教育研究業績の一覧 戸次 顕彰
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A 教育業績 | ||||||
教育実践上の主な業績 | 年月日 | 概要 | ||||
1 教育内容・方法の工夫(授業評価等を含む) | ||||||
1 | 漢文文献輪読会の開催 | 2010-04-00
~2017-03-00 |
大谷大学文学部任期制助教ならびに非常勤講師在任中、大谷大学総合研究室を会場として、通常の授業とは別に、学部生・大学院生・聴講生(社会人)を対象とした漢文仏教文献の読書会を開催した。漢文文献の定期的な輪読によって漢文読解力の向上を目指した。約7年間にわたって開催する中で、テキストは参加者の興味・関心に配慮し、大乗経典・論書・戒律文献・中国人仏教者の著作など多岐わたる諸文献を読解した。 | |||
2 | 授業内アンケートの実施 | 2010-04-00
~2017-03-00 |
大谷大学文学部任期制助教ならびに非常勤講師在任中、担当した全ての授業において、一つの担当科目につき複数回の授業内アンケートを実施した。授業の初回と最終回のほか、4~5回程度実施し、学生の質問や興味・関心を把握し、授業に反映させることを心掛けた。 | |||
3 | 大学生の小論文の添削・指導 | 2014-04-00
~2017-03-00 |
大谷大学学習支援アドバイザー在任中、学習支援室(ラーニング・スクエア)において、資格取得や進学を目指す学生を対象に、小論文の添削・指導をした。日本語表現に関する基本的な事柄のほか、「自分の意見と他人の意見を区別する」「序論・本論・結論の三部構成で書く」「参考文献や出典の明記」などに重点を置いて指導した。 | |||
4 | 卒業論文集の編集・発行 | 2022-02-00
~2023-02-00 |
2021年度・2022年度に2年にわたり、大谷大学文学部仏教学科仏教思想コースの二つのゼミで共同して卒業論文集を作成した。特にその中で校正等の編集作業を行った。この卒業論文集は、卒業していく学生の成果を記念するものであるとともに、次年度以降に卒業研究に取り組む学生が参考にすることも目的として編集・発行を行なった。 | |||
2 作成した教科書、教材、参考書 | ||||||
1 | 中国仏教思想史関係の講義資料作成 | 2012-04-00
~2015-12-00 |
大谷大学非常勤講師在任中、2012~2013年度の担当講義「中国仏教思想史1・2」ならびに2015年度に担当した生涯学習講座「シリーズ世界の仏教5 中国仏教の思想と実践」に用いる講義資料を作成し、授業の進行にあわせて配布して教材として活用した。受講者が、限られた講義数の中で、中国仏教の特色や主要項目(典籍・人名など)を把握できるように配慮した。 | |||
2 | 小論文対策の課題作成 | 2014-04-00
~2017-03-00 |
大谷大学キャリア形成系科目「日本語表現(入門)」で用いる小論文課題を、同じくこの科目を担当した他の教員と共同で作成し、授業の進行にあわせて配布して教材として活用した。新聞記事・雑誌記事・書籍の中から一部を選定して抜粋し、その内容に基づいた課題を設定した。学生が自らの考えや立場について、正確な日本語で論理的に伝えられるようになることを目的とした。 | |||
3 | 大学生の日本語表現能力向上に向けた演習問題の作成 | 2014-04-00
~2017-03-00 |
大谷大学キャリア形成系科目「日本語表現(入門)」で用いる小論文課題を、同じくこの科目を担当した他の教員と共同で作成した。日本語表記に関する間違い探しや、適切な接続詞の用い方、適切な段落分けなどを課題として出題した。 | |||
4 | 『法華経』講読の作業プリントの作成 | 2016-04-00 | 「法華経を読む」(大谷大学)の授業に際して、学生の予習・復習や授業中のワークシートとして利用できるように、作業プリントを作成した。漢字や語句(仏教用語など)の意味・漢文の書き下し・現代語訳を記入するための欄をそれぞれ設け、学生が自発的に学習に取り組みつつ授業参加ができるように工夫した。 | |||
3 教育方法・教育実践に関する発表、講演等 | ||||||
1 | オンラインから始まったゼミー仏教学の研究指導を事例として― | 2021-07-00 ~ | 『大学時報』2021年7月号の「私の授業実践~教育現場の最前線から~」欄に、コロナ禍におけるゼミでの取り組みについて、特に仏教学という学問領域における学びの特徴と留意点を中心に執筆した。
2頁(96-97頁) | |||
4 その他教育活動上特記すべき事項 | ||||||
1 | 大谷大学生涯学習講座「シリーズ世界の仏教5 中国仏教の思想と実践」の講師 | 2015-10-00
~2016-01-00 |
大谷大学で開催されている社会人を対象とした生涯学習講座において「シリーズ世界の仏教5 中国仏教の思想と実践」というテーマの講師を担当した。全6回にわたり、中国仏教の思想と実践を、特にインドや日本の仏教との連続性や相違点に留意しながら講義した。 | |||
2 | 「親鸞仏教センター研究員と学ぶ公開講座」の講師 | 2018-02-00
~2020-02-00 |
親鸞仏教センター研究員在任中、主に社会人を対象とした公開講座の講師を担当した。浄土真宗や親鸞思想に関心を持つ人たちが多く集まる会であることを考慮し、インドや中国の大乗仏教と親鸞思想との接点を探ることの重要性を問題提起し、仏典の正確な読解と内容解説に重点を置いて講義した。講読テキストには『法華経』(2018年2月)と『大智度論』(2018年12月・2020年2月)を用いた。現在までに合計11回行った。 | |||
3 | 大谷大学生涯学習講座「シリーズ 人物からみた仏教⑦―仏弟子の阿難・摩訶迦葉と第一結集―」の講師 | 2021-11-00
~2021-12-00 |
大谷大学で開催されている生涯学習講座「人物からみた仏教」というシリーズにおいて、講師を担当した。この講座では、初期仏教聖典の経・律、ならびに大乗仏典の『大智度論』に基づきつつ、釈尊の弟子として有名な阿難と摩訶迦葉の二人を取り上げ、全3回にわたって、二人の人物像ならびにこの二人が特に関わった第一結集をテーマとして講義した。 | |||
4 | 近鉄文化サロン・大谷大学共催講座「大乗の菩薩道と『大智度論』」の講師 | 2022-06-16
~2022-09-15 |
近鉄文化サロン阿倍野を会場として、「大乗の菩薩道と『大智度論』」というテーマで全三回の講義をおこなった。〈般若波羅蜜〉や〈空〉をキーワードに大乗仏教の信仰や実践を取り上げた。第1回2022年6月16日「釈尊から大乗仏教へ」、第2回7月21日「〈空〉というものの見方・考え方」、第3回9月15日「菩薩の実践と〈般若波羅蜜〉」。 | |||
5 | 大谷高等学校 教育講演会(人間教育プログラム)の講師 | 2022-11-09 | 大谷高校1年生を対象に、「自ら問いを探し見つけることの大切さを語ってほしい」という依頼のもと、「問いからはじまる生活―あるお坊さんの問い―」というテーマで講義をおこなった。講義では主に、中国の禅宗における問答や、日本の道元を取り上げ、「なぜ努力(修行)するのか」「信じる(信仰)とは何か」などの問題を取り上げた。 | |||
6 | 「リフレクション2022:優秀授業賞受賞者に聞く」におけるコーディネーター | 2022-12-14 | 大谷大学の2022年度後期FD研修会として開催された「リフレクション2022:優秀授業賞受賞者に聞く」において、コーディネーターを担当した。優秀授業賞受賞者の中から3名の教員に登壇いただき、授業方法や授業の工夫点などを質問しながら座談を進行した。 | |||
7 | 大学コンソーシアム京都 FD合同研修プログラム テーマ別研修の企画と司会 | 2023-09-13 | 「IR」をテーマとしたFDテーマ別研修の講師の選定・依頼をはじめとした企画と、当日の司会進行を担当した。 | |||
B 職務実績 | ||||||
1 | 大谷大学真宗総合研究所 大学史資料室の展示作業 | 2011-04-00
~2017-03-00 |
大谷大学真宗総合研究所の嘱託研究員在任中、大学史資料室が所蔵する大学史関係の史資料を公開する活動の一環として、大谷大学図書館での展示を企画・製作して展示した。 | |||
2 | 外部資金の獲得(科学研究費助成事業 研究分担者) | 2012-04-01
~2016-03-31 |
科学研究費助成事業(基盤研究C)「道宣著作の研究」(研究課題番号:24520816、2012年4月1日~2016年3月31日、研究代表者:大内文雄)において、『四分律含注戒本疏』『四分律刪補随機羯磨疏』『四分律刪繁補闕行事鈔』などの道宣が撰述した戒律関係著作の序文の訓読・現代語訳・語注の作成を行い、その成果を『大谷大学真宗総合研究所研究紀要』第30号(2013年3月)などで公表した。 | |||
3 | 共同研究班への班員としての参加(京都大学人文科学研究所共同研究班「古典解釈の東アジア的展開―宗教文献を中心として―」) | 2013-04-00
~2016-03-00 |
京都大学人文科学研究所で行われた共同研究「古典解釈の東アジア的展開―宗教文献を中心として―」(班長・藤井淳、副班長・船山徹)において班員として参加した。この研究班は、全国から総計50名近い班員・学生班員によって構成され、漢字文化圏の宗教文献と関連する諸事象を、各班員の専門分野から討究し議論した。特に2014年12月13日に菅野博史氏の研究報告(「中国における仏教経典の注釈書について―南北朝・隋代を中心として―」)においてコメンテーターを担当した。 | |||
4 | 大谷大学真宗総合研究所 特定研究「Eラーニングを活用した「仏教・真宗」教育活動の展開」の研究員ならびに庶務 | 2020-04-00
~2023-03-00 |
eラーニングなど、インターネット環境を活用した新しい教育システムの開発・導入を目指した研究班の研究員・庶務を担当し、主に「仏教入門」の講義原稿の作成や配信動画の収録などを実施した。 | |||
5 | 大谷大学 FD部会委員 | 2020-04-00 ~ | 学内のFD研修会・ミニFD研修会やシラバスチェックなどのFD関連業務に関わった。 | |||
6 | 『佛教学セミナー』編集委員 | 2021-04-00 ~ | 大谷大学仏教学会より刊行されている『佛教学セミナー』の編集委員を担当し、主には2022年度の第115号から編集作業に中心的に関わっている。 | |||
7 | 大谷大学真宗総合研究所 指定研究「大谷大学所蔵仏教写本研究」の研究員ならびに庶務 | 2022-04-00 ~ | 大谷大学に所蔵される仏教写本に関する研究班において、主に国内研究機関および研究者との連絡対応や、研究補助者の補助業務に関する事務的対応を中心として庶務を担当した。 | |||
8 | 大谷大学人権センター員 | 2022-04-00
~2024-03-00 |
大谷大学人権センターにおける相談業務や、人権問題の全学学習会、教職員を対象とする人権問題学習会の準備・運営等に関わった。 | |||
9 | 大学コンソーシアム京都 FD企画研究委員会 委員 | 2022-04-00
~2024-03-00 |
大学コンソーシアム京都のFD企画研究委員会が企画する「FD合同研修プログラム」の中で、京都FD交流会や「テーマ別研修」の企画等に関わり、グループワークでのファシリテーター等を担当した。また、2022年12月9日開催の「テーマ別研修:シラバス作成の基礎知識」では、司会の補助業務を担当した。 | |||
10 | 大谷大学真宗総合研究所 特定研究「大谷大学樹立の精神100年」の研究員ならびに庶務 | 2023-04-00 ~ | 大谷大学第二代学長・佐々木月樵の「大谷大学樹立の精神」が訓示されて2025年に100年を迎えるにあたり、佐々木月樵の関連文献の収集や内容分析等を行う研究班の研究員・庶務を担当。庶務としては、毎月2~3階程度のペースで開催される研究会の設定・準備と、アルバイトの作業依頼等を統括している。 | |||
11 | 共同研究班への班員としての参加(京都大学人文科学研究所共同研究班「隋唐石刻資料の研究」) | 2023-04-00 ~ | 中国隋唐時代の墓誌・寺碑・塔銘・造像記の読解を行う共同研究の研究班に班員として参加している。京都大学人文科学研究所分館を会場として月に2回ペースで研究会が開催されている。特に2024年12月からは「故大信行禅師銘塔碑」の読解を担当し、翻刻・校勘・訓読・現代語訳を行っている。 | |||
C 学会等及び社会における主な活動 | ||||||
所属期間及び主な活動の期間 | 学会等及び社会における主な活動 | |||||
1 | 2006-09-00~0000-00-00 | 日本印度学仏教学会 | ||||
2 | 2007-07-00~0000-00-00 | 東アジア仏教研究会 | ||||
3 | 2008-05-00~0000-00-00 | 真宗教学学会 | ||||
4 | 2017-00-00~0000-00-00 | 仏教史学会 | ||||
5 | 2017-00-00~2022-03-00 | 新潟親鸞学会 | ||||
6 | 2023-00-00~0000-00-00 | 日本仏教学会 | ||||
D 研究活動 | ||||||
著書、学術論文等の名称 | 単著、 共著の別 | 発行又は 発表の年月 | 発行所、発表雑誌等 又は 発表学会の名称 | 概要 | ||
Ⅰ著書 | ||||||
1 | 道宣と南山律学の形成―律宗がはじまるとき― | 単著 | 2025-02-00 予定 | 法蔵館 | 唐代初期の律僧・仏教史家として知られる南山道宣(596-667)の仏教者としての特徴およびその背景、そして『四分律行事鈔』の成立と文献的性格の考察を中心として南山律学の形成を論じた。第1部「北朝仏教の学風とその継承」(第1章~第3章)、第2部「律僧・仏教史家としての問題意識」(第4章~第6章)、第3部「四分律学の形成と『四分律行事鈔』」(第7章~第10章)の全三部十章から成る。第1部は2011年に大谷大学へ提出した学位請求論文の一部(Ⅱ学術論文-8)であり、第2部・第3部はその後の研究成果をまとめた。大谷大学2024年度学術刊行物出版助成による。
総頁数:約380頁(予定) |
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以上1点 | ||||||
Ⅱ学術論文 | ||||||
1 | 『梵網経』諸注釈書における持犯の一考察―殺戒を中心として― | 単著 | 2007-12-20 | 『印度学仏教学研究』第56巻第1号 | 『梵網経』の殺戒について、中国・朝鮮の注釈家(智顗・元暁・義寂・勝荘・法蔵)が論じる持犯に注目し、特に誰(何)を殺した際に波羅夷罪が成立するのかという問題を考察した。その結論として、波羅夷成立は殺害対象が人のみであるとする注釈と、一切衆生とする注釈との二通りに分かれ、それぞれが他の注釈の一方の解釈を意識しながら自らの立場を主張している姿勢を明確にした。
5頁(129~133頁) |
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2 | 四分律宗における三学の漸習―道宣撰『浄心誡観法』の五年学律規定をめぐって― | 単著 | 2008-03-20 | 『東洋大学大学院紀要』第44集 | 『浄心誡観法』の五年学律規定をめぐって、道宣の実践観を探り、この規定の背景には三学の「漸習」という仏道の次第が重視されていることを明確にした。このことは後代日本の凝然が三学の「円融」「相即」によって律宗の立場を説明することと異なっているということを指摘した。さらに以上の道宣の立場は、『続高僧伝』を参照すると、道宣以前から四分律宗の伝統の中に内在していた学道であったことを指摘した。
15頁(234~248頁) |
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3 | 四分律宗と地論宗南道派に見られる学道の一側面―道宣撰『浄心誡観法』の学問批判をめぐって― | 単著 | 2008-12-01 | 『大谷大学大学院研究紀要』第25号 | 四分律学を大成させた道宣の実践観が形成された基盤には、地論宗南道派の影響があったのではないかという観点から、その具体相を明らかにすることを目的とした。具体的には『浄心誡観法』の学問批判に注目し、道宣の学道の特色を明確にし、さらにその学道が『続高僧伝』に立伝される地論宗の諸師の特徴でもあったという点を指摘した。また、道宣に影響を与えたのは慧光から道憑・霊裕へと至る系譜である可能性を指摘した。
30頁(63~92頁) |
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4 | 道宣における説法勧化の意義―『四分律行事鈔』瞻病送終篇を中心として― | 単著 | 2009-06-30 | 『真宗教学研究』第30号 | 『四分律行事鈔』瞻病送終篇の病人看護法における臨終説法を考察し、道宣における説法や勧化の意義を論じた。律は経や論に比べて、作善や利他に関する教説が説かれることは少ないが、本考察では、道宣が資料とした漢訳律蔵の所説と道宣におけるそれらの引用意義を調査し、瞻病送終篇で臨終説法を重視する背景に律蔵の精神があったことを指摘した。
12頁(76~87頁) |
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5 | 道宣の著作中に見られる『凡聖行法』について―特に『釈門帰敬儀』との関連を中心として― | 単著 | 2010-03-20 | 『印度学仏教学研究』第58巻第2号 | 律宗の教判としても用いられる性空・相空・唯識の三教の出典である『凡聖行法』は、これまで律宗の注釈文献を含めてもほとんど注目されていなかった書物である。そこで『凡聖行法』や著者に関する情報を提示し、併せて道宣による引用意義を考察した。この考察では、道宣に方便行・有相行を重視する姿勢があることを指摘し、その際の典拠が『凡聖行法』であることを明確にした。
4頁(33~36頁) |
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6 | 道宣による『七種礼法』引用の意図―仏道における罪と福― | 単著 | 2011-05-31 | 『東アジア仏教研究』第9号(東アジア仏教研究会) | 道宣の『釈門帰敬儀』には、北魏時代のインド人僧・勒那摩提が伝えた『七種礼法』が引用される。そこで本稿では、道宣の『七種礼法』引用の意図を考察した。その結果、道宣の場合には全七種の礼拝の中で、前半部分に関心を示していた形跡があることを明確にした。また、道宣の引用文は、道世や澄観・宗密といった他の引用者の引用文と比べて微妙な相違があることを指摘し、その相違の理由が道宣の実践観の特異性に基づくものであることを論じた。
19頁(55~73頁) |
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7 | 『浄心誡観法』における道宣の実践論―如来蔵思想との関連を中心として― | 単著 | 2011-06-30 | 『仏教学セミナー』第93号(大谷大学仏教学会) | 道宣の著作『浄心誡観法』の「浄心」という実践上の課題は、前代に中国で広まっていた仏性・如来蔵思想に基づいたものであることを指摘した。特に本稿では、『大乗起信論』との思想的類似性を併せて論じた。
28頁(21~48頁) |
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8 | 道宣における実践道形成の研究―北朝仏教の学風とその継承―(博士論文) | 単著 | 2011-09-30 | 大谷大学 | 中国唐代初期に活動した南山道宣の実践観を解明した。特に道宣の仏道実践に対する見解が表明されている『浄心誡観法』『釈門帰敬儀』という著作を中心に取り上げ、前代の北朝仏教界との関連を第1章から第4章にわたって論じた。結論として、道宣には前代北朝期の地論宗南道派の学風や、すでに中国に浸透していた仏性・如来蔵系の思想が見られることを指摘し、北朝仏教と唐代道宣との思想の連続性を明確にした。(243頁)
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9 | 道宣の四種三宝説について―住持三宝の存在意義を中心として― | 単著 | 2012-12-20 | 『印度学仏教学研究』第61巻第1号(日本印度学仏教学会) | 仏教の基本概念「三宝」は中国へ伝来すると、その定義に種々あることが注目され、数種類に分けて議論されることがある。そこで道宣の四種三宝説に注目し、道宣には特に住持三宝やその中でも特に僧宝を尊重する姿勢があることを指摘した。また、このような道宣の立場は、三宝説を論じる他の諸師には見られない特徴であることを論じた。
5頁(217~221頁) |
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10 | 道宣著作の研究―道宣著作序文訳注稿― | 共著 | 2013-03-31 | 『大谷大学真宗総合研究所研究紀要』第30号(大谷大学真宗総合研究所) | 道宣著作の序文に訓読文・現代語訳・訳注を付し、これを公表した。現代語訳では、東洋史学を専攻する学部生が読んで理解できることを目的として平易な訳文を作成し、訳注では、当該語句の中国古典や仏教文献での類似した用例を示すことによって語句の意味説明を明瞭にした。
98頁(本人担当7~21頁) 編著者:大内文雄 共著者:大内文雄・戸次顕彰・松岡智美・松浦典弘・今西智久・藤井政彦・河邉啓法 |
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11 | 『四分律行事鈔』の文献的性格について | 単著 | 2014-12-20 | 『印度学仏教学研究』第63巻第1号(日本印度学仏教学会)11~15頁 | 従来、文献的性格が必ずしも明確ではなかった道宣の戒律関係著作の主著『四分律行事鈔』を取り上げ、特に序文に示される道宣の言葉から、この著作が単なる注釈書ではなく、具体的実践を課題とした「仏教類書」的性格があることを論じた。
5頁(11~15頁) |
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12 | 道宣の『四分律行事鈔』撰述とその背景―僧祐の著作活動との類似性― | 単著 | 2014-12-30 | 『仏教学セミナー』第100号(大谷大学仏教学会)
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上記学術論文(Ⅱ‐11)によって得られた知見に基づき、活動や著作の性格が道宣と類似している僧祐(445-518)に注目して、著作活動における両者の共通点を明確にした。この考察を通して、僧祐から道宣へと至る中国仏教史学の学問的特色を論じた。
26頁(50~75頁) |
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13 | 道宣著作の研究―道宣著作序文訳注稿(二)附・語彙索引― | 共著 | 2016-03-01 | 平成24~27年度(2012~2015年度)科学研究費助成事業 基盤研究(C)「道宣著作の研究」(課題番号24520816)研究成果報告書 | 道宣著作の序文に訓読文・現代語訳・訳注を付し、研究成果報告書としてまとめた。2013年3月に公刊された「道宣著作の研究―道宣著作序文訳注稿―」(上記Ⅱ‐10)の続編であり、今回は新たに語彙索引を追加した。
148頁(本人担当7~26頁) 研究代表者:大内文雄 共著者:大内文雄・戸次顕彰・松岡智美・宮嶋純子・藤井政彦・今西智久・桐原孝見・松浦典弘 |
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14 | 四分律学の系譜と南山道宣―『五部区分鈔』から『四分律行事鈔』へ― | 単著 | 2016-03-25 | 『仏教史学研究』第58巻第2号(仏教史学会) | 中国南北朝時代における『四分律』研究の動向を精査し、その上で道宣の師にあたる智首の『五部区分鈔』(散逸)がどのような著作であったのかを考察した。さらに智首から学んだ学術をさらに発展させた道宣の『四分律行事鈔』との共通点と相違点を明確にし、智首から道宣へと至る四分律学の課題の所在を論じた。
25頁(1~25頁) |
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15 | 仏教世界における歴史家の視点―僧祐・道宣を中心とする史書編纂の背景― | 単著 | 2017-12-01 | 『現代と親鸞』第36号(親鸞仏教センター) | 中国仏教史学の創始者・僧祐の『出三蔵記集』から唐・道宣の『続高僧伝』に至るまでの仏教史籍に注目し、その成立の背景にある思索や課題を考察した。また道宣は史籍以外にも戒律関係の著作も多く著していることから、歴史と戒律とが彼の生涯や著作活動においていかなる関係にあるのかを考察した。この考察を通して、現実に存在する人や教団から仏道が広まっていくとするような共通した歴史観が彼らにあったという点を見出した。
29頁(2~30頁) |
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16 | 四分律学の形成と義浄の批判―『四分律行事鈔』における律蔵引用の方針をめぐって― | 単著 | 2018-12-01 | 『現代と親鸞』第39号(親鸞仏教センター) | 道宣の『四分律行事鈔』において、律蔵が引用される際の引用方針を考察し、著者道宣の著述に際する方法論を明確にした。それと同時に、道宣没後インドへ法を求めた義浄の四分律学批判を取り上げ、特に律蔵引用の方針をめぐって両者の相違点を指摘した。さらに本考察では、従来より関心の高かった相違点のみではなく、両者には共通した意識もあったことを指摘し、当時の中国の律僧が共通して有していた問題意識の所在を論じた。
25頁(2~26頁) |
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17 | 道宣著作における〈事〉の概念―律蔵を受容した中国人僧の問題意識― | 単著 | 2019-06-30 | 『真宗教学研究』第40号(真宗教学学会) | 道宣の諸著作にしばしば特徴的に用いられる「事」という概念に注目し、その意味内容を探求するとともに、道宣が「事」を用いる文脈が、前代や同時代の律学を批判する箇所に登場することが多いという特徴を指摘した。この考察によって、道宣が律蔵という文献群と向き合う際の問題意識の所在と、彼の戒律関係著作撰述の意趣を明確にした。
18頁(52~69頁) |
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18 | 『四分律』から『四分律行事鈔』へ―『行事鈔』の仏典引用に関する諸問題― | 単著 | 2021-02-10 | 『東アジア仏教学術論集―日・韓・中 国際仏教学術大会論文集―』第9号(東洋大学東洋学研究所) | 『四分律行事鈔』は、漢訳律蔵『四分律』の名称を冠しつつも、『四分律』以外の仏典を多く引用するという特徴がある。そこで本稿では、著者道宣の仏典引用の基本方針を確認するとともに、いくつかの事例を取り上げながら、どのようなとき『四分律』以外の仏典が引用されているのかという傾向と特徴を考察した。また本考察の最後に、『行事鈔』の仏典引用の方針を如実に物語る最終章「諸部別行篇」の意義を論じた。
23頁(123~145頁) |
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19 | 『四分律行事鈔』の構成とその意図―森羅万象を類聚する営みとして― | 単著 | 2021-06-30 | 『仏教学セミナー』第113号(大谷大学仏教学会) | 『四分律行事鈔』の文献的性格を解明していく作業の一部として、本書の構成とその特色、ならびに著者道宣の意図を考察した。特に本書は、出家修行者の戒律に基づく生活を、類聚という方法論によってまとめ上げた特色があることを明確にし、道宣の類聚に関する考え方と編纂方法を論じた。
32頁(1~32頁) |
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20 | 『出三蔵記集』序から『大唐西域記』讃へ―その歴史叙述の共通点と相違点― | 単著 | 2024-09-17 | 苅谷定彦 小西日遶 大平宏龍 三先生頌寿記念論文集刊行会編『法華仏教の潮流―教えと学びの道しるべ―』(法蔵館) | 中国梁代の仏教史家・僧祐の『出三蔵記集』序と、唐代初期の玄奘の旅行記録に基づく『大唐西域記』における辯機の讃に注目し、両書の歴史叙述における類似性を指摘するとともに、その中に見られる国家観に関わる相違点を明確にし、玄奘らが置かれた長安における仏教界と国家との微妙な距離感を論じた。16頁(109~124頁)。 | |
以上20点 | ||||||
Ⅲ 口頭発表・その他 | ||||||
1 | 『梵網経』注釈書における持犯の一考察―殺戒を中心として― | 口頭発表 | 2007-09-05 | 日本印度学仏教学会第58回学術大会(四国大学) | 上記学術論文(Ⅱ-1)の内容を口頭で発表した。[発表時間15分,質疑応答5分] | |
2 | 道宣における説法勧化の意義―『四分律行事鈔』瞻病送終篇を中心として― | 口頭発表 | 2008-07-06 | 第15回真宗大谷派教学大会(大谷大学) | 上記学術論文(Ⅱ-4)の内容を口頭で発表した。[発表時間20分,質疑応答5分] | |
3 | 四分律宗と地論宗南道派に見られる学道の一側面―道宣撰『浄心誡観法』の学問批判をめぐって― | 口頭発表 | 2008-11-20 | 大谷大学仏教学会研究発表例会(大谷大学) | 上記学術論文(Ⅱ-3)の内容を口頭で発表した。[発表時間40分,質疑応答20分] | |
4 | 道宣の著作中に見られる『凡聖行法』について | 口頭発表 | 2009-09-08 | 日本印度学仏教学会第60回学術大会(大谷大学) | 上記学術論文(Ⅱ-5)の内容を口頭で発表した。[発表時間15分,質疑応答5分] | |
5 | 道宣による『七種礼法』の引用意義―仏道における罪と福― | 口頭発表 | 2010-07-24 | 東アジア仏教研究会定例研究会(東洋大学) | 上記学術論文(Ⅱ-6)の内容を口頭で発表した。[発表時間30分,質疑応答30分] | |
6 | 道宣の四種三宝説―住持三宝を中心として― | 口頭発表 | 2012-06-30 | 日本印度学仏教学会 第63回学術大会(鶴見大学) | 上記学術論文(Ⅱ‐9)の内容を口頭で発表した。[発表時間=15分,質疑応答=5分]
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7 | 『四分律行事鈔』の文献的性格について | 口頭発表 | 2014-08-31 | 日本印度学仏教学会 第65回学術大会(武蔵野大学) | 上記学術論文(Ⅱ‐11)の内容を口頭で発表した。[発表時間=15分,質疑応答=5分]
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8 | .四分律学の系譜と南山道宣―『五部区分鈔』から『四分律行事鈔』へ― | 口頭発表 | 2015-11-22 | 仏教史学会 第66回学術大会(花園大学)
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上記学術論文(Ⅱ‐14)の内容を口頭で発表した。[発表時間=30分,質疑応答=10分]
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9 | 四分律学の形成と義浄の批判―『四分律行事鈔』における律蔵引用の方針をめぐって―
| 口頭発表 | 2016-12-03 | 東アジア仏教研究会 2016年度年次大会(駒澤大学) | 上記学術論文(Ⅱ‐16)の内容を口頭で発表した。[発表時間=30分,質疑応答=30分(コメンテーターのコメント時間を含む)]
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10 | 書評・紹介 吉水岳彦著『霊芝元照の研究―宋代律僧の浄土教―』 | 書評 | 2016-12-30 | 『仏教学セミナー』第104号(大谷大学仏教学会) | 吉水岳彦氏による『霊芝元照の研究―宋代律僧の浄土教―』(法蔵館、2015)の書評・紹介をした。本書の概要を示すとともに、善導系や天台系とは異なる宋代律僧による「律系浄土教」を論じた著者の研究意義を主に紹介した。
11頁(29~39頁) |
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11 | 仏道における「事」の探求―中国における戒律受容の一側面― | 口頭発表 | 2018-07-01 | 第25回真宗大谷派教学大会(大谷大学) | 上記学術論文(Ⅱ‐17)の内容を口頭で発表した。[発表時間=20分,質疑応答=5分]
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12 | 『四分律』から『四分律行事鈔』へ―『行事鈔』の仏典引用に関する諸問題― | メール会議の形式での開催 | 2020-06-20 | 第9回 日・韓・中 国際仏教学術大会(メール会議) | 上記学術論文(Ⅱ-18)の内容を口頭で発表する予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、メール会議形式での開催となった。上記学術論文(Ⅱ-18)の内容について、コメンテーターからのコメントがあり、それに回答した。そのコメントおよび回答の内容については、上記学術論文(Ⅱ-18)146-154頁で公表されている。 | |
13 | 諸行の分類をめぐる隋代仏教の一側面―道宣の著作中に引用される『凡聖行法』とその意義― | 口頭発表 | 2020-12-19 | 科学研究費助成事業「中国唐代・道綽浄土思想の基礎的研究」(研究代表者:マイケル・コンウェイ氏)における「『安楽集』に関する公開研究会」(大谷大学) | 道宣著作をはじめとした唐代以降の諸文献の記載に注目し、隋代の習禅者・道正が著した『凡聖行法』に関する成立・流布・内容等を検討するとともに、道宣および道宣が受容した北朝・隋唐期の仏教界における「諸行」についての関心の所在を論じた。[発表時間=60分,質疑応答=60分] | |
14 | 日本仏教学会編『仏教事典』 | 分担執筆 | 2021-01-31 | 丸善出版 | 第1章「仏教とは何か」の中の「真実」の項において、「中国仏教における「真実」―真実へと導くもの」(21~22頁)の執筆を担当。 | |
15 | 記録を集めて歴史に残す―僧祐の『出三蔵記集』とその後の中国中世仏教― | 口頭発表 | 2021-10-22 | 大谷学会研究発表会(大谷大学) | 『出三蔵記集』を中心とした梁・僧祐の著作活動は、それ以降に成立した経典目録、高僧の伝記集、あるいは仏教類書などに多くの影響を与えた。これらは総じて、仏教に関する諸記録を集成・分類して後代に残そうとした中国人仏教者たちの営為である。本発表では、唐代初期に至るまでの諸文献の特色と、『出三蔵記集』との関連性を論じた。[発表時間=30分,質疑応答=10分]
発表要旨『大谷学報』第101巻第2号、2022年3月、7頁(1~7頁) |
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16 | セッション№3の発表に対するコメント | コメンテーター | 2023-09-30 | 日本佛教学会第92回学術大会(駒澤大学) | 「仏教と病」という共同研究テーマにおいて、戒律を取り上げたセッション№3で、岸野良治氏の「「根本説一切有部律」に説かれる病者にまつわる諸規定について」、ならびに山本元隆氏の「南山律宗における病悩への対処について」の発表に対するコメンテーターを担当した。主にインドの律文献において病人看護に関する規定が多く説かれる背景と、中国の律宗において病人看護と臨終行儀がまとめられていく過程と意義についてコメントした。
『日本佛教学会年報』第88号、2024年刊行予定(校正済)、7頁(掲載頁未定)。 |
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17 | 北周の廃仏と道安の『二教論』―そしてその記録を残した道宣― | 口頭発表 | 2024-01-31 | 大谷大学仏教学会研究発表例会 | 中国に仏教が定着する過程で生じた排仏論争史における北周・道安の『二教論』の意義と、その道安を讃え『二教論』を『広弘明集』に収めた道宣の記録に注目し、北朝末から唐初へと至る仏教界の動向の一端と、その記録者・道宣の仏教史観の特徴を論じた。特に『二教論』については、後半の議論を中心に取り上げ、それらの議論の多くが過去の議論の踏襲であり、特に東晋・道恒『釈駁論』からの影響が大きいことを指摘した。また一方で、『二教論』の構成には特徴的な側面もあり、北周の廃仏と道宣の歴史叙述の背景を解明する際の手がかりとなりうる可能性を論じた。[発表時間=30分,質疑応答=20分] | |
以上17点 |