありとされた章段については、冷泉家流『伊勢物語抄』においても同様の記述が見られる。その点においても、伊勢物語注釈書としての『玉伝神秘巻』の存在は重視されるべきである。
9頁(23~31頁)
4 義孝説話の展開
-説話と時代-
単著 2000-07-00『滋賀大国文』第38号
平安時代中期から後期に多く伝えられる藤原義孝に関する説話について、それに含まれる和歌と一句詩をもとに3つのグループに分類したとき、末法到来の時期には「往生人」として語られていた義孝が、次第に「歌人の往生」として語られ、狂言綺語観の高まりとともに、和歌や一句詩を根拠に往生した人物として描かれるようになることを指摘し、説話の変容が時代背景の影響を受けたことを考察した。10頁(55~64頁)
5 『堤中納言集』伝本考
-秩父宮家蔵本と新出浄泉寺蔵本の書写年代をめぐって-
単著 2001-07-00『大谷学報』第80巻第3号
『兼輔集』の一系統である部類名歌集本『堤中納言集』について考察するとき、これまでは秩父宮家蔵本を中心に考えられてきたが、玉川山浄泉寺蔵本の発見により、再考を要する点が出てくる。浄泉寺蔵本には、秩父宮家蔵本のような欠落が見られないこと、筆跡に関してはすべて一致していながら、浄泉寺蔵本には烏丸光弘の奥書以外に「幽斎書」の記述や古筆了佐の極めが付属されていることから、秩父宮家蔵本から浄泉寺蔵本への流れは考えにくく、それにより11世紀前半と考えられていた秩父宮家蔵本の書写年代は大きく下がることになる。12頁(16~27頁)
6 為顕流の展開に関する一考察
-『金玉双義』と『玉伝神秘巻』の比較を通して-
単著 2005-03-00『大谷中高等学校研究紀要』第38・39合併号
13世紀、藤原為顕の一派が興隆した時代は、同時に狂言綺語観が文芸人たちを苦しめていた時代でもあった。しかし、為顕流はその点に注目し、独自の血脈や秘伝を作り上げ、自流の存在価値を高めていった。しかし、その為顕流においても、理論や血脈を整理しようとする能基系と仏教的文学観の立場から差別化を図ろうとする神垂系といった異なる流れが存在した。特に、神垂系の秘伝は、冷泉家流に取り入れられ、後世に大きな影響を与えた。10頁(21~29頁)
7 「現代文」における表現力の指導について
―「読む」ことから「書く」ことへ―
単著 2013-03-00『大谷中高等学校研究紀要』第42号 現代社会において「コミュニケーション能力」の必要性が叫ばれ、新学習指導要領においても「言語活動の充実」という課題が掲げられている。その際、注目されるのは「思考力」や「表現力」であるが、「コミュニケーション能力」の養成を行うには、教科書や課題文を通して、いろいろな文章を読み、たとえ短くてもいいから筆者の主張について考えまとめるという作業、つまり「読む」ことを前提とした「表現」を継続的に行うことが必要である。9頁(1~9頁)
8 『因果物語』の位相 ― 平仮名本と片仮名本の編集意図について ―単著 2013-10-01『文藝論叢』第81号(大谷大學文藝学会) 平仮名本『因果物語』の編著者が、庶民層を対象としながら、鈴木正三の原『因果物語』に手を入れ、主題を読者に提示しつつ仮名草子化したのに対し、片仮名本出版は師である正三の原『因果物語』を勝手に改編した平仮名本出版に対する抗議であるとともに、原『因果物語』の因果譚が庶民対象にわかりやすく草子化されることで、説教等に使用しにくくなったことに対する抗議でもあったことを明らかにした。14頁(46~59頁)
9 片仮名本『因果物語』の姿勢
 ― 一向宗関係因果譚を手がかりとして ―
単著 2014-10-30『大谷学報』第94巻第1号(大谷学会) 片仮名本『因果物語』では、「禅宗(曹洞宗)」の良い面(善因善果)およびそれ以外の各仏教宗派の悪い面(悪因悪果)を述べようとする傾向が強い。特に「一向宗」関係の因果譚についてはその収載数も多く、その僧侶・信徒の悪因悪果がさまざまに述べられている。本論では当時衆目を集めていた「浄土真宗」のマイナス面を述べようとした片仮名本『因果物語』編者の意図について言及している。19頁(1~19頁)
10 浅井了意『勧信念仏集』の成立
 ―平仮名本による女人教化の試み―
単著 2015-03-00『文藝論叢』第84号
(大谷大学文藝学会)
浅井了意は、僧侶を対象とした漢字片仮名による仏書の出版に数多く関わっている。そのなかで、貞享5年(元禄元年)に上梓されたと考えられる『勧信念仏集』では、源空の『無量寿経釈』や存覚の『女人往生聞書』を引用しながら「女人往生」について、わかりやすく述べられている。ここに、了意の平仮名本による庶民を教化しようとする姿勢の一端を読み取ることができるのである。14頁(1~14頁)
11 平仮名本『因果物語』にあらわれた仏教
―編集者浅井了意の姿勢―
単著 2016-03-00『文藝論叢』第86号(大谷大學文藝学会) 江戸時代初期、説教においてさまざまな「因縁物語」が語られるなか、禅宗偏重説話を多く含むがゆえに禅宗僧に大いに利用されたであろう片仮名本『因果物語』に対して、世の中の流れを鋭敏に読み取ることができる眼の持ち主であった作家兼編集者、浅井了意によって編集された平仮名本『因果物語』は、特定の宗派の立場に立つことなく、シンプルに因縁譚を集めた読み物、挿絵を持つ諸国物的性格を有した読み物として民衆に広まった。14頁(44~57頁)
12 高校古典教育における和歌の指導
― 近代短歌からのアプローチ 1 ―
単著 2017-03-14『文藝論叢』第88号(大谷大學文藝学会) 平成28年8月に発表された「次期学習指導要領に向けたこれまでの審議のまとめ」においても「伝統文化に関する学習を重視すべきである」と、古典教育は今後も重要視されることが延べられる一方で、高校などの教育現場においては「古典離れ」が叫ばれている。そのような状況を踏まえたうえで古典教育を行う場合の切り口として、和歌の指導、特に近現代短歌の理解から遡るという授業法を提案した。14頁(179~192頁)
13 高校古典教育における和歌の指導
― 近代短歌からのアプローチ 2 ―
単著 2018-03-14『文藝論叢』第90号(大谷大学文藝学会) 現在の高校教育において、「国語ワーキンググループにおける審議取りまとめ」の「現行学習指導要領の成果と課題」の中で示された「古典に対する学習意欲が低いこと」が課題となっていることを前提としたうえで、そうした状況下でより充実した古典の授業が行われるために、「百人一首」を通して作品世界や作者の心情に迫ろうとする授業の実践例を示した。前稿において示した現代短歌の「歌物語」化同様、文学作品の世界に迫るひとつの手段になるとともに、「古典離れ」に対する効果的な対策にもなるはずである。14頁(30~43頁)
14 「この雨の夜にこの羅生門の上で」考
 ― 古典のなかの「羅生門」―
単著 2019-03-14『文藝論叢』第92号(大谷大學文藝学会) 高校一年生の定番教材である芥川龍之介の『羅生門』において物語が展開するのは、雨の夜の羅生門の上である。小論では、その雨の夜の羅生門の上に焦点を当て、古典文学作品のなかで「雨の夜の羅生門の上」がどのように描かれ、それが芥川の『羅生門』にどのような影響を与えたかということについて生徒たちと考えた授業実践の記録である。また、そのことが『羅生門』という題目とどのように結びつくかということについても言及した。13頁(42~54頁)
15 『沙石集』「先生の父の雉になりたるを殺したる事」を読む
―「言語文化」の授業について考える―
単著 2020-03-00『文藝論叢』第94号(大谷大學文藝学会) 2022年度以降、高等学校において新しい学習指導要領が実施されることになる。そのなかでは、現在必修科目である「国語総合」が、新たに「現代の国語」と「言語文化」の2つに分けられることになる。本論文では、そのうちの上代から近現代に受け継がれてきた我が国の言語文化への理解を深めることを主眼とする「言語文化」の授業において、『沙石集』所収の「先生の父の雉になりたるを殺したる事」が、古典と近現代とのつながりについて考える教材であると同時に、「古典」の導入教材としても有用であることを、授業実践例等も示しながら、実証した。14頁(100~113頁)
16 芥川龍之介『道祖問答』の方法
 ―素材としての仏教―
単著 2021-03-14『文藝論叢』第96号
(大谷大学文藝学会)
典拠となった『宇治拾遺物語』との比較を通して、芥川龍之介『道祖問答』に用いられている仏教に関する語句を手がかりとしながら、『道祖問答』がどのような方法で創作されたかということについて考える。日蓮のさまざまな著述の語句を用いながら、「煩悩即菩提」の正当性を展開し、帰結させる『道祖問答』の方法をさぐる。12頁(18~29頁)
以上16点
Ⅲ 口頭発表・その他
1 矢放神社蔵 大般若波羅蜜多経調査報告書その他 1987-03-00滋賀県教育委員会文化財保護課 中主町教育委員会社会教育課が主体となって行った矢放神社(滋賀県野洲市中主町)所蔵の『大般若波羅蜜多経』六百巻の調査に補助員として参加。外題・首題・尾題・法量・識語・保存状態等の調査を行った。
総頁数155頁
2 滋賀県大般若波羅蜜多経調査報告書一その他 1989-03-00滋賀県教育委員会文化財保護課 滋賀県教育委員会文化財保護課が行った『大般若波羅蜜多経』の調査に調査補助員として参加。外題・首題・尾題・法量・奥書・識語・保存状態等の調査を行った。
総頁数394頁
3 『玉伝神秘巻』の成立に関わる思想-特に「伊勢の神」を中心として-口頭発表 1990-11-00仏教文学会本部 11月例会(花園大学)
藤原為家の子為顕流の『玉伝神秘巻』では、それまでの古今集注釈書の『伊勢物語』117段の解釈を大きく改変し、住吉行幸は文徳天皇が行ったものであり、和歌を詠んだのはその行幸に供奉した在原業平であるという解釈がなされている。また奥書には、住吉明神から業平、伊勢太神宮から定家、為家、為顕に続く血脈が記されている。為顕流では、伊勢の神をその血脈に入れることで、自らの流派の存在を権威づけようとしたと考えられる。
発表時間35分
4 滋賀県大般若波羅蜜多経調査報告書二その他 1994-03-00滋賀県教育委員会文化財保護課 滋賀県教育委員会文化財保護課が行った『大般若波羅蜜多経』の調査に調査補助員として参加。外題・首題・尾題・法量・奥書・識語・保存状態等の調査を行った。
総頁数1002頁
5 為顕流の自立過程についての一考察口頭発表 1994-07-00仏教文学会本部 7月例会(神戸女子大学)
室町時代の二条流古今伝授には山王神道や卜部神道といった神道思想の影響が見て取れる。このような宗教的な思想をその権威付けに用いる濫觴を、鎌倉時代後期以後の古今集灌頂系秘書為顕流の『玉伝深秘巻』に求める。同流は、両部神道や天台本覚思想といった、時代的に盛んになりつつあった思想を積極的に秘伝に取り入れ、自流の権威付けをしていった。
発表時間40分
6 為顕流の展開に関する一考察
―『金玉双義』と『玉伝神秘巻』の比較を通して―
口頭発表 2001-12-00仏教文学会本部 12月例会(神戸大学)
13世紀、藤原為顕の一派が興隆した時代は、同時に狂言綺語観が文芸人たちを苦しめていた時代でもあった。しかし、為顕流はその点に注目し、独自の血脈や秘伝を作り上げ、自流の存在価値を高めていった。しかし、その為顕流においても、理論や血脈を整理しようとする能基系『金玉双義』と仏教的文学観の立場から差別化を図ろうとする神垂系『玉伝神秘巻』といった異なる流れが存在した。特に、神垂系の秘伝は、冷泉家流に取り入れられ、後世に大きな影響を与えた。
発表時間40分
7 片仮名本『因果物語』の姿勢
 ― 一向宗関係因果譚を手がかりとして ―
口頭発表 2013-10-00大谷学会 研究発表会 仏教各宗派の因果譚を多く収載する片仮名本『因果物語』では、「禅宗(曹洞宗)」の良い面(善因善果)と、それ以外の各宗派の悪い面を述べようとする傾向が強い。そのなかでも、特に「一向宗」僧侶・信徒の悪因悪果を述べた因果譚の多さに着目し、当時衆目を集めていた「浄土真宗」のマイナス面を述べようとした片仮名本『因果物語』編者の姿勢について明らかにした。発表時間40分
8 元禄元年の了意 ― 平仮名本による女人教化の試み ―講演 2014-09-27大谷大学国文学会 浅井了意は、貞享5年(元禄元年)に出版したと考えられる『勧信念仏集』において、法然の『無量寿経釈』から存覚の『女人往生聞書』、さらには蓮如の『御文』へとつながる「女人往生」について、先人達の文献を用いながら平仮名を用いてわかりやすく著した。了意は、従来の「聞く」ことによる教化ではなく、「読む」ことによる女人教化を試みようとしたのである。講演時間60分
9 対話重視・アウトプット型授業の構築
― 和歌教育の可能性 ―
講演 2017-10-15第16回京都府私立中学高等学校 教育研究大会(国語科) 現在の高校教育において、「国語ワーキンググループにおける審議取りまとめ」の「現行学習指導要領の成果と課題」の中で示された「古典に対する学習意欲が低いこと」が課題となっていることを前提としたうえで、そうした状況下でより充実した古典の授業が行われるために、現代短歌や「百人一首」を通して作品世界や作者の心情に迫ろうとする授業の実践例を示した。文学作品の世界に迫るひとつの手段になるとともに、「古典離れ」に対する効果的な対策にもなるはずである。講演時間40分
10 「国文学年次論文集 平成25年版近世分冊」 その他 2020-03-00学術文献刊行会(朋文出版) 「『因果物語』の位相 ― 平仮名本と片仮名本の編集意図について ―」(『文藝論叢』第81号所収)学術論文8の転載
以上10点

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